あるさらりーまん の いちにち 1.5

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9 150-151 699-701,718-720 808-810

□ 9 □
【あるおじさんのいちにち】

おれは おじさん
むかしからえをかくのがすきで
はれたきゅうじつは こうえんにでかける

きょうの もでるは おおきないけとあひる
べんちにすわって もくもくとえんぴつをうごかす

ふととおりかかった みおぼえのあるかお

「かちょう、こんなとこでなにしてるんですか」

ついこのあいだ いどうしてきたかかりちょう
おまえこそ なんでこんなところにいるんだ

「へえ、そんなごしゅみがあったんですね」

かかりちょう おれのてもとをのぞきこむ
やめろ へたなんだからはずかしい

ぶかには すこしだけいばっていたい おじさんの
どうようからはじまるひるさがり

□ 150-151 □
【ある いらだち さらりーまん の ごごろくじ】

わかい じょうしに ひややかなこえで 「たのみますよお」と いわれたこととか
かわいくもない おーえるに 「それってせくはらあ」と いわれたこととか
つきの こづかいが すくないこととか
むすめが いえに かえらないこととか
なにが いちばんの きっかけなのか わからなくなるくらい いらいらして
のみの さそいを ことわる かわりに
ひさびさに ぱちんこに いった

なんねんぶりだろう さんじゅうねんぶり?
じゅうろくのときに あくゆうと こっそり きたときいらいだな
たしか てんいんに きづかれず
「やっぱ おれらって おとなびてんだよ」と
わらって ささやきあったはいいが
おおまけに まけて それいらい こりた

あいているだいに こしかけて まじまじと きかいや まわりを しらべる
むかしとは ずいぶん かわったもんだな
つかいかたさえ わからない

しばらく だいを なでまわしていると
となりの わかい おとこが いった
「あ そのうえに かね いれんすよ」
ちゃぱつに ぐらさん(この いいかたも いいかげん ふるいか)
わらった かおは じょうしに にている
れいを いってから かねを いれ たばこを くわえて うちはじめた
さんぜんえんほど いれたところで おおあたりが きて たまが ではじめた

むすめくらいの てんいんが はこを とりかえ つみあげてくれる
だいじょうぶか おもいのに
いうと 「けっこう きたえてんですよ」と がっつぽーずを つくって わらった

いつしか となりの おとこは やめて どこかへ あるきさっていた
まあ いいかと おもい うちつづける
つきが きているようだから きょうは へいてんまで いよう

あらたに たばこを くわえると となりの おとこが かえってきて
そのてに もっていた ちょこを ぽん と こちらに なげて よこした

「おれ あまいもん だめなんで。 よければ おこさんに あげてください」
ありがとう
たばこを さしだすと むこうも れいを いって うけとる
らいたーの ひを ともしてやると おとこは かがんで たばこに うつし
それから ちいさく ささやいた

「それ とまったら やめた ほうが いいっすよ。なにごとも ひきぎわが かんじん」
おやじくさいな
つぶやくと おとこは けらけらと わらって いった
「ひでえな。おれ まだ じゅうろくなのに」

たばこも ぱちんこも まだ だめだ ほら さっさと うちに かえんな
しりを たたいて うながすと おとこは かたてを ふって わらった

いちまんえんほど じみに もうけて ちょこを みやげに うちへと かえる
いまは もう いらだっていない ある さらりーまんの ごごはちじ

□ 699-701 □
【あるしんじんさらりーまんのいちにち】

がくせいじだいから ひるめしはおくじょうで
こんびにべんとう りょくちゃ たずさえてさくさくと かいだんをのぼる
だれもいなけりゃ いいんだけどな
おくじょうは ひとりにかぎる

がたつくどあをあけると せんきゃくのせなか
すこしくたびれた こんいろのすーつ
なんだ さきこされた まあいいか いっぽふみだす

ふりむくせなか がっつり めがあった
おいおい かちょうかよ よりによって
「おう おまえ なんつったっけ」
たばこをはさんだゆびさきで こっちをさす みけんにしわ

みょうじだけつたえると 「あーそうだそうだ もうおぼえた」 と
まんぞくそうにたばこをふかす

「まあまあ とりあえずおまえ こっちゃこい」
てまねき にげるわけにはいかない どうも しつれいします
ふぇんすにもたれるかちょう ちかづくと あれ このひと
ちっせえ

おもいっきり みおろすかたち みあげてくるめ またまゆがよせられる
「んだ おめ でけーな なにじんだ」
にほんじんです こたえると 「うん みりゃわかるよ」 そりゃそうだ

しごとちゅう あんなに がしがしはたらいて どかどかあるいて
むずかしいかおばっかしてっから でかくみえんのか
それにしても ちっせえな

「しごと なれたか」 はあ まあ ぼちぼちす
「あれか すぽーつとか やってたか」 はあ けんどうを しょうしょう
「にしちゃあ おめえ しせいわりーな」 はあ すんません
「せすじ ほら しゃんとせえ おれみてえによ」 はあ こころがけます
「あー おまえとはなしてると くびがいてえ」 はあ すんません

ばしばしたたかれた せなかがじわじわと いたい
このひと なんつーか ふんいきがちがう もっときりきりしたたいぷかと おもってたけど

あしもとに ごみいりのこんびにぶくろ あきかん
「おれが どくせんしてたんだよ ここ」
あ すんません おじゃますか べんとうとぺっとぼとるを せなかにかくす
「いやぜんぜん もんだいねえよ おまえ なんか おもしれえしな」
おもしれえって どのへんがだよ わかんねえ かわったひとだ

「おう そろそろ いかねえとな」
けいたいはいざら とりだして すいがらいれて とじる
せっかちな せわしないてのうごき
なんかこのひと みかけるといつも いそいでんだよな

おつかれさまです なんとなく いうと
「なんで いまのたいみんぐで いうよ おまえ やっぱおもしれえわ」
かたをどつかれる いてえ

「んじゃ こんど のみいくぞ」
のみいくか じゃなくて けってい
はあ とか ええ とか いうまもなく こばしりでするりとよこを
たばことせいはつりょうとこーひー しゃかいじんのかおり

おっさんまるだし なんだけども なんかすこし いやかなり かわったひとだ
おもっていると
「おい」
こえがかかる

「あーと なまえ なんつったっけ もっぺんおしえて」
おぼえてねえじゃん このひと おもわずふきだす
はじめにいったように なまえをつたえると
「おう こんどこそ おぼえた」
そして

「おまえ わらうと かわいいな」
くちもとを にっとつりあげて がきくさいえがお
そういったたぐいの ほめことばは うまれてはじめて です
ばたんとどあがしまって おれはふぇんすにもたれた

たにんのいるおくじょうが あまりいやではないことに
ふとおどろきをかんじる あるしんじんさらりーまんのひるやすみ

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□ 718-720 □
【ある かちょうの いちにち】

ひるめしどきの おくじょう
べんとうをかっくらって たばこをふかす
いわば おれの おあしすだ

しかし ここしばらくは ちょいとじじょうがちがう
ことしのしんじん ずうたいのでけえやつ
あれ なまえ なんつったっけ
まあ とにかく かわったやつが おれのおあしす たいざいちゅう

めしをくう てもと のぞきこんでひとこと
おめえ ひるめし それっぽっちか すくねえな
いつも べんとう ひとつだけ それとぺっとぼとるの りょくちゃ

「そうすかね」 そうだよ はらへらねえのか
「いや  かちょうは ちょっと おおすぎかと」
とぎれとぎれに いわれて じぶんのてもと めをおとす
べんとうふたつと にぎりめしふたつ
こーひーいっぽんと ふぁいといっぱつ どりんくざい

ばかやろ おれは ばりばりはたらいてっからよ
こんくれえ くわねえと あれなんだよ
「はあ そんなもんすかね」 そんなもんだよ

きょうは いやに むしあつい
ねくたいゆるめて べんとう ふたつめ
じさんのはしで すぱげってぃー まきとり ひとくちめ
ぱく うまー

ふと しせんをかんじて となりをみあげる

んあ なにみてんだよ おめー くいづれえじゃねえか
「あ いや すんません なんか  すげえ うまそうにくうんだなと」
まじめなつらして なにいってんだ こいつ
やっぱり おもしれえな とんかつくいながら ぺちんと でこをはたく
「いて」

べんとう いっきにかっこんで どりんくざいの ふたをひねる
ぱき かわいたおと
「きくんすか そういうもん」
さーどうだかね まあ きもちのもんだいよ きもちの
びんをあおる たんさんが のどをやく

っぷはー ちきしょい
いきをはきだすと しかいのすみで やつがわらう

わるかったなあ おやじでよ
「あ すんません」
なんだ おめーよお あやまってばっかじゃねえか
どーんとかまえろ どーんと せすじのばせ ほら

すわっている しょうめんから かたつかんで しゃきっとさせる
おお きんにく かてえな ちくしょう

あんま えんりょすんのも あれだぞ なめられっぞ
いくときゃ がつんといけ がつんと
かたをばしばしたたいて じんせいのせんぱいぶる

「はい わかりました がんばります」
おう わかれば よろしい

ごみいりの ふくろ ひろいあげて
そんじゃ そろそろ しつれい
「あ どうも」
たちあがって おみおくり みょうなところ きちっとしてる

どあにてをかけ ひらこうとすると
「かちょう」
めずらしく はりあげた こえ
おうよ なんだ

「あごに ごはんつぶ ついてます」

さわってみれば くちのしたに ひとつぶ
なんじゃあ こりゃあ
とりあえず くちに ぱくんといれて

てめー そういうことは きづいたときに いいやがれー
「すんません いついやあいいのか わかんなかったもんで
でも あの えんりょすんなって いわれたんで」
だつりょく

おもしろいのとおりこして へんじんだな あいつ
かいだんを りずむよくおりながら ひとり
おもわず にやにや じょししゃいんに びびられる

いつのまにか ごぜんのつかれ すっきりとれていて
どりんくざいも きくもんだと おもっている
どんかんな かちょうの ひるさがり

□ 808-810 □

やばいあさがきた。さけをのんできおくとんじゃってるあさ。
おれはべっとのうえでみじろいで、そのとききづいた。
ここ、おれのへやじゃないじゃん。

ドアあけてはいってきたのは、おれのかのかちょう。
さんじゅうこうはんのいいおとこ。
じぶんはそふぁーでねてた、といってきまずそうにどあのとこでたちすくむ。

「あ、あの、きのうはおせわになったようで…」
 おれのことばをさえぎって、かれはいう。
「ごめんなさい。ほんとうにごめん」
とつぜんのしゃざいにとまどうおれ。
そんなかってをしたのはおれですから、かちょうはなにもあやまることんなんて。

ふときづく。かちょうのかおが、かいしゃでみるようなつめたいふんいきでないことに。
あさひにてらされてこどものようにむぼうびで、
ああ、こんなかちょうはじめてみた。おれはかんどうした。
ぽかんとみつめてると、
「おまえもしかして、おぼえてない?」
そのことばにさくやのきおくをたどってみた。

あれ、かちょう、あれ、
おれのちんぼくわえてませんでしたか?
おれのうえでせんじょうてきにおれをみずからにさそいこんで、
おれもそれがすごくきもちよくて、
せっきょくてきにこしをうちつけていませんでしたか?

うん、とこたえるかちょう。
「だから、ごめんなさい。ねこみをおそうなんて」
あっけにとられたかおで、かちょうをみつめるしかないおれ。

「うったえるのも、しゃないでうわさをふりまくのもきみのじゆうだ」
かちょうはちんつうなおももちでいう。
けれどおれはそれどころじゃなく、
あたまのなかのかちょうのびたいとたたかうのにひっしだった。
ぬれたおとも、あついいきづかいも、かさねたはだのねつも

ちょっとやそっとのことじゃわすれられない。


おれきめた。かちょうのいやらしいからだ、だれにもわたしたくない。

もうすっかりおとなのかおで、
おれのこたえをまっていたかちょうのそばにいき、きすをした。
「おれはこれから、どんなかたちでもいいから、かちょうのねがおをみられるたちばにいたいです」

ぼうぜんとするかちょう、けれどすぐになきそうなえがおにかわる。
おれはそれをうけとめながら、つぎこそはしらふのときにとこころにちかった。

そんなおそいうけとおそわれせめの きゅうじつのあさ

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【ある○○のいちにち】in 801 since 2004/5/15