□ 1 / 64 □
【あるわんこのいちにち】
あさ ごしゅじんさまにいってらっしゃいをする あたまもなでてくれない いそがしそう
↓
おひる ひとりぼっちで ごはんをたべる
ごしゅじんさま まだかなあ
↓
ごしゅじんさま よるになってもかえらない じこに あったりしたのかな
さみしくて しんぱいで たまらない
↓
ごしゅじんさまのにおいがちかづいてきた げんかんにすわって おでむかえ
↓
おかえりなさい ごしゅじんさま おつかれさまでした
あれ となりの おとこのひとは だれ?
おおきなてで おれのあたまをなでる おもわずいかくをする
↓
いつのまにか ふたりで おくのへやにはいっていった みみを ぺたんとして きかないようにする
↓
ごしゅじんさま おれのこと みてもくれない むねのおくが じりじりいたい
↓
おとこ かえる
ごしゅじんさま しゃわーあびて おれをやっとだきしめてくれた せっけんのにおいがする
↓
ごしゅじんさまとおなじべっどで ねむる すこしだけ さっきのおとこのにおいがする
なかなか ねつけない
ごしゅじんさま おれのけがわに かおうずめてしあわせそう
↓
ゆめのなかで きょうもおれは せのたかい にんげんになっていた
やさしくごしゅじんさまをだきしめると ごしゅじんさまはしあわせそうだった
いつか めがさめても にんげんでいるひが きますように
あるわんこの いちにち
□ 1 / 68 □
【あるにゃんこのいちにち】
あさ ごしゅじんさまのうえにじゃんぷ カリカリもらった ねこかんじゃなくてがっかり
↓
おひる ひなたぼっこしながらねる とちゅうすずめおっぱらう
↓
よる ごしゅじんさま かえらない でもいいや
↓
ごしゅじんさま まだかえってこない またよりみちしてるのか
↓
あ やっとかえってきた でも かすかにいぬのにおい
むかついたから しっぽぱたぱたでおわり
↓
しゃわーあびてでてきた びーるのみながら がめんにむかって かたかた もじうってる
↓
「きょうはたのしかったよ わんこがやきもちやいたかな」とかかいてある
ずっとがめんみて おれをみてない さびしい
↓
つまんないから きーぼーどのうえにのっかってじゃまする
すぐおろされた こんどはあしかんでやる
↓
ごしゅじんさま ねじゅみなげてくれた うれしい
なんどもくりかえしあそぶ ごしゅじんさまと ずっとこうしていたい
↓
ねこかんだしてくれた もうまっしぐら たべたらねむくなった
もっとあそびたいのにめがくっつく ざんねん
↓
ごしゅじんさまのべっとにはいる
ゆめのなかでは おれもにんげん ごしゅじんさまが ぎゅっとしてくれる
でもつい うぜーよとかいっちゃう ばかなおれ
あしたは ごしゅじんさまが はやくかえってきますように いぬのにおい しませんように
ねこかんすくなくても がまんしてやるから
あるにゃんこの いちにち
□ 1 / 85 □
【あるにゃんこのきゅうじつ】
にちようびあさ ごしゅじんさま めずらしくそうじ
おれ そうじききらい おしいれにひなん
↓
おきゃくがきた いぬもいる はいってくんな
べつにこわくないけど はやくかえれとおもう
↓
ごしゅじんさま おきゃくのおとこだきしめてる
ずるい おれいがいのやつに
こうぎしようとしたら いぬがちかづいてきた
なんだよ あっちいけ
↓
いぬにかおなめられた ちょっとびびる
ごしゅじんさま おとことわらいながらみてる
はやくたすけろ だからいぬ よってくんな
↓
いぬ しっぽぱたぱたする くそ おいかけずにいられない
ごしゅじんさま おとことしんしつにはいってた
↓
ごしゅじんさま でてこない
いぬもさびしそう
しかたないから ねこぱんちしてげんきづけてやる
↓
いぬがまたなめてきた まぁゆるしてやるか
おひさまが ぽかぽか いぬけがわ ぬくぬく
なんかねむい いぬのはらにくるまって うとうと
きょうだけは いっしょにごしゅじんさま まってやってもいいぞ
あるにゃんこのきゅうじつ
□ 1 / 107 □
【あるわんこのきゅうじつ】
にちようび ごしゅじんさま りーどつけてくれる
ひさしぶりに おひるのおさんぽ はしゃぎすぎて ちょっとたしなめられる
↓
あれ きょうはくるまなの? あっというまに まんしょんにとうちゃく
はしりまわりたいけど ごしゅじんさまがごきげんだからがまんする
↓
「いらっしゃい」せのたかい このあいだのおとこだ
ほえるおれ ごしゅじんさま おれをだきしめてなだめる
おとこ ごしゅじんさまをだきしめる ごしゅじんさまおれをはなして だきついてる
おれよりそいつがいいの? へやのすみでおとなしくふせる
↓
ちっちゃいいきものがいた ごしゅじんさま これなあに? とりあえずなめてみた
きいろいめ びっくりさせてる おもしろい
↓
ごしゅじんさま おれたちみてわらってる やっときにしてもらえた うれしい
ちっちゃないきもの しっぽひっかく いたいいたい
↓
いたがってるうちに ごしゅじんさま おとことどこかにいった さみしくなって すこしないた
ちっちゃいのがなぐってくる いたい はなはやめて
↓
こんどは ほほにすりついてくる
もしかして ごしゅじんさまのかわりにかまってくれてるの?
おれいをこめてなめる ちっちゃいの すこしめいわくそうだけどはなれない
↓
おなかのところでまるまって すぐにちっちゃいのはねむった
ごしゅじんさまいがいと はじめていっしょにすごす
おとこのたばこのにおいは だいきらいだけど このちっちゃいのは あったかくてなんかすき
ちっちゃいのをみながらうとうと あるわんこのきゅうじつ
□ 1 / 122 □
【あるのらねこせめのいちにち】
あさ しゅっきんまえに かりかりをおいてゆく おとこのあぱーとのまえでしょくじ
おなかいっぱいになったから ひあたりのいいへいのうえでひるね
↓
おとこのいえにすんでる いえねこうけがやってくる
いえねこだけど こいつはおとこがしごとにいってるとき ときどきそとにでてくる
ならんでひなたぼっこ いえねこうけ なんかげんきない
↓
「どうした?いえねこうけ せまいあぱーとぐらしにあきたのか?」
ここはおれのなわばりだけど おまえならとくべついさせてやるぞ とつづけたいのをがまん
いえねこうけ「そんなんじゃないんどけど」という
なんだよ もったいつけずに いいたいことあるならいえ
↓
いえねこうけ きになるやつがいるという いっかいあっただけなのに ずっときになってるっていう
ええっ!?おとこがよくあそびにいくいえの かいいぬだぁ!?
やめとけ ぜったいにやめろ しゅぞくはこえらんねえ むりだ だめだ
いくらいっても いえねこうけは うかないかお そのかおに むかつくおれ
↓
ふざけんな なんでこいつがよそんちの それもいぬあいてにこんなかおしなきゃなんねえんだよ
こいつはたんじゅんばかで くいけゆうせんで ひあたりのいい、このへいでひるねしてるのがいちばんにあうんだ
そんなうかないかおすんな たのむからかなしいかおすんな
↓
そんなかいいぬ おれがぶっとばしてやる っていったら いえねこうけはもっとかなしいかおをした
なんでそんなかおすんだよ・・・いえねこうけ
↓
かなしい でも いえねこうけに かなしいかおなんかみせらんねえ
どうしようもなくて ふん とよこをむいた のらねこせめのいちにち
□ 1 / 144-145 □
【ある にゃんこのひの いちにち】
ひるすぎ いえねこうけをさそいだして きんじょをさんぽ
いえねこうけと いっしょだと なんかあったかくなる
もうすぐ はるだからか それとも いえねこうけがいるせいか
↓
いえねこうけ きょうはなんのひだか しってる? ときいてきた
ひにちなんか かぞえてねぇぞ
↓
いえねこうけ きょうがねこのひだとおしえてくれる
かいぬしおとこが ねこかんおおめに くれるらしい
ふーん といいつつ ちょっとうらやましい
しょせん おれにはかんけいないし
↓
「ごしゅじんさま のらねこせめのぶんも よういしてるって」
なんだよ きぃつかうこと ねぇのに
とかいって ちょっとうれしい
むこうから いやなにおい
かいいぬだ! にんげんおとこもいる! いえねこうけにげよう!
↓
いえねこうけ にげない ちかづいてく
しかも うれしそうに かおあかくしてる
いぬ においかいで あいさつ なんでぱんちしないんだよ いえねこうけ
↓
「せめくんのうちのねこだね? まいごになったのかい?」
にんげんに はなしかけられてる なれなれしくすんな
むかついてとびだす いぬのしっぽにがぶり
おどろいたいぬに ふりほどかれる あすふぁるとに ぺたり
↓
かいぬし いえねこうけをだっこして いぬとともにあしばやにさる
あっというまに みえなくなった
いえねこうけのこえが とおくからきこえた
↓
つめたいあすふぁるとに ひとり のこされる
じめんにおちたとき しりをうったらしい
でも しりより べつのとこが いたい
↓
きょう いえねこうけのところにいくのは よそう
しょせん おれはのらねこ ねこのひなんて かんけいねぇや
あるにゃんこのひの いちにち
□ 1 / 150 □
【ある のらねこせめのいちにち】
あさ なわばりのアパートのまえに かりかりがない
いえねこうけのいえのおとこ きのうどっかにとまったらしい いえねこうけもいっしょだ
どこにとまったのか かんがえるのがいやで まちをうろつく
↓
のらねこらしく じりきであさめしつかまえてやる!
いきごんで きんじょのこうえん いけのさかなをねらうぞ
すいめんに みをのりだしたしゅんかん あしがすべった
↓
はげしいみずおと だいぱにっく りょうてりょうあしでみずをかく でもどんどんしずんでいく
おれ このまましんじまうのかな いやだ くやしい いえねこうけにいいたいことがあったのに
↓
とつぜん くびのうしろをつかまれてみずからひきあげられる
おおあばれ つめがでてるから ひっかいてしまう
↓
「だいじょうぶ おちついて だいじょうぶだから」
やさしいこえが びしょぬれのおれを ぎゅっとだきしめる
びっくりして かおをあげた
しらないにんげん ほっぺたには おれがひっかいた きずあと
↓
おれ たすけてくれたやつのこと けがさせたんだ・・・
↓
「こわかったね もうだいじょうぶだよ ぼくのへやでぬれたからだをかわかそう」
にっこりわらっていう にんげん ぎゅっとだきしめてくれるてが やさしい
↓
やさしくされたことがないから こういうときどうすればいいのかわからない
おれがいぬなら こいつのきずをなめてやれるのに
↓
たすけてくれた にんげんの へやにつれていかれる
ずぶぬれの のらねこせめのいちにち
□ 1 / 157-158 □
【ねこのひのあるわんこのいちにち】
きょうは ごしゅじんさまのおしごとおやすみ
せんたくものほしてるごしゅじんさまに りーどをくわえてもっていく
ねえ、おさんぽしよう? しっぽふって くんくんおねだり
↓
「さいきん さんぽつれてってなかったな ごめんね」
ごしゅじんさま おれのはなにきす おれもほっぺなめる
たいへんなおしごと ひとだんらくしてから ごしゅじんさま またかまってくれるようになった うれしい
↓
ごしゅじんさまをひっぱるように いつものみちをおさんぽ
はしゃいでぐんぐんはしったら ごしゅじんさまこけちゃった ごめんなさい
ほっぺなめたら またにこり おこられなかった
ごしゅじんさまの えがおがいちばんすき
↓
ごしゅじんさま あっとこえをあげる
ちっちゃいのがにひき あるいてる
かいだことの あるにおい あのあぱーとにいたちっちゃいのだ
もういっぴきのしらないのをおいて こっちにちかづいてくる
↓
「せめくんのうちのねこだね? まいごになったのかい?」
ごしゅじんさま しゃがんでちっちゃいののあごをなでなで ねこっていうんだこのこ
↓
ねこ ごしゅじんさまむしして おれにむかって にゃんとなく
ごしゅじんさまむしするな れいぎがなってない けど ちっちゃいからしかたないか
まえあしに しっぽからませてくる ひたいをなめて ごあいさつ
ねこ ほっぺがあかい なんだかもじもじしてる
まーきんぐいきたいのかな ねつがあるのかな ちょっとしんぱい
↓
いきなりしっぽにげきつう きゃいんきゃいん
↓
ひとあばれしてみると ねこといっしょにいた もういっぴきのくろいねこがめをまるくしてみてる
こいつがかみついたらしい くろいねこはきけんだ
↓
ごしゅじんさま ねこをだいて りーどひっぱる
きっとおとこのうちに ねこをかえしにいくんだろうな
おとこのうちは きらいだけど ごしゅじんさまがいくところには どこでもついていくよ
↓
ごしゅじんさまにだっこされたまま ねこ くろねこをみてちっちゃくないた
もしかして いっしょにおさんぽしてたのかな?
きっとくろねこのことが すきなんだろうな おれがごしゅじんさまを すきなように
↓
ねことくろねこがうまくいくことを こころのなかでおいのりする
ねこのひの あるにぶいわんこのいちにち
□ 1 / 173-174 □
【あるわんこのよる】
ごしゅじんさまにだかれて すやすや
こんやのゆめでも おれは せのたかいにんげんになった
いつもなら ごしゅじんさまとおれと ふたりきりなのに こんやはすこしへん
↓
ふわふわのあたまのしらないこと いっしょにかわらでねそべってる
「なあ きみだれ?」
そういうと しらないこ まっかになってぽかぽか いたいってば
ああそうか きみは あのおとこのいえの ねこなんだな
こんなふうにたたくの きみだけだもんね そういうと むすっとしてそっぽむいた
↓
「…おれ もうおまえに あえなくなるんだ」
そっぽむいたまま ねこ ぽつり
なんだかさみしそうなこえ ふわふわのあたまなでると きゅっとだきついてきた
ごしゅじんさまより ちっちゃくて もろそうなからだ
↓
「だから、がんばって こんやは おまえにあいにきた」
うなだれるねこ おろおろするおれ
↓
どうしよう ねこのさみしさが うつっちゃったのかな おれまで なきたくなってきた
ねことあえなくなるの おれ ごしゅじんさまとあえなくなるのとおんなじくらい さみしいよ
↓
ごしゅじんさまと どうれつにしちゃった でもこのさい ざいあくかんをかんじてるばあいじゃない
そんなきがするんだ
↓
ねこ まぶたごしごしこすって たちあがる
「あついだろ ばーか」
すごくあかるいこえ まんめんのえみうかべて おれのまえからはしりさった
「じゃあな おまえのこと むこういってもわすれないからな!」
↓
きがつくと ごしゅじんさまのまくら だきしめてた
あれ おれどんなゆめ みてたんだっけ
むねだけが ずきずきといたい どうして?
↓
ごしゅじんさま べっどのなかにいない
そとはまだくらいのに むこうででんわをしてる
すごくせっぱつまったこえだ どうしたんだろう
ごしゅじんさまのかいわか きになってしょうがないのに
なぜかきくのがこわい あるわんこのよる
□ 1 / 177 □
【ある のらねこせめのいちにち】
あさ ねこかんをあけてもらってしょくじ
なんとなく いついてしまったにんげんのいえ
にんげんは 「すきにでいりしていいよ」って まどをあけておいてくれる
でも そとにでたくない あのひから いっかいもそとにでてない
↓
いえねこうけ どうしてるかな・・・
ひあたりのいい まどぎわで まるまりながらかんがえる
あいたい でも おれじゃないやつのことかんがえてる いえねこうけはみたくない
↓
あんなやつやめて おれにしとけよ いえねこうけ
このあったかいいえをでて いえねこうけに いいにいおうか
↓
「また ねてるの? こっちにおいでよ」
やさしいにんげんのこえが おれをよぶ
↓
ちょっとまえのおれなら にんげんにへんじはしない
でも こいつには かりがあるから しっぽをひとふりして へんじ
ここをでていくってことは こいつとおわかれ ってことなんだよな
↓
どうすればいいのかな、おれ・・・
↓
ひあたりのいい そふぁのうえでまるまってねむったふりをする
のらねこせめのいちにち
□ 1.5 / 106-108 □
【ある にゃんこの いちにち】
きょうも さいきんみかけなくなったともだちをさがしに でかけた
さいごにみかけたときの あの かなしそうなめのいろが わすれられなくて
↓
「あ、あぶない!」
こどもたちのさけびごえ
かんがえごとをしながら みちをよこぎったら、くるまがすぐめのまえにきてたんだ
どうしようもなく たちすくむおれ
あたまのなかが まっしろになって、ふっと あのでかい ばかいぬのことを おもいだしたよ
↓
そうしてあんてん
↓
「…おれ もうおまえに あえなくなるんだ」
おれがいうと、いぬは あたまをそっとなでてくれた
おれ、どうしてだかわかんないけど、いぬにぎゅっとしがみついた
ああ、おれ、ゆめ みてるんだな
こいつに さいごのおわかれを いいにきたんだ
↓
「だから、がんばって こんやは おまえにあいにきた」
ごしゅじんさまじゃなくって おまえにあいにきたんだぞ
なあ、おれのきもち わかったかよ
↓
なのに いぬはさみしそうなかお
なんだよ いつもみたいな ばかみたいに のんびりしたかおで いてくれよ
おれ、おれ…
↓
もう このゆめのなかに いられないみたいだ
なにかが おれをよんでいるかんじがする
↓
まぶたごしごしこすって たちあがる
「あついだろ ばーか」
おれは にっこり わらってやった
おまえには いつもわらっていてほしいから
「じゃあな おまえのこと むこういってもわすれないからな!」
↓
すぅっと じぶんのからだにもどってきた
いたい いたい いたい いたい いたい
からだじゅう もえるように いたい
いつか のらのともだちと けんかしてまけたときより いたい
↓
ごしゅじんさまのこえがする
「きがついたんだね。
くるしいだろ…
がんばれ がんばれ」
なみだごえだ
↓
ごめんね、ごしゅじんさま
どうか いぬのかいぬしと なかよくやってください
おれだけのごしゅじんさまじゃなくなるのは さびしいけど
それで、おれのぶんまで、あのばかいぬを かわいがってやって
あいつ、おれがにっこりわらってやったのに、ないてたんだ
↓
そこへ いぬ とうじょう
しんぱいそうなかおで なきそうなかおで まっすぐおれのいるべっどまではしってきた
↓
なんだよ おれ もうにっこりわらうなんてできないよ
いたくて くるしくて さびしくて
↓
もう めもあけてられない
さようなら ごしゅじんさま
ごしゅじんさまをよろしく いぬのかいぬし
じゃあな ばかいぬ
↓
またあんてん
とおくに しろくひかる でぐち
↓
そこにむかって はしりだしたおれ
もう どこもくるしくないし いたくない
ちょっと むねがいたむだけ
↓
ある にゃんこの かなしいわかれのあった よふけ
□ 1.5 / 109-111 □
【ある わんこの きせきのいちにち】
ごしゅじんさまにつれられて、ねこのいるびょういんへ
くるまにはねられた…ってごしゅじんさまがいった
へやにはいると しの におい
ごしゅじんさまたちには わからないのかな
↓
おれはいそいで ねこのもとへ はしっていった
↓
ねこは もう わらっていなかった
つん とすましたかおもしていない
くるしそうに あえいでいる
おれをみて なきそうなかおをしたよ
↓
そうして めを とじたんだ
↓
しろいふくをきたおとこのひとが くびをふった
↓
むねに なにかがつまってるよ
おもい くるしい なにか
↓
おれは ねこをいっしょうけんめいなめた
けがをしたら だれだってそうするだろ?
いっしょうけんめいなめたら、また つーんとすましたかおを みせてくれるかも
この しのにおいも きえるかも
↓
ごしゅじんさまたちが おれをとめようとしてる
でも おれはやめない
おねがいします
やめさせないでください
まだあたたかい ねこのからだ
しのにおいは まだすこし
↓
こっちにおいでよ
かえっておいでよ
↓
いっしょうけんめいなめてたら
したが つりそうになって じぶんでじぶんのしたを かんじゃった
いたくて なみだめ
でも まだなめる
↓
「どうして おれを よびもどすんだよ
からだじゅう いたくてたまんないのに」
↓
ちいさな ねこのこえ
おれ うれしくて わんわんほえる
ごしゅじんさまたち さいふかたてに へやへもどってきた
そして かんせい
はくいをきたひとも びっくりしたかお めにはなみだ
↓
「きせき」
ごしゅじんさまたちの かいわ
↓
きせきって なんだかわからないけど、
ねこがしななかったのは うれしい
ごしゅじんさまから ほねのがむをもらったときより うれしい
たぶん いきてきて いちばん
↓
ねこ くるしそうなかお
でも すこしだけわらってる
つーんとすましたかおもいいけど、わらったかおは もっといいね
↓
いま、むねのなかには ひろいしばふがひろがっているよ
ねこと そこをどこまでもはしりたいけど・・・
ねこは はしるの すきかな
↓
ごしゅじんさまより たいせつなものをみつけた ある わんこのきせきのいちにち
【ある○○のいちにち】in 801 since 2004/5/15