あるかぞく の いちにち 1

home page
21 43 221 474-475 542-545

□ 21 □
【あるちちおやのいちにち】

きょうは ぎりの むすこに かんちょうされた

そのまま かいしゃに いかされて すごくどきどきした

そしたら ぶかに といれに よばれて 「はずかしい おとこだ」と いじめられた

いえに かえったら おいが まっていて ねくたいで めかくしされて

あんあん って いわされた

きもちよかった

□ 43 □
【ある おとうとの いちにち】

がっこうからかえると りびんぐから おふくろのどなりごえ
おふくろが あにきを しかってる
あにきは ふてくされて そっぽむいてる

どうも あにきが だれかを おもいっきり なぐりつけたらしい
「ぼうりょくを ふるうなんて さいていなのよ!」と おふくろ
「あいつが ぼくのことを やせっぽちのちびだなんていうから わるいんだ!」と あにき

おれは あにきのほうがただしいとおもった
でもそういったら おふくろ こわいかおで「へやにかえってなさい」

おれは あにきのへやまえで ずっとまってた
あにきが へやにかえってきたのは だいぶおそくなってから
どうやら おやじにまで おこられたみたいだった

おれは こえをかけようとしたんだけど あにきはこっちをみようともしないで
へやのなかに はいっていってしまった
まっかなめをしてて よくみたら うでもあしも あざとばんそうこうだらけだった

かぎのしまるおとがした どあごしにこえをかけても へんじがない
なんどなまえをよんでも どあをあけてくれない おれは あにきのみかたなのにな

へやのなかからきこえる ちいさななきごえ
おれはどうしていいかわからなくて かべにもたれてすわりこんでた
そのうち どあのむこうがしずかになった もう ねてしまったのかもしれない

かみさま どうかあにきのせを もうすこしのばしてあげてください
それがだめなら おれをはやく いちにんまえにしてください
あるおとうとの ながいながい いちにちのおわり

□ 221 □
【ある ふたごのあにをすきになってしまったおとうとのいちにち】

おれ ふたごのおとうとのほう。

あにきはおれよりすうふんさきにうまれた。

すぽーつも べんきょうも おれはかなわない

おんなじかおしてるのに どうしただろう?

だからあにきがきらいだった。
おれよりかってるのに みせびらかさない。
よゆうあって、むかついてた

きょう、あにきといっしょにちゃりでとうこう
あにきはていけつあつなのでむくち
おれもはなさない

はやざきのさくらみかけた。あにきがすきなはな。

あにきはふとかおをあげて わらった

そのあにきのかおが あたまからはなれなくなった。

れいせいにかんがえるとおんなじかおじゃねぇかと
びみょうなきぶんになるあるふたごのおとうとのいちにち

□ 474-475 □
【のろわれた いっかの すえっこの いちにち】

とうさんがさんばんめのにいさんをたべてる
とうさんがにばんめのにいさんをたべてる
とうさんがかあさんをたべてる

たべるのがおまえたちへのあいだといいながら
つめたくなった にいさんたちと かあさんを とうさんはたべてる

かあさんは とくにねんいりに たべられている
あいしているからだ と とうさんはなんどもいいながら たべている
じゅうたんは どすぐろく よごれて もとのいろがわからない
あっち こっちに にいさんやかあさんの からだが ごろり
どれも もう ぴくりとも うごかない へやは くさったにおいで いっぱい

つぎは いちばんうえのにいさんが たべられてしまうと おもって
そふぁのしたに かくれていた すえのおとうとは にいさんをかくした
いちばんすきなものを いちばんさいごに たべる とうさんのくせ
やっぱり とうさんは いちばんうえのにいさんが いちばんすきだったのだ
だから まいばん にいさんは くるしめられていたんだ
のしかかられて へんなくすりをかがされて ゆすぶられていた

そして ぼくがにいさんになつくと そのたびにつえでぶたれた
ぼくは とうさんにあいされてなかったから
でも だからぼくは にげのびた たべられなかった

にいさんを とうさんに わたしてはいけない
つめたくなった やさしい にいさんを ちいさなてで ひきずる
ずる ずる ずる あっちこっちに ぶつかりながら いえのそとへ たにのほうへ

にいさんを たべるのは ぼくだと じゅもんのように つぶやきながら
ちのように まっかな ゆうやけのおちていく たにへと すすむ
のろわれた いっかの すえっこの いちにちは まだまだ おわ

□ 542-545 □
【あるおとうとのあついなつのいちにち】

さくやから いなかのじっかに かえってるおれ
もうあさだが せっかくのおぼんやすみだ ひるまでねてよう

「おはよう よくねてたな おなかがすいたろう」
ようやくおきたところに こえをかけてきたのは
おれとは ひとまわりも としのちがう にいさん
ちはつながってないけど いまとなっては たったひとりの かぞく

「わたしは ちゅうしょくにするから いっしょにたべよう」
にいさんとたべるごはんは かれこれ にねんぶり
うまい りょうりのうでをあげたらしい

「さて ゆくとしようか」
めしをくったあと おはぎをつつんだふろしきに
せんこうと はなたばかかえて にいさんとふたり いえをでる

かんかんでりのなか じわじわとせみがないている
うるさいな きいてるだけであつい
もんくをたれるおれに にいさんはわらいかける
「いいてんきだ はかまいりびよりだな」

めざすは おれのあねがねむるはか
めのまえをあるくにいさんの つまだったおんながねむるはか

ちいさいころに りょうしんがしんで
おやがわりに おれをそだててくれたのは としのはなれたねえさんだった
そのねえさんがしんで もうさんねんになる

ねえさんがにいさんをつれてきたのは よねんまえ
かぞくがふえた よろこびもつかのま あねは かいもののかえりに
こうつうじこで あっけなく いってしまった

なんて ばかなはなしだ
おれはたったいちねんで ふたりきりにもどっちまった
それも にいさんと ふたりきり

ねえさんという つなぎがなくなって
おれたちは すこしずつ ぎくしゃくしていった
きをつかっていたし きをつかわれているのもわかった

にいさんのことすきだけど ちのつながってないおれは
にいさんからすれば ただのたにんだろうから・・・

いたたまれなくなって しじゅうくにちがすぎてから
おれはだまって いえをでた

それいらい ねえさんのいっしゅうきに かおをだしたきりで
きょねんの めいにちは こなかった
ぼんも しょうがつも さけてきた

そしたら ことしはにいさんから でんわがきた
「たまには てをあわせにおいで おねえさんが さびしがるだろう」
にいさんがいるんだ さびしいわけがない とはいえなかった
でんわから きこえるこえが さびしそうだった

「ちゃんと ついてきているかね」
ものおもいにふっけてたおれを にいさんがふりかえった
しんぱいしなくても ちゃんといるって
こどもじゃないんだから と おれは わらっていう

「きみらきょうだいは なんにもいわず いなくなるから しんようならない」

やさしいにいさんの めったにない おこってるようなこえ
もうまえに むきなおっていて かおはみえないけど
にいさんが ないているようなきがして むねがいたんだ

これからは ぼんも しょうがつも かえってこよう でんわしよう
あにのせなかをみつめながら けついする
あるぎりのおとうとの はかまいりは まだこれから

top  home page

【ある○○のいちにち】in 801 since 2004/5/15