あるせいと の いちにち 1.5

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□ 104 □
【ある せいとかい ふくかいちょうの いちにち】

せいとかいちょうは きょうも ふきげん
なんだか さいきん ずっと きげんがわるい
ひるさがりの せいとかいしつ ふくかいちょうは よこがおを ぬすみみる

きりっとした わふうの おとこまえ すずしい めもと
わらえば ふんいき やわらかくなるのに きょうはまだ いちども わらってない

わらってくれないかな とおもって くすぐってみる が
そく なぐられて おこられて ばとうされて へこむふくかいちょう
そっぽをむいてしまった ぎゃっこうのしるえっと じっとみつめる

かいちょうには どうやら すきなひとが いるらしいと もっぱらの うわさ
そのひとと うまくいっていないのだろうか

うわさは たくさんあるけど だんしも じょしも みんなかいちょうがすきだから
だれに こいしていても こうどうにでれば すぐに うまくいくだろうに
いじっぱりで てれやで じぶんのことにはどんかんな かいちょうは
こういうことには いがいに しょうきょくてきなのかも しれない

ようし ここは おれが ひとはだぬいで あいだを とりもってやろう
きゅーぴっどふくかいちょうと よんでください まかせて こういうのは だいとくい

だけど なぜか すきなあいての なまえを きくのはこわくて
ふくかいちょうは ひらきかけた くちをつぐむ

ねえ だれが すきなの?

それだけがきけなくて さきにすすめない ある ひとのいい ふくかいちょうの せつないゆうぐれ

□ 174-177 □
【ある ちびっこばすけっとぼーるぶいんの いちにち】

おれ こうこうにねん ちゅうがくから ばすけ やってる

でも おれ ちび
まいにち ぎゅうにゅう いちりっとる
のもうとしたら はら こわした
ごひゃくみりで がまん
すげえ くやしい

からだも ほそい
まいにち うでたてふっきん ひゃっかい
やってるけど きんにく つかない
にひゃくずつに ふやそうかな
ちょっと つらい

そんけいしてる せんぱい ばすけぶぶちょう
せはたかいし からだでかいし
しゅーとも どりぶるも ふぇいんとも
うまい
しかも かっこいい おとなの かおしてる
おおきなこえで みんなのやるき ひきだしたり
やさしいえがおで ぶいんを きづかったり
ほんとに まじで かっこいい

せんぱいの まねして
かみのけ みじかく しゃきしゃきに してみても
おれ ぜんぜん にあわない
かがみのなかの じぶんの まぬけづら
みると へこむ

すにーかーのぶらんど おなじにしても
おれ まんねん ほけつ
うつむいて よごれてないくつ
みると もっとへこむ

きょうも れんしゅうじあい こーとのそとから
ながめてる だけ
せんぱい どなって ぱすして はしって じゃんぷして
かたてで あせぬぐって ぼーるうけて しゅーと
もちろん きまる
やべえ すげえ ぞくぞくする

「せんぱいっ ないっしゅー」
おもわず さけんでた
あんまり こういうの いったことない おれ
われにかえり はずかしくなる
うわどうしよこんなへたっぴにないっしゅーとかいわれてもうれしくないだろ

そのとき せんぱい
こっちみた
たいいくかんのすみっこで ひとり つったってる
まんねんほけつの おれ みて
「さんきゅ つぎも きめてやる みてろよ」
てをふって いった

どきん しんぞう はねる
なになになんだこれどきどきどきどきどきどきど
ふるえる むねおさえ むいしきに ひたいにてをやると
ぽちりとひとつ おでこに にきび

これって もしかして おもい にきび?
すきなひと できちゃった?
それって もしかして もしかして

はしってもないのに あかいほお
うつむいて かくそうとする
ちびっこばすけぶいんが こいをしった いちにち

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□ 187-190 □
【ある ばすけっとぼーるぶぶちょうの いちにち】

おれ こうこうさんねん ばすけぶぶちょう
きょうも ぶいんのようすに めをくばりながら
れんしゅうめにゅー こなす

さいきん とくに きにある こうはい
なんだか げんきない
あいつ ちっこくて ほそいけど
だれより れんしゅうねっしん
きょうは あいつ れんしゅうじあいに だしてみようか
じゃんぷりょく あるし こんじょうも ある
よし きめた

しあい かいし
あいつ うれしそうに こーとをかけまわる
ばすけやるの だいすきなんだな
これで げんき でるといいな

でも あいつ ほそいから
まわりのやつらに つぶされそう
しんぱいで めがはなせない

ああもう そんなに いきおいよく つっこんでったら

あぶない!

あいつ あいてに はねとばされて
ゆかに ころがった
すぐ たちあがろうとして
あしおさえ うずくまる
ひねったのか すじ いためたのか

しあい ちゅうだんして あいつに かけよった
「だいじょうぶか」
「へいきっす おれまだ やれます」
かおゆがめて あいつ こたえた

なにいってる もうこんな はれてる
いいから はやく びょういんにいけ
ちょっときつい いいかた しちまった おれ みて
あいつ かた おとし したむく
にぎった こぶし ふるえてる

そんなかお させたいわけじゃ なかったのに
おれが きずつけた
けがより ひどく きずつけた
むね いたい

「すまない ねんざでも あまくみて ほっとくと
くせになるから な?」
どうにか なぐさめたくて あたま ぽんぽん かるくたたいた

そしたら あいつ よけいに ちぢこまった
「はい」って かすれたこえ
こどもあつかい されたきもち したのかな
おれ もっと こいつのぷらいど きずつけた
ごめん

とぼとぼ あし ひきずって びょういんにむかう
さびしそうなせなか みおくって
しあい さいかいしたけれど
やっぱり きになる あいつのこと
みんなの うごきに しゅうちゅうできない

ごめん ごめんなと むねのなかで くりかえす
ばすけぶぶちょうの じこけんおの いちにち

□ 180-181 □
【ある けんどうぶ ふくしゅしょうの いちにち】

はだしの すりあしが きゅきゅっと きつい おとをたてる
もう どのくらい たったのだろうか みじかいはずの しあいが なんじかんにも かんじられる
たかが けんたいかいの じゅんけっしょう だけど
しゅしょうは さくねんの ぜんこくたいかい しゅつじょうしゃと しあいをしている
だいかんしゅうの ねっきのなか こーとのよこで ひざだちになって おうえんする けんどうぶの めんばー
そのなかで ひとりだまって せいざしたままの ふくしゅしょうは しあいのゆくえを じっと みつめている

けんないでも ゆうめいな きょうごうあいてに いっぽも ひかない しゅしょう
めんで かおは みえないけれど きはくと ねつが つたわってくる
あいてが ぜんこくれべるの さんねんせいでも まけるつもりはないのだと ぜんしんで さけんでいる

そうだ しゅしょうも おれたちも ぜったいに まけるつもりなんか ない
そのために きょうまで ちのにじむような どりょくをしてきたんだ
だんたいせんでも こじんせんでも こんなところで まけるつもりなんかない
しゅしょうと いっしょに たかみへ もっとたかみへ

いちばん たかいところまで このめんばーで いくんだ

はげしい つばぜりあい そして まあいをはかりながら ひばなのちるような にらみあい
もはや だれもが ことばもなく ただ かたずを のんで みつめている
すさまじい たたかいを まのあたりにして ことばをうしなっている
きこえるのは ただ ふたりの あらい いきづかいと あせまみれの ゆかを する はだしのおとだけ

また つばぜりあい そのとき あいてが ゆかにこぼれた あせにあしをとられた
そのしゅんかん しゅしょうが ふみだす はげしい おと

うちすえる おとと するどい きあい 
どうじに ふくしゅしょうが こぼれるように わらった

いっぽん それまで

しろはたが さんぼん あがる かいじょうじゅうが ゆれるような かんせいにつつまれる
ぜんこくれべるの きょうごうを たおした むめいの こうこう にねんせいにあらしの ような はくしゅが おくられる
まだ じゅんけっしょうだということを だれもが わすれて すばらしい しょうぶに はくしゅした

その われるような かっさいの なかで ふくしゅしょうは ほほえんだまま
ゆっくりと めんを かぶり ひもをしめた

さあ おれと あなたで けんたいかい わんつーを きめる ゆめは これでもう かなった
あとは あなたと おれの いっきうち どっちがつよいのか このおおぶたいで しょうめいしてみせようじゃないか

しせんのさき まだ あらく いきをついている しゅしょうをみすえて こしをあげる
からみあう しせん かわしあう かすかな ほほえみ
おなじ こうこうどうしの けっしょうせんが いま はじまる

めざすところは おなじでも けっして だきょうせず だれにも まけない つよさをもとめる
ある けんどうぶ ふくしゅしょうの かがやくような せいしゅんの いちにち

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□ 183-184 □
【ある けんどうぶの いちねんせいの いちにち】

だんたいせんに まけてしまった せっかく ぜんこくたいかいまで きたのに
しゅしょうと ふくしゅしょうは ちゃんと どのしあいも かったのに
せんぽうの じぶんが まけてしまって ほかの めんばーが どうようしてしまった
なさけなさで いっぱいで かおが あげられない なみだが こぼれそうだった

ひとり こういしつで うなだれていると めのまえに さしだされる ぺっとぼとる
おつかれさん いつもの ふくしゅしょうの すずしいこえ
いまは れいせいに きけなくて くちびるを かみしめた

すいません おれのせいで すいません

まけたことか?くやしいのか それでないてるのか?
すいぶんが もったいないから やめろ

せんぱいは くやしく ないんすか

くやしいにきまってるだろ わかんないのか ぜんこくゆうしょうが ゆめだったんだから
ふくしゅしょうの てのなかで あきかんがつぶれる きれながのめが くやしさに もえている
ふだんはみせない はげしい かんじょうに めをうばわれる

だけど ここでないて せきにんをかんじて おちこんでいて なんになる
くやしいなら つよくなれ つよくなるように どりょくしろ
おれは もういちど ぜんいんの きょうかぷらんと さくせんをねる
しゅしょうは もっと どきょうがつくように れんしゅうじあいの けいけんを ふやすっていってる
そんで らいねん もういちど めざすぞ ぜんこくゆうしょう

ゆめのような はなしが ふくしゅしょうと しゅしょうにかかると げんじつみを おびてくる
ほんとですか おれら もっと つよくなれますか せんぱいたち みたいに
すがるように さけんで ふくしゅしょうの さしこの そでをひっぱる
おれ つよくなりたいんです せんぱいたちと ぜんこくで ゆうしょう できるくらいに
(あなたを しつぼうさせない つよい おとこに)

なりたいんじゃない なるんだ

おまえが じぶんで なるんだよ

こころから ねがって どりょくすれば ふかのうなんて ないんだ
そういって ふくしゅしょうはほほえむ それは まるで まほうのような ことばで

おい こじんせん はじまるぞ
よびかけた しゅしょうのこえに こたえて ふくしゅしょうが はしっていく
そのうしろすがたを ながめながら うすいかみを はぐように
しょうねんから おとこへかわっていく ある いちねんせいの へんかくのいちにち

□ 361-362 □

べんきょうそんなにきらいじゃない、まだまだよゆーのちゅうがくいちねんせい。
でもなぜかえいごだけちをはうせいせき。
ほうかごのきょうしつで、ためいきつきつつえいたんごのかきとり。

べんきょうもうんどうもばつぐん、かなりよゆーのてんこうせい。
「てんこうせいの」がとれるころにはまたてんこう。しょうがっこうからあわせて
しってるこうかはぜんぶでじゅうさんきょく。
ちちおやはすきだけど、さいきんちょっとだけうらめしい。

がらっ
「ちす」
「よー」

「なにやってんの」
「えーたんかきとり」

まえのせきすわっておれのてもとのぞきこむ。
のーとにいっぱいのあるふぁべっと。

「それまちがってる」
「げー」

ふれんどのつづりはえふあーるあいいーえぬでぃー。
それじゃふりえんどじゃん、ふれいんどのほうがふれんどにちかいじゃん。
そんなこといったってそうなんだからしょうがない。
なっとくいかねー!

「いつかぜったいおわるから、さいごにえんどってついてんだ」
かおをあげるとしまったってかお。でもなんでもないってことにしときたいみたいなかお。
どっかなきだしそうなかお。それみてたらこっちがなきたくなるようなかお。
でもいっしょうけんめいなんでもないってことにしときたい、みたいなかお。

のーとにしせんもどしてしゃーぺんもちなおす。

「じゃあさ」
じぶんのこえがふるえてもかすれてもいなくて、なんでもないってかんじにことばがでて
ちょっとほっとしながらつづける。

「おれとおまえ、ともだちじゃねーよな」

だまりこんでなんどもなにかいいかけてはやめたけはいがして、やっとひとこと。
「そうか」

「そーだ」
そくざにちからいっぱいうなずきかえしたら、ばたっておとがして、つくえにかおふせられた。
かきとりおわんなかったらおこられるかもしんないけどきぶんいいからきにしない。
伏せたからだがふるえてるのもちいさいこえもみみまでまっかなのもきにしない。

いっしょうものの"なにか"をてにいれたかもしれないちゅうがくせいふたりのほうかご。

□ 365 □
【しゅうぎょうしきのぼくのいちにち】

いちがっきのさいごのひ、きみはぼくのあたまをぽんとたたいた。
またあした。
いつもみたいにそういいそうになってくちをつぐむ。
あしたはきみにあえないんだ。
なつやすみはうれしいけどきみにあえないのはとてもかなしい。

きょうしつをでていくきみのせなかをみつめる。
あえないってきっとさみしいだろうな。
いつもみたいにさよなら、っていえない。
ちょっとふりかえるきみ。
いつもはそんなことしないのに。

きっとぼくはいまへんなかお。
しんぱいそうにきみはちかづいてくる。
やめろ くるな こんなかおはみられたくない。

うつむいたぼくのあたまにぽんぽんとやさしいかんしょく。
これはきみのてのひらのかんしょく。
「あしたどっかあそびにいこうか」
ぱっとかおをあげるときみはあかるいえがおでたっていた。

ちょっとなきそうになった、ぼくのほうかご

□ 366-369 □
【がっしょうだいの にれつめまんなかにたった こうこういちねんのいちにち】

じゃんけん ほい
あ かった
よかった しきしゃ やらないですむ
がっしょうこんくーるなんて かったりぃし
おれがやるより おまえのほうが しきしゃむいてんだろ な

かだいきょくもじゆうきょくもわかんねぇ
てきとーにれんしゅうしてかえろうぜ
ほら しきしゃ さっさとやれって
ほうかご のこんのやなんだよ
べつにゆうしょうするきもねぇし
きょうしつのあちこちから やじがとぶ
おれもいっしょに やじとばす

しきしゃはすこしうつむいたまま まえにでて
「じゃあ はじめます」
うでをあげて ちいさくふった さんびょうし

しらねぇうたなんか うたえるかよ
なんでこうこうせいにもなって がっしょうなんだよ
うぜぇ たりぃ うたうきしねぇ
どうせ しき しながらうたうんだろう
おれ うたうひつようねぇだろう

ほら だれもうたわねぇ
ばんそうはじまっても みむきもしないであそんでる
ぴあののおともかきけすくらいのおおごえで みんなげらげらわらってる
こえだしてんの おまえだけだぜ しきしゃ

でも
なんだよ
うた うまいじゃねぇか
うまいってゆーか なんてーの
なんか きれいなこえしてんのな
いつもうつむいてばっかで ちいさなこえでしかはなさないから
しらなかった
いいな おまえのこえ

もっとききてぇよ おまえのこえ

ああもう うるせぇな ほかのやつら
すこしだまれよ ぴあのもきけよ
それよりなにより しきしゃをみろよ
おれなんかな このうたぜんぜんしらねぇのに
ききたいって おもったんだぞ

あぁ ほんとに いいな おまえのこえ
しらねぇからうたえねぇけど
おまのこえに あわせられたらたのしいだろうな

たったひとりで うたいおわって さみしくしきをとめたしきしゃ
いつもみたいに うつむいて ながいまえがみがかおをかくす
それっきり だまって れんしゅうもおわる

でも
なぁ うたえよ もっと おれもやるからさ
もっかいぴあのひいてくれよ ばんそうしゃ
もっかいうたってくれよ しきしゃ
もっとききてぇんだ
そんで だまれよ やろうぜ やんならゆうしょうだろ
ねっけつぶって あおってみる
たんじゅんなくらすめいとが なんにんかさんどうしてきた
じょしも がくふをとりだした

ほら やれって しきしゃ

どなるように わざとめいれいくちょうでいった
いじめんなよーとやじがとぶ
あちこちでしのびわらいがもれた

しきしゃもわらったのがみえた
ちくしょう けっきょくおれが どうけやくかよ
でも そうでもしなきゃ みんなおまえのこえ きこうとしなかったんだ
もったいねぇだろ そんなの
せっかく いいこえしてんのに

しきしゃはもいちど かおをあげ
すこしおおきくふるさんびょうし
指先がちいさくふるえてたのは
きづかないふりをした

それでもおれはちゃんときづいた
たしかにきこえた おまえのこえだ
ちいさくても おれはすきだ

がっしょうこんくーるで ゆうしょうする いっしゅうかんまえ
とあるこうこうせいのほうかご

□ 467 □
【あるきたぐにのちゅうがっこうのてんねんうけのいちにち】

がっこうさいもちかくなって くらすのちがうおれとあいつは いっしょにかえることもなくなって
ぜんぜんあそべなくて めーるも「ねむい いそがしい」ってゆってかえしてくれないし
めしだってくらすのやつとたべてるし せめてやすみじかんくらいあそびたいっておもうっしょ
だって おれらしんゆうじゃん

じゅぎょうおわってすぐ となりのきょうしつにはいる
きょうたくのまんまえ ぎゃっつび で つんつんたてたかみのけ あいつがいた
はなしたいこと いっぱいあって わくわくしてなまえよぶ

あいつがこっちみた
よくみたら こしに あいつのかのじょがだきついてた
さきこされたきがして ちょっと むっとした

「どーしたの そのあたま」 ってあいつがいった
「うざいから ふたつしばり してみた にあうべ」 っておれ
「おまえ うしろがみ ながいからなぁ なんか じょし みたいだ」 ってあいつ
あいつのかのじょが 「にあうよ」 とわらった
ふざけて ぶりっこぽーずとったら あいつが おれのあたま くしゃってなでて
「おまえ ちょー めんこい」 ってわらった

いっぱい はなしたいことあったのに ぜんぶわすれちゃって
おれが かんがえてるあいだ あいつとかのじょは いちゃいちゃ らぶらぶ
みてらんなくって じぶんのきょうしつにかえってきた

おんなのこみたい でも ほんとの おんなのこ には かてないっしょ

って おれ なにかんがえてるんだろ
がくさいじゅんびで つかれてんのかな
つぎのすうがくは ねよう あれ りかのときも ねてたや
まあいっか あいつに べんきょう おしえてもらおう
まだまだ じぶんのきもちにきづかない てんねんうけのいちにち

□ 543-544 □
【ある さっかーぶいん の いちにち】

みっか まえ
しんゆうの あいつに はじめて かのじょが できたらしい

あいつは おとこの おれから みても かっこよくて
こうこう まで かのじょ いなかったのが ふしぎなくらいだった

おれは かのじょいないれき ちょうど いちねんはん だったせいか
やきもち めいた かんじょうが わいた

ある れんしゅう の ひ
かのじょが あいつを まってた
ぶかつの せんぱいが ひやかしてた

なんにちか あと
おそくまで ぶしつに おれと あいつで のこってた

「そうだん ある」 あいつが いった

「あした かのじょと おとまり するから
おまえんちに とまる ことに しておいてくれ」 って

「うん がんばれよ」 って いったら
「さんきゅー」 って おもいきり だきしめられた

さっかー で とくてん したときの すきんしっぷ とは ちがう
ふしぎな かんじ

こうすいの においが はなを ついて
ながい うでが あたたかくて

そんで うれしい きもち でんせん してきて
でも なんか もやもや して

はなれたく ない

なんか へんな きぶん
くるしい

けっきょく その きもちの しょうたいは わからずじまい

そのひ いらい おれは あいつを め で おうように なった

ある さっかーぶいん の せつないひびの はじまりの いちにち

□ 647 □
【あるそつぎょうせいのいちにち】

そつぎょうしきがおわり ほーむるーむまでたいき
にんきもののきみは こくばんのまえで みんなにかこまれている
ぼくは ひとり じぶんのせきで そつぎょうしょうしょをもてあそぶ

「どーしよう。せっかくもらったのに。ぼたん、どっかいっちゃった」
きみのかのじょの こまったこえ

ふとみつめた じぶんのあしもとに にぶくひかる きんいろのぼたん
ぼくは こっそりと それをひろう

「なあ、こっちにぼたん、ころがってこなかったか」
うえからふたつめ ぼたんのついていないえりもとをいじり きみが ぼくにきく

「……ううん。さがしてみたけど、なかったよ」
かぶりをふって ぼくは にこりとわらう

きつくにぎりしめた てのなかには きみの だいにぼたん
くちにだすことは けしてかなわない ぼくのおもいといっしょに

きみのかけらを ただひとつの なぐさめにすごす
あるそつぎょうせいの こうこうせいかつ さいごのいちにち

□ 711 □
【ある せいとぜめの いちにち】

いつもは ねむくてしかたない ろくげんめ
しかし ほんじつは おめめぎらぎら
なぜなら せんせいうけの じゅぎょう

こくばんにがしがし もじをならべる うしろすがた
うなじがしろい ぜんたいてきに ほそい ちいさい
あ やべ のーととらなきゃ

ふりかえって きょうかしょ かたてに
「はい そんじゃー ここ せいとぜめ」
うお なまえ よばれちった  じゃなくて こたえ こたえ

よしゅうは ばっちり すらすら かいとう
「はい おっけーです よくできました」
えへへ やったー いえーい おれって てんさい
とかって はしゃいでるあたり ばかだね

なんどもずりおちる ぶあつい めがねを
なかゆびとひとさしゆびで あげる しぐさ
きょうたくに てをついて ゆびさきでとんとん
りずむをとる くせ
そのひだりてに ひかる ゆびわは みないふり

ああ おとこだし せんせいだし さいたいしゃだし
とりぷるで むくわれねえ あわれな おれ
それでも すきなんだよ どうしようも ねえなあ

ほおづえついて せなかみつめる かたおもい
せいしゅんまっただなか せいとぜめの ろくげんめ

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