あるこいびとたち の いちにち 1

home page
44,45 76 97 119 120 148-149 199-200 202 311-312 328-329 335,337,451-453 346 403-404 405-406 446-448

□ 44 □
【あるじぶんにじしんのないうけのいちにち】

あさおきた。きょうもゆううつ。せめにあいたいけどこわいなぁ。

とりあえずしごと。じぶんのせんもんぶんやでならぼくだってはたらける。

いきなりとらぶる。みんなおおいそがし。
ぼくもなにかしようとおもったらころんであたまをうった。ゆううつ。

みんなをしきしていたせめがしんぱいしてくれる。はずかしくてかおがあげられない。
「だいじょうぶです」とひっしにいってたら「きをつけて」といいのこしていってしまう。
せめはぼくとちがってたよりになって いつもかっこいい。

いろいろかんがえて ぼくはやっぱりせめにふさわしくないとおもった。
すごくつらいけど せめのためにおわかれしよう。

せめのへやにいった。「なにかあったのか」ときかれるのでへんじかしたいけどできない。
もごもごくちのなかでつぶやいてたら せめがきすしてくれた。
「わかれましょう」っていいづらい。
そうおもってたら いつのまにかはだかでべっどのなかだった。

すごく きもちよかったけど ここへきたもくてきはべつなのに。
それに せめはほんとうにぼくがすきなのかな。ぼくをきのどくにおもってくれてるだけなんじゃないのかな。
せめは ねていてもかっこよくて ぼくはこまった。

せめがおきそうだったので あわててねたふり。
せめはおきてるのに べっどからでない。どうやらぼくのかおをみてるらしい。
なんでだろ。つまらないかおなのに。
ぼくのほっぺにきすしてから せめはべっどからおりた。

きょうもせめにわかればなしをいいだせなかったじぶんにじしんがないうけのいちにち。

------------------------------------------------------------------

□ 45 □
【あるたよりになるせめのいちにち】

あさおきてうけをおもう きょうもうけにあえるとおもうとうれしい

とりあえずしごと てきぱきとしごとをこなしていく
すると いきなりうけがとらぶった ころんであたままでうってしまったようだ
ほんとにあぶなっかしいやつだ おもわず「へいきか」とこえをかける

うけはかおをまっかにしながら「だいじょうぶです」とこたえた
だいじょうぶなわけないだろう とどなりたくなったがここはがまん
できることならずっとついててやりたいがそうもいかない
「きをつけて」とだけいいのこしてそのばをさる

あいつ なんだかさいきん むずかしいかおしてかんがえこんでる
じぶんでかってになやんで かってにけつろんだすようなやつだから
とんでもないこといいだしそうでしんぱい

うけがへやにきた「なにかあったのか」とこえをかけてみるがふあんげなひょうじょうをするだけで
しゃべろうとしない そんなうけをげんきづけたくてきすをした
おれがおまえにしてやれるのは こんなことぐらいしかないのがもどかしい

いつのまにかふたりべっどでだきあっていた
でもきょうのうけは なんだかぼうっとしてることがおおかったようにおもう
おれになんでもそうだんしてほしいのに うけはじぶんのなかにとじこめてしまう

ふとめがさめてよこをみるとうけがよりそってねていた なんじかんみててもあきないとおもう
おれってこいつにしんそこほれてるんだよなぁ とくしょうする
うけのほっぺたにきすしてから おこさないようにそっとべっどをおりた

ほんとうは うけはおれのこときらいなんじゃないか とうたがっているが
いうにいえない たよりになるが こいにおくびょうになってる せめのいちにち

□ 76 □
【あるすなおじゃないせめのきゅうじつ】

よていより だいぶはやく めがさめた。

まだ となりで じゅくすいしているうけのほほに おはようの きす。

うけ きづかないでがーがー。
きもちよさそうにねてるうけに ちょっと むか。

「おきろ あほ」
はなをつまんだ。ちょっとくるしそう。
でもおきない。

くすぐってみる。
みじろぎするだけでおきない。

つまらない。おきろ。

れいぞうこから ぺっとぼとるを もってきた。
うけのほほに ぴと。

うけ はねおきて きょとんとしたかおで おれをみる。

「うけ あほづら」っていったら
「あほづらでわるかったな」ってすねた。
あほ てれかくしや。きづけや。

こんどは うけのくちびるに きす。
うけ まっかなかおで あたふた。
きっと もっと まっかなかおの おれ。

こんなあさも わるくないなとおもう すなおじゃないせめの きゅうじつ。

□ 97 □
【あるどうせいりーまんうけのいちにち】

よるおそく どうせいちゅうの りーまんせめがやっとかえってきた

おれのべっどにもぐりこんできたけど すぐにねむってしまった

なんだ えっちはしないのか ちょっとがっかり

あしたから しゅっちょうだっていってたから こんやはきたいしてたのに
おまえ さいきんいそがしくて ぜんぜんえっちしてくれないから
おれちょっとたまってきてるのに

でも ざんぎょうつづきで つかれているんだから しょうがないか
ぐーぐーと きもちよさそうに ねむるおまえのかおを すぐそばで
みられるだけでもしあわせだよな

だけど ねがおをみていると やっぱり むらむらしてきてしまった
やばい このままじゃねむれそうにない どうしよう

あしたから いっしゅうかんもあえないのはさびしいとおもう
りーまんうけの もんもんとしたうしみつどき

□ 119 □
【あるうけのばれんたいんでーのいちにち】

しごとがえりに でーとのやくそく
そういえばきょうはばれんたいんでーだ

やっぱおれから せめにちょこあげるべきかな
でぱちかのおかしや こんでるとおもったらそうでもない

すいてると ぎゃくにめだってはずかしい
けっきょくかえないうえに まちあわせばしょにちこくした

せめはおこりもせずに にこにこして
きれいにらっぴんぐされたちょこれーとを おれにくれた

きのうかったらすっげーこんでてせんそうだったー って
ばかかおまえ なにがんばってんだよ
かしめーかーに おどらされてるんじゃないよ
すなおじゃないおれ。ほんとはうれしい

せめのへやですーつをぬいだら ぽけっとに
ほけんのがいこういんがくれた ちっさいはーとちょこがはいってた

おれからもちょこあげる っていって くちうつし
はずかしいけど とくべつさーびすだ

あるうけのあまいあまいばれんたいんでーのいちにち

□ 120 □
【あるすなおじゃないうけのいちにち】

きょうせめとけんかした りゆうなんてくだらなすぎてわすれた
とにかくいちにちじゅうくちもきいてない

いつもはいっしょのべっどでねてるけどそれもなし
ひとりでねむるべっどはちょっとおおきくて すこしさみしい

なんかつめたいものがからだにあたって めがさめる
せめがべっどにもぐりこんできたらしい

すっかりひえきったせめのてあし りびんぐのそふぁーでねてたからだ
そんでもってそれはおれがべっどをせんりょうしていたからなのであって
「なんだおまえ ひゃっこい」

「こころがあったかいからな」
そういってせめがおれのほおをなでる なんかおれがわるものみたいなきがしてきた
あーくやしいなあ

「ひるまはわるかったな」
いかりはすっかりおさまっていたのであやまることにしたら さきをこされてしまった
あーなさけないなあ

「いいよべつに もうおこってないし」
ちょっとすねながらおれがこたえたら うれしそうにせめがわらった
「じゃあ なかなおりしようぜ」
それからやはりうれしそうに せめがおれをだきしめた

おれのあったかいのがはやくこいつにもうつるといいなあ
とおもいながらねむりにおちる あるすなおじゃないうけのゆうべ

□ 148-149 □
【あるろりぃたせめのいちにち】

きょうは まっちょうけと まちあわせ
ひさびさのでーと っつっても みっかぶり なんだけど
とにかく わくわく はやくこないかな まっちょうけ

きたー! とおもったら ちがう おとこふたりに からまれる
またかよ おれなんかひっかけて なにがたのしんだか

てきとうに あしらおうとしたら とおくにみつけた まっちょうけだ
きょうも いいきんにく とおくからでも ほれぼれしちゃう

たすけて みたいなかおしたら きづいた すごいかおで こっちにくるまっちょうけ

まっちょうけが おれをだきよせて ひとにらみ
おとこたち たいさん

ありがと ていったら ばか おまえは すぐおとこに めをつけられるんだから
きをつけろ とか なんかおこってる まっちょうけ

ごめんね でも せめたんが たすけてくれるから おれあんしん
だから いつも そばに いてほしいな とかいってみた

まっちょうけ あかくなった かおかくして おれのてをひっぱる

いわれなくても そばにいてやる すごくちっちゃなこえで
でも おれには しっかりきこえたから

こんなところが とってもかわいい おれのだいすきな まっちょうけ
もちろん べっどのうえでも すっごくかわいんだけど

ぎゅっと うけのてを にぎりかえす
おれのだいすきな おっきい て

そんな しあわせいっぱいな ろりぃたせめの あるいちにち

□ 199-200 □
【あるめがねかっぷるせめのいちにち】

めがねうけは しろくじちゅう めがねをかけていた
ごはんをたべるときも かいすいよくにいくときも 
おふろにはいるときも きすをするときも
はだみはなさず めがねをかけていた

ぼくがそれをしてきすると めがねうけは「それはせめもおなじだ」とわらった

そう ぼくも しろくじちゅうめがねをかけていた。
ごはんをたべるときも かいすいよくにいくときも
おふろにはいるときも きすするときも

ごはんのゆげで めがねがくもってまえがみえない ぼく
それをみて だいばくしょうする うけのかお・・・

じぶんのめがねも くもりはじめているのにきづいて
あわててめがねをふきはじめる はずかしそうな うけのかお・・・

ちゅうするとき たがいのめがねはしが かちりとあたると
「れんずにきずがつく」といって てれかくしにむくれる うけのかお

ころころかわる うけのかおをみるのが ぼくはだいすきだった
だから ぼくも めがねをしろくじちゅうはずしたくなかった



あれからすうねん 
うけとは ささいなことでけんかわかれ

おともだちにもどることになった


それからうけは めがねをしなくなった
こんたくとにかえたそうだ

もしかしたら ぼくのことを わすれたいのかもしれない

それでも きょうもうけは いろんなことに きっきいちゆう
わらったり おこったり かなしんだり くやしがったり

そんなうけのいろんなかおをみるために やっぱりめがねははずせない
にんげんかんさつにあけくれる あるめがねせめの それなりにしあわせないちにち

□ 202 □
【たびだちまえの あるうけのいちにち】

あしたはついにこのまちをはなれるひ
ながいようで みじかかったよねん
にもつはもうおくってある
このへやでねむるのも きょうがさいご

なにもないへやにふとんだけしいてねころぶ
このへやこんなにひろかったけか

ああそうか いつもあいつがいたんだっけとおもいだす
ひとりぐらしというよりほとんどふたりぐらし
まいにちのようにいりびたってた
あいつのせいでろくじょうのへやはきつきつ

なんでこんなときにあいつのことをおもいだしちゃったんだろう
なにもないへやであいつのことなんかおもいだしたくなかった

なんでこんなじきにあいつとけんかなんかしちゃったんだろう
もういっしょにいられないのに

やばい
なけてきたので うすいふとん ひっかぶってまるくなる
ねむってしまえばあしたになる
あしたになれば・・・もうあいつにあやまることもできなくなる

そうしてますますねむれなくなる あるうけのながいよる

□ 311-312 □
【あるひとりぐらしうけのいちにち】

さいきん いそがしかったおれ きょうこそ いえでまたーりするぞ

まずはふろだ ぱんつぬぐ ひとりぐらしだから えんりょはいらない

とつぜん いんたーほんがなってびっくり
またせめか いつもいつも あぽなしでくるな
ちょっとまて いまあけるから そのまえにぱんつぱんつ

げんかんあけて せめをむかえる

げんかんしめたら せめ ぱんつになる

ちょっとまて おれはふろにはいろうとしてただけだ
だきつくな きすするな おしつけるな いやだ

せめにだかれるのは ほんとはいやじゃないけど
おとこどうしというのに まだすこし ていこうをかんじるから
それに そういっておかないと せめはどんどんぼうそうするから
おれもどんどんぼうそうしそうだから

おいよせ やめろ やめろっていってんだろ
でも せめはやめない
いつもそうだ おれのつごうなんて おかまいなしで やりほうだい
なめてんのか おれはかこわれおんなか
なんかきゅうにあたまにきて せめのむなぐらつきとばした

いってぇーとかいって しばらくかたまるせめ
ひゅうひゅう こきゅうがくるしそう すこしちからいれすぎた わるい

とおもったら なぐりかえしてきやがった

かんいっぱつ かわしたおれ
くそったれが なぐりあいなら まけないんだからな
めいっぱいちからをこめてなぐりかえす

いつのまにか ぱんついっちょで せめと
かるいふっわーくで へやじゅういどう
おれがぼくさーで せめはからてか さきにまっとにしずむのはどっちだ

けーわんごっこしながら おとこどうしも まあいいかとおもう
このあとは べっどにしずむよていの あるうけのよいのくち

□ 328-329 □
【あるいじっぱりなせめといじっぱりなうけのいちにち】

せっかくのにちようなのに おきてもなにもするきがおきないふたり
おたがいのあぱーとは あるいてごふん すぐちかく
だけど くちをひらけばまたけんかになりそうで どちらも ふみだせない
くもひとつない そら ゆうがたのあかいそら

あと ななじかん

なにもしないいちにち ずっとあたまのなかはぐるぐるしたまま もうよなか
はらがへったから こんびにへ いこう じぶんにいいわけしながら
せめはそとにでる うけのいえのまえをとおる たちどまる
とおりすぎる

あと にじかん

まどからそれをみおろすうけ ためいきついて どあ あける
すこし はやあしで せめのあるいていったほうへ
まがりかど まがる

あと いちじかん よんじゅうごふん

どうろのさき せめが たってるのみて たちどまる うけ
おおきなてのひら むごんでさしだす せめ
だまってうながす そのてを おずおずととる
だまってあるきだすせめ ついてくるうけがないているのは みないふり

あと いちじかん さんじゅっぷん

わるかった も ごめん もおたがい いわない
にたものどうしの いじっぱり あやまるのは だいのにがて
だけど おたがいのてだけは すなおで よかった
ぎゅっとにぎった てが あたたかい

あと いちじかん じゅうごふん

たちどまる せめ かおをあげる うけ
こんびにまであとすこしの ちいさなこうえん ふるびた とけいとう
あと いちじかんちょっとで きょうがおわる

たんじょうび おめでとう と ちいさくつぶやいたせめ
なきはらしため ふせて ぎゅっとだきつくうけ
あと いちじかんで きょうを とりもどそう

ある いじっぱりなせめとうけの のこりわずかなきねんび

□ 335,337 □
【あるさらりーまんうけのいちにち】

あさ がくせいせめとけんかをした
あいつまた そつろんかかずにてつやでげーむ
きょうじゅうにくりあする!
そういわれ いらいらしながらかいしゃへむかう

まんいんでんしゃにゆられてしゅっきん
あめがふる それでもえいぎょう まちをあるく
さしだすめいし しりょうせつめい あいそわらい
かいしゃにもどって しょるいせいり あたまがいたい

よる10じ ようやくおしまい ふぅとひといき
そのしゅんかん じょうしのこえ
てわたされたのは おみあいしゃしん
おんなのひと きものすがたでわらってる

いいとしなんだから いいこだから いちどあってみなさい
ことわりきれずにもちかえる おもたいあしどり
ゆれるでんしゃ かばんのなか おもたいしゃしん
それよりなにか おもたいものが こころのおくに

いえにかえると がくせいせめは またげーむ
なさけなくて あふれだしそうな なにか
けいざいりょくと からだだけがほしいなら
ちがうだれかのところへいってくれ
しょうどうてきに がくせいせめをおいだした
どあのむこう どなるがくせいせめ
きみをやしなうきはないんだ つかれたんだ……
おもわずこぼす しずかになった どあのむこう

ぼくがもっとおとなだったら きみといっしょにいられたかも
このままだと いっしょにいるいみが わからなくなりそうで
であったころとは なにかがちがう
とおざかるあしおと ひとりこぼすためいき

びーるでもと おぼつかないあしどりで
あけた れいぞうこ ひえたびーると はとむぎちゃ
じぶんでかったことはない
いつも いつのまにか れいぞうこにはいっている

ふと しせんをおくった てれびのがめん
げーむのしゅじんこうは がくせいせめ
ひろいんは なぜか じぶんのなまえ
せーぶもせずに でんげんをきる

ぱそこんのかたわら しろいふうとう
「さいしゅうめんせつ」 あてなはがくせいせめ
さしだしにんは ゆうめいなげーむかいしゃ
めんせつにちじは あしたのひるまえ

かばんからとりだした おみあいしゃしん
のどをすぎていくビール しろいふうとう
ひとりきりのしずかなへや ごぜんにじ
なぜかなみだが ぽろぽろと こぼれていく
あるさらりーまんうけの いちにちがおわる

------------------------------------------------------------------

□ 451-453 □
【あるがくせいせめのいちにち】

さらりーまんうけにおいだされ いわれたことばをむねに
ひとりあるく しずかなよるのまち
あふれだすおもい こぼすためいき おもたいあしどり
もどろうか けれどいまあのひとを わらわせるすべはしらない

しかたなく ひさびさにかえる ふるいあぱーと
てのひらのけいたいでんわ ためらうゆびさき
こえをききたい けれどはなすことばはもっていない
ひをともすたばこ ゆらめくけむり まどのそと しろいつき

ねむれずにあさをむかえ たったいっちゃくしかないすーつ
こわれかけたじてんしゃで えきへむかう くもりぞら
しゅうしょくかつどう げーむがいしゃ むりやりわらう
おもうのは あのひとのことばかり

しゃちょうのひとこと きみはなにをつくりたい?
よういしておいたことば つまらないと きりすてられ
しゃちょうがいう きみがしょうがいかけてつくりたいものはなんだ?
ちんもくのあと おもわずくちから こぼれたことば

・・・・・・ぼくが つくりたいものは、
ふっと わらうしゃちょう それはおもっているより むずかしいことだ
ふかぶかといちれい へやをでる

かえりみち すーぱーでかいもの
むいしきに なんでもふたつかごにいれ
はっときがつく ふたりぶんかうひつようはないのだと
おそうざいをひとつ たなにもどす ためいき

とちゅうだったげーむを ふとおもいだす
しゅじんこうをかばって きずをおうひろいん
いまは かいふくまほうをとなえることもできないし
てきからまもることもできない くすりだってもっていない

けれど けれど ほんのすこしだけでも
ひろいんが げんきになるのなら
できることが あるとしたら
おもいきって かごにいれた びーるとはとむぎちゃ

もうすぐ さらりーまんうけが えきにつくじかん
すーぱーのふくろをこうじつに こわれかけたじてんしゃをこぐ
いまはまだ なんのちからもないけれど できることは
これだけわたしたくて なんどもれんしゅうすることば

しずかなよるのまち みつけたすーつすがた
それだけで むねがつまる あふれだすおもい
むこうも こちらにきがつき かおをあげる
ことばがでなくて ようやくひとこと
……のりませんか?
……いっしょにいたいんだ
いまはまだ なにももっていないけれど
てきからまもるちからも しあわせにするすべもしらないけれど
それでも あなたをうらぎらないことだけは ちかうから

あいたかった はなしたかった だきしめたかった
れんしゅうしたことばもわすれて つぶやいた
うつむくさらりーまんうけ かえってきたことばは ひとこと
……ばーか

こちらをみずに なにもいわずに じてんしゃのうしろ
あしをかける さらりーまんうけ
かたにおかれたてに なみだがでそうで
それいじょう なにもいえずに じてんしゃをこぐ

ふたりのみらいに ねがいをこめて じてんしゃをこぐ
ごじつとどいた さいようつうち ごみばこでみつけた おみあいしゃしん
あるがくせいせめの いちにちがおわる
そして ふたりのじかんは これからも つづいていく

・・・・・・ぼくがつくりたいものは たいせつなひとのえがおです
いまはまだ なにももっていないけれど
いつかかならず ちからをつけて
しょうがいをかけてまもります
いまはまだ みらいをやくそくすることしかできないけれど

□ 346 □
【あるみそじうけのいちにち】

「ただいま」 ねくたいゆるめながら くつをぬぐ
きょうは しょくばのこうはいのけっこんしきだった
ひきでものはあとであければいい とりあえずほうちして せめのまつりびんぐへ

「おかえり しきはどうだった」 とせめ
おないどしのおれたち ここでいっしょにくらしはじめて もう いちねんとすこし

「はなよめさん きれいだったなぁ しあわせそうで
あいつにはもったいないくらい きれいなひとだった」
「そうか」 とだけいって すこしわらって それからだんまりのせめ
なんだかいやなちんもく おれはこういうのが いくつになってもにがてなんだ

「なぁ」 せめがくちをひらく
なんだよ 「やっぱりおんながいいか」 とかいうなよ
そんなうじうじしたかいわ なんかいもくりかえして
こうしていっしょに すみはじめたんじゃないか

「おれは おまえとけっこんは できないが ずっとおまえと いっしょにいるぞ
じいさんになっても ずっとだ」 せめはまがおで ぽつり といった

「しらふでそんな はずかしいこというなよ おれたち いくつだ」
そうはいったが せめのあいじょうが うれしくてはずかしくて そしてすこしせつなくて
としがいもなく めのおくがじわりとあたたかくなった

せめはああいってくれたけど
なんかげつかまえに あめりかのどっかで どうせいどうしのけっこんが みとめられたように
にほんでもどうせいどうしで けっこんできるひがくるといいと
いつか もしそのときがきたら じいさんになっても ふたりでつえをついて
やくしょにこんいんとどけをとどけにいきたいと ただそうねがった
あるみそじうけのひるさがり

□ 403-404 □
【あるしあわせがほしかったうけのいちにち】

やさしいえがお ここちよいこえ あたたかいせなか 
それがぼくの いばしょだった

さいきんうわのそらのきみ ふたりでいても べっどにいても
ぼーっとして こえをかけるとあわててわらう

すきだよ かれはいう
でもきょうが ぼくたちがはじめてあったひ だということを
すっかりわすれている わすれてることにさえ きづいていない

しってるよ
かいしゃのどうりょう きれいなおんなのひと こくはくされたこと

しってるよ
よなかにでんわ とてもうれしそうなかおしてること

しってるよ
きみがぼくのことなんて もうみていないこと

でもぼくはすきなんだ きみのえがお きみのこえ きみのせなか
どんなことしてでも つなぎとめたい きみがいなきゃ だめなんだ
ぼくといっしょにいても しあわせになんてなれないこと わかっているけど
からだだけでもいい だからおねがい そばにいて
そのときでんわ とろうとするかれ

とらないで!さけぶぼく
かれはまよって でもとらなかった

またでんわ ながいよびだしおん
ひょっとしたら きんきゅうのようじかもしれない そういって かれはこんどはとった

すごくちかくにいるのに
かれがでんわにむかって はなしているこえが きこえない
でんわのむこうのおんなのひとは かれとつながったんだ ぼくはかれは とぎれてしまった

でんわをきって ぼくをふりむく
ともだちがじこをおこした すぐいかなきゃ いそいでふくをきるかれ
そのからだをつかむぼく

いかないで!ひっしでさけぶ
なきじゃくってすがる はなみずだってでていたかも
つかんだてさえ ふるえてる かれにぼくは どうみえているだろう
おとこなのに おとこにしゅうちゃくする ぶざまなほも

かれは とてもつらそうなかおをして いった

ごめん


やさしいえがお ここちよいこえ あたたかいせなか
それがぼくの いばしょだった

□ 405-406 □
【あるぷーたろーとししたうけのいちにち】

こうこうそつぎょうご しゅうしょくしたが
すぐかいしゃがつぶれてまたむしょく

かいしゃのじょうしだったせめのひもみたいになって
まいにちなにもせず せめのかえりをまつだけのせいかつ

じぶんはこれでいいんだろうか
ずっとずっとそればかりかんがえていた

あるひゆうきをだしてせめにそうだん

おれ、このまんまでいいのかな
ここにいていいのかな

なにいってんだ いまさら
きをつかわなくても
おれはおまえがいてくれればそれでいいよ

やさしくだきしめてくれるせめ

やんわりとちからづよいうでにつつまれて
むねのなかのふあんがとけていく
なみだがにじむ

そうやっていつも あなたはおれをあまやかす
おかえりなさい
いつものようにかえってきたせめにだきついて くちびるをねだる

どうした さみしかったのか?

やさしいこえ だいすきだった
やさしいうで だいすきだった

なんどもなんどもくちびるふれさす
やさしいくちびる こえ うで
ひろいせなかも
あったかいむねも なにもかも

あんたがだいすきだった

いちどむつみあってよいんにあがるいき
なきそうなかおのおれを
せめ ふしぎそうにのぞきこんでくる

いいからはやく もういっかい だいて

これで あなたにあまえるだけの じぶんはおしまい

あしたこのまちを このいえをでていく
あるとししたうけ けっしんのよふけ

□ 446-448 □
【ある いじっぱりになりきれない うけのいちにち】

あさ9じ めがさめる きょうはどようび しごとはやすみ
なにをしようかとぼんやりかんがえる

せめとせんしゅうけんかをした つまらないけんかだ
なんねんもつきあってきて けんかならなんどもしてきたのに
あのときはどうしてもゆるせなくて「わかれる!」って いきおいでいってしまった
けんかしたあと せめはなんかいもでんわをかけてきたけど むししてやった
そしたらもうかかってこなくなった
なんだよ、あきらめんのはやすぎねぇかとおもったけど ほおっておいた

いつもやすみのひはせめといっしょにいた
えいがをみたり びでおをみたり めしをくったり
ひとりじゃすることがなにもおもいつかないなんて…
あぁやだやだ
なんでおれこんなうじうじしてんだよ じぶんでわかれるっていったんじゃん

とりあえずへやのそうじせんたくをじかんをかけてしてみる
おわったらつかれた べっどのうえにごろり そのへんにあったざっしなんかよんでみる
いちにちってこんなにながかったっけ

いつのまにかねむってしまったみたいだ
きがついたらへやはまっくら もうよるだ
そういえばはらがへった あさおきてくっただけであとはなにもくってなかった
れいぞうこをみてみる でもくいもんはなにもない
しかたないのできがえて きんじょのこんびにへいくことにする

ざっしをたちよみ みずのぺっとぼとるをかごにいれる
ふだんあんまりのまないけどきょうはさけでものもうかな
かんびーるもひとついっしょにかごにいれた

べんとうをえらんでいたら ゆうせんからなつかしいきょくがながれてきた
つきあいはじめたころ せめがこのきょくがすきで よくいっしょにきいてたな

「このうたのかしみたいに ずっとずっといっしょにいられたらいいな」
なんて こっぱずかしいことをいったせめ
おれもそうおもうよなんていえなくて こころのなかでつぶやいたっけ

せめはいまごろなにしてるんだろ
あいつもいまごろいえでひとりで こんびにべんとうとかくってんのかな
いや べんとうくってるんならまだしも あいつはめんどくさがりだから
なにもくってないかも きっとそうだ そうにちがいない
あいつはおれがいないとなんにもしなくてできなくて…

かんがえだしたらとまらなくなった
ずっとずっとなんていってたくせに なんでいっしょにいないんだよ
…っておれが わかれるなんていったからか
そういえばなんであんなことがゆるせなかったのかな
ちっ なんだよしかたねぇな

べんとうをふたつてにとって かんびーるもかごのなかについかする

こんびにをでたらでんわしてやるか
あいつがでたらなにいうかわかってるから 「ばーか」っていってやるよ
そして「めしはくったか」ってきいてやる
たぶんせめのいえにつくまでに あたためてもらったべんとうはさめるけど
ひとりでくうよりきっとうまいはず

おれからも「ごめん」ってちゃんといえるかなと
ぽけっとのなかのけーたいをきにしながられじをまつ
いじっぱりになりきれないうけのいちにちはまだおわらない
あしたはにちよう しごとはやすみ
なかなおりするじかんはたっぷりある

top  home page

【ある○○のいちにち】in 801 since 2004/5/15