あるごしゅじんさま・どれい の いちにち 1

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16-17 27 36 212 268-269 333-334 489-490 508-510

□ 16-17 □
【あるかねもちせめのいちにち】

ぜんにっくうほてる すいーとるーむで きしょう

ちょうしょくは とらずに しゅっきんのじゅんび
りんかーんで しゅっしゃ
しゃちょうしつは ちじょう50かい

したをみおろして ひとがごみのようだ といってみる
めがねひしょが なうしかですか と はんぱなつっこみ
ばかめ らぴゅただ

かいぎで 100おくのぷろじぇくとを けっていさせる
きょうの ひるごはんは びんぼううけのところにいくのも ひそかにけってい

りんかーんで びんぼううけの ばいとする こんびにへいく ちゅうしゃじょうに ちゅうしゃするとはみでるから うんてんしゅ ちょっとこまってるが しらんかお

きっちょうの じゅうばこ もっていったら うちでかえよと おこられた

わかった それなら おまえのために このみせのもの すべてかいとろう

ほかのきゃくが こまるだろうと またおこられた

しかたないから いちばんこうがくな はいうぇいかーど(5まんえん)をかう
さあ うけとってくれたまえ びんぼううけ

びんぼううけ くるま もってないと おこる
おまえの おくりものには せいいがないと さらにおこる

せいい って どこで うってるんだろう
めがねひしょなら しってるかな となやむ あるかねもちせめの ひるやすみ

□ 27 □
【あるかんきんされてるうけのいちにち】

あさ むりやり せめに たたきおこされた
おれは かいしゃにいくから おとなしくしてろよ
おれの でんわには ちゃんとでろよ わかったな

ひとり のこされたへやで さびしく おそいちょうしょくをとる
きのう せめにむちゃくちゃされたせいで すわってるだけできつい

なにもすることがないので ねることにする
はやくじゆうになりたいけど たぶん しばらくむりだろうな

でんわの べるで めがさめる あわててじゅわきをとる
なにしてたんだ まさか ほかのおとこを つれこんでたんじゃないだろうな
というせめのことばに さすがにきれた

らんぼうに じゅわきをおいてふてね
じぶんが ここからでられなくしておいて いったいなにいってんだか

そうこうしてるうちに もうよる せめがかえってきた
ちゃんといいこにしてたか ときいてきたが ふとんをかぶったままねたふり

つかれてるのか といって ふとんをはぎ まぶたに きす するせめ
いつもごういんで わがままなくせに こういうときやさしいのって はんそくだ
せめにいろいろ きたいしそうになる なんだかなきたくなってきた

いつになったら こんなせいかつおわるんだろうと
なみだを こらえながらおもう かんきんされてるうけのよる

□ 36 □
【あるしつじぜめのいちにち】

あさ ごしゅじんさまを おこしにいく
なんだか こえがかれてる そのげいいんをつくったのはじぶんなのだが

こっくに ちょうしょくのじゅんびをたのむ
ついでに のどによさそうなのみものを よういしてもらう

おまえもいっしょにたべたらどうだ というごしゅじんさま
いや わたしはただのしつじですからそれはできません とことわる
なんだかさびしそうなごしゅじんさま しまったおきをわるくさせたようだ
こんどさそわれたら いっしょにたべることにしよう

ごごからしょうだんのためらいきゃく ふとりぎみのちゅうねんのおとこだ
ごしゅじんさまを しきりにじろじろみているきがするのはじぶんだけか
わたしのだいじなごしゅじんさまを なめるようにみないでください といってやりたい

しょうだんもおわって ひといきつく ごしゅじんさまにこうちゃをいれる
ありがとうおまえがいてほんとうにたすかる とごしゅじんさま
わたしもあなたにつかえることができてこうえいです とこたえる

もうそともくらくなった そろそろゆうしょくのじゅんびをしじしてこよう
ゆうしょくのあとは あしたのよていをたてなくては
そのあと よていをごしゅじんさまにつたえるついでに かわいがってさしあげようかな
たのしみだ とおもうしつじせめのよる

□ 212 □
【だんなさまうけとこまづかいせめのいちにち】

こまづかい!どこにいったんだい
だんなさまがおでかけだよ!

へいへいただいま まったくひとづかいがあらいや
ふーどをつかんで あわててかけだすこまづかい
きょうはだんなさまのおつきで となりのもりまで

こまづかい このみちでいいのかい
へいだんなさま このさきはうねうねのみち きをつけて
…っていってるのに! ちょっぴりどじなだんなさま すってんころりん

たいへんだ ぎざぎざのはっぱでかおがきれてます だんなさま
だいじょうぶだよこのくらい
だめですせっかくのおとこまえがだいなし さあ いやしぐさをつけて
ありがとう やさしいねぼくのこまづかい
こうしてずっとまもってくれるかい?

ぽわわわん にっこりわらわれて
こまづかいかお たいようみたいにまっかっか
ごめんなさいだんなさま おまもりできるかどうかだいぶふあんです
うっかりおそっちまったら どうしましょ ああかみさま

□ 268-269 □
【あるひしょせめのいちにち】

やわらかいべっどでねむるしゃちょうを おこすところから ひしょのしごとははじまる
ほかのだれもみられない やすらかなねがおをながめる ちょっとしたとっけん
おはようございますしゃちょう きょうはごぜんちゅうにかいぎがございます
うん とまだすこしねぼけているしゃちょう ちょうしょくにこーひーついか

ちょうしょくをすませて くるまでかいしゃへ
なんこうしていたかいぎも しゃちょうのひとこえでけっちゃく
さすがはしゃちょう おつかれさまでした

おまえのまとめたしりょうが よくできていたおかげだ
しゃちょうにほめられる とんでもないときょうしゅく
でーたしゅうしゅうは ひしょのしごとです

つぎのかいごうへむかう くるまのなかで またしゃちょうはいねむり
さいきんなかなかやすみがとれずに おつかれのようす
いまがいちばんだいじなじきで やすむわけにはいかない それはわかるけど
こっそり すけじゅーるをちょうせいする ひしょせめ
あすのごごは かいぎもとりひきもなしで きゅうかです

そのぶん ひしょせめはよなかまでしごと
しゃちょうがねているへやのとなりで ぱそこんにむかう
しりょうさくせい でーたぶんせき やることはたくさん

いつのまにかうたたね めをさますと あたたかいこーひーともうふ
もしかしてこれはしゃちょうが となりのへやのぞくと しらんふり たぬきねいり
ほほえんで ありがとうございますとささやく みみにそっときす
みみだけあかくなるしゃちょう かわいいといったらきっとおこりますね

こーひーかたてに しごとにもどる そのぬくもりがなによりのほうしゅう
あなたがわたしのすべてで わたしはあなたのもの
あなたのためなら なにもかもをささげようと あらためてちかうひしょせめのよる 

□ 333-334 □
【ある きちくなせめの いちにち】

きちくなせめは かねもちだ
くるまもいえもおんなもおとこも なんでも てにはいる
だけど まいにちが たいくつでしかたない

けなげなうけが やってきた
ひどいことを いうと うつむいて なみだめ だけど そばからはなれない

うっとうしいな どっかいけよ そういうと すなおにどっかいく
だけど またきがつくと そばでだまっていろいろ せわをやく
だんだんそれが ふつうになってくる

なんでも いうことをきく うけ いやだとか だめだとか ぜったいいわない
おもしろくなって いろいろと ひどいことをしてみる
むりやり だいたりとか はずかしいかっこうを させたりとか
ないたり さけんだりするけど やっぱり いやとはいわない

じつは ただの いんらんなんじゃないのか
そうおもって ほかのやつをよんで めのまえで まわさせる
すがりつくような めで こちらをみる うけ

なんだよ どうせ だれだっていいんだろ そうじゃないなら いやだっていえよ
こころのなかで おもいながら うすらわらい

うけは かなしそうな めをして だまって されるがまま
くみしかれて ふくをやぶられる あらわになる しろいはだ
きのうまでは じぶんだけのものだった すなおで じゅうじゅんな からだ

とちゅうで がまんできなくなった
きたないてで さわるな どなって おとこたちおいはらう
じぶんでしくんでおいて なにをしてるんだおれは
こんらんしながらも いしきうしなった うけ だきあげて べっどにはこぶ
よごされた からだを きれいに きよめる

くるしそうな うけのねがお みつめて やるせない きぶんになる
つきはなしたいのか いうことをきかせたいのか
ほんとうは なにをのぞんでるのか じぶんでもわからない
ただ どうしようもなく せつない

きっと これからも ひどいことを してしまうけど そのじつ
ほかの だれにも わたしたくないと おもっている じぶんに
やっと きがついた ある きちくなせめの いちにち

□ 489-490 □
【あるわかさまにつかえるじゅうしゃのどくはく】

わかさま、あすはおそらくわかさまのさいごのたたかいになるでしょう。

ちちをころされ、ははをころされ、きょうだい、はてはさいしまでうばわれ、
くにをおわれたあなたにきょうまでついてまいりました。

がんらいきぐらいのたかいあなたさまのことです。
ひとまえでけっしてなみだせず、まえをみすえておられたのが
わたくしにはさみしくてしかたがありませんでした。

いつでしたか、みずからのもとにのこったわずかなへいりょくで、
わかさまみずからてきたいしょうのくびをとらんと、
てきじんにたんしんのりこもうとしたのをおとめしました。

おもえばあのころからわたくしは
あなたさまにあやしからぬおもいをいだいてしまったのです。

いぜんのわたくしならともにてきじんにのりこんだでしょう。
しかし、それはもうできませぬ。

わたくしののぞみは
なにもかもからときはなたれたあなたさまじしんでございます。

いつおわるともしれぬたたかいにおわりをつげ、
みぶんも、くにも、なにもかんけいのないじゆうなあなたをこのめでみたいのです。

そしてできることならば、わたくしがまだいきておりますれば、
そのよこにいさせてください。
なにももたぬ、ただのおとことして。

わかさま、せんないことをもうしました。
ですが、こうかいはいたしておりません。

さぁ、ひがのぼりました。
まいりましょうわかさま。

じゆうをかちとる、さいごのいくさです。

いきてかえれぬとさとった、じゅうしゃのさいごのこくはく。

□ 508-510 □
【ある おおきなおやしきのにわの ごごのふうけい】

おれのごしゅじんさまは へんくつ がんこ にこりともせず いつもむっつり
したしいともだちも こいびとも かぞくも だれもいない
いつもひとりこわいかお しょさいにこもり むずかしいほんばかりよんでいる

いちぞくのにんげんからは はなつまみものあつかい
しつじも めいども きむずかしいこのごしゅじんさまをおそれ
ひつよういじょうにくちをきかない やしきはくらく いつもおもいくうきがただよっていた

でもおれは そんなのちっともきにしない きょうもかってにやしきにあがりこみ
ひろいろうかをぱたぱたはしり ながいぐるぐるかいだんをのぼり
のっくもなしに ごしゅじんさまのしょさいのどあ ばたん とひらく
「ごしゅじんさま ごしゅじんさま! きれいな ばらが いっぱいさきましたよ!」

ごしゅじんさまは やまのようにつみかさなったしょるいから かおをあげる
なんにちもねていないような ひどいかおいろ すこしやつれたほほ
ごしゅじんさまはにこりともせず 「そうか」 と ひとこと ひくいこえでつぶやいた

いきをきらせながら ごしゅじんさまのもとにかけよると ごしゅじんさまのしゃつをぐいぐいひっぱる
「はやく にわにみにきてください ほんとにほんとにきれいな ばらなんですから!」

そしたらうしろから こわいかおのしつじがやってきて おれをどなりつけた
「またおまえか かってにやしきにはいるんじゃない きたない にわしめ!
ごしゅじんさまは おまえのようなこどもとあそんでいるひまはないんだ いますぐでていけ!」

くびねっこをつかまれ しょさいからひきずりだされそうになり おれはじたばた ていこうする
「きれいなはなをみてもらって なにがわるいんだよ!こんなくらいへやに いちにちじゅうこもってたら
からだをわるくしてしまうだろ! ごしゅじんさまのしんぱいをして なにがわるいんだよ!」
なまいきなこどもめ と しつじがおれにてをあげようとしたところで ごしゅじんさまがくちをひらいた
「よせ それにらんぼうするな まだこどもだ」「しかし ごしゅじんさま」
ごしゅじんさまはたちあがると しつじからかばうようにして おれのてをつかんでひきよせた

「すこしきゅうけいにする でんわがきたら あとでれんらくするとつたえてくれ」
とまどうしつじをおいて ごしゅじんさまはおれのてをひき しょさいをあとにした

やしきのそとにある ひろいにわをかんりするのが おれのしごと
のびたくさをかり はなをうえ みずをやり せっせとていれして きれいなはなをいっぱいさかせる
おれのじまんのにわ なかでも ばらのはながたくさんさいているばらえんが とてもきれいなのだ

おれはみなしご すとりーとちるどれん すりやぬすみをして たったひとりでいきてきた
たまたま しごとでまちにきていたごしゅじんさまのさいふをぬすもうとして ごしゅじんさまにみつかった

けいさつにつきだされるかとおもい ぶるぶるとふるえるおれを ごしゅじんさまはやしきへとつれかえり
あれほうだいの ざっそうでおおわれたひろいにわをゆびさして にこりともせずいった
「きょうからおまえは ここのにわしだ ここをきれいにするのが おまえのしごとだ」

あたたかいねどこに あたたかいぱんとすーぷ ごしゅじんさまはおれに ひかりをあたえてくれた
だからそのおれいをかえそうと おれはねるまもおしんで いっしょうけんめいはたらいた

ごしゅじんさまは ばらえんまでくると だまってさいているばらたちをながめた
ては まだ つないだまま ごしゅじんさまのては おおきくて あたたかかった

「ごしゅじんさま きれいでしょう? このぴんくのばらが きょうのあさにさいたやつですよ
ごしゅじんさまがくれた ばらのたねです きれいなはながさくよう いっしょうけんめいそだてました
あっちは ちゅーりっぷをうえました らいらっくや えにしだも はなをさかせます
はるにはにわいっぱいさきますよ そしたらちょうちょがやってきて にわがたのしくなりますよ!」
みぶりてぶり こうふんぎみにしゃべるおれを ごしゅじんさまはじっとみつめている
みんなのまえではきびしいかお だけど おれをみつめるめは いつも とてもやさしい

ごしゅじんさまは おれのりょうてをつつむようにすくいあげると まゆをしかめた
「てが あれているな わたしのあげたくりーむは ちゃんとぬっているのか」

まいにち ざっそうをむしり ばらのとげをおり つちをいじる だからおれのては ぼろぼろだ
おれはえへへとわらって ごしゅじんさまのてのうえで りょうのてを ひらいたり にぎったりしてみせた
「あれはもったいなくてつかってません だって ごしゅじんさまがおれにくれたものだから
いっしょうだいじにします おれのたからものです」

なぜかきゅうに しかいがくらくなる
いつのまにか ごしゅじんさまのひろいうでのなか ぎゅううとだきしめられていた
くるしくて いきもできないほど つよく つよく

「ごしゅじんさま?」
ごしゅじんさまはなにもいわず ただ だまったまま おれをだきしめている
どうしたんだろうとおもったけど おれもだまって ごしゅじんさまのうでのなかでじっとしていた

ごしゅじんさまのかたごし ふんわりとかぜにのって どこからか ぴんくいろのはなびらが はらはらまった
とてもきれいなはながさく あるおおきなおやしきのにわの おだやかな ごごのふうけい

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