+ ある あおいひとみのしょうねん の いちにち +

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□ 1.5 / 478 □
【みずいろのひとみの しょうねんのいちにち】

すかい・ぶるーにひろわれました
すかい・ぶるーは なんでそんなさわやかななまえになったかなー とぼやく
とあるくにのきしです
もとがようへいで まえのくにでは ちまみれ とよばれていたとか
「いまの なまえのほうがすきですが」
「おれはなじまねぇ」

いつひろわれたのだか あまりはっきりしません
のはらのなかに ぽつんといたのがわたしだそうです
かえしてらっしゃいと ひがないちにちおこられたとか
そうして しぶしぶと こども……わたしのいえさがしをしにいったのですが
むだあしだったようです
「なんでわたしは おぼえていないんでしょう」
「まあ そこんところは きかないおやくそくでしょー」

たぶん なにがしかのりゆうで もういえはないのでしょう
わたしを せわしてくれたにょかんは わたしがどろと ちに まみれていたと
そうおしえてくれました
すかい・ぶるーは きかせたくないというたいどなので こっそりと

すかい・ぶるーはしょうじき さがしにでるまでもなく きづいていたのでしょう
おくりゆうがないとしぶる しろのひとを げしと けってくれたことも
それでたちばが わるくなりませんかときいても このひとはわらうだけです

そういうひとなのですね きっと
「なんで わたしをひろったのですか?」
「んー」
さあ とくびをかしげます
「おれが そろいろなどとよばれているからじゃないかな」
ちまみれの こどもなど てもとにおかなくてもいいのにな

□ 1.5 / 484 □
【そらいろのひとみの しょうねんの いちにち】

すかい・ぶるーはさんだいめの きし
いちだいめは おうさまがいたじだい ふらりとやってきて78までいきた
にだいめは かれがおしつけたという たびのけんし
よいいえの でだったが くにがほろびたのだという

「で さんだいめが おれ」
「みな ながれものなのですね どうしてでしょう」
「おれにかぎっては なんとなくじゃないのかな」
「はい?」

にこく きょうどうえんしゅうにでてきた せんだいのすかい・ぶるー
なにか ひみつのでんしょというのをかかえて にげた
「おったのが おれね」
「……はい?」
「んで ふたりしてみちにまよって なんとかせいかん てとこで」
またにげた とにがにがしげにいう
おしつけられた くんしょうのようなものを しゃれいでもでるかととどけたら
「なんか じだいに けっていと」

「いいんですか そんなことで」
「いや おれもそうおもったんだけど すかい・ぶるーのこうのうはだな」
こうのう?
「しょだいがきてから いくさがいっかいもないことなんだそーな」
「それ ほんとうに きしなんですか」
「うむ あんまり すいきょうなんで おもわずひきうけちまったい」
きほんてきにのりの ひとなんだなと しょうねんはおもってみたり

□ 1.5 / 488 □
【うみのいろのひとみの しょうねんの いちにち】

すかい・ぶるーは ながいまんと ひきずるようにのてのてあるく
さばくのくににいたことがあるそうだ
「なんとなくないと おちつかない」
「なつとか あつくないですか」
「すなはないけど かぜはつよいくにだからな」
それで じゅふんをする しょくぶつもあるのだと かれはおしえてくれる

「さばくのくにが まえにいたくにですか?」
「いや そうでもないな まえのまえ ちょっとのあいだだよ」
「まえのくには?」
「ようへい とゆーか きぞくのがきの ちょうへいがわり」
「ながれもの なんですね」
「うむ かっこうよいかね?」
じぶんでいわなければ ですけども

「などといっても つかわれものだからね ただの」
「でもすごく うでがたつと ききましたけど」
「んー いくさ きらいだよ」
こどもみたい

でも このひと きずだらけ
せなかのきずも にげたのではなく ごうもんをうけたものだって
きがえのときにめがはなせないわたしを みてはいかんよと かためをつむる

いくさがないのは みわたすぎり このくにだけだ
だから ちちとははは このくにににげてきた はずだったのにな

□ 1.5 / 504-505 □
【あくありうむのみなぞこで すごす いちにちめ】

すかい・ぶるーがでかけてしまいました
「3かのあいだくらいかな つぎはつれてってやれるよ」
しゅっちょうだそうです そういえば すかい・ぶるーのしごとって いったい
なんでしょうか
いつもごろごろしてて たまにじゃがいもむいているくらいなんですが
(じゃがいもむきは とてもうまいです)

わたしはまだ じゅんすいにおにもつなので なにもすることがありません
しんかんさんが これでもよみなさいと ほんをかしてくれました
しんぷさんが ほんだなのばしょをおしえてくれました
なんで このしろに しんかんさんとしんぷさんと りょうほういるのかは
すかい・ぶるーにきいても さっぱりわかりません
わらっておしえてくれようとする しんぷさんを しんかんさんがなぐりました
しんぷさんがひとりだけのときに きこうかとおもいます

いま≪しろ≫とだけよばれてるここは もとはでじろのひとつだそうです
ちいさな かんぜんにしろのかたちをしていますが そのきのうはありません
たとえば ろうじょうせん なんてのはむりなんだそうです
どーむがたの あおいへきがのへやが たぶんいちばん だいじなへやです

このしろは しょだいのすかい・ぶるーのためだけにつくられたそうです
きれいで しずかなへやです
いっかいのながれきしに いれこんだのだという とうじのおうさまは
すこしずつ かたむいていったのだと しんぷさんはいいます

それはちちおやを はやくになくしたからだとも
しんようできるものが そばにいなかったからだとも いろいろいわれるのですが
きおくは うすれぎみで ただしいといいきれるひとは もういません

そのあいにも ちかいかんじょうを いっしんにうけても すかい・ぶるーは
たんたんと くにのためにつくし
そのちょうあいからなる りえきを ほとんど こくみんにむけたらしいのです
おうのひょうばんは ちにおちんばかり
けれどすかい・ぶるーのぜったいの ちゅうせいをうけて
たみはもう だれをあいせばいいのか だれをののしればいいのか

ゆいいつ うけとったのが このしろなのだそうです
ああ それと すかい・ぶるーのなまえと きしのしょうごう
「よくに かられることはなかったのでしょうか?」
「さあ いわなくてもあんらくな くらししてたんじゃねーの」
まえに あおてんじょうをみあげて きくと そんなへんじ
まあ さんだいめすかい・ぶるーも さして よくなどなさそうなひとですよね

たこくを とびまわる しょだいすかい・ぶるーを おうはぎょくざをぬけだし
ときどき このまっさおなへやで まちわびていたのだそうです

おうでなければ よかったと そのないーぶさに ひとはいい
けれどそうでなければ すかい・ぶるーは あらわれなかったと またいわれ
そんなふうに やゆされていることも あまりきづかなかったのではないかなと
けっきょくもどってきた なまけものしんぷさんが わたしにいいました

□ 1.5 / 521-522 □
【らぴすらずりのへきがのそこにて ものおもう ふつかめ】

すかい・ぶるーがいないせいか にょかんさんと しんぷさんとしんかんさんが
かわるがわる わたしをたずねてきます
「みっか? いつもはいっしゅうかんは いないのに!」
「そこはそれ せきにんをもったからではないかと」
しんかんさんが かおをしかめて しんぷさんがなだめる
なんだかそんなかんけいのようです なんでかいつもいっしょです

「つぎは いっしょにつれていってくれるそうです」
すとん としんかんさんが きれいなすそをへいぜんと ゆかにおとして
「どこにいくか あのひとはあなたにいいましたか?」
「いいえ」
「ならばいえませんが さんせいできません」
けれど おいていかれるのも あまりげんじつてきではないでしょうね

「そう ですね」
このひとが わたしをこのしろにおいてはいけないと いったのですが
それがあくいであったとは かけらほども そのときにも おもってません
「まえにもいいましたが すかい・ぶるーはわたしに 『ひとりでむだめしを
くうのは きがひけるからつきあえ』というのです」
そんなふうに じょうだんにでも
としはもいかぬこどもに だいしょうめいたものを ようきゅうするひとが
わたしはとても すきなのです
それよりなにかいうことなく しんかんさんは わたしをだきしめてくれました

「あげる」
としんぷさんに わたされたほんを あおいへやであけると すかい・ぶるーのな
しょだいがつかえた おうさまのにっきのようでした
しんぷさんは たこくのひととのことですし このしろでみつけたんでしょうか

      『いけを のぞきこむひとを みつける』
   『やたらはれたひ にごって ぎらぎらとひかるいけに』
     『そらのいろがうつっていますよと わらう』

すかい・ぶるーのことしか かいてないにっき なにをいったか なにをしたか
おうさまがなにを かんじたかすらどこにもありません

こまかいもじでよみづらいですが さいごのぺーじだけ ぽつんと

      『     happiness,       』

しんぷるですね おうさま あとははくし

あなたのついとうに ≪すかい・ぶるーのつかえたおう≫とのみかかれかけたと
そこまでいわれるわけですねと おもうのはいじわるでしょうか
「うらやましい でしょう?」
うぎゃ
め、めずらしい しんかんさんだけなんて
「また あれがきえたので あなたのところかとおもったんですが」
「きてませんけど でもなんで うらやましい なんですか?」
「そうおもわないですか? あなたは」
しんかんさんは すこしだけまじめなかおで にっきをてにとっています

□ 1.5 / 529-530 □
【たーこいずぶるーのへきがのなかで まちわびる みっかめ】

すかい・ぶるーが わたしといっしよにいることをえらぶまえ
それなりのしせついきが けんとうされていました
ただ そのためには りょうしんのしがしょうめいされないといけない
しぼうだけならともかく そのまえのせいぞんから しょうめいがいるのです
たこくしゅっしんの ものには そもそもとてもむずかしいのです それは

「きょうかえる やくそくね うれしい?」
「はい」
「しょだいさんもね こどもすきだったって」
「つかえたという おうさまですか」
「あはは おうさまもそうなのかもねー」
にょかんさんが やねうらをかいぞうしたという ひみつのへやをこっそり
みせてくれました
さいみつなしょうぞうが しょだいすかい・ぶるーの おうねんのよこがお

うれいをおびたような くろはいいろのめと おなじいろのかみ
……なんとなく めがあおいのかと おもってました

あおいへやで にっきをめくります
どこまでもとじたおうさまのせかい
そのかれがどこまでもとびだしていってしまう すかい・ぶるーのきせきを
たんたんとつづるのがきみょうで ふしぎですね

よみとれた かのきしは およそ なんでもできるひと
ひょっとしたら なんでもあいしていたのかもしれない こうしむせいな ひと

ふしぜんにみえて ふかいにおもうのは わたしだけでもないような
しんかんさんやしんぷさんは どうよんだのでしょう

あ ひょうしとれた
はがれてしまいました なんどか しゅうふくしたあともみえますね
『わたしの あおいめのおうへ』
『あなたがまっていてくださるのを よろこぶわたしはどうでしょうね』
『あなたは わたしのものではないのにね』
てがみ というより もとはめものようですが

……ええと

とりあえず ほかのひとらとおなじように みなかったことに
はったのだれですか いったい
のりをくださいと だいどころめいどさんにいったら わらわれてしまいました
わりとしられていることのようです

「ただいまー」
「おかえりなさい すかい・ぶるー」
「なにを かんがえこんでいるんだ? また」
「でんしょうのうつくしいひげきと みぢかなのろけのぎゃっぷについて」
「なんかむずかしそうだなぁ」
そんなことは ないようなきがしますが

「たいくつしてなかったか」
それどころではなかったきもしますが うなずいてしまいました なんだか

しょだいのすかい・ぶるー しあわせなのは あなただったのでしょうね

□ 1.5 / 676-677 □
【ある あおいひとみのしょうねん の いちにち】

すかい・ぶるーを どうよぶのかで きょうはすこし もめました
すかい・ぶるーはもと ながれもののようへい いまはきし
おなじなまえをうけつぐ さんだいめ
わたしをひろって てもとにおいてくれているひとでもあります

しょだいはよいのです にだいめのことは せんだい とよびます
さんだいめをどうよぶかという あるいみ へいわないさかいでしたが
「しょだいがせいじか にだいめがけいざいがくしゃ さんだいめにいたっちゃ
せんそうや だんだんひどくなるよな」
などと とうにんがいうので……どうしていつもなんかしらちゃちをいれないと
きがすまないのでしょう このひとは

「そうなのですか?」
「いってなかったっけか」
こんど わたしもえんせいぐんといっしょに つれていってくれるそうです
ああ このくににも ぐんたいいたのかと かんがえていたら
なんだか けんあくなふんいきに なっているようでした

こえがたかくて きらいなのです このひとの、こえ
ふさわしくないとか そんなことばだけききとれますけど
しんかんさんが いつのまにかよってきていて そっとみみをふさいでくれました
「あのかた だれですか」
「さあ どなたでしょう」
このしろには はいれないひとは きほんてきにいませんから
もちろんどんなひとがきても よいのでしょうが

ああ でも このこえきらい
「しんかんさんは あの どうよんだらよいとおもいますか?」
「なんの おはなしでしたっけ」
そういえば さきほどはいらっしゃいませんでした
「あ と わたしのすかい・ぶるーを」
じっさい なんとよべばいいのかな
くすくすと わらわれてしまいました じぶんのいったことばにきづいて いまから
なんだかはずかしくなってしまいました
「そう よばれたらよろしいのでは」

……え、よいのでしようかそれ
「おくにの たいせつなおひとでしょうに」
「そうですね それでも あなたほどではありませんから」

すかい・ぶるーが しんかんさんの かたのうえにぬっとかおをだしました
「へいわをもたらすきしに ひどいいいかた」
「あら かいほうされたんですか? いつもながいのに」
「おまえのかたわれが ききとして おうせんしてるよ」
あー なんだか ほんとうにたのしそうにみえますね

「あのかた どなたですか」
「うん しらない」
そこが ますますいけないような きもしないでもないです

わたしはくちを ひらきます
「いくさに いかれるのですか」
「とってもおこられてるぞー まいかいまいかい」
いやなきがしないのは どこかもう みびいきがはいってしまっているのでしょうか

□ 2 / 570-572 □
【ある あおいひとみのしょうねんの いちにち】

わたしのきしは くろいまんと あかいくつ のびたせすじ
ときどき ぶしょうひげがはえていて すこしにあいます
けれどわたしはくちにしません

「あら かわいい ごきょうだい?」
「んにゃ」
「おやこ?」
わたしは わたしのきしのうでをひっぱります どんなかんけいであるか
わからないほうが たのしいでしょう?

この とじたとしに たまにくるながれのきゃらばんたい
だれもわたしたちをしらないところが わたしはいちばんたのしいのです
「なにがほしいんだっけか おまえ」
あー、らくらく とむせきにんにひっぱられているわたしのきし
「おおきなえびが ほしいです」
「うん おまえ ぜんぜん わがままいわないからいーけど ぜいたくだなぁ」
だって このきゃらばんにかいさんぶつがないことは しっていますもの
はしからはしまで いっしょに さがしましょう
ものぐさな わたしのきしは だれかにきこうとはしませんもの

「おにーさん かってってよー」
「さがしもんあるから あとでなー」
ほんとに あなた よくこえがかかりますね
・・・おんなのひとばっかり

「あ いやいやいやいや おれのほーがたかりやすそうにみえんだよ」
てかてか おまえ しっかりものだしさ
いや としくったら おんななんていくらでもと
ちょっとよけいなことまでいうので おもわずわらってしまいました
「としをかさねたら たかりやすそうにみられてしまうようになるのですね?」
「えー? あー うーん」

そういえばそういうことになるねと なんだかかんがえこんでしまいました
こどもに いいくるめられていてはだめですよ
あなたはほんとうに おひとがいい

わたしがそばにいたら わたしがまもれるだけまもれるように なりますけれど
まだ たりませんけれど ぜんぜん でも

あ かぜ

「えび ちーさいのばっかだなぁ?」
なあ おっちゃん とわたしのきしは ついにききはじめてしまいました
もうすこし いっしょにいたかったのに

「おおきなえび ないってさー」
「そうなのですか ざんねんです」
ほんとうに もうすこし・・・
「こんど くいにいこうなー んでかわりになにがほしい?」

なんにもいりません とわたしはいいそうになって わらってごまかしました
そんなこどもらしくないこと あなたはよろこびませんね
どうしてわたしは こどもなのかな
でも それでなければあなたのそばには いられなかったのかな

しあわせな としのはなれたあにうえか
わかいおとうさんと ちいさなこども それだけのふうけい
わかってますよ
それでもわたしは かれのぞくするせかいよりはしらないひとたちのなかにいたい
すこしだけでも わたしだけのもののように おもえるから

このひと だれにでも やさしいのにね
こっけいだねと おもってしまう そもそもどうしてこころが こう うえるのか
わたしのきしがいて まわりにいろんなひとたちがみていてくれて
そんなせいかつじゃ ものたりないっていったいなぁに?

「えび なくてごめん?」
そんなことの わけがないでしょうと おもわずわらう
だからいとおしいのかなと おもってしまう
わたしは かぜが さむいので もうかえりましょうと いいました
わたしのきしは こえびを やまのようにかってくれました

おもい・・・

だからかな だからすきなのかなと えびにかおをうずめて
ゆうやみのななめにてらすなか ながくなってしんちょうさがますますめだつ
ふたつのかげをながめて すこしうれしく すこしかなしくなった
あるあおいひとみの しょうねんのいちにち

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【ある○○のいちにち】in 801 since 2004/5/15