あるおとこ の いちにち 1.5

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10-11,28 255-256 354-355 359-360 615-618 641-645 707 739-741 743  ■  みっかよりながいにっき / 251-253…

□ 10-11 □

そいつとはどういうわけだか くされえんで
どんなせんじょうでも おれのとなり
ふときがつけば ゆいいつむにのぱーとなーになっていた
おれがせなかをあずけられるのは あいつしかいない

けど おまえ と おれはせっきょう
おまえ そろそろいいとしなんだから
しきかんとかそういうものになれ
うえからも そういわれているんだろ

いやですよ しょうしんなんて
おれはずっと あなたについていくってきめたんです

やめろよ きもちわるいこというな

だっておれよりとしうえの あなたがまだぜんせんにいるのに
おれがひっこめるわけないじゃないですか

ばか おれはぜんせんにでるぐらいしか のうがねえんだ
おまえみたいな あたまのいいやつとはちがう
ぜんせんいがいの どこにいけっていうんだ

そのきになれば ぼたんひとつで せんそうができて
ぼたんひとつで せんそうをおわらせることができるよのなか
おれは じだいおくれの とつげきへい
でも あいぼうは わりときようで あたまもよくて
あたらしいよのなかで ちゃんとじぶんをいかしていける
おれといっしょに ぜんせんで しんじゅうすることはない
だから さっさとそっちへいけといったのに

あなたといっしょに みたいものがあるんです
だからまだ ここをはなれたくないんです
みょうにきっぱりと いいきったあいつ
なにがみたいんだ ときいたら せかいのはてだとこたえた
なんだそりゃ

はてですよ そのさきにはなんにもない せかいのはて
こっきょうも さべつも へんけんもない
そんなばしょに あなたとならいけるんじゃないかとおもって

なに こどもみたいな ゆめみがちなことをいってるんだと わらったら
そうですよね とにがわらいしてた

そんなことをいっておいて
あっけなく さきにしんだのはおまえ

それきり せなかをあずけるあいぼうはいなくなったけれど
それでもおれはまた ぜんせんにむかう

ちゃんとつれていってやる
おまえがみたかった せかいのはてまで
おれはきっと たどりついてやる

のこり989のれすをみすえて
じゅうをかまえるへいしの たたかいのはじまり

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□ 28 □

あなたはじぶんのことを
おれはがむしゃらにつっこんでいくしかのうのないせんそうやなんだよ なんて
じちょうぎみにいっていたけど

どんなふりなせんきょうでも どれだけてきがまちうけてるとわかっていても
ひるまず おそれず まえだけをみてつきすすんでゆくあなたは
すでにいきるでんせつになっている

かけがえのないあいぼうがいたこと
そのひとをなくしてしまったこと
それからひとりでたたかいつづけていること
どこかとおくをみつづけていること

ぜんせんにはいちされてから あなたをずっとみてきたからしってるんです

おれに あなたのせなかがあずけられることはない
おれとあなたが ともにおなじじかんをあゆむこともない

でも だから
あなたがのぞむばしょにすこしづつでもたどりつけるように
すこしでもみちがひらけているように
せなかがまもれないならば せめて

ふるえるあしをしったしながら10-11さんのすこしさきをかけていく
しょねんへいのなれぬじゅうげきと いのりのひびのはじまり

□ 255-256 □
【あるしょうたいちょうのいちにち】

あめのなか、いくらたたかえどもてきのぐんはいっこうにへらない。ほとんどのへいはせんいをそうしつし、けんもやりもなまくらどうぜんとなった。

それでも「たたかえ」とさけぶこうにあせるじょうかん。このままではぜんめつ、それだけはさけねばならない。

じょうかんのもとへむかおう、そしてしんげんせねばならない。
きぞくにいけんしたことでつみにとわれてもぶかがしぬよりずっといい

が、わたしよりさきにひとがいた。
じょうかんにいけんするわかいへい、どうやらわたしとおなじことをかんがえたらしい。じょうかんはしばらくかんがえているようだ・・・そして

よごれることのなかったけんがきらめく。ぎんいろがあかにそまる、じょうかんのあしもとにはわかいへい。

ぶかをしなせたくないとおもったやさきのぶかのし、それも・・・みかたのてによって。

こんらんするわたし、よこからとびだすかげ、そのてにはあかくよごれたわかいへいのけん。そういえばかれはゆうじんとともにきたのだったな、めのまえでころされたとものかたきうちか。
わかいへいのゆうじんがじょうかんをきったならわたしがかれをきらねばならないな・・・
そんなことがあたまをめぐる、わたしは、わたしは・・・

ときがとまる。たおれているじょうかん、つきささっているかえりちであかくよごれたわたしのやり。たちすくみわたしをみつめるわかいへいのゆうじん、ほかのぶか。

たいひする。わたしのことばでときはうごきだす。
うごかなくなったわかいへいをうまにのせるかれのゆうじん、さいごまでむのうだったじょうかんをうまにつむわたし。

いつのまにかあめはやんでいた。
ここまできたならしんぱいない、わたしはぶかのひとりにこのごのこうどうについてかんたんなしじをした。

『じょうかんはらんしんしたわたしにきられ、わたしはおまえたちによってうたれた。』わたしのくびをもちかえりそうしょうげんしてくれ、そうなればおまえたちはさばかれまい。じょうかんをつみかえ、ぶかたちにいきのびることをやくそくさせた。

はがねのかんしょくをくびにかんじる、なきごえがきこえる、けんをふりあげるけはいをかんじる、いっしゅんかおをあげる、わかいへいのゆうじんとめがあう、すくえたかもしれないひとりいのちをくい、なみだするしょうたいちょうのさいごのいっしゅん

□ 354-355 □
【ある おとこの いちにち】

おれのごしゅじんはざいばつのおぼっちゃんだったりする。だからいっつもわるいやつらにねらわれている。

おれはそんなぼっちゃんをまもるためにやってきた。 こどものときからくんれんをつんで、いつもぼっちゃんといっしょにいる。すべてはぼっちゃんのしあわせのため。

でもぼっちゃんはのほほんとしたまったりさんで、いくらおれがとめてもちかみちだからとくらいほうのみちにいっちゃったりするひとだ。ぼでぃーがーどもつらいぜ。

でもそんなあるひ、ぼっちゃんがきえてしまった。くらくなるまでがっこうのそとでまってたのに、ぼっちゃんはでてこない。

おれはがっこうのまわりをさがしまわった。そしてみつけたのは、ぼっちゃんのかたほうだけのかわぐつ。


ぼっちゃんが、ゆうかいされた!


おれはあわてておやしきへもどる。ひっしになっておうえんよんで、ぼっちゃんをさがしてはしりだす。おうえんはどんどんうしろのほうへときえていく。ちくしょうあしおそいぞ、もっとはやくはしれ。

のこされたくつをてがかりに、おれはびゅんびゅんはしっていった。そしてようやくみつけたのは、みなとにあるぼろそうこ。

ああみつけたぼっちゃん、あんなにぐるぐるまきになって。だいじょうぶこれっくらいのろーぷならおれがちぎってやれる、さあにげようぼっちゃん、もうじきおうえんもきてくれるから。

みみをつんざくじゅうせいひとつ。やばい、きづかれた。
それでもおれたちははしるしかない、にげるんだ、ぜったいに。

ふとふりむくと、やつらはぼっちゃんをねらっていた。おれはむがむちゅうで、じゅうをもったそいつにたいあたり。ぼっちゃんがとおくなる。それでいい、はしってくれ。


ずどん!!!!


わきばらにものすごいいたみがおそってきた。おもわずぜんしんのちからがぬける。まだだめだまだだめだ、ぼっちゃんがにげきるまでじかんをかせぐんだ。


ずどん!!!!


ああこんどはあしにいっぱつ。もうおれははしれない。ぼっちゃんがちっぽけなてんになっているのがみえる。あしおとも、もうきこえない。

とおくから、ぱとかーのさいれんのおと。わるものは、おれをおいてはしりさっていく。
おれはひとりつめたいゆかで、どくどくとちをながしつづけている。

ああぼっちゃん、ごめんなこわいおもいさせて。おれがふがいないばっかりに、にがてなかけっこやらせちゃったな。ごめん、ごめん、だめなぼでぃーがーどで。
どんどんけしきがくらくなる。ああおれもうしぬのかな。ぼっちゃん、おれのぶんまでいきてくれ。ぼっちゃんのためにしぬんなら、おれほんもうだから、だから、だからさ……


わるものは、つかまった。けいさつがかれらをぱとかーにほうりこんでさっていく。
『かれ』のこどうはもうとまっていた。
いつしかあめがふってきて、あなだらけのやねをぬけてそうこのゆかにふりそそぐ。
あめとちがまざりあうなかにすわりこんで、せいふくがよごれてしまうのもかまわずに。

ぼっちゃんは、きんいろのけなみのいぬを、いつまでもだきしめていた。

【ある ゆうかんなかいいぬの いのちのおわり】

□ 359-360 □
【ある うそつきの いちにち】

へやの とびらが いやなおとをたてている
そとから とびらを やぶろうと しているんだろう
どかん どかんと たたきつけるような おとがする

もう やぶられるのも じかんの もんだいだ いきを ひそめる
のこり すくない たまを じゅうに そうてんして くらがりで はいきこうの おおいを はずす
かたわらで みを かたくしている うけの てを にぎり みあげてくる ひとみに あんしんさせるように ほほえむ

ここを でたら やくそくした ばしょで おちあおう こえには ださず てのひらに ゆびで かく
いっしょでは ないのかと めを みひらいて くちをあける うけに しー、と くちびるに ひとさしゆびを あてて

いまは ぶんさんしたほうが あんぜんだから な おれは こういう あぶない はしは わたりなれてるし
ふるえながら ぎゅっと にぎってくる てを そっとにぎりかえす よしよし、となだめながら いいきかせる
ぜったい ふりむかないで にげるんだぞ いいな

かなしい めを して じっと みつめてくる
きれいな めだなあと ばちがいに おもって すこし おかしかった
まもらなくちゃ いけないな こいつだけは ぜったいに

おれ うそ ついたこと ないだろ?
しんじて
そういって かみを なでる

こく、こくと ちいさく なんども うなずいて かたに しがみついてくる
その こぼれそうな なみだめに せつなくなって きすをした
ほこりだらけの せかいに ふたりだけしか いないみたいだった

ひときわ すさまじい おとがして はげしい あしおと
とびらが やぶられたんだ いそいで うけを はいきこうに おしこむ
またな そういってわらうと はい とうなずいて いいつけどおり ふりむかないで すすんでいく

すなおで いいやつだったなあ
じゅうだんが とびかうなかで おもいかえす なきがお ねがお かすかな ほほえみ
やくそくの おかの うえで さいしょに した きす いっぷんごの にどめの きす
おずおずと だきかえされた てと からだの ぬくもり

ああ

やくそく まもれないけど あいつ なかないといいな

からっぽの じゅうが ゆかに ころがる
はじめての うそだけを のこして ゆっくりと めをとじる ある うそつきの とうとつなおわり

□ 615-618 □
【ある すいへいの いちにち】

かんぱんみがきを はじめるまえに
きびしい しれいかん おきだしてきた
きげんがわるいと けんつくくらうとゆうめいで
いつどやされるかと ひやひやしてた

しれいかん きげんよさそうに
へたなくちぶえ ふいていた
あしで かんぱん ぱたぱた たたき
くるったりずむを とっている

ここでにやにや してしまったら
にらまれ かみなり おとされるから
みざる きかざる いわざるで
だまって かんぱんみがいてた
どすんどすんと あしおときこえ
ぎそくの かんちょう やってきた
かんぱんみがきを つづけるおれを
じゃまそうに じろりと ひとにらみ

かんちょう ぶすっと うらめしそうに
おれがどくまで にらんでた
みがきのこしが きらいなくせに
なんで きょうは おいはらうんだ?

すいへいなかまに うでをとられて
ばーじのかげに ひきずりこまれた
そいつら しっと ゆびをたて
こそこそまわりをうかがった
「いじっぱりのしれいかん みられてちゃ ともだちとだって すなおにはなせない」
「きげんのいいしれいかん かんちょうだって ゆっくりはなしたいにきまってる」

しれいかんが ちいさくわらうのがきこえ
おどろいて そっちをみてみると
かんちょうは わらうしれいかんを
うれしそうに ながめてた

はるか くもの うえにいる
えいゆうとよばれる にんげんたちも
ともだちといるのが たのしいなんて
けっきょく おれたちと おんなじなんだ

なんだか おれも うれしくなって
ついつい にやにや ながめてしまった
しれいかん はっと こちらにきづき
さっと かんちょうと きょりをとった
かんちょうのめは さみしそうに
ふしぜんにあいた きょりをみてた

あーはん と しれいかんはせきばらいをし
あーあー と すいへいなかまはためいきをつき
しゅん と かんちょうはくちをとざし
どうしよう と おれはおろおろしてた

おいてをうけて ひたはしる
まだ うすぐらい かんぱんで
せんとうと せんとうの あいまにあった
ある すいへいの いちにち

□ 641-645 □
【ある じゃくしょう まふぃあの かんぶのいちにち】

おれとあいつは ながいつきあいになる。
ばかなこともやり いろいろとおもいを はきあってきた。
しかし、いまのおれとあいつは たいりつする はばつにぞくする。
あいつのていあんする きかくは おれのはばつを おいつめる。
あいつがいれば、いずれはおれがしぬしかない。
あいつをころすしかない。

そんなしょうどうに つきうごかされ、
まよなかに、おれは あいつのいえのまえまできた。
ふところには ないふをしのばせている。

でも、
こんな ひんそうなもので あいつをたおせるわけがない。
そう、こころのなかから こえがきこえる。
ぶどうのゆうだんしゃだし びんしょうだし。
あいつとけんかをすると いつもまけていた。

なによりおれのこころが あいつのしょうしつを きょぜつしている。
こんなしんじょうで あいつをおそうなんて むりだ。むぼうだ。

げんかんのまえで たちつくしていると、
ちょうど きたくしてきた あいつにあう。

「なにをしているのですか? はいったらどうですか?」
むかしより くちょうはていねいになったが、えがおは むかしのままだ。
それにみちびかれて おうせつまにて ついおちゃをごちそうになってしまった。
なにをやっているんだ おれ。

「で、ようけんは なにですか?」
きゅうに まじめになるよこがお。
しごとのことだと ことばをにごすと、まゆねをよせて くちをとざした。
しごとでみせる れいこくさと、ふたりでいたころの あたたかさがにじむ
へんなひょうじょう。
「あなたこそ、ひとのことを いえるのですか?」
かんそうが そっちょくにでたらしい。ふきげんにかえされた。

それから しごとのはなしになった。
なんどもくりかえされ、ないようがきまりきってしまった とうろん。
おわりのないぎろん。

へいこうせんをたどる はなしのはてに。
「むだですね」
はきすてられた そのひとことが、おれのからだに しゅんじにしみこむ。
らんぷのひのように、あふれだすおもい。
じぶんのたちば、ぶかたち、にげられないげんじつ。
すべてが あたまにねつを あつめる。からだじゅうがあつい。
ふところのきんぞくも もえあがりそうだ。
きがつけば、おれは こういっていた。
「おまえがじゃまだ」

ひだりてを そふぁの せもたれにおき、ふりむきざまに そふぁをのりこえる。
ちゃくちしつつ さかてで ないふをぬきだし つきだしたのを、
あいつは うしろにすてっぷをふんで かわす。
りょうの こぶしをにぎり からだのまえでかまえながら、
あいつは かるく かたをすくめ、ためいきをついた。
それが、おれのなかのげきじょうを さらにもやす。

「しかたないだろ! どっちかがしななきゃ ならないんだよ!!」
さけんだこえは、おれにも なきわめいているようにしか きこえなかった。
どうじに せをひくめて とつげきする。
みをひねりかわそうとするあいつ。
でも ないふのきどうは あいつのむねに むかっている。

やったとおもった しゅんかん。
あいつの つきだしたこぶしが おれのうでをたたき、
ないふは ささるちょくぜんで いちをずらされる。
ぜっこうの ちゃんすのつぎには さいあくのしゅんかんがおとずれる。
がんぜんにせまる こぶし。
すぐにやってくるだろう しょうげきに、おもわずひとみをふせた。

………
しょうげきはこない。いや、ちょくぜんに てくびがひかれた。
そしてかわりに、からだへとまぶされたえきたい
あつい。あつい、どうしようもなく。
きがつけば、てには はな。あかいあかいあかい てのひら。
ながれていくのが、あいつのちなのか おれのこころなのか わからない。

あいつのたいせいがくずれる。おもわずてがのびた。
ふくがさらにあかくそまるが きにしない。
いまだけは、ほかのなにもかもから めをとざして
あいつだけをみる。あいつだけをかんじる。
はくいきが あたたかい。いっしょにいたころの、うでのなかのように。
「あほ。ねらいが わかりやすすぎなんだよ」
むかしのくちょうでかたりかけると、あいつのからだから ちからがぬけた。
さいごのことばがそれかよ。

じょじょにぬくもりのうしなわれるからだ。
うでが おれのからだをすべりおち、じめんへとからだがよこたわる。
ふたりがひとりになったしゅんかん。めから なにかがしたたりおちた。
むなしい。うつろだ。

でも、もうなみだをみせることはゆるされない。
それがおのれの えらんだみちだから。
こころで、そうくりかえしつつ、くちびるをかみながら
かつてのしんゆうをみつめつづける、
そんなおとこのよふけ。

□ 707 □
【ある ほへいの いちにち】

なきごえが きこえて おもいまぶたを むりやりもちあげた
かみが ひたいに はりつく ふかいなかんしょく
なつのあつさと しっけで あせだくになったからだ
いたみを ちかくするとどうじに おもいだした

でんれいを うけて きしゅうをかけたつもりが
くせんを しいられて いつのまにか かこまれた

れつがみだれた しゅんかん あいつをねらう てきにきづいた

おもわず だんどうをさえぎるように とびだしていた
まさか このおれが こんなはんにんまえを かばうなんて な

えみをうかべたおれに きづいたあいつが かおをゆがめて どうして、とつぶやく
はんにんまえの くせに おれの こうどうに もんくをつけるんじゃねえ

いきをするのも つらくなってきた むねのあたりが やけるようにうずく
きずがふかいことなんか みなくたって わかる
ろれつの まわらないしたで ひっしに さいごの ことばをつむぐ

「       、       。」

□ 739-741 □
【ある かいじょう じえいかんの いちにち】

じぶんは かいじょう じえいかん
いっそう すうひゃくおくえんの ふねにのる
うみの おとこ
でも まだまだしたっぱ じゅうはっさい
ことし にゅうたいしたばかりの にし
むかしでいう にとうへい

きょうは しゅっこう
みなとには くるーの かぞく つめかけて
わかれを おしむ
おくさん こども はんとしの わかれ
ないている おんなのひともいる
きっと かのじょか にいづまだ

そのいっぽうで じぶんが わかれをつげるあいては
にっぽんの このだいちだけ

かぞくとは ぜつえんじょうたい
こいびとも いない
ゆいいつ きてくれそうな あいつも
きょう このじかんにかぎって だいがくの しけん
ほかのひだったら じゅぎょうをさぼって
きてくれたはずなんだが

しあわせそうなかぞくを よこめでみながら
ぼやけた しかいに
あわてて めを しばたたかせる
さみしくは ない
だいちには こいしく おもうような
にんげんはいない

そらは はいいろ おもたいいろの くも
あめが ふるだろうか
しけにならなければ いいんだが

それがきたのは じぶんがふねにのる ちょくぜんのこと

「○○さん?」
とつぜん しらないこえで なまえをよばれた
ふりむくと かおもしらないひと
みんかんじんらしき わかいおとこ

けげんなかおをすると そのひとは
「まにあって よかった てがみ あずかってるんだ」
そういって あいつのなまえを だした
ぼうぜんとした じぶんに しろいかみきれ おしつける

おれいをいうまえに そのひとはさっていき
じぶんはぼんやり かみきれを ひらく

みなれた あいつのもじ
……やさしいことば

てが ふるえた
なぜあいつは おれに こんなてがみを かくんだ
だいちが こいしくなるじゃないか
さみしくは なかったのに
だいちに こいしくおもうような にんげんは
いなかったはずなのに

しおかぜのなか
こらえきれなかった すいてき ひとつぶ
こんくりーとの だいちに おちていく

さみしくさせるな ぼけ ばか
そうやって あくたい つきながら
ていねいに かみきれをたたむ

でも じぶんも おなじかも しれない
あいつを さみしくさせているのかも しれない
そうおもったら なんだか うれしいような 
へんな きもち

しゅっこう ちょくぜん
かみきれを にぎりしめる
ある ちょっとひねくれた じえいかんの いちにち

□ 743 □
【あるおとこのいちにち】

しょうねんのてをひいてはしる
けっしてすきになってはいけない だけどおれはかれのてをひいている

ようやくおってをまいたか
はいおくのかげにかくれてひといきつく
はじめてじぶんのわきばらが ちぬれているのがわかる

おれのほうがあしでまといかよ
ついじちょうのえみがもれる
しょうねんがふあんそうにみあげるのを えがおでこたえる

「あとすこし おってがくるだろう おまえはさきにいけ
 おれはそいつらをやってからおまえをおいかけるから」

いやだいやだとなきさけぶしょうねんのくちびるをふさぐ
もうしびれかけているうでで ほそいからだをだきしめる
「あいしてるよ たのむからはしってくれ さあ!」

しょうねんがいくのをみおくったあと せなかでなにかがはじけた
ふりむきざまにじゅうをぶっぱなす
にんげんがたおれたおとがするが しかいがくらくてよくみえない

おとこはあおむけのままいのる
どうか かれがにげきれるように
どうか かれがひとりでつよくいきてゆけるように
さよならもいえなくて ごめん

だれもいないまちのよるがおわる
さよなら
つぶやいてめをとじた あるおとこのさいごのいちにちはこれでおわり

■ 251-253… ■ 

どくりつしています。
こちらへどうぞ。

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