□ 86 □
[ある おとうとせめの いちにち]
やっぱりきょうも きていた
ふくにはあいろん てーぶるにはあったかいごはん
そして あったかいえがお
↓
ああ まったくごはんがおいしい
にこにこわらってないで そっちもたべたほうがいいよ
・・・たしかに つくったときは たべたくないけど
うまそうにたべるおれのかおを にこにこしながらみてる
↓
さいきん つけてる くろいきぃほるだー
あんたは ともだちからもらったって いうけれど
げんていひんだ って じまんしてた あのおとこのかおがうかぶ
たかくて めずらしい くろかわのそれ
だいじそうにする あんたは あいつをみてるの?
↓
きょうこそ といつめてやるんだ
そうおもって はしをおいて むきあう
でも そこに たいせつなひととの かんけいが たちはだかる
これで このしあわせがくずれたら そうおもって
おれはまた あきらめて なんでもないって いってしまう
↓
へんなやつだなってわらうあんたが
ほんとうにすきだから
といつめるゆうきも わきおこらなくなるんだ
□ 272-273 □
【とうぼうちゅうの きょうあくさつじんはん のいちにち】
ろじうらとも ごみためともつかない うすぐらいばしょを
ひとり うろついていた。さいしょのきおく
↓
「かれは ふあんていすぎます。
まわりのこどもたちに…えいきょうが…」
もちまえの ぼうりょくへきに
しすたーたちも もてあました おれをひきとったのは、
とある しょくぶつがくしゃのおとこ
いんしょうてきな そのめは、
はとのはねのように あおみがかった
やわらかな はいいろを していた
↓
「あまり とおくへいくなよ」
「うるさい、だまれ おっさん」
かまいたおすでもなく つきはなすでもなく
いつもそばにいる ふしぎなおとこ
きにかけられているのだとしった
やしきのにわにさく はなのなまえを おぼえきったころ
かれは ただひとりの かぞくになっていた
「かぞくが ふえるんだよ」
あるひ、とうとつに かれはいった
かたをだかれ、かれのとなりで ほほえんだ
みおぼえのある あかげのおんな
かれの つまになるおんなだと さとった
あたまのしんが すっと つめたくなった
↓
あんたが きにかけるのは おれひとりでいい
おれのかぞくは あんただけでいいんだ
どうして それがわからない?
だからころした
↓
けいさつのてをのがれ、
ゆくさきざきで あかげのおんなを てにかけた
あのおんなのしあわせそうなかおが やきついてはなれない
あたまのなかで くろいけものが あばれだし
きづけばまた よるのまちを ぶらついている
↓
いつものように なきがらにそえた しろいはな
「ほんによって ちがうんだ、いいかげんなものさ」
そんなことをいいながら、いつかおとこがおしえてくれた
しろつめくさの はなことば ”きみをおもう”
いちばんみちたりたきおくのなか、かれがわらった
↓
いきてあうことは にどとないであろう
やしないおやの おもかげをだいて ねむりにつく ごぜんよじ
いまも じぶんを つきうごかしつづける しょうどうに
しっとと なのつくことを しらない
れんぞくさつじんはんの よあけまえ
【ある○○のいちにち】in 801 since 2004/5/15