+ とある だいがくせい の いちにち +

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□ 2 / 248-249 □
【とある だいがくせいの いちにち】

ひとりぐらしをはじめていちねん
こんびにべんとうばっかりたべてたせいかつからいってん
りょうりをはじめたらけっこういけるしかもせつやく
そんなこんなですいじれきもはんとし

くらしのかてはしおくりとばいと
それからときどきもらえるじっかからのしょくざい
でもりょうしんはりょうりずきをしらないから
おくってくるのはいつもいんすたんとしょくひん
まあいいけどねといいながら らーめんをすするしゅうまつ

あるときだいがくのさーくるで めーりんぐりすとがまわってきた
がくせいちゅうもく はなみをやるぞ
しょくざいとさけは かくじもちより
もちよりかあ じゃあなにかつくろうかな
うでまくりをしてたっぱーをとりだす

さくらはさんぶざき てんきはりょうこう
さーくるのなかまに たっぱーにつめたりょうりをひろう
でも なかまたちのひょうばんは そこそこ
「おまえおとこのくせにりょうりなんかしてるのかよ」と
どうはいにわらわれてほおをふくらましてみる

すみのほうで もくもくとりょうりをたべていたせんぱいがかおをあげた
にんずうのおおいさーくるで あんまりしゃべったことのないしたしくはないせんぱい
かおをみてくびをかしげて
「おまえんちにいきたいんだけど」といってきた
なんだいきなりととまどいながらじゅうしょをおしえる
ついでにめあどと ばんごうもおしえた

そのひのよるにせんぱいはやってきた
りょうてにかかえただんぼーるばこのなかには たくさんのしょくざい
やさいにぶたにく くだものやぱすた それにこめ
「じっかがのうかなもんで こういうのよくおくってくるんだけどな
おれはりょうりは ぜんぜんだめなんだ」
せんぱいはてれくさそうにわらった
「りょうりできるやつのところにあったほうが こいつらもくさらなくていい
べんとううまかったなあ またなんかのときにつくってこいよ」
おとこくさいえがおなのに なんだかどきどきしてしまった
はじめてりょうりをほめてもらえたからだろうか どうしよううれしい

じゃあ、といってかえろうとするせんぱいをひきとめて あわてていった
「もらってばっかりじゃなんですから せんぱいうちにたべにきてくださいよ」
せんぱいはおどろいたかおでふりかえった
「いいのか」なんてききかえしておいて そのめはきらきらうれしそう
わらってうなづいた

それからはるがすぎてなつがきて まいにちのようにせんぱいはへやにきて
しょくざいをおいていったり しょうくじをしていったり
そうしてあきにはどうきょすることになったのだけれども
それはまたべつのおはなし

□ 2 / 275-277 □
あるりょうりずきだいがくせいのいちにち】

こめよーし やさいいためよーし とんかつよーし
ちゃぶだいのうえでゆびさしかくにん
りょうりはににんまえ ひとつはちょっとおおめにもりつけ
あぶらのつやがきらりとひかる うはっうまそう おれりょうりのてんさいかも

ぴんぽーん
どあちゃいむがなる せんぱいがきた
あのひとまいかいりちぎにちゃいむならすよな ふだんおおざっぱなくせに
そんなことかんがえながらげんかんにむかう

りょうてにかかえただんぼーるばこ これももうみなれたこうけい
「いやあ またじっかからくいもんが」 せんぱい こまったようなうれしいようなかおでわらう
つられてわらって はこをうけとる

へやのすみには ひもでしばられただんぼーるのたば
はこのかずだけ せんぱいがこのへやにきた
なぜだかわからないけどすてられない
ひもでしばって おいてあるだけ

せんぱいはいつもそれをみて じゃまだろすてろよなとわらう
それから このぶしょうもんめ とあぐらをかく
まっちゃいろのざぶとんも せんぱいがもってきたものだ
まあたらしかったそれも もうなかのわたがつぶれてきている

いまできたばっかなんで あったかいうちにたべましょう
すすめるとせんぱいはありがとうといって はしをとる
りょうてをあわせていただきます
けっこうぎょうぎがいいんじゃないかというこのしゅうかんは せんぱいがきてからのもの
いえがのうかだからだろう せんぱいはたべものをすごくだいじにしている

やさいいためのあじつけは あっさりふうみのしおこしょう
かくしあじのしょうゆにせんぱいはきづいて おお いいなとにやりとわらう
せんぱいがうすあじすきとしったのも りょうりをつくるこのしゅみあればこそ
なんだかだんだんちかくなっていくきょりに ここちよさをかんじる

なんでおれ こんながんばってりょうりしてるんだろうな
ときどきふとかんがえることがある
しょくざいもらって おれいにりょうりつくるのはあたりまえだけどさ
かおをあげるとせんぱいもちょうどかおをあげたところだった
にっとわらう おとこらしいえがお
どきどきした

あー せんぱいはほんと いいひょうじょうしてるひとなんだよな
なんどもでたけつろんに またひとりなっとくする
とくにえがおだ すっげえおとこらしいのに なんだかかわいい
おれのりょうりくうときも めちゃくちゃうまそうにくうんだよな
そりゃそんなえがおでたべられるんだったら きあいもはいるわ

「こんかいはなー じゃがいもとにんじん それからたまねぎもはいってたぞ」
せんぱいがこんかいのだんぼーるばこのなかみをいう
はいはいとそれをききながら なにをつくろうかなとかんがえる
じゃがいもににんじん たまねぎかあ

かれーでもつくりますかときいてみたら
ばか じゃがいもにんじんたまねぎときたらにくじゃがにきまってるだろとしかられる

ええー きまってるって ざいりょうおなじじゃないですか
かれーるーがはいってるのとはいってないのとではぜんぜんちがうぞばか

いいあらそいになりかけて けっきょくおれるのはおれ
わかりました じゃああしたはにくじゃがですね
せんぱいはわらう

りょうりをつくるのはおれ けっていけんはおれにあるはずなのにどうしてもかてない
いやかとうとしていないのか おれはこういうけんかがあるたびにまたかんがえる
せんぱいといっしょにいると かんがえることばっかりだ
でも そういうことはぜんぶ せんぱいのえがおでふきとんでしまう
なんでだろうな

れいぞうこからびーるをとりだし ちゃぶだいにむかいあってのむ
たわいもないかいわ げらげらとわらうこえ

まだまだどうきょまでのひはとおい
ひとりぐらしのだいがくせい ふたりがすごすいつもどおりのはるのよい

□ 2 / 307-312 □
【あるりょうりずきだいがくせいのいちにち】

せんぱいがこない

…………

いやれんらくはあったんだけど

…………

せんぱいの いつもどおりのたんてきなめーるによりますと
『ほんじつ ごうこん ゆうしょくは いらない』
だそうでして はい

…………

いやね
いままでだってたがいにつきあいとかありますからね まいにちいっしょにたべてたわけじゃないわけだ
さーくるののみかいとか ともだちとさしのみとか
そういうときもちゃんとせんぱいはれんらくをくれていたわけだ あいかわらずりちぎなことで

でも ごうこん といわれたのははじめてで

…………

なんかおちつかないな

おれはたちあがってながしだいにむかう
きょうのゆうしょくのじゅんびにはまったくてをつけていない
しんくのなかには ごろりと でっかいさつまいもがふたつ

…………

きょうはこれでとんじるをつくろうとしていたんだった
おととい またしてもせんぱいがだんぼーるをかかえてやってきて
「きょうの おとどけものは さつまいもです」 なんてふざけていた
ひとかかえもあるだんぼーるのなかにはなるほどおどろくほどのさつまいものやま
もちろんほかに たまねぎやらじゃがいもやら ひもちのするやさいもはいっていたけれど
めいん さつまいも

つちもおとされぬまま いかにもとれたての かたてのゆびではまわらないほどでっかいさつまいもが
げんざい おれのめのした しんくのなかにごろんと ころがって いる

…………

なんだか りょうりをしたくない

こんろのうえには みずのはいったなべが
さつまいものとうにゅうをまっている

…………

それすらみるのもいやになって おれは さつまいもをしんぶんしにつつみ
ちゃぶだいのうえになげだす
ごんとおとがしてぶつかりころがる ふたつのでかいさつまいも

はらがなった
でも しょくよくはなかった

ごろりとゆかにころがって てんじょうをみる
ごうこんかあ つぶやいてみるとなんだかしらじらしいひびきにきこえた

しょうじき せんぱいはいけめんとか そういうたんごにはとおい
どちらかというと あかぬけてないかおだちだ
でも つくるひょうじょうは すごくいい
おとこのおれだってどきりとするえがおをみせる
そういえば おれのがくねんのおんなのこにも あこがれているのがいるときいた
ぱっとみぶっきらぼうだけど うちとければきさくで きのきくひとだから ともだちもおおい

でも かのじょはいなかったはずだった
そりゃあそうだ いればまいにちのようにおれのへやでゆうしょくなんてたべるわけがない

…………

また はらがなった

どうしてこんなにいらついているのか わからなかった

せんぱいは かのじょがほしいのだろうか
かんがえをめぐらしてみる ごうこんにでるってことは おんなのことなかよくなりたいのだろう
はなせばおもしろいせんぱい おとこくさいえがおの かっこいいせんぱい
おんなのこのなかには せんぱいをきにいるこもいるはず
そのこをせんぱいもきにいったとしたら

きっとこのさき せんぱいはおれのりょうりをたべにはこない

おきあがって ちゃぶだいのうえのさつまいもにてをのばした

しんぶんしにくるんだまま ふたつともかかえてげんかんをでる
すにーかーをただつっかけてはいて あぱーとのかいだんをおりた
はるのよぞらはすっかりくらくなっていて それなのにほしはみえない
ぽつりぽつりとたっているがいとうのした かわぞいのゆうほどう
さくらがしろくけぶってさいて まんてんのほしぞらのかわりのようだった

せんぱいのあぱーとには まだあかりがついていなかった

おれは かいだんをのぼり さんかいのせんぱいのへやのまえにたつ
なかにけはいはなかった
しんぶんしにくるんださつまいも ふたつ
げんかんのまえに なげるようにおいて

おもいきり はをむいて
「ひとりでくえ」
げんかんにせをむけてあるきだした

てつのかいだんをおりる かんかんというおと
かんだがわの ながれるみずおと
とおくをはしるくるまのくらくしょん

なんでこんなにいらだたしいのかわからなかったけれど
おとばかりがみみについた

がいとうのしたをぺたぺたとあるく
つっかけたすにーかーがゆうほどうのうえをひきずられていく
ぱーかーにりょうてをつっこんで ねこぜであるくだんしだいがくせい
あーなんかみじめだなーおれなにやってんだろ
はぁっとためいきをついたところでぜんぽうからあるいてくるひとかげにきがつく

「なんだ おまえか」

せんぱいがたっていた

「どこいってたんだ」
そうきいてくるせんぱいのこえになどみみをかさず おもわずめだけでしゅういをさぐる
おんなのすがたはみえない せんぱいは ひとりだった

「せんぱい、きょうごうこんじゃなかったんですか」
なるべくいらだちをかんじさせないように こごえでつぶやくようにとうと
せんぱいはまゆをしかめて かたをすくめる

「ああ ともだちにたのまれて あたまかずあわせだ ひとりどたきゃんがでたんだと」
「はあ そうなんですか」
いやそれにしてもおもちかえりもなしなんてせんぱいいがいとかいしょうなし
そうつぶやくと めからほしがでるほどなぐられる

「しっけいなやつだな いちおうめるあどこうかんしたことかも いるんだぞ」
だったらそのことあそんでくればいいのに まだよるもはやいじゃないですか
はんろんすると せんぱいはしぶいかおをする

「んなことしたら そのことつきあうことになっちまうだろ
そうしたら おまえのりょうりがくえなくなるじゃないか」



おれは めをまるくして せんぱいをみあげる

「いまのところ おれがじんせいでであったなかで おまえのりょうりがいちばんうまいんだよなあ」
いやせんぱい そこでしみじみとうなづかないでくださいよ
あんた おとこのてりょうりに なにいってんだ

「かのじょとかつくると おまえのりょうりよりそのこのりょうりをゆうせんしなきゃならないだろ?
それはちょっと いまのところ どしがたい」
なにむずかしいことばつかってんのせんぱい
いやもんだいはそれじゃなくて

いわれてるないように おれがなさけないくらいよろこんでいるというじじつがもんだいで

「というわけで さけのせきであまりくえなかったゆうめしを きょうもたべさせてもらいにきたんだが
どっかいってたんだったら じゅんびはできてないのか?」
そうこえをかけられておもいだす きょうはゆうはんをつくっていない
ものおもいでそれどころじゃなかった なべにはいっているみずは ひにかけられもしないまま

さつまいもはいらだってなげすてられたまま

おれはあいまいなえみをうかべて あたまをかく
「たまには そとでさしのみとか いいんじゃないすかねえ」
せんぱいは「またおれはかねをはらわにゃならんのか」とあたまをかかえる
おれはそれをわらった

わらうことができた

ちかくのしょくじどころで とんかつをたべながら びーるをかわしてえみをつくる
まどぎわのせき がらすのそとにはさんぶざき
でもこのときのいらだちのげんいんは いまだわからない
すこしだけぜんしんしたかもしれない だいがくせいふたりの はなみざけ

□ 2 / 446-449 □
【とある りょうりずきなだいがくせいの いちにち】

あとじゅっぷんでつくとめーるがとどいて
おれはへやのかたすみにつんだだんぼーるをみる
いくえにもかさねられたそれらのいちばんうえに
いまだたたまれていないものがひとつ
おれはためいきをつく

いいかげんにしていいことじゃない
これからせいかつするうえでもいちばんだいじなところなんだ
そうじぶんにいいきかせる
なんどもしみゅれーしょんしたはなしのきりだしかた
せんぱいはどんなかおをするのだろう
それだけはそうぞうがつかなくて、かつあいしている

ちゃいむがなる

おれはどあをあける

せんぱいはいつものようにひとかかえもあるだんぼーるをもって
へらりとわらった

いやあ またじっかからやさいが

せんぱい

おれはできるだけきびしいかおをつくった

しばらく やさいもってくるのやめてください

せんぱいはたいそうまぬけなかおをしておれとだんぼーるをこうごにみつめた

べつにしんこくなはなしではない
せんぱいはいつもたくさんのしょくざいをもってきてくれる
そしておれはぶきようなせんぱいにかわって それらをりょうりへとへんしんさせる
じっかがのうかなせんぱいと かくれたしゅみがりょうりのおれ
なんてすてきな ぎぶ あんど ていく
だがしかし ふたりのあいだにたちふさがるしょうがいがはっせいした
なんのことはない ばいうぜんせん つゆである

「くさっちまったのかー」
せんぱいはとてもこまったかおをして へやのすみのだんぼーるのなかをのぞきこんだ
ひとつだけたたまれずにのこされたはこのなかには
すこしまえにせんぱいがもってきてくれたはやさいがしんなりとよこたわっている
あらぬところにけがはえているのはかびでございます
やさいはこんなにしきさいゆたかじゃあいかんとおもうのよとおもうくらいに ふわふわと かびが

だいたいせんぱいがもってきすぎなんですよ
おれがそういうとせんぱいはしょぼんとくちをとがらせてせいざした
しかられてるいぬみたいなたいどするひとだなとおもいながらことばをかさねる

いや もってきてくれるのはありがたいんですけどね
それにしたってりょうがありすぎですよ
いくらじっかがのうかっていったって

そこできがつく
ひとりぐらしのむすこにおくるにしたってこのりょうはいじょうであることに
まいにちのようにおとずれるせんぱいとふたりがかりでたべても
あまってしまってくさらせるこのりょうは

せんぱい
おれはすこしこえのとーんをひくくして きょくりょくおちついたこえでせんぱいをよんだ
せんぱいは こまったかおのまま うーんとうなって
それからわらった

それがさ
すこしまえにじっかにでんわしたときに りょうりしてくれるひとがいるっていったら
むこうがはでにかんちがいしたらしくって

かんちがい

かのじょができたとおもったらしくてさ

せんぱいはてんじょうをみあげた
おれもてんじょうをみあげた
そこになにがあるわけでもないのに

なにせはじめてのかのじょってんで ははおやがいようにはりきっちゃって
まえにもましてのこのりょうとこのひんど

そういってかたをすくめるせんぱいのかおは よくみてみればてれわらいのひょうじょうで

めいわくだったんならはやくいってくれればよかったのに
わるかったな

ああ いえ めいわくっていうか

おれはあたまをかかえる
なんたることか よりにもよってせんぱいのかのじょにまちがえられるとは

(そこで けっしてあたまのよろしいとはいえないおれは きづかない
その「よりにもよって」が どちらにかかっているのかなんてことは)

しかしどうするかな このやさい
せんぱいはそういって かたわらにおいてあるだんぼーるをなでた
そう せんぱいはきょうもあらたなやさいをもってきていて

ともだちよびますか
おれはそういってけいたいをとりだした
めもりをけんさくしながら ふとかおをあげれば
みょうにふふくそうなせんぱいのかお

…なんですかそのかお
いや べつになんでもないけど

あきらかになんでもないというかおではないかおで せんぱいはだんぼーるをなでている
つっこんでもよかったが めあてのゆうじんのばんごうがあらわれたので
はなしはそこでちゅうだんする
こーるおんをならし いくにんかのゆうじんをよびつけ
おれがりょうりをしているあいだ
せんぱいはずっとびみょうなひょうじょうのままだった

それから さけつきでやってきたさーくるのせんぱいどうりょうこうはいと
ごにんでどんちゃんやっているついでに
よくじつはごにんでふつかよいというおまけまでついたのはいいけれど

せんぱいの びみょうなひょうじょうのことはすっかりとわすれてしまった
きちょうめんなのかにぶいのかよくわからない だいがくせいのいちにち

□ 598-562 □
【とある りょうりずきなだいがくせいの いちにち】

あるひせんぱいがでんわのむこうでこういった
そんなわけでよ しばらくおまえんちいけないわ
おれはただただ ぼーぜんとしていた

こしを いためたのだ そうだ
ああ つまりはせんぱいが である
おりたたみけいたいのむこうで ときどきうめきごえをあげながら
つつましくせんぱいのかたることには
きょうもきょうとて
のうかであるせんぱいのじっかからおくられてきたしょくざいを
わがやへうんぱんしようとしたひるさがりのさんげき

よっこらしょ

ぐき


まったくもってもうしわけのないおれは
とにかくひたすら しゃざいにせんねん
だってわるいでしょう
しょくざいていきょうしゃにまいにちまいばんおもたいにもつをもってこさせて
わかいおれは へやでのうのうとでりばりーをまっていたなんて
そういうとせんぱいはむっつりと
「おまえのわかさをうらやむほどのとしじゃねえ」とつぶやいた

あのう
しばらくおれがそっちにいきますよ
っていうか、これからそうしましょう
おれがでんわでていあんすると せんぱいはすこしおどろいたようなこえをあげた

いやだって あきらかにそちらがこうりつてき
せんぱいはにもつをもってあるかずすむし
もともとはおれがていきょうされているがわなのだから
たしょうのいどうをしてなんのつみになろうか
たたみかけるとせんぱいはうなった
なんですか おれにきてほしくないりゆうでもあるんですか

せんぱいはいった

しょうがねえな

わらったこえだった

なのでおれはなつのばいとだいでかったばっぐに
つかいなれたえぷろんといくらかのちょうみりょう
それからじぶんのぶんのしょっきをいれて
いきようようとげんかんをでたのだった


そしてせんぱいのへやのどあをあけたしゅんかんまわれみぎをしてどあをしめた

「おいおいおいおいおいてめえできといてなぜかえる」
とじたドアのむこうからかすかにせんぱいのこうぎのこえ
すいませんごめんなさい
せんぱいのことはけっこうしっているつもりでしたがなんというか
おれはそっとどあをあけた
もういちどみなおすげんかんのなかみはあきらかにひとりぐらしのひろさではない

こしをささえながらおれをげんかんからひっぱりだし
せんぱいにあんないされただいどころはとんでもなかった
いや もう これはだいどころなんてよびません
きっちんとよびます ぴっかぴかのしすてむきっちんだ
(つかってないからあたりまえだといわれたがそんなれべるのはなしをしているのではない)

いやあ
せんぱいってかねもちだったんですねえ
「おれじゃなくて おやがかねもちなんだ」

ふてくされたかおでそういったとたん 「いてててて」とくちもとをゆがめたので
おれはあわててせんぱいをしんしつにかえす
なんでひとりぐらしのだいがくせいのへやがさんえるでぃーけーなんだろう
いやふかいことをかんがえちゃいかんのだ
せんぱいをおしこめたしんしつのどあをしめて りびんぐのまんなかにたって

きがついた

ひろい

ひとりきりのりびんぐは おもったいじょうにひろかった

きっと ほんらいならばかぞくようなのだろう
しすてむきっちんにつづいたりびんぐ
きのどあをへだてたしんしつ
てんぼうのよいべらんだ
そこにはおれひとりだった
ひとりにはひろすぎるへやだった

ふとおれは でんわのむこうのせんぱいのこえをおもいだした
おれがいこうというとしぶいこえをだしたせんぱい
たたみかければ うれしそうなこえをだした
もしかするとかれはさびしかったのかもしれない

しんしつのどあをふりかえった
なにもきこえてこなかった

ねいきすらも

おれはそれいじょうなにもいわず りょうりにせんねんした

ただ しょくじのときにうごけないせんぱいのまくらもとで

こんなすごいへや おれもすんでみたいなあ

とつぶやくと
せんぱいはしちゅーをくいながら
「すめばいいじゃないか」
とじじつじょうのりょうしょうをだしてきた

そんなわけでおれは たまっていただんぼーるばこをゆうこうかつようしているのである

□ 614-616 □
【とある りょうりべたな だいがくせいの いちにち】

あさ

けいたいのなるおとでめがさめた
ほんじつのこうぎはごごからで ごぜんちゅういっぱいねたおすつもりだったのに

でぃすぷれいにあらわれるばんごうは いつものたくはいや
おれはあくびをしながらふとんからはいでて ろうかをはってげんかんへいく

ねぐせのついたまま にもつをうけとる
さしだしにんはやはり じっかのははおやからだった
いつものやさいとそのたもろもろのしょくざいいだ

じっかがのうかであるせいで
りょうりもできないおとこのいえに たいりょうのやさいがおくられる
にんじんとまと だいこんきゃべつ
そのたいなかでやすくてにはいるきせつのしょくざい

いままではそれらはすべて おおややりんじんにおすそわけしていたが
このはるから にもつがとどくたびにおれはけいたいをひらくようになった

あどれすちょうにとうろくしてあるこうはいのめあどをえらんで
ひとことだけのかんたんなめーるをうつ

『きょう いく』

りょうりがしゅみなのだというこのこうはいは
おれいがいのだれかにたべてもらうあてもなく
しょくざいついでにおれがてりょうりをしょうばんしにいくのを
けっこうたのしみにしてくれているらしい

めーるはすぐにへんしんがきた
『まってます』
これもかんたんないちぶん
これだけですべてがつたわっている
いや つたえるべきものはさしておおくはないのだけれども

つたえたいことはいくらもあっても

あたまをふって ためいきをつく
いってもしょうがないことだし つたえるつもりもないことだ
とけいをみるとまだでかけるにははやかったけれど
おれはてばやくしたくをして がっこうへおもむいた

うごいていればじかんははやくすぎていく
ゆうがた おれはおくられてきたにもつをそのままかつぎあげて
こうはいのへやへおもむく

あかりのついたあぱーとの にかいのいちばんおくがあいつのへや
どあちゃいむをおすと ごびょうごにどあがひらいてこうはいのかおがでてくる
これも いつものりずむ

せいとんされただいどころをぬけて
すこしごちゃついたへやにおちつく
まっちゃいろの すこしつぶれたざぶとんはおれがもちこんだものだった
すわるとすこしかたい あたらしいものをかったほうがよいだろうか

てーぶるのうえには すでにゆうしょくがならんでいた
きょうのめにゅーは ころっけときゃべつのせんぎり だいこんのみそしるに はくまい
「えびくりーむころっけですよ はじめてつくったんでかたちがあれですけど」
こうはいはにもつをのぞきこみながら そういってめをほそめてわらった

「いつも ありがとうございます」
しょくじをしながら かれはいつもどおりにれいをいう
おれは かまわないよといいながら ころっけをくちにいれる
さっくりしたころもと とろりとしたくりーむがぜっぴん
うん こいつはまたうまくなったなあと しみじみかんしんする

「せんぱいのいえのやさいは すごくおいしいですよね
だいじにだいじに つくってるんだろうなあ」
かれもまた しみじみとそういった
おれもそれにはどういする
のうかのにんげんはみなそうだが つくっているさくもつにはいっしんにあいじょうをそそぐ
そのおかげでときおりむすこをおろそかにもしたが いまかんがえるとまあしようのないことだ

おまえのりょうりもうまいよ
こうはいはぱっとかおをあげた
はるよりうまくなってるな うでをあげたか
わらってみせると かれはほほをそめてめをほそくして
やはりわらった

おれはそのかおをみて
ああやっぱりいぬのようなえがおだ とおもい
このかおがいちばんのちょうみりょうなのかもな ともおもった

けれどなかなかそういうことはくちにだせない
ごくふつうの りょうりべたなだいがくせいと りょうりずきなだいがくせいの すこしまえのいちにち

□ 680-682 □
【とある りょうりずきなだいがくせいの いちにち】

あさおきて みなれぬてんじょうにびっくりする
うあ ここどこ とつぶやいておもいだすのはきのうのさぎょう
ああそうだった
ここはせんぱいのまんしょん ひっこしてきていちにちめのあさ

おおがたかぐはこうはいにゆずり
ひつようなものだけもってころがりこんだおれに
りょうりのへたなせんぱいはひとつへやをあけてくれた
そのへやも いままでおれのすんでいたへやよりひろくてすこしかなしくなったのだけれど

そうちょう みなみからさすやわらかなひかり
ふかふかのべっどにねころんで きょうはなんようびだったかとあたまのなかのかれんだーをめくり
ああ にちようだ とにどねをきめたところでいわかんにきがついた

ふかふか?

ふとんもべっども いままでじぶんでつかっていたものをもちこんだはずだった
そしておれのゆずってもらったへやは たしかひがしにまどがある
こんなあさにはもっときついひかりがさしこんでくるはず

そしてこのとなりのごつごつしたぶったいはなんだ

そろそろととなりにめをむけて

ぎゃあ

おれはあさからにわとりもかくやというひめいをあげた



「あさっぱらからひとのかおみて ぎゃあ とはなんだ ぎゃあ とは」

ねおきらしきせんぱいがすわっためをしておれをにらみつけている
いやだって びっくりしますよ
なんだっておれはせんぱいのべっどでねているのですか
せんぱいはおれのことばにしばしだまり そうしてわざとらしいためいきをついた

「おまえ、じぶんがろうかでねちまったことをおぼえてないのか」

はい?

「よるおそくまでにもつはこんでるとちゅうで だんぼーるかかえたままねてたんだよ おまえ」
せんぱいはやはりぶぜんとしてそういった
「へやをみりゃ べっどはととのってないし ふとんもだされてない
おまえ りょうりはできるけど そうじはへたなのな まえからちょっとおもってたけど」
あー はい そうなんですよねえ りょうりはすきだからだいどころだけかたづけてるけどほかはぜんぜん
ってそうじゃなくてもしかして

「それで ひとのべっどにつれてきて いれてやったんだからかんしゃしろ さけぶな」
あ、やっぱり

ご ごめいわくをおかけしました
おれがあたまをさげると せんぱいはあくびをしながら「べつにいいけどよ」といい
それからやはりねむたそうに
「そのかわり あさめしはこめとみそしるな なすいれろよ」
といってふたたびべっどにたおれこんだ

えーと

あ、そうか
きょうからおれとせんぱいはどうきょにんなのであって
せんぱいはりょうりがへたなのでおれがりょうりをするのであって
いままではゆうめしばっかりいっしょしてたのがさんしょくいっしょにたべれるのであって

うわあ

じぶんからひっこしてきながら いまさらなことにきがついて
なんだかほわほわとあたたかなきもちになってくる
なにがそんなにうれしいのかよくわからない でもうれしい

あっというまにねてしまったせんぱいをおこさないようべっどからでて
しんしつのどあをしめながら
それにしてもおれはいったいどうしてとなりにせんぱいがねていたくらいであんなにおどろいたのだろうと
とてもふしぎにおもうりょうりずきなだいがくせいは
りょうりべたなせんぱいが さくばんいっすいもできなかったことなんかにきづきもしない

きれいなしすてむきっちんが ようやくごはんとみそしるのにおいにつつまれた
とあるりょうりずきなだいがくせいと そのせんぱいのむかえる はじめてのあさ
あさごはんはしろいごはんと なすとだいこんのみそしる しゃけのきりみ

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【ある○○のいちにち】in 801 since 2004/5/15