ある かぞくの いちにち 2

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86 272-273

□ 86 □
[ある おとうとせめの いちにち]

やっぱりきょうも きていた
ふくにはあいろん てーぶるにはあったかいごはん
そして あったかいえがお

ああ まったくごはんがおいしい
にこにこわらってないで そっちもたべたほうがいいよ
・・・たしかに つくったときは たべたくないけど
うまそうにたべるおれのかおを にこにこしながらみてる

さいきん つけてる くろいきぃほるだー
あんたは ともだちからもらったって いうけれど
げんていひんだ って じまんしてた あのおとこのかおがうかぶ
たかくて めずらしい くろかわのそれ
だいじそうにする あんたは あいつをみてるの?

きょうこそ といつめてやるんだ
そうおもって はしをおいて むきあう
でも そこに たいせつなひととの かんけいが たちはだかる
これで このしあわせがくずれたら そうおもって
おれはまた あきらめて なんでもないって いってしまう

へんなやつだなってわらうあんたが
ほんとうにすきだから
といつめるゆうきも わきおこらなくなるんだ

□ 272-273 □
【とうぼうちゅうの きょうあくさつじんはん のいちにち】

ろじうらとも ごみためともつかない うすぐらいばしょを
ひとり うろついていた。さいしょのきおく

「かれは ふあんていすぎます。
まわりのこどもたちに…えいきょうが…」
もちまえの ぼうりょくへきに
しすたーたちも もてあました おれをひきとったのは、
とある しょくぶつがくしゃのおとこ
いんしょうてきな そのめは、
はとのはねのように あおみがかった
やわらかな はいいろを していた

「あまり とおくへいくなよ」
「うるさい、だまれ おっさん」
かまいたおすでもなく つきはなすでもなく
いつもそばにいる ふしぎなおとこ
きにかけられているのだとしった
やしきのにわにさく はなのなまえを おぼえきったころ
かれは ただひとりの かぞくになっていた

「かぞくが ふえるんだよ」
あるひ、とうとつに かれはいった
かたをだかれ、かれのとなりで ほほえんだ
みおぼえのある あかげのおんな
かれの つまになるおんなだと さとった
あたまのしんが すっと つめたくなった

あんたが きにかけるのは おれひとりでいい
おれのかぞくは あんただけでいいんだ
どうして それがわからない?
だからころした

けいさつのてをのがれ、
ゆくさきざきで あかげのおんなを てにかけた
あのおんなのしあわせそうなかおが やきついてはなれない
あたまのなかで くろいけものが あばれだし
きづけばまた よるのまちを ぶらついている

いつものように なきがらにそえた しろいはな
「ほんによって ちがうんだ、いいかげんなものさ」
そんなことをいいながら、いつかおとこがおしえてくれた
しろつめくさの はなことば ”きみをおもう”
いちばんみちたりたきおくのなか、かれがわらった

いきてあうことは にどとないであろう
やしないおやの おもかげをだいて ねむりにつく ごぜんよじ
いまも じぶんを つきうごかしつづける しょうどうに
しっとと なのつくことを しらない
れんぞくさつじんはんの よあけまえ

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