あるせんぱい・こうはい の いちにち 1.5

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49-50 342-345 436-439 535-536 537-538

□ 49-50 □
【ある せんぱいばすうんてんしゅの いちにち】

きょうはあめだ あぶないからいつもいじょうにあんぜんうんてん
じょうきゃくはほとんどがくせい いつもとおんなじ
ちがうのは みんながかさをもってるぐらい

まがります ごちゅういください
あなうんすして おおきくさせつしたら えいぎょうしょがみえてきた
ここでうんてんしゅこうたい おれはきゅうけいになる
うんてんしゅがこうたいになります しょうしょうおまちください

うすい きいろいいろのかさがみえた
こうはいがいつもさしているかさだ
なんだ あいつとこうたいなのか
ぶれーきふんで ばすをとめる
どあをあけると こうはいがかけよってきた

おはようございます せんぱい
にこにこしながら かさをおれにさしだす
おはよ
そのかさをもって おれはばすをおりる
すこし こうはいのかみ ぬれちまった

ねくたい まがってんぞ かさをもたないほうのてで なおしてやる
あ すいません すこしてれながら こうはいがわらった
こいつはいつもいつも いいえがおでわらう
つかれてるのに こいつのかおみてると げんきがでそうだ

じゃ いってきます ぺこり とあたまをさげて
うんてんせきにすわるこうはい
あめふってんだから きをつけんだぞ
はい
こんどのやすみ さけぐらいつきあえよ
はい
いってらっしゃい
いってきます
ふたりともかるくてをあげて あいさつ
ぷしゅーっておとをたてて どあがしまった

つぎにふたりのやすみがかさなるのはいつだろう
なんておもいながら
でていくばすをみえなくなるまでずっとみつめる
あるせんぱいばすうんてんしゅのいちにち

□ 342-345 □
【ひびをぐうたらすごす だいがくよねんの いちにち】

きょうはじゅぎょう さんげんでおわり
とっととかえろうとおもって そとにでたらしぬほどあつい
いっきにかえるきがなくなった もうすこしすずしくなるまでまってよう
もんにいくあしをとめて はんたいのほうこうにあるく

ぶしつとうのいちばんおくが うちのぶしつ
「ちきゅうかんきょうもんだいけんきゅうかい」なんてものものしいなまえは たてまえで
いわゆる「ひまじんよりどころ ぐうたらさーくる」ってやつだ
かつどうび とくになし かつどうないよう こじんにまかせる
こもんはゆうれいぶいんならぬ ゆうれいこもん

これでもまいとしなんにんかは しんにゅうぶいんがはいるんだから おかしなはなしだ
とはいえ おれもそのひとりだけれど
やるきはないけどちいはあるこもんのおかげで ぶしつは くーらーつき れいぞうこつき
こないだがくしょくでかったぷりん そういえば いれておいたまんまだな
おもいだして あしどりがかるくなる
はなうたをうたいながら どあをあけると そこにはもう せんきゃくがいた

「あれ せんぱい こんにちは」
うさんくさくらいさわやかなえがおをむけられて おもわず「げ」とくちからでた
「げって なんですか ひどいな」
もんくをいいながらも めちゃくちゃさわやかなえがお
さすが あいしょう「さわやかさわだー」だなあ
ついついはくしゅしそうになっていたら やつのみぎてにおれのぷりんはっけん

「おい さわだ」
「はい」
「それ おれのぷりん」
「えっ」
みぎてとおれのかおをみくらべて さわだはえがおのまましばらくちんもくした

すうびょうご きらりとしろいはをみせて またさわやかなえがお(しかもういんくつき)
「ははっ すみません なまえかいてなかったから」
「いやかかねえよふつう」
「うちはかくんですよ おとこきょうだいおおいから かいておかないとすぐくわれて」
「おまえんちのじじょうなんてしらねぇっての いいからかえせ にひゃくえん」
「はい」

てをさしだしたら おもいがけずそのてをにぎりかえされた
「いや ちがうだろ かねだってかね そのてのじょうだんはいらねえって」
「わかってます だからおかえしにおごります これから」

ね とかいってまた さわやかなえがお
いっしゅん そうだねっ とかつられてわらいそうになってしまった
「いやいやいや じゃなくって いいからかねよこせ」
「すたばのきゃらめるもかふらぺちーの おごりますよ」
「……いやいやいや いいって」
「すこーんもつけますよ」
「よし いく」
あっさりかんらくしたおれに さわださわやかえがお

「せんぱいあまいものすきですよねほんと このあいだのこんぱでも つまみ ぱふぇだったし」
「そうそう おれのつまみっておもにとうぶん しおのかわりにさとうなの
つうかおまえ よくしってんなあ」
「はは そりゃもうおれ あのときせんぱいしかみてませんでしたから」
そんなことをいわれて はたと まだてをつかまれていることにきづく
「あちい」とてをふると ざんねんそうなくしょうで てをはなしてきた
ん?

びみょうなくうきにくびをひねって 「あのな」ときりだした
「おまえなんなの つうかどうした?」
さわだはいちどまがおになってから まためちゃくちゃにさわやかに おとこまえにわらってみせた

「さいしょのこたえ おれ げいなんです」
「もうひとつのこたえ おれ せんぱいがすきなんです」

ふぁんたすてぃっくなへんとうに おもわずかたまる
そうしたらちょくごにまた さわやかさわだー
「でもせんぱいがのーまるなのはものすごくよくわかってますから
のんけのひとすきになったのはおれのかってで ひとりでかた つけますから」
しんぱいないです ときづかわれて「そうですか」と あいまいにかえす
ぼりぼりとひたいかきながらなにかいわないとなあ とぼんやりかんがえる
なんかねえかな なんかきくこと なかったっけ
うんうんうなってから ふと あるぎもんをおもいついた

「なあさわだ いっこきいていいか?」
「はい なんですか」
「おまえさ こんぱでよくおれのねらったこ よこからかっさらってたよな」
「ああ はい」
「あれってのはじゃあ どういういみなわけよ」
おもいだしてまたむかっぱらがたってきた そう こいつだからきらいなんだった
おれとこのみがにてるもんだとてっきりおもってたのに
にらみつけると にこしたのこうはいは ええと とつぶやいて めずらしくめをそらした

「こたえとしてはふたつありまして」
「じゅんじょだてて わかりやすくよろしく」
「ええとですね ひとつめが いわゆる せんぱいにたいするいやがらせでして」
「てめえ」
「ふたつめがですね」
くちごもって さわだがきまりわるそうにわらった いつものようなわらいかたでなく

「せんぱいへの しっとです」
てれくさそうにわらって それきりうつむいてしまった

「……ばかがここに……」
おもわずつぶやいてから かたをおとしてしまったいろおとこの せなかをたたいた

「とりあえず まあ なんていうか …おれはなんもしなくていいわけな?」
「ああ はい それはもう」
「じゃあまあ いいわ はい ありがとうございます」
「あ いえこちらこそ」
おかしなかいわをかわしてから かるくしせんもかわす

「そうか…さわやかさわだーは ほもだったんかー」
「そうですねえ」
「ひとごとかよてめえ ま いいや」
いってしまってすっきりしたのか またさわやかにわらっているこうはいにあきれて そとをみる
ちょうどよく いやになるくらいてりつけていたたいようがかげっていた
よし いまがちゃんすだ おもいついて たちあがる

「いくぞ さわだ」
「はい?」
つられてたちあがるさわだに からになったぷりんのざんがいをゆびさす
「おごってくれんだろ いわれたことはわすれねえぞ」
「はい それはいいんですけど」
「なんだよ」
「せんぱい なんかこうもっとていこうっていうか きょひっていうか するかと」
「だっておれ なにもしなくていいっていわれたもん」

けろっとこたえてとっととあるきだす うしろからあわててついてくるおと
はやあしであるきながら てのあせをさりげなくけつでふいた
おちついているようにみせかけても じつはそれはこんらんしているだけで
それでもあまいもののゆうわくにかてない びみょうにゆうじゅうふだん だいがくせいの いちにち

□ 436-439 □

じー じー じー みーーーーーん
じー じー じー じーーーーーー

ねばっこいせみのこえが よけいにあつさをかんじさせる
ひらやのにわつき12じょう むきはなんせい ひあたりりょうこう
まじこれさいこうぶっけん がしかし かなしいかな くーらーはない
びんぼうがくせいにぜいたくはきんもつだけど なつはしょうじき きつい

たいようのおんけいを まっしょうめんにうけとめるじょうたいで
ふとんにころがって うんうんうなってる なつかぜのおれ
めしつくるきも かいにいくきも おきなくて
いやもう ほんきで しにそうなんですけどー

とじたまぶたのまま あれ、なんとなく へやがかげった と
おもったしゅんかん

がさっ がごん !!

ものおとに あわてて めをあけたけど よわったからだはおこせなくて
つーか まどのほう みるのこえぇよ
おれのあたまのなか ちょうぱにっく
やべぇ しぬじゃなくって こ ろ さ れ る  ー
やばいよやばいよやばいやばいやば

さけぼうとおもって おもいっきり いきすいこんだら
まどぎわから やたらとのうてんきな ききおぼえのありすぎる こえ

はーい しゅっちょうなーすの とうじょうでーす
あ これみまい おかゆと ももかんと りんごと かぜぐすり そのた
どうせ せんぱい ろくにくってないとおもって

いいながら かってにくつぬいで まどからはいってきたのは
ばいとのこうはい
おれ めちゃくちゃだつりょく
びびったせいでつかったたいりょく かえしてくれよ

んだよ くるならくるって れんらくよこせや
つーかどこのどろぼうだよ てめぇ

かすれたこえでどくづいてやっも ぜんぜんこたえてねぇ こいつ
ふとんのよこ べったりすわりこんで いそいそと びにーるぶくろあさってる
つーかなに? なんでそんなにたのしそうなわけ?
はなうたでもうたいだしそうなかおに なんか むかむか

なんかー てんちょうがもってけ もってけって うるさくって
えいようどりんく しぬほど
……って もしかしてねつあったり?

やまないせみのこえ たいおんとおなじくらいのきおん
べたつくからだ きもちわるい こいつうるさい あつい
なんか  げんかい
ふいにのびてきた でかいてのひらを おもわずはたきおとしてた

しかいのはしっこで おどろいたようなかお みたけど
ふぉろーとかしてるよゆう ない
あつくてしにそうで もうなんかやばいんだけど
ふとん あたまからかぶって まるくなる
じぶんでも わけ わかんなくて なきそう まじなきそう

…… ごめん
ね だいじょうぶ? そんなしてたら くるしいっしょ
おれ もう うるさくしねぇし かえるし だから かおだして

ゆっくり ゆっくり ふとんのうえから なでられて
そのてのうごきが なんか やたらめったらやさしくて
なにやってんの? おれ
ねつにうかされてやつあたりなんて がきくさすぎて なさけなさすぎて
よけいにふとんから かお だせねぇ

けど

……
ご……めん
みまい …あ りが と ……

かすれたこえでやっとそれだけいって ふとんから ぐずぐずとかおをだす
したら なんか  したら、なんか
わらってんだか なきそうなんだか よくわかんねぇかおで こっちみてて
それ はじめてみるかおで

かえるまえに おかゆだけ つくってくから

ちいさくわらって ぽつ、と つぶやいたあと
まようみたいにしながらのばしてきたてを こんどはよけないでみる
でかくて ひんやりつめたい て

なつかぜ まじしゃれんなんないくらい きついけど
ほんのすこしだけ いちみりくらいだけ
こんなのもわるくねぇかもー とか おもいながら とろとろねむりにおちる
なんともにぶいなつかぜおとこの あついごご

□ 535-536 □
【ある こうはいせめの いちにち】

こいびととけんかしたですか せんぱい またですか
そんなに めになみだ ためて くやしそうなかおして
なにか あるたんび おれのとこ くるの やめてくださいよ もう

うまくいってるときは おれのことなんか おもいださないでしょ
つごうのいいときだけ おれのこと にげばしょにしないで
ああもう そうやって ないてわめけば なんでもうまくいくとおもわないで
あんたの だんなも だからおこってるんでしょ
じぶんのことばっか かんがえて わがままいうから

だめですよ きょうは とめたりしませんから
それのんで おちついたら ちゃんとかえりましょうね
だんな さがしまわってますよ ぜったい

かえらない じゃなくて
ききわけないな もう いつものことだけど

あのね…きょうは おれのこいびと くるんですよ
そう できたばっかり あんたみられたら ごかいされちゃう

あんたのことは だいじだけど ずっとすきだけどね
ちょっとは おれのつごうも かんがえてね ほんとに

どうしたの なにがかなしいの にげばしょが ないから?
あんたの にげばしょは あっち だんなでしょ
うん さっきでんわしたから きたね くるまのおと したみたい

…なんでそんなかおするの
ぜんぶ あんたが のぞんだことでしょ

おれとは ともだちが いいって あんたが いったんじゃないか
だんなのほうが すきだから だんなを えらんだんだろ
じぶんの ことばに せきにん もたないとね だめなのよ おとなは

もう あんただけを あまやかして あげらんないから
じぶんで ちゃんとしてね ほら ぼたんも ちゃんととめてね
くつも さゆう ちがうやつだし しょうがないな あいかわらず

…せんぱい?

ふりはらわれる てのひら はしって とおざかる ほそいせなか
それをみおくって ゆっくりと うつむく こうはいせめ
きっと けんかのことなんか すっかりわすれて
だんなの うでのなかで ないたり するんだろうなと おもいながら
しずかに どあしめて へやにもどる こいびとなんかくるよていもない さみしいへや

これで きっと せんぱいうけは もう こない
それを のぞんだのは じぶんだけど これで すべてが うまくいく はずだけど
どうしてか なみださえ でてこないまま ふかいやみに しずんでいく
ある こうはいせめの つらい かたおもいの けつまつ

□ 537-538 □
【ある せんぱいうけの いちにち】

うるせえな だまれ いれろ このやろ どあ こわすぞ ばーるで
やるっつったら やるおとこだぞ おれは しってんだろこら
あーけーろー おらー

おまえ こいびと いるってうそだろ わかってんだからな
いろいろ ききまわって おまえ あいかわらず ひとりだって
ていうか こないだ いってたのもぜんぶうそだろ このやろ

しらねえよ おまえが どれだけ おれのせわに つかれたかなんて
おれの しったことかよ おまえが すきでやってることだろ
さいごまで ちゃんとせきにんもって あまやかせ

なんだよ なんでそんなかおすんだよ
なんで うそついたんだよ こないだ
こ こいびと できたんなら しょうがねえけど できてないのに
なんで あんな あんな

だからしらねえって おまえが おまえがどんなにつかれてたって
おれが あいたいときに あうんだ そうされたいときに あまやかすんだ
おれに こいびとが いようが いまいが そんなこと かんけいない

なんだよ なんでだよ かってすぎるって
わがままなとこが すきっていったのも あれも うそかよ てめえこのやろ
そこは ほんとか そうか ならいいけど うん
げんどがある?うるせえ しったことか

だって おまえは おれのもんだって おまえがいったんだぞ
おまえが あのとき そういった いったじゃないか

だから おれ あいつにいえないことでも なんでも
おまえに いえたし おまえのとこ いごこち いいし
すげえ あんしんするから だから

だからさ なあ

なあ たのむよ
こいびとなんか つくらないで

どのくちが そんなこというんだろうと じぶんでも おもいながら
たまらなくなったように だきしめてくる うでのなか
ほかのやつになんか わたすもんかと りふじんに けついするけれど
じぶんの こいびとが あけっぱなしの とぐちに たっていることに きづいていない
さきのばしに してきた せんたくを せまられている ある せんぱいうけの いちにち

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