あるどうぶつ の いちにち 2

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□ 454 □
【あるくろねこのいちにち】

あるいっぴきのくろねこが
まどがらすのむこう
いっぴきのきんぎょにであいました

くらいへやのなかで
きんぎょはまぶしいほどあかくあざやかでした
くろねこはそれをじっときんのめでみつめていました
かれのめにうつるのは
あかいかがやきと、そのおびれ

かぜになびくようにたゆたうあれのおびれ
ああ
このまどがらすがなければ
あれをつかまえることができるのに
ですがくろねこはしってます
つかまえると、あれはしんでしまうということ

あかはそのあざやかさをうしない
めはひらいているがなにもうつすことなく
おびれももうひるがえることもない

だからくろねこはまどがらすにかんしゃします
あれはいきているからこそ、うつくしいと

まどがらすのむこう
あかくひかるきんぎょをせに
おびれのようにしっぽをなびかせる、あるくろねこのがらすのこっちがわ

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□ 455-456 □
【あるきんぎょのいちにち】

あるひ まだあるじのかえらないくらいへやで きんぎょはめをさましました

あるじのかえりはおそいので へやがあかるくなるのもよるおそく
よるおそくにめがさめて ひるまにねむる だいたいはそんなせいかつでした

あかりのきえたままのへやはくらく
ひかりといえば かーてんのあいたまどからさしこむ わずかなそとのひかりだけ
くらいへやのちいさなすいそう きれいなみずのなかを ひとりおよいでいました

ふと かんじるしせん

きんぎょはそちらをみようとはせずにただゆうゆうとおよいでいました
ゆらゆらとたゆたう じぶんのおびれに いたいほどのしせんをかんじながら

きんぎょはしっていました それがくろねこだということを
きんぎょはしっていました それがじぶんをころすものだということを

いちどだけみたくろねこのすがたは そのくろいけなみも きんのめも
すいそうのなかのきんぎょのせかいには おどろくべきもの
そんざいじたいが きんぎょにとっていむべきもの
けれど とてもうつくしいと きんぎょはおもってしまったのです

へやがくらいうちはやすんでいたきんぎょは
ときおりくらいうちにめをさますようになりました
そういうときはきまって このいたいほどのしせんをかんじました

みないようにすればするほど せをむければむけるほど
じぶんのおびれが くろねこをひきつけるなどと しるよちもなく
じぶんのこころが くろねこへむくなどと しるはずもなく

きんぎょはまどがらすにかんしゃします
じぶんとくろねことをへだてるものこそが このかんけいをまもってくれると

すいそうのなか
みずのなかにいるというのに やけつきそうなかんかくさえおぼえながら
やけつくということをしらない あるきんぎょのこちらがわ

□ 519 □
【あるかいねこのいちにち】

おれは しつないがい にされとる しがないかいねこ
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きょうもきょうとて ひるねでもしながら
おれのどうきょにん まさひろのかえりをまつ
↓↓↓
そんなおれにもてんてきがおってな
どうやらきょうは そいつがきたみたいや
↓↓↓
たまにくるそいつは
うちでめしくったり げーむしたり まさとしゃべったりしてかえってく
↓↓↓
それだけなんやけどな でも そいつがかえるとき まさがちょっとさびしそうなかおすんねん
↓↓↓
だからおれはそいつがきらいや
なんでもっといっしょにいてやらんねん

まさに そんなかおさせるやつなんか きらいや
↓↓↓
だからおれは いつもそいつがきたら じまんのつめでひっかいてやんねん
うちのまさ ふこうにしたらゆるさへんで ほんま
おい きいてるんか

そんなかいねこの とあるいちにち

□ 732-733 □
【あるおとこのいちにち】

またくるよ そういってへやをあとにする きゃくじんのせなかをおった
ぎょろりとしためで いつもくちをへのじにまげているおれは
あいそがないとか かわいくないとかいわれて なんどもからまれた
でもいまは そういうふうにうんだおやにかんしゃしている

どっかのばかみたいに ふだんからへらへらあいそふりまいてたら
さっきもかれのまえでむりをしなければいけなかった
おれはうそがへたくそだ
いつだったか いえのしょうじをあやまってやぶいたときも
そしらぬふりがつうようしたのは ごふんていど
ましてそんなむりは かれにいっしゅんでみやぶられてしまうにちがいない

たとえば このきゃくじんみたいに
ただのかぜだろ?おおげさにてんてきなんかつけてんなよと
ふざけて かれのかたをばしばしたたいて
はなびたいかいにいきそこねたかれと らいねんのりべんじをやくそくし
かりっぱなしのしーでぃー こんどがっこういったときかえせよとかれにいわれ
わかってるよと わらう

へやをでたとたん こえをころしてないたくせに

そんなむりをしなくて おれはほんとうによかった

きゃくじんをみおくってへやにもどると かれもないていた
おれにきづくとすぐさまえがおをみせ おれをだきあげる
かつて めがこわいだの あいきょうがないだのいわれていたおれを
すくいあげたおさないちいさなては
いつのまに こんなかれきのようにほそくなっていたのだろう

…おれ うまくわらえてたよなあ

つくづくおれは にんげんにうまれないでよかったとおもった
ふたりそろって ぎこちなくわらい つかのまのゆめをみて またなとわかれる
そんなぶきようで こっけいなやりとりをしなくてすんだ

でも

もしもくちがきけたら
あいつのかわりにかけてやりたいことばがたくさんあるのに
もしもちからづよいうでがあったら
あいつのかわりにだきしめてやれるのに

ありがとうのひとこともいえず
ただにゃあとなくだけの あるねこのいちにち

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【ある○○のいちにち】in 801 since 2004/5/15