□ 49-50 □
【ある せんぱいばすうんてんしゅの いちにち】
きょうはあめだ あぶないからいつもいじょうにあんぜんうんてん
じょうきゃくはほとんどがくせい いつもとおんなじ
ちがうのは みんながかさをもってるぐらい
↓
まがります ごちゅういください
あなうんすして おおきくさせつしたら えいぎょうしょがみえてきた
ここでうんてんしゅこうたい おれはきゅうけいになる
うんてんしゅがこうたいになります しょうしょうおまちください
↓
うすい きいろいいろのかさがみえた
こうはいがいつもさしているかさだ
なんだ あいつとこうたいなのか
ぶれーきふんで ばすをとめる
どあをあけると こうはいがかけよってきた
↓
おはようございます せんぱい
にこにこしながら かさをおれにさしだす
おはよ
そのかさをもって おれはばすをおりる
すこし こうはいのかみ ぬれちまった
↓
ねくたい まがってんぞ かさをもたないほうのてで なおしてやる
あ すいません すこしてれながら こうはいがわらった
こいつはいつもいつも いいえがおでわらう
つかれてるのに こいつのかおみてると げんきがでそうだ
↓
じゃ いってきます ぺこり とあたまをさげて
うんてんせきにすわるこうはい
あめふってんだから きをつけんだぞ
はい
こんどのやすみ さけぐらいつきあえよ
はい
いってらっしゃい
いってきます
ふたりともかるくてをあげて あいさつ
ぷしゅーっておとをたてて どあがしまった
↓
つぎにふたりのやすみがかさなるのはいつだろう
なんておもいながら
でていくばすをみえなくなるまでずっとみつめる
あるせんぱいばすうんてんしゅのいちにち
□ 342-345 □
【ひびをぐうたらすごす だいがくよねんの いちにち】
きょうはじゅぎょう さんげんでおわり
とっととかえろうとおもって そとにでたらしぬほどあつい
いっきにかえるきがなくなった もうすこしすずしくなるまでまってよう
もんにいくあしをとめて はんたいのほうこうにあるく
↓
ぶしつとうのいちばんおくが うちのぶしつ
「ちきゅうかんきょうもんだいけんきゅうかい」なんてものものしいなまえは たてまえで
いわゆる「ひまじんよりどころ ぐうたらさーくる」ってやつだ
かつどうび とくになし かつどうないよう こじんにまかせる
こもんはゆうれいぶいんならぬ ゆうれいこもん
↓
これでもまいとしなんにんかは しんにゅうぶいんがはいるんだから おかしなはなしだ
とはいえ おれもそのひとりだけれど
やるきはないけどちいはあるこもんのおかげで ぶしつは くーらーつき れいぞうこつき
こないだがくしょくでかったぷりん そういえば いれておいたまんまだな
おもいだして あしどりがかるくなる
はなうたをうたいながら どあをあけると そこにはもう せんきゃくがいた
↓
「あれ せんぱい こんにちは」
うさんくさくらいさわやかなえがおをむけられて おもわず「げ」とくちからでた
「げって なんですか ひどいな」
もんくをいいながらも めちゃくちゃさわやかなえがお
さすが あいしょう「さわやかさわだー」だなあ
ついついはくしゅしそうになっていたら やつのみぎてにおれのぷりんはっけん
↓
「おい さわだ」
「はい」
「それ おれのぷりん」
「えっ」
みぎてとおれのかおをみくらべて さわだはえがおのまましばらくちんもくした
↓
すうびょうご きらりとしろいはをみせて またさわやかなえがお(しかもういんくつき)
「ははっ すみません なまえかいてなかったから」
「いやかかねえよふつう」
「うちはかくんですよ おとこきょうだいおおいから かいておかないとすぐくわれて」
「おまえんちのじじょうなんてしらねぇっての いいからかえせ にひゃくえん」
「はい」
↓
てをさしだしたら おもいがけずそのてをにぎりかえされた
「いや ちがうだろ かねだってかね そのてのじょうだんはいらねえって」
「わかってます だからおかえしにおごります これから」
↓
ね とかいってまた さわやかなえがお
いっしゅん そうだねっ とかつられてわらいそうになってしまった
「いやいやいや じゃなくって いいからかねよこせ」
「すたばのきゃらめるもかふらぺちーの おごりますよ」
「……いやいやいや いいって」
「すこーんもつけますよ」
「よし いく」
あっさりかんらくしたおれに さわださわやかえがお
↓
「せんぱいあまいものすきですよねほんと このあいだのこんぱでも つまみ ぱふぇだったし」
「そうそう おれのつまみっておもにとうぶん しおのかわりにさとうなの
つうかおまえ よくしってんなあ」
「はは そりゃもうおれ あのときせんぱいしかみてませんでしたから」
そんなことをいわれて はたと まだてをつかまれていることにきづく
「あちい」とてをふると ざんねんそうなくしょうで てをはなしてきた
ん?
↓
びみょうなくうきにくびをひねって 「あのな」ときりだした
「おまえなんなの つうかどうした?」
さわだはいちどまがおになってから まためちゃくちゃにさわやかに おとこまえにわらってみせた
↓
「さいしょのこたえ おれ げいなんです」
「もうひとつのこたえ おれ せんぱいがすきなんです」
↓
ふぁんたすてぃっくなへんとうに おもわずかたまる
そうしたらちょくごにまた さわやかさわだー
「でもせんぱいがのーまるなのはものすごくよくわかってますから
のんけのひとすきになったのはおれのかってで ひとりでかた つけますから」
しんぱいないです ときづかわれて「そうですか」と あいまいにかえす
ぼりぼりとひたいかきながらなにかいわないとなあ とぼんやりかんがえる
なんかねえかな なんかきくこと なかったっけ
うんうんうなってから ふと あるぎもんをおもいついた
↓
「なあさわだ いっこきいていいか?」
「はい なんですか」
「おまえさ こんぱでよくおれのねらったこ よこからかっさらってたよな」
「ああ はい」
「あれってのはじゃあ どういういみなわけよ」
おもいだしてまたむかっぱらがたってきた そう こいつだからきらいなんだった
おれとこのみがにてるもんだとてっきりおもってたのに
にらみつけると にこしたのこうはいは ええと とつぶやいて めずらしくめをそらした
↓
「こたえとしてはふたつありまして」
「じゅんじょだてて わかりやすくよろしく」
「ええとですね ひとつめが いわゆる せんぱいにたいするいやがらせでして」
「てめえ」
「ふたつめがですね」
くちごもって さわだがきまりわるそうにわらった いつものようなわらいかたでなく
↓
「せんぱいへの しっとです」
てれくさそうにわらって それきりうつむいてしまった
↓
「……ばかがここに……」
おもわずつぶやいてから かたをおとしてしまったいろおとこの せなかをたたいた
↓
「とりあえず まあ なんていうか …おれはなんもしなくていいわけな?」
「ああ はい それはもう」
「じゃあまあ いいわ はい ありがとうございます」
「あ いえこちらこそ」
おかしなかいわをかわしてから かるくしせんもかわす
↓
「そうか…さわやかさわだーは ほもだったんかー」
「そうですねえ」
「ひとごとかよてめえ ま いいや」
いってしまってすっきりしたのか またさわやかにわらっているこうはいにあきれて そとをみる
ちょうどよく いやになるくらいてりつけていたたいようがかげっていた
よし いまがちゃんすだ おもいついて たちあがる
↓
「いくぞ さわだ」
「はい?」
つられてたちあがるさわだに からになったぷりんのざんがいをゆびさす
「おごってくれんだろ いわれたことはわすれねえぞ」
「はい それはいいんですけど」
「なんだよ」
「せんぱい なんかこうもっとていこうっていうか きょひっていうか するかと」
「だっておれ なにもしなくていいっていわれたもん」
↓
けろっとこたえてとっととあるきだす うしろからあわててついてくるおと
はやあしであるきながら てのあせをさりげなくけつでふいた
おちついているようにみせかけても じつはそれはこんらんしているだけで
それでもあまいもののゆうわくにかてない びみょうにゆうじゅうふだん だいがくせいの いちにち
じー じー じー みーーーーーん
じー じー じー じーーーーーー
↓
ねばっこいせみのこえが よけいにあつさをかんじさせる
ひらやのにわつき12じょう むきはなんせい ひあたりりょうこう
まじこれさいこうぶっけん がしかし かなしいかな くーらーはない
びんぼうがくせいにぜいたくはきんもつだけど なつはしょうじき きつい
↓
たいようのおんけいを まっしょうめんにうけとめるじょうたいで
ふとんにころがって うんうんうなってる なつかぜのおれ
めしつくるきも かいにいくきも おきなくて
いやもう ほんきで しにそうなんですけどー
↓
とじたまぶたのまま あれ、なんとなく へやがかげった と
おもったしゅんかん
↓
がさっ がごん !!
↓
ものおとに あわてて めをあけたけど よわったからだはおこせなくて
つーか まどのほう みるのこえぇよ
おれのあたまのなか ちょうぱにっく
やべぇ しぬじゃなくって こ ろ さ れ る ー
やばいよやばいよやばいやばいやば
↓
さけぼうとおもって おもいっきり いきすいこんだら
まどぎわから やたらとのうてんきな ききおぼえのありすぎる こえ
↓
はーい しゅっちょうなーすの とうじょうでーす
あ これみまい おかゆと ももかんと りんごと かぜぐすり そのた
どうせ せんぱい ろくにくってないとおもって
↓
いいながら かってにくつぬいで まどからはいってきたのは
ばいとのこうはい
おれ めちゃくちゃだつりょく
びびったせいでつかったたいりょく かえしてくれよ
↓
んだよ くるならくるって れんらくよこせや
つーかどこのどろぼうだよ てめぇ
↓
かすれたこえでどくづいてやっも ぜんぜんこたえてねぇ こいつ
ふとんのよこ べったりすわりこんで いそいそと びにーるぶくろあさってる
つーかなに? なんでそんなにたのしそうなわけ?
はなうたでもうたいだしそうなかおに なんか むかむか
↓
なんかー てんちょうがもってけ もってけって うるさくって
えいようどりんく しぬほど
……って もしかしてねつあったり?
↓
やまないせみのこえ たいおんとおなじくらいのきおん
べたつくからだ きもちわるい こいつうるさい あつい
なんか げんかい
ふいにのびてきた でかいてのひらを おもわずはたきおとしてた
↓
しかいのはしっこで おどろいたようなかお みたけど
ふぉろーとかしてるよゆう ない
あつくてしにそうで もうなんかやばいんだけど
ふとん あたまからかぶって まるくなる
じぶんでも わけ わかんなくて なきそう まじなきそう
↓
…… ごめん
ね だいじょうぶ? そんなしてたら くるしいっしょ
おれ もう うるさくしねぇし かえるし だから かおだして
↓
ゆっくり ゆっくり ふとんのうえから なでられて
そのてのうごきが なんか やたらめったらやさしくて
なにやってんの? おれ
ねつにうかされてやつあたりなんて がきくさすぎて なさけなさすぎて
よけいにふとんから かお だせねぇ
けど
↓
……
ご……めん
みまい …あ りが と ……
↓
かすれたこえでやっとそれだけいって ふとんから ぐずぐずとかおをだす
したら なんか したら、なんか
わらってんだか なきそうなんだか よくわかんねぇかおで こっちみてて
それ はじめてみるかおで
↓
かえるまえに おかゆだけ つくってくから
↓
ちいさくわらって ぽつ、と つぶやいたあと
まようみたいにしながらのばしてきたてを こんどはよけないでみる
でかくて ひんやりつめたい て
↓
なつかぜ まじしゃれんなんないくらい きついけど
ほんのすこしだけ いちみりくらいだけ
こんなのもわるくねぇかもー とか おもいながら とろとろねむりにおちる
なんともにぶいなつかぜおとこの あついごご
□ 535-536 □
【ある こうはいせめの いちにち】
こいびととけんかしたですか せんぱい またですか
そんなに めになみだ ためて くやしそうなかおして
なにか あるたんび おれのとこ くるの やめてくださいよ もう
↓
うまくいってるときは おれのことなんか おもいださないでしょ
つごうのいいときだけ おれのこと にげばしょにしないで
ああもう そうやって ないてわめけば なんでもうまくいくとおもわないで
あんたの だんなも だからおこってるんでしょ
じぶんのことばっか かんがえて わがままいうから
↓
だめですよ きょうは とめたりしませんから
それのんで おちついたら ちゃんとかえりましょうね
だんな さがしまわってますよ ぜったい
↓
かえらない じゃなくて
ききわけないな もう いつものことだけど
↓
あのね…きょうは おれのこいびと くるんですよ
そう できたばっかり あんたみられたら ごかいされちゃう
↓
あんたのことは だいじだけど ずっとすきだけどね
ちょっとは おれのつごうも かんがえてね ほんとに
↓
どうしたの なにがかなしいの にげばしょが ないから?
あんたの にげばしょは あっち だんなでしょ
うん さっきでんわしたから きたね くるまのおと したみたい
↓
…なんでそんなかおするの
ぜんぶ あんたが のぞんだことでしょ
↓
おれとは ともだちが いいって あんたが いったんじゃないか
だんなのほうが すきだから だんなを えらんだんだろ
じぶんの ことばに せきにん もたないとね だめなのよ おとなは
↓
もう あんただけを あまやかして あげらんないから
じぶんで ちゃんとしてね ほら ぼたんも ちゃんととめてね
くつも さゆう ちがうやつだし しょうがないな あいかわらず
↓
…せんぱい?
↓
ふりはらわれる てのひら はしって とおざかる ほそいせなか
それをみおくって ゆっくりと うつむく こうはいせめ
きっと けんかのことなんか すっかりわすれて
だんなの うでのなかで ないたり するんだろうなと おもいながら
しずかに どあしめて へやにもどる こいびとなんかくるよていもない さみしいへや
↓
これで きっと せんぱいうけは もう こない
それを のぞんだのは じぶんだけど これで すべてが うまくいく はずだけど
どうしてか なみださえ でてこないまま ふかいやみに しずんでいく
ある こうはいせめの つらい かたおもいの けつまつ
□ 537-538 □
【ある せんぱいうけの いちにち】
うるせえな だまれ いれろ このやろ どあ こわすぞ ばーるで
やるっつったら やるおとこだぞ おれは しってんだろこら
あーけーろー おらー
↓
おまえ こいびと いるってうそだろ わかってんだからな
いろいろ ききまわって おまえ あいかわらず ひとりだって
ていうか こないだ いってたのもぜんぶうそだろ このやろ
↓
しらねえよ おまえが どれだけ おれのせわに つかれたかなんて
おれの しったことかよ おまえが すきでやってることだろ
さいごまで ちゃんとせきにんもって あまやかせ
↓
なんだよ なんでそんなかおすんだよ
なんで うそついたんだよ こないだ
こ こいびと できたんなら しょうがねえけど できてないのに
なんで あんな あんな
↓
だからしらねえって おまえが おまえがどんなにつかれてたって
おれが あいたいときに あうんだ そうされたいときに あまやかすんだ
おれに こいびとが いようが いまいが そんなこと かんけいない
↓
なんだよ なんでだよ かってすぎるって
わがままなとこが すきっていったのも あれも うそかよ てめえこのやろ
そこは ほんとか そうか ならいいけど うん
げんどがある?うるせえ しったことか
↓
だって おまえは おれのもんだって おまえがいったんだぞ
おまえが あのとき そういった いったじゃないか
↓
だから おれ あいつにいえないことでも なんでも
おまえに いえたし おまえのとこ いごこち いいし
すげえ あんしんするから だから
↓
だからさ なあ
↓
なあ たのむよ
こいびとなんか つくらないで
↓
どのくちが そんなこというんだろうと じぶんでも おもいながら
たまらなくなったように だきしめてくる うでのなか
ほかのやつになんか わたすもんかと りふじんに けついするけれど
じぶんの こいびとが あけっぱなしの とぐちに たっていることに きづいていない
さきのばしに してきた せんたくを せまられている ある せんぱいうけの いちにち
【ある○○のいちにち】in 801 since 2004/5/15