あー なつかしいな
↓
しんぶんをみながら せめがぽつんとつぶやいた
↓
なに いきなり
せんたーしけん きょうだったんだな
↓
ほら とみせてくれたしんぶんには
いまではいみふめいのきごうたち
↓
いまやったら もうできねえよなあ
あたりまえだろ おれらいくつになったとおもってんの もうにじゅうはちだよ
↓
もう じゅうねんも たったんだよ
↓
はじめてあったのは せんたーしけんのひ
まえのせきのせめに えんぴつけずりをかしてやった
↓
にどめにあったのは ほんめいのこくりつのぜんきしけん
あのときはありがと そういってあったかいおちゃをくれた
↓
あれから じゅうねん
いまじゃ となりにいるのが あたりまえ
↓
なあ いまからやってみない これ
↓
それはおれにたいするちょうせんだな
↓
よし そのしょうぶ うけた
↓
かくものとかみをさがしながら
ものわすれのおおいせめには ぜったいにまけてやらないとけついする
ある うけの ふゆのいちにち
□ 15-16 □
【あるとししたぜめのいちにち】
いえにかえるとねんぱいうけがほんとにらめっこしていた。
どうやらせつめいしょらしい。ちかくにはけいたいのはいったはこがおかれている。
そういえば、きたくまえのでんわで、このまえこわした
けいたいのかわりをかったっていっていたな。
よこからのぞきこんでみるが、それにたいするはんのうもない。
どうやら、まえのものよりそうさがふくざつであるらしい。
↓
しんけんなよこがお。おもわずわいたいたずらごころのまま、みみにいきをふきかけてくる。
いきをつめるかれ。よこめでこちらをみやることすうびょう、
きがつけばげんこつがおちていた。
しかいがまっしろだ。いたい。
こどもか、おまえは。
つぶやいたねんぱいうけのこえはすぐにとだえる。
いつもならこの3ばいはもんくがつづくのに。
↓
あたまをおさえるおれをしりめに、ねんぱいうけはほんとしばらくにらめっこしていたが、
やがてけいたいをとりだしいじりはじめた。
なにごとかをつぶやきつつぼたんをおしまくっているが、やっぱりわかっていないらしく、
めにゅーをひらいてもすぐにまちうけのがめんにもどってしまう。
しょうじき、みていられない。
いらいらしたおれがけいたいをいきなりとりあげたのを、
かれがめをみひらいてみつめてくる。
ああ、このかいしゃのやつはつかったことがあるから…そうさは、こうかな。
たんたんとぼたんをおし、けいたいのせいのうをせつめいしていくうちに、
かれのめがそんけいのねんにそまっていく。
↓
すごいね、
とかんしんするこえに
どんなけいたいも、きほんてきなそうさはあるていどきょうつうしているから。
あんたも、まえのとおなじめーかーのをかえば、
すくなくてもいまよりはとまどわなかったとおもうよ?と
いらえるおれをみつめるかれ。
こういうときだけこどもっぽくもみえる、かんしんしたひょうじょう。
やば。こんなのみてたらしゅうちゅうできない。
あわててしせんをけいたいにもどす。
↓
ひととおりせつめいがおわりけいたいをねんぱいうけにかえすと、
ものすごいいきおいであたまをさげられた。
ありがとう。またわからないことがあったらおしえてくれ。
そういいながらえがおをむけられると、…このひょうじょうにおれはよわい。
やばい。このあとなにかおねがいされたら、どんなむちゃなようきゅうでもことわれないだろう。
↓
なにもいえず、ただあいそわらいをかえしながらこころのなかでどくはくする。
そんなとししたせめのほんわりとしたよる。
□ 47-48 □
【ねんぱいおとこと だいがくせいの あるいちにち】
もうおわったしけんのほんなんかみるな。
↓
おれのこえにふりかえったのは、どうきょにんのねんぱいのおとこ。
さきほど、しけんかいじょうからもどってきたばかりで
つかれているだろうに、かれはこたつにすわり
きょうかしょをずっとよんでいる。
きょうでてきた もんだいのちぇっくをしていたらしい。
かれはここすうつき、しごといがいでは ほとんどべんきょうばかりしていた。
あのしかくをとるのが かれのながねんのゆめなのは しっているが…。
↓
「…ちからがおよばなかったところがしりたいから」
↓
つぶやくようにそうかえし、また ほんへとめせんをおとすおとこ。
なんだかむっときて、うしろへといき すわりざまにせなかをだいた。
どうした? といわんばかりのしせんが こちらにむけられるが、
だまってうでをおとこのむねのまえでくむ。
↓
「おまえみたいにあたまがいいわけではないし、
もう としだからおぼえがわるくてな。
おまえの りはつさをわけてほしいよ」
「まだわかいだろう」
↓
こまったようなこえにむかんじょうなひびきのこえでいらえて、みをよせる。
ふくのしたの きんにくのかんしょくが やたらとあたたかくてなんだかくやしい。
↓
こちらのようすをうかがうものの、それいじょう はんのうないおれのようすに、
おとこはまた きょうかしょにめせんをおとした。
おれは くちはをひきむすぶと、てのひらをひらいて おとこのからだをまさぐりはじめる。
けっこうおぼえてきた からだのせんをたしかめるように ふれまわっていると、
ほんが こたつのうえにおかれた。
つづいておれのうでにかさねられる、おとこのりょうほうのて。
↓
かためでおれをみやりながら
↓
「いいかげんにしないと あしたがっこうにいけなくなるぞ?」
こまったような びしょうとともにささやく、こえ。
↓
やれるものなら やってみろとつめたくかえしながらも、
ないしんでは ひさしぶりに それもよいかもしれないとおもってみる、
あるだいがくせいのゆうがた。
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□ 52-53 □
【ねんぱいおとこと だいがくせいの あるいちにち】
きがつけば、そふぁの となりにすわった
おとこのからだを だいていた。
「さかっているのか?」
からかうこえに くちはがさがり、
はんがんになってにらみつけるおれ。
たとえそうでも、あっさりとかわすだけのくせに。
こうぎのこえに、かれのかたがふるえる。
↓
いえにかえり、いまにて かんびーるをあけていると、
どうきょにんの ねんぱいおとこがやってきた。
くびに たおるをまき、おかえりといいながら おれのよこにこしをおろす。
ただようほうこう。せっけんのふんわりとしたかおり。
どうやらおれはこれにさそわれたらしい。
↓
ながれていくじかん。なにもいいだせないおれ。
ふろあがりなのであろうかれの、あたたかな
からだのここちよさに、
みをまかせこのままで いたくなる。
↓
でも、
……はなれなくては。
↓
ときをとめたい こころをふるいたたせて
うでをほどこうとしたときに、
↓
またせているな。
おちついたら、りょこうにでもいこうな。
↓
おれのかたにまわされたて。
やや せをかがめ、しせんをちかづけて
かたりかけてくるおだやかなこえがこころにしみる。
↓
わかいころ くろうして、やっと こうこうをでたこのひとは、
きんねんになってようやく、じぶんのあるきたい みちを
すすみはじめた。
そして、かくじつにみちを あゆんでいる。
くろうといえば にゅうしのための べんがくくらい、
おやのかねでがっこうにかよう じぶんとたいひすると
なさけなくかんじる。
↓
われしらずつよくなるほうよう。
ゆびさきが、がんけんなせなかをたどる。
このひとのせなかは なんとなくだけれども、
ずっと おいこせそうにはない。
はなれずに あるいていくだけでも
せいいっぱいかもしれない。
でも、それでもよいから ついていきたいとかんじている
じぶんにとまどう、あるだいがくせいのよる。
【ある○○のいちにち】in 801 since 2004/5/15