あるおとこ の いちにち 1

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□ 23 □
【ある かんぶやくざの いちにち】

ほんけの あつまりに かおをだす

わかがしらに あう おひさしぶりです

おまえ くにの おふくろさんに れんらくしてるか ときかれる

いえ おれのかぞくは わかがしらのいる このくみだけ ですから

わかがしら おこってるのか こまってるのか わからない へんなかお

このごろ わかがしら あんまりわらってくれない

らいげつの じょうのうきん もうちょっと ふやそうとおもう わかがしらに ほれてる あるかんぶやくざの いちにち

□ 42 □
【あるぐんじんさんのいちにち】

きょうは さくせんかいぎだ
どうきの さくらの あいつに ひさびさにあうぞ

よお げんきか
おれも しにそこねてるぞ

ちょっと きまずい ちんもく

「おまえ いまのせんきょうをわかってるのかと(ry」
うあーこいつ ぜんぜん かわんねえな ちょうまじめ ちょうぐんじん

しかも おれが さいぜんせんに はいぞくされてから それにくわえて ちょうしんぱいしょう

そんなに おこるな
おれがしぬときは きさまの なまえを よんでやるから
きさまが はずかしがるくらい でかいこえで あいしてるぞーて さけんでやるから
それで ゆるしてくれ

そんなこと おくびにも ださず さくせんかいぎしてる あるぐんじんさんのごご

□ 53 □
【あるころしやのいちにち】

ひるおきる きょうもたいようがまぶしい なんだかむしゃくしゃする

おれをひろってくれたぼすのところにいく
ぼすはおれをかわいがってくれる みよりのないおれには かみさまみたいなひとだ

きょうはしごとだ たーげっとはまちのきょうかいのしんぷ ぼすのじゃまをするわるいやつ

しごとにしっぱいした ころされるかとおもったが たーげっとはみのがしてくれた
へんなやつだ でもらっきー

ぼすにつえでなぐられた おくばがいっぽんおれた

ねぇぼす おれもういらないのかな ちぢこまってみあげたらぼすがまたなぐる

ぼすのへやからかえりみち おもいだしてなみだがこぼれた
ころしやがないてちゃ みっともない ぽけっとのわるさーにわらわれる

ぼす さいごにもういちどちゃんすくれた
あしたはしっぱいしませんように
またぼすがほめてくれるのをきたいしてねむる あるころしやのいちにち

□ 397 □
【ある へいしの いちにち】

となりまちで よそのくにの へいしたちが ざんさつされた
つぎは おれたちのばんか
みんな おもってる けれど くちにだすことといえば
このめしにも いいかげん あきてきたな とか
みてみろよ あのかめらまん なかなかの びじんじゃねぇか とか

ひるめしが おわれば じゅうのていれ
それから さくせんかいぎ
それまでに きみへの てがみを かかないと

へいしに しがんしたおれを どうかしてると なじった きみ
こころの やさしい おとこだった
いかないでくれ と さいごまで いわなかったのは
おれのせいかくを じゅうぶんすぎるくらいに しっているからだった
かれなりの ぷらいどだったことは さすがの じぶんでも わかっている

そこくは そろそろ ゆきが ちらつくころか
うっとうしいとしか おもっていなかったが
しゃくねつのくにで たたかうまいにち
きみとの おもいでも かさなり いまは じゅんぱくのゆきが こいしい

ちによごれた ぼくのてを きみは まだ にぎってくれるだろうか
ぼくのなきがらが きみのもとへ とどいたときは
そのときは どうか おねがいだ
さいごの きすを ぼくのひつぎに

あいするひとを おもいながら きょうも だれかの あいするひとを ころしてゆく
あるへいしの へいぼんな いちにち

□ 429-431 □
【あるしんまいへいしのにちじょう】

じぶんでえらんだ みちだろう
なんどもそう いいきかせた

でもだめだ つらいんだ
いたいんだ わりきれないよ
しかいが かすんでみえるのは だんまくのせいだけじゃない

きょうもほら ひびくひめい
てろだと? どこがだ! ぎゃくさつだ!!
やつら こころにすら ぶきをもたない

みんか けやぶって とどろく じゅうせい
はねるおとこ にげるおんな
また あいがひとつおわる

にげたおんな めのまえにして
ふるえる せんゆう  さけぶ じょうかん
ふと れいせいになる じぶん
たたかい たたかい のぞんだこと
「へいわ」のためだ しかたないよな?

じゅうをうばう おどろくせんゆう
だいじょうぶ ふるえてない   ・・・ふるえてないよ、だいじょうぶだろ?

ぱんっ 

ぼうぜんとみてた
きれいだな、なんて

あ、さっきのおとこ ちまみれで でてくる
ばかだな あんた
きれいな きんぱつ  ぎんのような みたこともないいろ
あんたのあかで だいなしだよ

おんなにちかづく でもたおれこむ
こどもは いきたえた  なみだがつたう ちまみれの ほほ
とりおさえられる もがきつづける
ひろがる あか ふるえる きん
おれのこと みあげる にくしみのいろ

ふかい ふかい どこまでもふかい
にくしみしかない あおいまなこ
あんたには きょうふなんてないんだろうか
そのあおに すいこまれたかった

「まわすか」 じょうかんのこえ
ゆれる ひとみ  それでもひるまない
いきようとしてる しにかけのくせに

さあ、おわかれだよ
とてもむりだ たえられないや
あんたが けがされていくだなんて
さいごは けっきょく しんじまうんだ

あんたが ここにいなければ
あんたが ここにいなければ
えがおが みたかった
きっと ひとなつっこそうな
きれいな、とてもきれいな・・・

いまはただ おれのねがいをかなえるよ
わがままかな  ・・・でも いいだろ?

じゅうこうを むける ゆびを かける
どうしてだろう なみだがとまらない
さっきはへいきだっただろ ふるえもとまらない
め だけの かいわに  おわりを つげなきゃ
おれの ねがいは かな う ん だ  か ら

ぱんっ


きょうも、きっとこれからもつづいていく ある しがんへい のにちじょう

□ 462-466 □
【あるひとにはいえないしごとをしているうけのいちにち】

きょうはたったひとりのかぞく いもうとのじゅうろくのたんじょうびだ

りょうしんがこうつうじこでしんだあと いもうとはおれのこころのささえだった
そんなあいつがおもいびょうきになったのはきょねん
「このままではつぎのたんじょうびをむかえられない」

いしゃにいわれたときはめのまえがくらくなった
しゅじゅつをすればたすかるといわれたがおれにはとうていはらえないきんがく
おれはぜつぼうするしかなかった
そんなときだ
よのなかにはみたこともないほどのかねをかせげるしごとがあるとしったのは

ひとことでいえばそのしごとはひとごろしだった
ひとびとがねしずまったよる くろいふくでじゅうをふところにしのばせでかける
わたされていためものじょうほうをたよりにひょうてきをさがしだしまちかまえ
いっぱつひきがねをひけばいい
さんかしたなかまのにんずうにもよるが ひとばんでひゃくまんころがりこむこともある

しょうえんのにおいがするうでではいもうとはだけないが しんでしまってもおなじこと
おれはほんとうにどうなってもよかった

おれはいろいろなひょうてきをおいかけた むがむちゅうでかせいだ
むちゅうになりすぎていて いつのまにかあいぼうとよべるおとこができていたことにも
きがつかなかった
「ああ」
あたりまえになっていたやりとり
あたりまえすぎていつからいっしょにいたのか
なぜいっしょにいたのかいまだにわからない

あいつはせがたかくてくろいこーとがにあっていた
ほめことばになるかどうかわからないが
いつもおなじたばこすって おれはけむたいおもいをしていた
「やめろ」といってもやめないからそのままにしていたつもりだけど
いまかんがえたらあのにおいがすきだったからやめろといわなかったのかもしれない

ぼーっとしたかおでなにをかんがえているかわからない なぜこんなしごとしてるのかも
ほんとうはきかないべきだったんだろうけどおれはきいてしまった
あいつはいつもとおなじかおでいった
「おれ すきだったおんなころされたんだ」

おまえは?ときかれて おれはあいつをきずつけたかもしれないとおもった
だからしょうじきにはなした いもうと、びょうき、しゅじゅつのこと
そしたらあいつひとこといった 「たいへんだな」って
ばかじゃねえの おまえもじゅうぶんたいへんだよ
そういったらわらわれた おれもわらった ふたりともこころはないていた

あとなんかいかのしごとでもうおわりにするよ あるひおれはあいつにいった
するとあいつはなんでもないようなくちょうでいった
「おめでとう おれはまだつづけるけど」

そのひとしごとちゅうずっとかんがえてた
おれどうしてあいつにしごとやめることいったんだろう
どうしてあいつをきずつけるようないいかたしたんだろう
どうしてやめたくないきもちがあるんだろう
それからきがついた
おれどうしてあいつのことかんがえてるんだろう
それはあんまりふかくかんがえこみすぎていままできがつかなかったことだった

「うしろ!」
そのこえにふりむくと
くろいすーつのおとこがけんじゅうをかまえてこっちをねらうのがみえた
ひょうてきのぼでぃーがーどだろうか
すろーもーしょんのようにひきがねをひくのがみえる
あたまがまっしろだ おれはここでしぬのかな

よるのうらろじにひびくじゅうせい
あいつがおれとおとこのあいだにわりこんでうったおとだった
ぐえ、とひめいをあげておとこがたおれる ろじにはもうてきはいない
だけどあちこちでおれたちをさがすくつおとやけはいがうごいている
みつかるのはじかんのもんだい

あいつはとつぜんいった
おまえはやくにげろ おれがあいつらやってくるから
とうぜんおれはびっくりしてあいつのかおをみた そうはくになっている
まさか、とおもってくらがりのなかあいつのあしもとをみるとちだまりができている

なにいってんだよ いっしょににげるぞ おまえこのままだとしんじまう
おれはそういってあいつにかたかそうとしてちかづいた

おれはしぬわけにいかない でもおまえをしなせるわけにもいかないんだよ
そういったらあいついままでみたこともないこわいかおしやがった
おまえかねがいったからこのしごとしてたんだろう
いもうとをたすけなきゃいけないんだろう よくおもいだせよ

だって、といったらだってじゃないよといわれた
おれはどうにもならないことをしようとしてるけど
おまえはこれからどうにでもできることしようとしてるからしなせられない

そういうあいだにもけはいはちかづいてくる もういっこくのゆうよもない
でもどうしてもあしがうごいてくれない おれのようすをさっしたらしい
あいつこともあろうに ふぁーすときすしたこともないおれのくちびるに
たばこのにおいのするくちびるおしつけてきやがった
あっけにとられるおれに「じゃあな」とひとこというとあいつはろじからとびだしていった
おれはむちゅうではんたいににげた じゅうげきのおとがきこえてきた

どうしたの?といもうとにきかれてきがついた
ああわるい ちょっとかんがえごとをしてたんだとこたえてやすめていたはしをうごかす
よほどふかくかんがえこんでいたらしい やけどしそうだったスープはほどよくさめていた

ささやかだがへいわでしあわせなじかんがすぎていく
けーきをたべ ふたりでてれびをみてわらいあって しゅうしんのじかんになった
おやすみなさい、といもうとはじぶんのへやにはいる
おれはそのどあにむかっててをふり ちいさくおやすみなさいといった

おれはじぶんのへやへはいってかぎをしっかりかけた
このかおだけはいもうとにはみせられないから

へやぎをぬいでくろーぜっとのおくからくろいふくをとりだしみにまとう
そしておなじくろのかばんをとりだし うらうちしてあるぬののおくからじゅうをとりだす
ごめんな おまえのあにきはひとごろしなんだ

そっといえをぬけだし よるのやみへとみをおどらせた
あいぼうのすがたをおいつづけて きょうもじゅうをかまえる
あるひとにはいえないしごとをしているうけのいちにち

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【ある○○のいちにち】in 801 since 2004/5/15