□ 34-35 □
【まじめな しょくにんせめの いちにち】
いも ぜんぶ かわ むいとけよ
へい
だんたいさん はいってるから いそいでな
へい
↓
なにを いっても へい とそれだけこたえて もくもくと しごと
しょくにんせめは むだぐちを きかない
おもしろみの ねえ やつだ たまには さけにも つきあえ
ほかの しょくにんに こづかれても だまって あたま さげるだけ
↓
じょうだんの ひとつもいえねえんじゃ おんなも よってこねえぞ
しつこく からむ せんぱいしょくにん
だまった ままの しょくにんせめ
↓
むだぐち きいてねえで さっさと しごとしねえか
おやかたの いっかつ みんな あわてて しごとに もどる
しょくにんせめは やっぱり だまったまま てもと うごかす
↓
おやかたが となりにたって ほうちょう つかいはじめる
しょくにんせめ めだけ おやかたのほうに むけて またもどす
↓
いも むけたか
へい
よし
↓
おめえは できるやつだ よけいなことは いわねえし しごとも はやい
ばかは ほっといて こつこつ がんばりな
いいすてて おやかたは せをむける
そのせなかを みつめる しょくにんせめ
↓
うちの むすめむこになって あとをつぐのは てめえしかいねえ
きたいしてるぜ おい
せなかごしに のこされた ことばに ほんのすこしだけ かなしいかおをする
まじめで いちずな しょくにんせめの いちにち
□ 195-198 □
【あるばいくびんらいだーのいちにち】
しじされたひきとりさきは いつものでざいんがいしゃ
しふとのせいか よくここのにもつをはこんでる
↓
ちわ とかおをだしたら いつものようにしゅらば
すいません じゅっぷん いやじゅうごふんまっててください
ぱーてーしょんのむこうから あわてたこえ
しょっちゅうこんなかんじだから おれもなれたもの
かいしゃにでんわいれて きつえんすぺーすでたいき
↓
はいざらのそばにはせんきゃくがいた
どうも かるくえしゃくする ども えしゃくがかえってくる
ときどきたちばなしする かおみしりのしゃいん なまえはしらないけど
↓
しばらく だまっていっぷく
↓
そういえば したのばいく じまえですか ぶいてぃーあーる
いや しゃようしゃです こういうはなしするのは はじめてだ
おれとためくらいかな いつみてもてきぱきはたらいてる
せいけつかんあって まじめそうなかんじ
↓
ばいくびんさん ふだん なにのってるんですか
しーびーよんひゃくえすえす ほんだしんじゃなんですよ
ぼくもほんだです えふてぃーあーる じっかにおいてきたけど
さわがしいしゃない しばらく くわえたばこでばいくだんぎ
↓
そうだ これ しごとかんけいでまわってきたんですけど
ぽけっとからだしたちけっと しゅうまつのもーたーさいくるしょー
うちのれんちゅう ぼくいがいは だれもいかないんで よかったら
さっきから くせなのかな かおをみないで はやくちで
↓
いや こういうのは まずくないすか
でも まじであまってるし せっかくなら すきなひとがいったほうが
どうぞ と ややごういんに てのなかにおしこまれる
わたされたちけっとは にまい ひづけはにちようび
↓
あの にまいも いいんですか
まだありますんで どうぞ かのじょとでも
おれ にがわらい かのじょかあ いたらいいんですけどね
しゃいんは あわてたみたいにこっちをむいた
↓
むすこ つれてってやろうかな
そういったら
こっちむいたかおが いっしゅん まっしろになった
↓
おれににたのかな ちびのくせに ばいくばかで
そう ですか しゃいんのちいさなこえ またうつむいてしまった
おれ なんかまずいこといったかな
↓
あんまりばかなとこにても まずいっすよね
めんかいびのたびに せんのうするなって にょうぼにおこられるし
なんかあせって おれ いらんことまでくちにだす
↓
めんかいび しゃいんは くちのなかでくりかえした
↓
そっす すきなしごとしたくて かいしゃやめたら
にょうぼににげられて しんけんもとられちゃいました
おれ だめだめなんですよ なんていいながら どんどんあせってくる
なに おれ なんでいきなりこんなへびーなはなししてんの
こんなの きいてるほうだって こまるじゃん
↓
すいません ばいくびんさん おまたせしました
おくのほうからきこえたこえ ちょっとすくわれたきぶんで
おれはでんぴょうをだしながら よばれたほうにむかった
↓
えれべーたーのところで さっきのしゃいんとまたあった
さいふてにもってる こんびにでもいくのかな
なんか きまずいまま いっしょにのりこむ なかはふたりだけ
↓
あの
↓
どあがしまったあと どうじにだしたこえ
おさきに めでうながすと しゃいんはめをふせた
↓
つかぬことおききしますけど おいくつなんですか
↓
らいねん さんじゅうなんですよ これが
ほそっこくてちいさいからって よく がくせいにまちがえられます
まあ あたまのなかみも がくせいみたいなもんですけどね
↓
つづけて おれのようけんをいってしまう そういえば おれいをいってない
ちけっと ほんとにうれしいです ありがとうございます
そちらも にちようび みにいかれるんですか
もし かいじょうであったら おれいに なんかおごらせてください
↓
すぐにいっかいについた ぼたんをおしてしゃいんがおりるのをまつ
しゃいんはうごかない すこしふるえる ちいさなこえ ひとりごとみたいに
↓
としした は だめですかね
ききかえすひまもなく しゃいんはおりていった
どんどんとおくなる せのたかいかげ
おもいだす さっきみあげた まっかなみみもと
ちょっとあっけにとられてから はっとにもつのことをおもいだす
しゅうまつがくるのが なんだかこわいような どきどきするような
きをひきしめて ばいくびんらいだー ほんじつさいごのしごと
□ 526-528 □
【ある わがままなてんいんの いちにち】
なんとなく やりたいしごとについて でもすぐあきて すぐやめて
そんなこと くりかえしてたら もうけっこういいとしで できるしごともへってきて
でも たべるためには はたらかなきゃだから
とりあえず ちかくのみせで はたらくことにした
↓
でも やっぱり ここもだめ しごとたいへん でもきゅうりょうやすい
ちかいうちに やめてやる
↓
よくじかんがいっしょになるせんぱい
いつもにこにこしていて ふまんなんて ひとつもなさそう
たいへんなしごとも すすんでやる えらいけど おれにはとてもまねできない
↓
なんで このみせにつとめてるんですか
おひるやすみ いっしょにめしくいながら きく
↓
なんでそんなこときくんだい って せんぱいが ぎゃくにききかえした
↓
おれ いきおいよく いってしまった
だって こんなにしごと たいへんで でも ろくなかね もらえないし
やすみもめったにとれないし もうやめたい って
おれ いきおいあまって いってしまった
↓
せんぱいは すこしおどろいたあと またわらって こういった
ほんとはね ぼくもやめたいんだ
↓
まじっすか って うれしそうにいってしまった おれのくち ゆるすぎ
でもまたなんで いつもしごと がんばってるのに おれはまたきいた
↓
ぼくねぇ ゆめがあるんだ
↓
せんぱい おれよりいくつかとしうえ そろそろ「おじさん」ってよばれてもいいかも
でも そんなせんぱいにも ゆめ せんぱいのめは かがやいてる
↓
おれ なんとなく やりたいしごとについて でもすぐあきて すぐやめて
そんなこと くりかえして なんのゆめももたないで やりたいことだけ やって
つきひだけ ながれて としだけとって
↓
しょっくだった
せんぱいとおれとの あまりのちがいに
これほど しんしで まえむきなにんげんがいることに
↓
そして いつもにこにこしているだけの せんぱいの かくれたやぼうに
↓
せんぱいに すこし あこがれた
↓
せんぱいは ゆめのないようはひみつだ といった
でも そのゆめのために いま ここではたらいているそうだ
↓
おひるやすみも そろそろおわり さいごに きみもね と せんぱいがいった
ここではたらくにしろ やめるにしろ なにかしら ゆめをもったほうがいいよ って
いつもの やさしい そしてつよい えがおでいった
↓
きょうも いっしょうけんめいはたらく せんぱいのせなかを
いつもとは すこしちがっためでみる ある わがままなてんいんの ごご
□ 730 □
【ある こんびにてんちょうの いちにち】
おれのちいさなこんびには だいがくのちかく
おきゃくのほとんど がくせいさん
らっしゃいませ こんにちはー
↓
まいにちゆうがた やってくる はくいすがたのおとこ
いかにも けんきゅうしゃ まえがみなげえ
いつものように かごいっぱい かっぷめんと ちょこれーと
すじばったてが にせんえん さしだす
↓
どんよりした くうきまとって
しょくせいかつ だいじょうぶかよ よけいなおせわかな
↓
おもいたって てんないみわたす ほかにきゃくぜろ よっしゃ
れじのわきの おんせんたまご いっしょにふくろに いれちゃえい
↓
「え あの それ」
「いーんすよ おとくいさんですし さーびすです」
↓
ここいちねん ほとんどまいにち きてんだもんなあ
こんくらい もーまんたい と おもっていると
↓
みるみるあかくなる はくいおとこの かお
え うわ きにさわったかな やべえ
↓
あせっていたら はくいおとこは ふくろつかんで
「…りがとう ございました」 もごもご こもるこえ
↓
すたすた さっていく うしろすがた みおくりながら
はじめて こえ きいたなあと ぼんやりおもう
こんびにてんちょうの ゆうがた
□ 766-768 □
【ある やおやのにーちゃんの いちにち】
だいがく でたけど しゅうしょくさきはなくて
しかたがないから じっかのてつだい
かぎょうはやおや じーちゃんといぬといちにちみせばん
さんかげつもたつと しごとにもなれてきて
はんとしたったら かおなじみのおばちゃんもふえた
↓
みせは えきまえしょうてんがいの はしっこ
ちょっといったさきは じゅうたくがいと
のみやとか ちょっといろっぽいみせとかが ならぶみちにわかれる
よなかまで きゃくあし たえないから
えいぎょうじかんは よるじゅういちじまで
おかげで くらぶあそびも とんとごぶさた
↓
このごじせい やおやも やさいばっかじゃやっていけなくて
じーちゃんがつけたつけものとか あねきがしこむそうざいとか
そんなもんもならべてて わりとにんき
きゃくすじは ごぜんちゅうはおばあちゃんたち
ごごからゆうがたは おばちゃん
よるになるとのみやのおねえさんがた
まあ きほんてきに おんなのひとばっかり
↓
だから わかいおとこのきゃくは けっこうめだつ
↓
へいてんまぎわ えきのほうからきて ちいさいかいものしていく
めがねのりーまん たぶんおれよりちょっとうえ
たぶん このへんにすんでるんだろう
かいもののしかたも ひとりぐらしっぽい
しゅうでんちかくても ねくたいはきっちりしめて
さいふに れしーとたたんでいれてる しんけいしつ なのかな
↓
かおみて まいど というと にっこり
やきゅうや てんきのはなし くらいはする
そのていどの じょうれんさん
↓
なつのはじめ どうりょうらしいのと
いつもどおり えきのほうからならんであるいてきた
せがたかくて ちょっときついめもと こいいろのすーつ
なんとなく やりてのえいぎょう ってかんじ
かいしゃのかたですか と きいたら いつものえがお
おとこは じーちゃんのつけもののなかから はくさいづけをゆびさした
↓
それからしばらく しゅうまつには つれだってあるいてきて
なかよさそうに なにか話しながら
かならず はくさいづけをかっていく
にけんさきの さかやによってから じゅうたくがいのほうへ
↓
そんなきんようびが なんかいか つづいて
ほかのひも くればかならず はくさいづけ
かっていくようになった めがねのりーまん
でも ひがみじかくなったころから ちょっとつかれたかお
まいど のこえにも えがおがかえらないひが おおくなった
↓
せんせんしゅうの きんようびは かいものにこなかった
せんしゅうは ひとりで とまとひとやま
つりせんを すーつのぽけっとにつっこむしぐさが ちょっとなげやりで
↓
なんとなくきになって くるたび ちらちらようすみ してしまう
きょうはきんようび やっぱりひとり
きゅうりひとやまと そうざいのつくねをひとぱっく
よこがおがなんだかさみしそうで なんかはなしかけたくて
でも なにいっていいか わからなくて
つりせんわたしたとき ふと
のこりすくないつけもののさらが めにはいった
↓
「もうしめるんで つけもの やすくしますよ どうすか」
↓
つっかえぎみに でたことば
めがねのりーまん ちょっとびっくりがお
それから えがおになったけど めがねのおくのめは なんだかなきそう
↓
「はくさいづけは もう いいや」
↓
ひとりごとみたいな ほそいこえ
しなもの うけとってまたにっこり でもそれは
かなり むりやりなえがお
みおくるせなかが がいとうのよわいひかりのした せつなくて
またどうぞ とおおきなこえをかけたら ふりむいてえしゃく
↓
じーちゃんにたのんで あしたからしばらく
つけもの だすばしょ すこしおくにしてもらおう とおもう
まだ じぶんのきもちがなんだかしらない やおやのにーちゃんの へいてんまえ
■ 553-555… ■
どくりつしています。
こちらへどうぞ。
↓
ある でぱーとの2ねんめあるばいと の いちにち
【ある○○のいちにち】in 801 since 2004/5/15