あるはたらくひと の いちにち 1.5

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34-35 195-198 526-528 730  ■  みっかよりながいにっき / 553-555…

□ 34-35 □
【まじめな しょくにんせめの いちにち】

いも ぜんぶ かわ むいとけよ
へい
だんたいさん はいってるから いそいでな
へい

なにを いっても へい とそれだけこたえて もくもくと しごと
しょくにんせめは むだぐちを きかない
おもしろみの ねえ やつだ たまには さけにも つきあえ
ほかの しょくにんに こづかれても だまって あたま さげるだけ

じょうだんの ひとつもいえねえんじゃ おんなも よってこねえぞ
しつこく からむ せんぱいしょくにん
だまった ままの しょくにんせめ

むだぐち きいてねえで さっさと しごとしねえか
おやかたの いっかつ みんな あわてて しごとに もどる
しょくにんせめは やっぱり だまったまま てもと うごかす

おやかたが となりにたって ほうちょう つかいはじめる
しょくにんせめ めだけ おやかたのほうに むけて またもどす

いも むけたか
へい
よし

おめえは できるやつだ よけいなことは いわねえし しごとも はやい
ばかは ほっといて こつこつ がんばりな
いいすてて おやかたは せをむける
そのせなかを みつめる しょくにんせめ

うちの むすめむこになって あとをつぐのは てめえしかいねえ
きたいしてるぜ おい
せなかごしに のこされた ことばに ほんのすこしだけ かなしいかおをする
まじめで いちずな しょくにんせめの いちにち

□ 195-198 □
【あるばいくびんらいだーのいちにち】

しじされたひきとりさきは いつものでざいんがいしゃ
しふとのせいか よくここのにもつをはこんでる

ちわ とかおをだしたら いつものようにしゅらば
すいません じゅっぷん いやじゅうごふんまっててください
ぱーてーしょんのむこうから あわてたこえ
しょっちゅうこんなかんじだから おれもなれたもの
かいしゃにでんわいれて きつえんすぺーすでたいき

はいざらのそばにはせんきゃくがいた
どうも かるくえしゃくする ども えしゃくがかえってくる
ときどきたちばなしする かおみしりのしゃいん なまえはしらないけど

しばらく だまっていっぷく

そういえば したのばいく じまえですか ぶいてぃーあーる
いや しゃようしゃです こういうはなしするのは はじめてだ
おれとためくらいかな いつみてもてきぱきはたらいてる
せいけつかんあって まじめそうなかんじ

ばいくびんさん ふだん なにのってるんですか
しーびーよんひゃくえすえす ほんだしんじゃなんですよ
ぼくもほんだです えふてぃーあーる じっかにおいてきたけど
さわがしいしゃない しばらく くわえたばこでばいくだんぎ

そうだ これ しごとかんけいでまわってきたんですけど
ぽけっとからだしたちけっと しゅうまつのもーたーさいくるしょー
うちのれんちゅう ぼくいがいは だれもいかないんで よかったら
さっきから くせなのかな かおをみないで はやくちで

いや こういうのは まずくないすか
でも まじであまってるし せっかくなら すきなひとがいったほうが
どうぞ と ややごういんに てのなかにおしこまれる
わたされたちけっとは にまい ひづけはにちようび

あの にまいも いいんですか
まだありますんで どうぞ      かのじょとでも
おれ にがわらい かのじょかあ いたらいいんですけどね
しゃいんは あわてたみたいにこっちをむいた

むすこ つれてってやろうかな
そういったら
こっちむいたかおが いっしゅん まっしろになった

おれににたのかな ちびのくせに ばいくばかで
そう ですか しゃいんのちいさなこえ またうつむいてしまった
おれ なんかまずいこといったかな

あんまりばかなとこにても まずいっすよね
めんかいびのたびに せんのうするなって にょうぼにおこられるし
なんかあせって おれ いらんことまでくちにだす

めんかいび しゃいんは くちのなかでくりかえした

そっす すきなしごとしたくて かいしゃやめたら
にょうぼににげられて しんけんもとられちゃいました
おれ だめだめなんですよ なんていいながら どんどんあせってくる
なに おれ なんでいきなりこんなへびーなはなししてんの
こんなの きいてるほうだって こまるじゃん

すいません ばいくびんさん おまたせしました
おくのほうからきこえたこえ ちょっとすくわれたきぶんで
おれはでんぴょうをだしながら よばれたほうにむかった

えれべーたーのところで さっきのしゃいんとまたあった
さいふてにもってる こんびにでもいくのかな
なんか きまずいまま いっしょにのりこむ なかはふたりだけ

あの

どあがしまったあと どうじにだしたこえ
おさきに めでうながすと しゃいんはめをふせた

つかぬことおききしますけど おいくつなんですか

らいねん さんじゅうなんですよ これが
ほそっこくてちいさいからって よく がくせいにまちがえられます
まあ あたまのなかみも がくせいみたいなもんですけどね

つづけて おれのようけんをいってしまう そういえば おれいをいってない
ちけっと ほんとにうれしいです ありがとうございます
そちらも にちようび みにいかれるんですか
もし かいじょうであったら おれいに なんかおごらせてください

すぐにいっかいについた ぼたんをおしてしゃいんがおりるのをまつ
しゃいんはうごかない すこしふるえる ちいさなこえ ひとりごとみたいに

としした は だめですかね

ききかえすひまもなく しゃいんはおりていった
どんどんとおくなる せのたかいかげ
おもいだす さっきみあげた まっかなみみもと
ちょっとあっけにとられてから はっとにもつのことをおもいだす
しゅうまつがくるのが なんだかこわいような どきどきするような
きをひきしめて ばいくびんらいだー ほんじつさいごのしごと

□ 526-528 □
【ある わがままなてんいんの いちにち】

なんとなく やりたいしごとについて でもすぐあきて すぐやめて
そんなこと くりかえしてたら もうけっこういいとしで できるしごともへってきて
でも たべるためには はたらかなきゃだから
とりあえず ちかくのみせで はたらくことにした

でも やっぱり ここもだめ しごとたいへん でもきゅうりょうやすい
ちかいうちに やめてやる

よくじかんがいっしょになるせんぱい
いつもにこにこしていて ふまんなんて ひとつもなさそう
たいへんなしごとも すすんでやる えらいけど おれにはとてもまねできない

なんで このみせにつとめてるんですか
おひるやすみ いっしょにめしくいながら きく

なんでそんなこときくんだい って せんぱいが ぎゃくにききかえした

おれ いきおいよく いってしまった
だって こんなにしごと たいへんで でも ろくなかね もらえないし
やすみもめったにとれないし もうやめたい って
おれ いきおいあまって いってしまった

せんぱいは すこしおどろいたあと またわらって こういった
ほんとはね ぼくもやめたいんだ

まじっすか って うれしそうにいってしまった おれのくち ゆるすぎ
でもまたなんで いつもしごと がんばってるのに おれはまたきいた

ぼくねぇ ゆめがあるんだ

せんぱい おれよりいくつかとしうえ そろそろ「おじさん」ってよばれてもいいかも
でも そんなせんぱいにも ゆめ せんぱいのめは かがやいてる

おれ なんとなく やりたいしごとについて でもすぐあきて すぐやめて
そんなこと くりかえして なんのゆめももたないで やりたいことだけ やって
つきひだけ ながれて としだけとって

しょっくだった
せんぱいとおれとの あまりのちがいに
これほど しんしで まえむきなにんげんがいることに

そして いつもにこにこしているだけの せんぱいの かくれたやぼうに

せんぱいに すこし あこがれた

せんぱいは ゆめのないようはひみつだ といった
でも そのゆめのために いま ここではたらいているそうだ

おひるやすみも そろそろおわり さいごに きみもね と せんぱいがいった
ここではたらくにしろ やめるにしろ なにかしら ゆめをもったほうがいいよ って
いつもの やさしい そしてつよい えがおでいった

きょうも いっしょうけんめいはたらく せんぱいのせなかを
いつもとは すこしちがっためでみる ある わがままなてんいんの ごご

□ 730 □
【ある こんびにてんちょうの いちにち】

おれのちいさなこんびには だいがくのちかく
おきゃくのほとんど がくせいさん
らっしゃいませ こんにちはー

まいにちゆうがた やってくる はくいすがたのおとこ
いかにも けんきゅうしゃ まえがみなげえ
いつものように かごいっぱい かっぷめんと ちょこれーと
すじばったてが にせんえん さしだす

どんよりした くうきまとって
しょくせいかつ だいじょうぶかよ よけいなおせわかな

おもいたって てんないみわたす ほかにきゃくぜろ よっしゃ
れじのわきの おんせんたまご いっしょにふくろに いれちゃえい

「え あの それ」
「いーんすよ おとくいさんですし さーびすです」

ここいちねん ほとんどまいにち きてんだもんなあ
こんくらい もーまんたい  と おもっていると

みるみるあかくなる はくいおとこの かお
え うわ きにさわったかな やべえ

あせっていたら はくいおとこは ふくろつかんで
「…りがとう ございました」  もごもご こもるこえ

すたすた さっていく うしろすがた みおくりながら
はじめて こえ きいたなあと ぼんやりおもう
こんびにてんちょうの ゆうがた

□ 766-768 □
【ある やおやのにーちゃんの いちにち】

だいがく でたけど しゅうしょくさきはなくて
しかたがないから じっかのてつだい
かぎょうはやおや じーちゃんといぬといちにちみせばん
さんかげつもたつと しごとにもなれてきて
はんとしたったら かおなじみのおばちゃんもふえた

みせは えきまえしょうてんがいの はしっこ
ちょっといったさきは じゅうたくがいと
のみやとか ちょっといろっぽいみせとかが ならぶみちにわかれる
よなかまで きゃくあし たえないから
えいぎょうじかんは よるじゅういちじまで
おかげで くらぶあそびも とんとごぶさた

このごじせい やおやも やさいばっかじゃやっていけなくて
じーちゃんがつけたつけものとか あねきがしこむそうざいとか
そんなもんもならべてて わりとにんき
きゃくすじは ごぜんちゅうはおばあちゃんたち
ごごからゆうがたは おばちゃん
よるになるとのみやのおねえさんがた
まあ きほんてきに おんなのひとばっかり

だから わかいおとこのきゃくは けっこうめだつ

へいてんまぎわ えきのほうからきて ちいさいかいものしていく
めがねのりーまん たぶんおれよりちょっとうえ
たぶん このへんにすんでるんだろう
かいもののしかたも ひとりぐらしっぽい
しゅうでんちかくても ねくたいはきっちりしめて
さいふに れしーとたたんでいれてる しんけいしつ なのかな

かおみて まいど というと にっこり
やきゅうや てんきのはなし くらいはする
そのていどの じょうれんさん

なつのはじめ どうりょうらしいのと
いつもどおり えきのほうからならんであるいてきた
せがたかくて ちょっときついめもと こいいろのすーつ
なんとなく やりてのえいぎょう ってかんじ
かいしゃのかたですか と きいたら いつものえがお
おとこは じーちゃんのつけもののなかから はくさいづけをゆびさした

それからしばらく しゅうまつには つれだってあるいてきて
なかよさそうに なにか話しながら
かならず はくさいづけをかっていく
にけんさきの さかやによってから じゅうたくがいのほうへ

そんなきんようびが なんかいか つづいて
ほかのひも くればかならず はくさいづけ
かっていくようになった めがねのりーまん
でも ひがみじかくなったころから ちょっとつかれたかお
まいど のこえにも えがおがかえらないひが おおくなった

せんせんしゅうの きんようびは かいものにこなかった
せんしゅうは ひとりで とまとひとやま
つりせんを すーつのぽけっとにつっこむしぐさが ちょっとなげやりで

なんとなくきになって くるたび ちらちらようすみ してしまう
きょうはきんようび やっぱりひとり
きゅうりひとやまと そうざいのつくねをひとぱっく
よこがおがなんだかさみしそうで なんかはなしかけたくて
でも なにいっていいか わからなくて
つりせんわたしたとき ふと
のこりすくないつけもののさらが めにはいった

「もうしめるんで つけもの やすくしますよ どうすか」

つっかえぎみに でたことば
めがねのりーまん ちょっとびっくりがお
それから えがおになったけど めがねのおくのめは なんだかなきそう

「はくさいづけは もう いいや」

ひとりごとみたいな ほそいこえ
しなもの うけとってまたにっこり でもそれは
かなり むりやりなえがお
みおくるせなかが がいとうのよわいひかりのした せつなくて
またどうぞ とおおきなこえをかけたら ふりむいてえしゃく

じーちゃんにたのんで あしたからしばらく
つけもの だすばしょ すこしおくにしてもらおう とおもう
まだ じぶんのきもちがなんだかしらない やおやのにーちゃんの へいてんまえ

■ 553-555… ■ 

どくりつしています。
こちらへどうぞ。

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