あるふぁんたじー・じだいげきなひとたち の いちにち 1.5

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25 45-46 226-227 327-328 348  ■  みっかよりながいにっき / 478…

□ 25 □
【ある しかくの いちにち】

にわとりのなきごえ あさもや つめたい いどのみず

ながやのすみに ひっそりとくらす せめとうけ
ろうにんに みをやつした せめは おうようで ものごとに こだわらない
ころがりこんできた うけを なにもきかずに すまわせている
おいえそうどうで あらそいが たえない くにもとの
しんせきすじから おくりこまれた しかくだなどと しらないままに

たきたての めしのにおい みその こげるにおい
なれた せめの あせのにおい あまい みずのにおい
そんなものに なれてしまっては ならないのに
いつか せめを うらぎる そのときに ちゅうちょがあっては ならないのに

きょうも たきたての めしのにおいに ねこのように めをほそめて
せめは なにもしらずに たたみにねそべっている

うけは ひものをやきながら いつかくる けつべつを おもう

よめも ちいも いらぬなあ
ふいに せめのつぶやきが きこえて てをとめる うけ

おぬしが いてくれれば なにもいらん

おぜんに ととのえた あさめし
ゆげのたつ みそしる ごはん ひものに こうのもの

つくった このてで いつかせめを ころすのだと
おもえば なみだが とまらない ある しかくの つかのまのしあわせ

□ 45-46 □
【ある のろわれた いきもの のいちにち】

きづいたときには じぶんは すでに ひとではなかった
ばけものとよばれ ひとに いしもて おわれた
そして みをまもるために ひとをころした

ぜつぼうし いのちをたとうとしても
この のろわれたからだは しぬことも ゆるされない
おわれ みをかくしながら いきる

いつしか ひとをころすことにも なれてしまった
おれは みもこころも ばけもの になったのだ

あるひ おわれて ようやくにげだして
ちをながし たおれていたおれを てあてしてくれた かれ
なにもきかず ほうたいをまく かれのやさしさが うれしかった
じぶんには もう ひとのこころは のこっていないはずなのに

すじょうをかくし かれにあう
もはやおれに ひとをあいするしかくはないのに かれをおもうきもちがとめられない

そして しる かれが はんたーであることを

だけど やさしいかれは ひとのこころをなくしたばけものすら
ころすことを くるしんでいる
それでも ひとをまもるため かれは ばけものをころす

おれはねがう
かれが おれの のろわれたいのちを おわらせてれることを
そして かれのこころのかたすみに ちいさなきずとしてのこることを

ねがいをいだいて はんたーのところにむかう ある のろわれたいきもの のさいごのひ

□ 226-227 □
【ある きしの いちにち】

あかい ふきつな つきを みあげる うまにのったきしが おかを のぼる
きしの よろいも まっかっか ちにそまって まっかっか
うまの うしろに のせた せいねんに くらに つかまるように いう

わたしに しがみついては いけない かえりちが うつる
そう いっても せいねんは なにかに おびえるように ちに そまった きしの よろいに しがみつく

もう なにも しんぱいは いらぬ
おまえを うったものも かって もてあそんだものも わたしが きった
まだ おってが くるようなら それも きりすててやる
だから わたしに しがみつくな

そっと おしやり まんとを つかませる きしのめが すこしだけ やさしく かなしく なる

そなたが けがれて しまう

うまを とめて そういうと せいねんが みあげてくる
その てと しろい ふくは しがみついた おかげで ちに よごれていた
おおきな あおいめが きょうかいの まえに たっている しんぷを みつける
きしは かるく しんぷに えしゃくする

あそこは おそろしいもの けがれたものから まもられた せいなる ばしょだ
こころの うつくしい かたがたと いっしょに あそこで かみに いのるが いい
そうして いやなことは わすれてしまえ

しずかに つぶやく きしのうえに あかいつきが こうこうと てる
ふきつな あかい つき ちまみれの きし ちまみれの て
おそろしい はずの そのながめを せいねんは せいなるものを みるように みた

さあ いくがいい
かみが そなたを みちびかれ すくってくださるだろう

いいえ

くびを ふって せいねんは はじめて つぶやいた
わたくしを みちびき すくって くださったのは きしさまです
みずから うまを おりて ちまみれの きしの てをとり くちづける

きしさまが すくわれますように わたくしは いのりましょう

ほんの かすかに きしは ほほえみ たづなを とった
いま のぼってきた おかを うまで かけおりる

ふもとまで たどりつき おかの うえの きょうかいの とうを みあげて
そっと せいねんが ふれた てのこうに くちづける
せいねんが こころ やすらかに くらすようにとねがう きしの いちにち

□ 327-328 □
1>>339-340
【ある ぎんぱつの おとこの いちにち】

あさ めを さまして よこを みて
まだ ねむっている あなたを ながめて
その いきづかいを ききながら
まだ いいだろう と また めを とじる

ひる めを さまして よこを みて
となりに いない あなたに きづいて
きものを はおって ろうかを わたり
ほんどうで いのる すがたを みつける

おはよう
おはよう

……はやいか?
いいや

くっと わらって あたまを かいて
となりに いって せなかに もたれる

つづけろよ ここで きいているから
きょうの いみなど わからぬだろう
ああ わからない
ならば なぜ

あなたの こえが すきなんだ

ふわりと にがわらいをする けはいと
ふたたび はじまる どきょうの こえを
あわせた せなかと うしろでの ゆびで
すいこむように うけとめる

ゆうぐれ すぎて よるが きて
くちづけを して だきあって
いまの しあわせに ほほえんで
さきの みえない ことに おびえて

それでも ふたりで そい ねむる

そんな ゆめばかり くりかえし みる

もう かみの いろも すっかり ぬけた
ある としおいた おとこの いちにち

・1スレめからのけいぞくにっきです。

□ 348 □
【あるたたかうおとこのいちにち】

あすは さいごのたたかいだ と
あなたはいう とてもおだやかな こわいろで
よかんはしていた りんとした あなたのよこがおに
しのいろはみえないけれど

との わたしが あなたより さきに ゆくことを おゆるしください
わたしは あなたのたてとなり
さいごをむかえたくおもっています

あなたはわらって わたしをだきよせる
もとより わたしよりもさきに しぬつもりはない
わたしを ひとりには しない と

ああ ああ あなたを あいしています
わたしの ふるえるこえをつつみこむ あなたのくちびる
なみだがあふれて とまらなかった

よがあけた さいごの ひ
よろい かぶとをみにつける
おたけびと むらに のこったもののしせんのなか わたしにはうまをはしらせる

きょうは あいするものよりも さきにしぬために
せんじょうにむかう あるたたかうおとこのさいごのいちにち

■ 478… ■ 

どくりつしています。
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