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□ 1.5 / 120-123 □
【さとうの いちにち】

はじめてであったのは ようちえんのにゅうえんしき
「さとうくーん」とよばれて さんにんでそろって へんじした
さんにんとも さとう しかもおとこ
せんせいがこまるのも そりゃむりないはなし

なんかきづくと おれが「さとう」で
せがたかいのが「さとうくん」で
おんなみたいなかおのが「さとうちゃん」と
まわりからよばれるようになった

「さとう」と「さとうくん」と「さとうちゃん」は とりあえずかおみあわせて
『なかよくしようか』と さんにんで てをつないでみた

そんでなんかきづくと もうこうこうせいなんだけど
あいかわらず「さとう」と「さとうくん」と「さとうちゃん」はいっしょにいる

ちゅうがくならまだしも こうこうもいっしょかよおー てめえらみあきたよおー
「さとうちゃん」が あいかわらずかわいいかおでどくづく

あんた ここにはいれたのきせきにちかいんだから べんきょうしなよ
「さとうくん」が すくすくのびたせでうえからさとす

いいじゃねえの またいっしょでうれしいじゃん
おれがへらへらわらいながらいう

こんなかんじで さとうたちは じゅうねんいじょういっしょです

「さと」
ほうかご ふりかえると さとうくんが ろうかで てをふっていた
こいつは おれをよぶときにどうも 「う」を しょうりゃくする

なんですかい
へろへろちかよると でかいてが わしっとあたまをつかんできた

「あんた きょうひとりで かえって」
あたまのうえからいわれて いっしゅん まぬけなかおになった

あんで さとうくん なんかあんの
あれ さとうちゃんは さとうちゃんも なんかあんの

「おれ せいとかい さとうちゃんは」
いいにくそうに のっぽがだまる
なんだよとうでをひくと あのひとなあ とひくくつぶやいた

「かのじょできたから もう おれらといっしょには かえんないよ」

うそだろ とつぶやく
だってきいてねえよ なにそれ しんねえよ

「んで おれもこれから せいとかいいそがしくなるし」
いいにくそうなこえに むかっときた

ああ そっすか いっすよ べつに
ひとりでかえれます こどもじゃないんで

やないいかただと じぶんでもおもいながら ばっとてを ふりはらう
さっさとせをむけたら こんどは がしっとかたをつかまれた

「さと」
あせったようにこえに すこし ほっとする
「あしたは かえれるから」
べんかいするようなせりふに また いらっとした

いいよ いらねえよ あしたっからひとりでかえるよ
さとうちゃんにも そういっといて
つうか こうこうにもなって いっしょもねえよな

わらうと さとうくんは すこしかおをかえた
「あ そう」
ひくいこえがさらにひくくなる
ちょっと びびる
でも いまさらひけない

「じゃ あんたずっと ひとりでかえって ああ あした おれあさはやいから」
はいはい あさもひとりでいきゃいいんすね んじゃばいばい
「さいなら」
ばーい
むなしいかけあいをしてから ひとりでげたばこにむかう
ごとっとくつをだして はいてると むこうから よくしってるかお

あ まじでかのじょ できたんだ

じゅうねんいじょう いっしょにいんのに みたことないかおだ
さとうちゃんは かのじょといると ああいうわらいかたを するらしい

さらにむなしくなって はやあしで いえじをたどる
ざくざく じめんをける

じどうはんばいきのまえで しぜんとあしがとまった
いつもここで さんにんで いっぽん じゅーすを かう
で みんなで まわしのみする
まいにちまいにち だれかが かねをだす
たしか きょうは おれのばん

まいにちじぶんでだしてちゃ かねたりねえよ
もんくいいながら ひゃくにじゅうえん
じゅーすをのみながら またあるく

やばい さみしい
かなり きつい

なんだよ なんだよあいつら なんだよばか
ぶつぶついいながら やばい なきそうだ

ひとりだけ こどもですかおれ とつぶやきたくなる
まだまだ おとこどうしであそんでいたい こうこうにねん さとうの いちにち

□ 1.5 / 141-145 □
【さとうの いちにち】

さとうくんと なんかけんか?みたいなのしてから みっかかん
ひとりでがっこいって ひとりでいえかえる
きょうもかえりみち じゅーすかたてに かばんゆらしつつ ぼけーとかんがえる

えーと こんなんは そのうちじかんたてば なれるもん?
りょうわき さとうくんと さとうちゃんで まんなかがおれで
さんにんで あほみたいにわらってたのは もうおわりっすか

えーっと
さみしいんですけど けっこ むなしいんですけど

いつのまにかあるいてたあし とまった
ぼけーとゆうやけみあげて たちすくむ

さーみーしーいーじゃーんよー

ぶつぶつもんくいってたら いきなりくびすじに なんかからまった

「さっとーう! なにっなーにたそがれてんのおー」
なんかやけになっつかしいこえといっしょに ぐいっとくびしめられた

いたい いたいっす くびしまってます
「いたいのはいきてるしょうこ よかったなあー」
あいたた まじいてえってば さとうちゃん いたいって
「うわははは まいったといえー」
まいったー

するっと うでがはなれる
ふりかえるとあんのじょう にやにやわらってる さとうちゃん
おーす と てをあげると うおりゃあ と てのひらなぐられた
このひと かおのわりに えらくきょうぼう

「あれえー さとうくんはあー」
さー また せいとかいじゃないっすかー
「はあー? そんなもんさぼりやがれえ あののっぽさんよお
おれらのほうがだいじじゃねえか なあ さとうー」
それをさとうちゃんがいうんすかー

いやみまじりにいうと かわいいかおで さとうちゃんがくびをかしげる
「あー かのじょかー」 めっちゃくちゃ いやそうなかお
「わあかれたあー」 いいながら よこっつらひっぱたいてきた いたい

「なんかあー かおはちょういいけど ちょうぜつわがまますぎてだめ なんだと」
ああ さとうちゃんをこのうえなく てきかくにひょうげんしたことばっすね
「んだとお」
いたた いたいっす くびしめないでもらいたいっす
「いんだよ おりゃまだ さとうと さとうくんといっしょのが たのしーいよ」

さとうちゃんの さらっとしたことばに なんだかずんとくる
ちょっとやばい かんどうしてしまった

「てめえらもそうだろおー なあーさとうー」
うん おれはそうだけどね
さとうくんは しらん

いうと さとうちゃんは めがねのおくの きっついめをちょっとほそめた
だまったかとおもうと てがのびて おもっきりでこぴん いたい
「なにけんかしてんだあ ふたりして」
ばれた いや だってね だってさ さとうくんが さとうくんがー さとうくんがー
……
おれがー

はくじょうすると だいばくしょう
そりゃないぜ さとうちゃん

「おこさまふたりかよおー」
はらかかえて さとうちゃん おおわらい
めがねはずして なみだまでふいてる どんなんだ

てれかくしに ずんずんとあるいていくと ほそみのからだが すぐにならんだ
さとうちゃんは おれよかすこし せがたかい
むかしはおれのが たかかった
さとうくんはむかしっから あたまいっこでかい

「あした いっしょにかえろーぜ さんにんで なあ」
わらってるさとうちゃんに うっすとこたえる
てことは あしたのほうかごまでに あやまんねえと だめってことね

がんばります がんばるよ
やっぱ さとうくんと さとうちゃんいないと さみしいっすわ
おれ まだまだまだまだ あおいなー
「さと」て よぶの いちにちいっかいきかないと なんかおちつかんのよ

「しょうじんしろや おこさまー」
はなさきでわらって いっかいこうとうぶどついて さとうちゃん まえをあるく
それにはやあしでおっつきながら
このいとしきぼうりょくに さとうくんのどくぜつがまじればなあ と おさななじみをおもう
あしたはなかなおりしたい さとうの いちにち

□ 1.5 / 158-162 □
【さとうのいちにち】

あさ めーるがとどいたおとで めがさめた
ちゃくおん「ほのおのふぁいたー」 さとうちゃん はやおきですね
ねむいめこすりながら めーるひらく
あいかわらず あーるいー かよ たまにゃけんめい かけよ

『かぜひいた きょうやすむ ほうこくよろ
ついしん ふたりでみまいにくるように
ついしんつー しろくまくいたい』

おわあ まじすか おもわず くちにだして あたまかかえる
まじっすかー うっわあ ありえねえ

きのうからずっとかんがえてたのは
さとうちゃんにとりあえず ひとこえどなってもらう とか
さとうちゃんにとりあえず いっぱつなぐってもらって とか
おもいついたなかなおりのほうほう じゅうにとおり
ぜんぶぜんぶ まずは さとうちゃんに まかせようかな とか

「らくしちゃ だめってか」
ぼやいてこぼして けいたいのがめん ゆびではじく
てんぷされてたがぞう まっかなかおの さとうちゃん ないすえがお ないすぴーす
いやあの めっちゃねつでてんのに むりしなくていいから
てまかかる せわやける できてないおさななじみで すんません
しんぱいしてくれて ありがとう

けいたいとじて めとじて さとうゃんちのほうに あたまさげる かんしゃかんしゃ
さてと がっこいかんと きがえないと かおあらって めしくって そんで
そんでもって きょうは さとうくんと なかなおり

がっこういくみち のろのろりとあるきながら ふときづく
そういやおれ あのふたりとけんかしたこと あんまねえなー
さとうくんとさとうちゃんは よくどつきあいしてっけど
おれは ないなー

さいごに さとうくんとけんかしたの たぶん しょうがっこうのとき
りゆうわすれた たぶん くっだんねえこと
こんかいのも たぶん それにまして くっだんねえこと
せいちょうしてない なさけなくて ためいきでます

けっきょく きっかけつかめなくて もうほうかご
やばいやばいやばい はやくしないと きょうおわる
さとうちゃんに どなられるどつかれるしばかれる
それになにより おれが つらいさみしいやりきれない

せいとかい きょうはないはず
しゅうれいおわって そっこう さとうくんのきょうしつに だっしゅ だーっしゅ だっしゅ
ちわー さとうくん いないっすかー
みわたしながら こえかけると もうかえったよーと むじょうな おへんじ
まじすかー ちょいなきそうになりながら きっく えーんど だっしゅ

くつ かたっぽ うまくはけてないまんま かえりみちをはしる
ぜえぜえ いきあがりながら にふんくらいはしると とおくのほうに ほそながいのはっけん
おーい さとうーくーん さーとーうーくーん

ふりかえる おとなびたかおのひょうじょうは みえない
ただ たちどまって まっていてくれた

なんとかおいついて しょうめんにたつ ぜえはあぜえはあ いきが おちつかない
さとうく さとうくん あんさあ あのげほごほがはっ
めちゃくちゃ せきこむと あきれたようなかおで みおろされた
なだめるように おれのせなかを でっかいてがさする

「とりあえず おちつけ」
はあ すんません
「あんた むかしっから たいりょくないし ぶかつもやってないから からだ なまりまくりでしょ」
はあ まったくもってそのとおりです
「さと」
うん

みっかだかよっかぶりくらいに よばれた
なんか うれしくて へろっとわらうと なんだよ と でこをゆびではじかれる
あ そうだ あやまらんと
さとうくん ごめんな こないだおれ たいどわるくってさ ごめん まじごめん すみません

きゅうじゅうどくらいに あたまさげて はんのうまつ
しばらくたっても なにもいわれない
あれ なんだ なんなんだ めっちゃまだ おこってたりするんすか
ふあんになってかおをあげると さとうくんは おこってるつうか ふくざつそうなかお

「あんた あやまるとき まよわないの むかしっからだよな」
へ なにそれ どゆことっすか
「いや なんとなく」
さとうくんはくちごもって まあいいか と あるきだす
はんのうにまよってると ぐいと くびねっこつかまれた

くびんとこつかまれたまんま いっしょにあるく
さとうくんは まだ ふくざつそうなかお なんなんすか

あの あのさ さとうくん ちょい いい
「なんだよ」
さとうちゃん きょう やすんでるっしょ で みまいいかないと
「あー んじゃ しろくまでもかってくか ああ おれたち すごいやさしいね」
うんうん かってこう かってこう やっぱさとうくん わかってるわー

へらへらわらってみせると さとうくんは まっすぐまえをむいて つぶやいた
「いつまでいっしょにいられっか わかんないしね」

へら とわらったまんま かお かたまる さとうくんは つづける
「あんたも さとうちゃんも おれも しんろ まったくちがうよ
だいがくでわかれるだろ そしたら いままでみたくは できないよ」
そう だけど でも おれ そんなふうに かんがえてないっす よ
「なくても そうなるよ まあ あといちねんは かわらないから いんだけど」
いや よくないよ みじかいって みじかいよ

うでをつかんで ゆさぶる うわ なんだこいつ こんなに きんにくあったっけ
「みじかくても しかたねえだろ ばか」
かるくうでがふられて てが はなれる いつもとすこし ちがうくちょう
「おさななじみってだけで いつまでも いっしょにいられるはず ねえだろ」
なんでよ なんでだよ はなれてったうでを もいっかい いじで つかんだ

「さと」
つかまれたうでを こんどはそのまんまに さとうくん こまったかお
「なんだよ どうしたいんだよ あんた」
どうって おれは まだ ずっと ずっと さとうくんと さとうちゃんと あそんでたいし
「あのな あんた こどもか ばか」
いや あのさ さとうくん いやいや まあまて みなまでいうな えーと えーと さ

ぐるぐる しこうがまわる どうすりゃいいんだ どうしたらいんだろう
おさななじみじゃ だめっすか それだけじゃ だめなんすか
んじゃ それいじょうなら いいんかなあ
ん まて それいじょう って いうと

つきあっちゃったり したら どーうだろー

ぽん と てをたたいて ていあんすると さとうくんが は ときのぬけたへんじをした
いや あの おさななじみでだめなら こう それいじょうをねらってみようかと

「……あんたね」
あああああ すんません いや あの いやおれさあ さとうくんなら まあいっかなあとか
いや たいはなくってね それだけなんだけどね つうか おれもちょい こんらんぎみ で
「いいけど」
あ はい そっすか いっすか いいんすか わあやった
やっ

さとうくん?

「いいけど べつに じゃ とりあえず」
はいよ と てをだされる えー これは やっぱり
「ほら」
あ はい つなぐんすか うん …うわ て でかいなー

「しろくまね めんどうくせえな あのわがまま わざわざとおくのこんびにまで いかせやがって」
おれのてひっぱりながら さとうくんは さとうちゃんへの ぐちをぶつぶつ
おれはもう なにがなんやら どうしたんやら

よくわからないうちに おさななじみがこいびとになっちゃったような でもそれ おれのせい?
めっちゃぐるぐる こんらんちゅう じつはかのじょいないれきじゅうななねん さとうの いちにち

□ 1.5 / 228-232 □
【さとうの いちにち】

あれからだいたい いっしゅうかん
さいきん めたくた あつくなったなー
ぽけっとかんがえながら つうがくろあるいてましたら
いきなりせなか どーんと どつかれた

「へーい はわーゆ さとー」
ふぁいん てんきゅー えんじゅー さーとうちゃん
てか いたいっすよ なにはいってんの それ
「あいむふぁいん てんきゅー
あんさー でぃくしょなりー ごさつ」
にほんごじゃん つうか じしょいれすぎ
「いちいちもってくんの うぜえじゃんかよお」

はんぶんもて て よこされたかばんの かたっぽ もつ
うんせうんせ おーもーいーすーよー

ふたりして うんうんうなってたら うしろから ひょいと
ひょいと かるーく でかいてが のびてきた

「あさから なにやってんの あんたら」
どき
しんぞう とびはねる

「おれかばん めちゃおもいから さとうにはんぶん」
「よこしなよ このひと ひりきだし やくたたないよ」
「まーじでえ さとうくん やっさしいー」

けらけらわらう さとうちゃん こづいて でかいてが かばんもつ
どこどこいう しんぞうおさえて しんこきゅう
おは おはようと いわねば いわなきゃ いいますよ


「さと」

「おはよう」
うす はよ

さき こされました うへらとわらって ごまかすと
「きしょわりい」て さとうちゃんに どつかれ
「どうかん」て さとうくんまで わらう
さとうくん 「あんたなに そのつら」て おれのあたま ざくざくなでる

このひとねー じつはいま こいびとなんすよ こいびと
こいび と ?

てか じっさい なーもかわってなく
ただ いっしょにがっこいって いっしょかえる
まえとおんなし なーもかわらん
でも それがじつのところ すげえうれしい

ん だけど
なんかもっとしなきゃ いけないよう な
いま してることって かえりみちふたりになってから
さんぷんかんだけ て つなぐくらいで
えーと なんじゃあそりゃあ こいびとたあ かたはらいてえー

やっぱ ちゅーのひとつばかし ぶちかますべき?
いいだしっぺ おれ だし
おもいたったらきちじつ よっしゃやったるぜ
ねらいはほうかご まってろ さとうくん

こぶしあげて てんちにほえる
かみさま おとこににごんは ありません
あ でも あったらまじ ごめんなさい

「んじゃあなあ また あーしたあー」
さとうちゃんがわかれて ふたりになる
ちょいあるいてから あたまいっこうえ みあげた

「なに」
あー あの て てーつないで いっすか
「いいよ」
こ こいびとつなぎとか してみて い?
「いいよ」
ははー あー あせかいたりしたら ごめん ねー
「いいよ」

ぎゅ て ゆびからめる いつもこんなで うるとらまんじかん
さとうくんのては いつも ひやっとしてる

「さと」
んっ なんしょ
「あんた てぇあったかいね いつも」
やー さとうくんが つめたいんすよ
「ようじたいおん て あんたわかる?」
わかんね けど ばかに してんなー

「ばれたか」て わらってるあたまを ぐーと ひっぱる
め まるくしてるの さいごにみえた
さとうくんは くちびるも やっぱ ちょい つめたい

ふいうち やっぱ やばかったかも
かおはなれてしばらくしても さとうくん わらってくれません
めたくたまじなかおで なんか かんがえこんでる

なんか いたたまれなくなって なきてえー とかおもってたら
「なんか」
えっ はい なんすか うわあーごめ まじごめ
「あんま きもちわるくないな」
ごめん て


でかいてが かたをつかんでくる
かとおもったらいきなり だきしめられた
また こんどはさとうくんから くちびるがかさなる
どん りょうてをむねにつっぱっても まるでうでは ほどけない

やめろって どなろうとして くちあけて からだがすくんだ
え ちょ まじ たんま
したとか いれてくんな うわ う あ

ひざが がくがくいう
しゃれになんなくなってきたら やっと うでがはなれた
「そのつらなに」
わらわれて つられてわらったけど なんか わらえない

「ほら」
のばされたてに たっぷりちゅうちょしてから つかまる
やばいおれ こいつ こわい
いまさらそんなことおもうじぶんのあさはかさに
いまさらきづいてなきたい さとうのいちにち

□ 1.5 / 265-269 □
【さとうのいちにち】

あれから 「あんまきもちわるくない」ってわかってから やけにさとうくんは たのしそうだ
なんかもう まいんちまいんち ほうかご てはつながなくなったのに そのぶん ちゅーかましてくる
しかもそれ まいかいまいかい べろちゅーで おれもう ついてくの せいいっぱい てか にげたーい
こくっといて じぶんからしといて なんですけど なんかもう げんかいぎりぎりです

きょうもさとうちゃん さきにみぎまがる おれらふたり のこる んで その あれだ
またきょうも やんのかなあ すんのかなあ やだなあ
もやもやかんがえてたら いきなり かえったはずのさとうちゃんが すげえまぢかに いた

「さとーう? なんかぼんやりしてっけど なあに かんがえてんだあー」
や いや なんでもないっす へいきへいき
「なあんだよ おれがかえんの そんなにやなのかよおー」
うん そう あ

しょうじきにこたえすぎた さとうちゃん め まるくしてから はらかかえてだいばくしょう
となりでは あきれたみたいなかおの さとうくん
いや あの ふたりになんのが やなんじゃないっすよー べろいれられたりすんのが やなだけで
とは さすがにいえず へらへらわらって やはーさとうちゃんらぶっすよー とごまかす
「ふたりしてなくなよおー またあーしたなあー」
いつもよりじょうきげんで てふってくる さとうちゃんに りょうてふってると となりから わきばらにいっぱつ
「ないとく?」
なきません すみません

「ああ おれんち きょうだれもいないから よってったら」
だったらさとうちゃんもよぼうやー と いいたくなるのを がまんして へいへい うなずく
ほら と てだされて なんかそれは びみょうにうれしくて ざくざくならんであるく

さとうくんのへやは にかいの いちばんおく うおお まじで だれもいねえー
なんかいもなんかいも きたへやなのに なんか はじめてきたみたいに きんちょうする
いつもみたく へやのまんなかに よいこらしょとすわると いきなり うしろからほーるど くらった

「なあ なんか いろいろ やってみていい」
いきなりとんでもないこといわれてるような どうこたえれば と まよってるうちに あごにてがくる
ぐいっとひきよせられて むりやり きついたいせいで くちびるかさなる
それだけでもつらいのに また したはいってくるし あわあわしてると いろんなとこなめられるし
やばいって まじ やばいんだって これじゃ
なんかもう これ これって もどれんのー もどれん の?
ともだちって こういうのしても なにもなかったみたいに もどれるもん?

せっぱつまりながら ぐるぐるかんがえてると さとうくんが ふと ちゅーしたまま わらったようなきが した
なに なんなん なにわらってんの おまえ
ついてくのせいいっぱいになりながら いしきずらすと すげえ とんでもないことにきづいた
あわてて ばっとかおはなして もっとやばいことになってるとこに いしきしゅうちゅうする
ちょ まった おま どこ さわって つうか なに べると はずしてんの

「あ なんか けっこう こうふんする」
おれしないっすよ ぜんぜんしねえって おい やめろって なあ ちょ こわいよ
「なにが」
おまえ こわいよ

ひっしになりながら なんとか かはんしんまさぐってくるの やめさせようとするけど むりで
ふぁすなーおろされるおとに みみふさぎたくなる かおがまっかになるのがわかる
もがいてももがいても うでははずれないし あのひんやりしてつめたいてが したぎからはいりこんで ちょくせつ

はなせ ばっかやろう はなせってば
「おとなしくしてろって」
ほんきでどなっても まるでこうかない こいつなんでこんな たのしそうなんだよ
はんたいにおれは いしきしゅうちゅうしちゃってて どんどんいきがあがるし
からだのちからは ぬけそうになるし そのくせ かはんしんのとこだけ めちゃりあるだし
やばいよ まじ やばいよ こんなん ぜったい やんないよ ともだちって
ともだちじゃねえよ こういうの ちがうよ
ぐちゃぐちゃかんがえながらもがいてると みみもとで あのひくいこえ

「いって いいって」
いやだ ぜってぇやだ じょうだんじゃねえって やだ って
「いけよ さと」
しんでもいやだ いまだってこんな まじ しにそうなのに
これいじょう なんかなったりしたら そんなの たえきれない
かお さとうくんのかおが みらんなくなるから もうまじ やばいから
つうか なんでそんなのわかんねえんだよ このばか ばっかやろう

は は とみじかくいきつぎして なんとかねつを やりすごす
それがきにくわないのか てのうごきが いっそうはやくなった
どんどん むりやりおいつめられてく どんどん どんどん

それでもなんとか どうしてもこらえたくて だきすくめてくるうでに しがみつく
りょううでに つめたてて ひだりうでの つけねのとこに かみつくと
「いてえよ」と すこしわらってる なだめるみたいな やさしいこえ
でも てはぜんぜんとまらないどころか また はやくなって
くやしくて むかついて はにちから いれると いきなりみみに ふっと いきがかかった

「しんご」

え なん
なんで そこで なまえ
なまえ よぶんだ

ぞくっと せなかに なにかがはしる
どうじに あたまが まっしろになった

「さと」
あたまのうえから きづかうような でもどっかたのしげな こえがする
もう ゆびのいっぽんも うごかしたくなくて やけにからだ だるくって
せなかごしのでかいからだに たいじゅうおもいきり ぜんぶかけた
「おもいよ」なんていわれても しったことか

ふっと からだがはなれて てが なにかさがしてる
なんだろー ぼんやりなんとなく めでおってると やわらかいぬのごしに また さわられた
びくっと ぜんしんが おもいっきり はねる

ふざけんな もうやだ もうやめろって さわんな はなれろ ばか
「ばか ちがうよ やんねえよ ふくだけだって おい おちつけ」
いやだ はなせ はなして まじ かんべんしてよ やなんだって いやだって
「あばれんな てまかけさせんなよ ちょっとおとなしくしてろって」
だからやだつってんだろ はなせ なあ なあさとうくん おかしいだろ これへんだろ
「いいからおちつけ なにがへんなんだよ」
いや だって え え へんでしょ へんですよ ね
「つきあってんじゃないの おれら」
う そうだけど いや でも へん えー へんじゃ ないんすか え えー
「これがへんなんだったら あんた なにしたいの」
なにって おれ さとうくんと あと さとうちゃん と
「おれと つきあうかっていったの あんただよ」

それもちだされると なにもいえない ていこうも はんろんもできない
「からだ すげえちからはいってる」
せなかごしにわらうこえ ああこいつむかつきます てか やんならとっととやってくれ もう あたまいたい

め とじてじっとしてると でかいてが ぬのごしによごれたのを ぬぐっていく
なんかもう されてるときとおんなじか それいじょうにはずかしくて いたたまれない
ぜんぶしっかりきれーにふかれて したぎとか せいふくとか きっちりなおされる
しにたい まじもう どっかあなあったらはいりたいし なかったら ほっちゃいたいんですけど

「さと」
なんすか あ かお もうちょい はなしてー
「こういうのすんの いやなの あんた」
ぎく
「いや ばればれだから すげーていこうしてくれたし」
う だってもう どうしたらいいかわかんないくらい はずかしいんすよ
「おれ きもちいいよ」
なんかもう からだじゅう ふっとうすんの なんかさ やばいんだって
「おれ あんたがきもちよさそうなの みてるの きもちいいよ」
だからもう て え なに なにいってんすか
「ああいう なきそうなかおみてると けっこう くるね」
なにが きこうとして こしのあたりに なんかこう いわかん? てか う わー

ふりーず えらーおんがあたまにうかんで うかんで きえる
え そういうはんのう しちゃうわけですか できちゃうの え おれで おれでえ?
がちっとかたまると さとうくんは おれがきづいたのに きづいたのかなんだか いきなりむごん いたたまれない
ひざのあいだにはさまれたまんま うごけないでいると うしろでためいき
「なんでそんな こわいの」
こたえられないでふりかえると きづいたようなさとうくんのかお
こんなかおはさせたくないなあ つぎのしゅんかん まじでかくごきめた

あ はい さとうくん んじゃ つぎ おれやる おれ やります
「いいよ むりしなくて おれ といれいってくるし」
そんなさみしいひとりしばい ぜったい させません おれ こっ こいびとだしねー
「どもんな ばか」
でかいてで ほおなでられる あーつめたい きもちいい よし できるできる なんでもできる
じぶんでじぶんにあんじかけて めっちゃけついしてのぞむと さとうくん だいばくしょうですよ
「なにそのつら」 うるせえだまれえ おらおら だすもんだしやがれえ

やけっぱちでいいながら ふぁすなーさげる わー いつのまにむすこさん こんなにりっぱになられて
ついついじぶんのとくらべながら おもわずかたをおとしてしせんそらす さとうの しょうげきのいちにち

□ 1.5 / 377-381 □
【さとうのいちにち】

あさ めがさめたら びねつがでてた
きのう いえかえってすぐ めしくわないでねちゃったりしたから ははおがしんぱいしてる
がっこやすんでいい といってみたら いいよと あまいかおされた すえっこってすてきだ

しばらくごろごろして あせかいてきたから もそもそおきあがって きがえる
きがえさがしに べっどからおりて いきなりせかいがぐらっとゆれた
ぎしぎしいうからだで なんとかおきがえ あー だるいな からだんなか いたいな
ぼんやりつぶやきながら はんそでにうでをとおす そこでいっしゅん うごきがとまった
ときどきぼやけるめに しみみたいな あかいいろが うつる
ちょくご きのうのことが どんどんどんどん あたまんなかで うごきだす

あかいしみののこる みぎうでのうちがわを ぐっとひだりてでおさえる
せっかくきがえたばっかりなのに また せなかとか むねのあたりに あせがあふれてきた
ひやあせなのか ほんとうにあついのか わかりゃしないけれど からだじゅうがあつい
もう びねつどころのはなしじゃない きが

じゅうじーくらいにかんじるからだかかえて べっどにぎゃくもどり
このくそあついのに あたまのうえから ふとんかぶる
そんなことすりゃやっぱあつくて でもなんかかお だしたくなくて つうか もう

あんまおもいだしたくないけど たしか うりことばにかいことばに はじまったような とか
なんかめちゃくちゃ いろんなとこ いろんなふうに さわられたような とか
なんかかなり やばいことくちばしったような んでも あっちもけっこう やばかったような とか
いやまじむりぜったいはいんないっすよ むりむりむりむりむりごめんぱす て おがみたおしたなーとか
まあ きいちゃくんなかったんですけど つうか ぱすなし って さとうちゃんるーるのうのかよ とか

かすれたこえで しかもみみもとで なまえよぶのは はんそくだ とか

ぐるぐる ぐるぐる あたまをねつがめぐって なんかのうみそ くいつくされそうになる
くるしい きもちわるい からだいたい あたまおもい
はっきりしてるのは いま おれが こうかいしてるってこと だけで

きづくといつのまにか とろとろねてたらしく したで ははおやがはなすこえ
どーやらおれやすむこと どっちかにいってるらしい さとうちゃんか さとうくん か
こえのかんじからして さとうちゃんかなー ちょっとあんしん むねなでおろす
ぼけらとてんじょうみあげて しばらく かんがえることにした

これから どうすっかなあ どうなんのかなあ やっちゃったなあ
さっきのあかいとこ ひっぱって たたいて もんでみる きえないわなー
いちおうからだ みてみたけれど すくなくともみえるとこで あとのこってるのはここだけで
それだけに やけにはっきりとおもいだせる
あいつ かみやがったんだ ちくしょう いてーじゃねーかー
つうかぜんしんいたい きもちわるい う さいあく もうおきたくなーい
あれー きのうどうやってかえってきたっけ おぼえてないな ぜんぜん おもいだせないなー

ぼやぼやぐらぐら はんぶんねながら まったくいみないこと つらつらかんがえてたら
ははおやがはいってきて おかゆといっしょに さとうちゃんがかえりくるって おしえてくれた
おお しろくま くるかな おれ がりがりくんのほうがいいなー
てをたたくと げんきならいまから がっこいきなさい と たしなめられる すみません まじ むりー

それからずっとねて ねまくって どああけるおとに ぱかっとめがさめた
かおあげると さとうちゃん うっす おみまいごくろうさまです
「おー ほーれ しろくまだぜいー」
ぎゃ なげるな おれ びょうにんです
「ち しかたねえなー はい あーん」
いやいやいやいやいや ふつうにください このてに このてにそっと
「わがままだなあ おまえ」
どっちが といいかえそうとして めがねのおくのきっついめが しんぱいそうにみてるのにきづく

「ねつ へいきかあ」
はい へいきです ごしんぱいかけます
わらいながら こたえながら なんだかさとうちゃんが なつかしい
このひとは おれの ともだちです さいあいの しんゆうです

「ちなみにこれ まーくんから」
え なんすかーこれ こぴーのたば? つうかまーくんて
「おばちゃんが まーくんはこないのっていうんだもんよ まーくんせいとかいだよ」
ああ さとうくん せいとかいか そりゃたいへん ですねー
「そーそー あのうらぎりくんめ つうかそれ こんかいのてすとはんい ひっさつ さとうくんのーとのこぴー」
え まじで あの おーくしょんでたかねのつく
「ずばり それをおれが こぴってやった」
さとうちゃんかよ つうか ばれたらころされるよ
「いや やっていいつったから いんじゃねえの」

いつもなら のーとみせてっつーと おこるんだけどなあ くびかしげたら かるくまゆひそめられた
「なんか おもうところでも あんじゃねえの」
なに それ
「さあ よくわかんね」
ばりばりあたまかいて さとうちゃんがめがねのれんず かちかちたたく
「さーとーうー」
ごつん と でこをでこでこづかれた
「おまえ なに さいきん なやんでんだあ」

ええええ え え なんの
「てめえなあ ひとりでなやんでっと はげるぞ」
いやそんな つっぷしながら そんなこといわんでください
「むしろ はげすぞ」
そんなどうしは ありません
「はなしとけ いいから はなせ おいこら」
はあ うん
「しんご」

うわ かんべん なまえよばれんの よわいんすよ
このひとたちねー なまえでよぶとき いつもおれんこと あまやかすときなんですよー
ぐわっと なきそうになった

じっくりだまって さとうちゃんがまっててくれんのわかったので はなしたいんだけど
やっぱりとても とてもいいだせることではないので やめて ほかのこと そうだ ほかの

おれ さあ ずっと あのな ずっと いいたかったことが あんのよ
「あんだよ こくはくか あいしてますかあ」
いやいやいやいや あの さとうちゃんさー じっか つぐでしょ
「おうー おれひとりっこだもんよ ほかいねえし いたまえになんのゆめだし
つうかこのまま びしょうねんからびせいねん びちゅうねん びそうねんをへて びろうじん
さいしゅうてきには まごくらいのとしのおさなづまもらうのが ゆめだけどな」
はいはい それはもう わかってますから まいかいいわなくていいから じゃなーくーてー

「おまえは じもとのしだいだろ」
う ん そう おれね じもとでしゅうしょくしたいんだわ
「しってるよ で さとうくんは とないのこくりつな あいつ したさんにんいるし あったまいいしな」
だから おれら めちゃくちゃしんろ わかれるなあ と
「さみしいのかあー ないちゃうのかー」
なきそうすよー これでおわりかなあとおもうと めちゃさみしいよー
「おわらないだろ あほうー」

ふざけていったら さくっとかえされた おもわず え とみかえす
「おわらねえだろ こんなんでいまさら ばかか ばかだなあ おまえ」
さとうちちゃんは さも とうぜんのことのように いう
「いままではめっちゃちかくにいたろ それがはなれるわけだろ だから どりょくすんだよ
いっしょにいたけりゃ どりょくすんだよ おれはそんなんてまじゃねえし つうか おまえらもそうじゃねえの」
いや だって さとうくんは さとうくんはさあ あいつはさあ
おわりだって いったんだよ だからおれ それが いやだったんだよ
だからなんかつなげたかったんだけど どうにかしたかったんだけど
それは もしかして もしかしなくてもめちゃくちゃ たんらくてきで もしかしたら まちがい で?

がたっと からだがいちどふるえた

「つうか まじやばいかおしてんぞ」
さとうちゃんが みけんのあたりをゆびでつついてくる
よっぽどしにそうなかお してたらしい めちゃ しんぱいそうなかおだ
はは せっかくのびけいが もったいないすよ わらうと めがねのおくのめが くっとほそまった

「どしたあ」
がしゃがしゃとあたまをなでられて ぐっとなにかがこみあげてきた
ともだち ともだちすきなんすよ おれ ていうか このひとともうひとり すごくだいじなんすよ
もう ともだちっていうか しんゆうっていうか ほんとに たいせつなんですよ
たいせつなたいせつなかんけいだったのに なんでこう じぶんで こわすみたいなことを したかなあ

さとうちゃん おれさ
「なんだよ」
おれねえ どりょくした つもりだったんすよ
「うん」
なんだけどね なんかこう ほうこうせいがちがった つうか ぎゃくそう? したらしい
「そか」
おれね いつもこう からまわりで うまいこといかないんです
「あー おまえ ちからいれすぎていつも どっかしっぱいすんだよな」
うん そう たぶんこんかいも しっぱい
「でもおまえ ぜんりょくだからいんじゃねえ」

「いっつも いっしょうけんめいだから いんじゃね」

なにもいえなくなった いえなくて しばらくしてから さとうちゃんに しがみついてみた
そのまんまのかっこうで おれ ばかなんすよーとなきつくと
「そのぶんさとうくんがかしこいし おれがずるがしこいから おっけーおっけー」
と なぐさめられた もうほんと どうしようもなく これはてばなしがたいです
とてもとても はなれるのはむりそうです
「で なにがあったかはきやがれえ」と いうだいじなしんゆうには それでもなにひとつあかせない
ねつにうかされていちにちをすごした さとうの いちにち

□ 1.5 / 443-447 □
【さとうの いちにち】

けっきょく つぎのひも がっこやすんだ あつい あっついねー ふとんのなかあついあつい
むされるー とかおもいつつ ごろごろごろごろごろりとな もうほとんど ねつなんてない
ただ もうちょっと つうか できれば あといちにち かおをみないで すめば とか
じぶんのなかで なんとかせいりがつくように けりがつけられるように おもえたので
くーらーのないへやで ただ ごろんごろんと あせだくで ころがる

そんなこんなで きづくともうゆうがたになってた
いつのまにかねてたらしく したでものおとして はっとめがさめる
かーさんがたのしそうにはなしてる となりんちのおばちゃんか みかわやさんかー
ぼんやりそうぞうしつつ てんじょうながめてると どあがしまるおと あ おきゃくさんかえった
とんとんとん と かいだんのぼってくるおと かーさん きょう めし なんですかー

「なんだ わりかし げんきそうじゃん」
がちゃっとどあがあいて はいってきたのは かーさんではなく おさななじみの でかいほう
いっしゅん がちっと かたまってしまった
「このへや あいかわらずあついね ああ おばさん かいものいったよ」
ひとこともんくいって そのくせすずしげなかおで さくさくあるいてくる
「ほら がりがりくん」
こんびにのふくろ ぴたっとほおに くっついた つめたい けど きもちいい
どうもーと ありがたくいただくと しぜんなしぐさで でかいてが ひたいにふれた

「もう ねつないのな」
あ うん じつはもう ないんすわ うへへ きょう さぼりー
「ばか のーとかしてやんないよ そういうこと いってっと」
うわわ うそうそ いや あさはね ちょいとだけ あったんよう それで だいじをとりまして

「ふうん」と みじかくつぶやいて さとうくんは べっどのわきにこしかける
ぎしっと たいじゅうぶんがしずみこんで そのおとに すこし からだがにげた
「からだ へいき」
びみょうなはんのうに きづいたか きづかないのか わからないけど てが やさしく かみにふれる
へいき と へらへらわらうと さとうくんはわらわず 「ふうん」と また みじかくこたえた

つか なーんかいわかん とおもってたら このひと ふゆふくなんですけど そりゃあちいよ
なにやってんすか なんかのくぎょうですか そのがくらん
おきあがって そでぐちひっぱると 「なつふく くりーにんぐにだしてる」 とな
「さとうちゃんに けっとばされた」
え なんで けんかしたんすか
「けんか というかね きのう あんたんち さとうちゃんきたろ」
ああ うん おみまいきたよ しろくまきーたよー
「そのあしで おれんちきたんだよ かえるまえに」
へええ そうなの なんでだろ
「で かおみたしゅんかん けっとばされたし なぐられた はらしゅうちゅうして いてえのなんのって」
な なんで いきなりそんなん あれ だってべつに かえるときは きげんわるくかったし
「あのひとさ あんたのこと あれでほんとうに すきなんだよね」
いきなり いわれたことに んあ とまぬけなこえがでる さとうくんは たんたんとつづける
「おれより あんたのことがすきなんだよね だからだと おもうよ」

せいとかいちょ はーい しつもんー
「しつもんは ようしょをとらえててきかくに はい どうぞ」
いってるいみがわかりません ぷりーずあんさーみー もあ いーずぃりー
「やったの ばれた さとうちゃんに」

しばらくなにもいえなくて さとうくんはなにもいおうとしなくて はらをときおり さすっている
このちんもくはおもくていたい たえきれなくて どうしようかと きいてみた
ど どうしましょう か これから どもったうえに なんか くちのなかがすっぱい
どうしようか と もういちどくちにして なあなあと さとうくんのそでをひっぱった
いつもたよりになる このしゅうさいは きょうにかぎってどこかはぎれがわるく おもいつめた かおをしている
もういちど ぐいぐいひっぱったら そのてをかるく なだめるようになでられて さとうくんがきりだした

「あんた おれと ともだちでいたいの それとも こいびとになりたいの」

とわれたことばに かえすことばをさがせない それはたぶん ずっときいてほしくなかったこと

こんどこそなにもいえなくなった そのはんのうは よそうはんちゅうないだったらしい
かなりやさしくわらって 「わかったわかった」と さとうくんが なっとくしている
あ やばい このかおは とても きずついている かお だ
ものすごく しんぞうが というか むね が? いたいんですけれど というか おもい やばい
ごめん とくちばしりそうになったくちを ふいによこから さとうくんがかるく くちでふさいだ
くちびるはすぐにはなれて かわりに めんせきはでかいくせに いんどあはだから わりにほそいゆびが ふれる
「こういうの もう やめようか」
ぞくっときたのは せなかでなく やっぱり むねのあたり

「なにそのつら」
いや いやあの むねが なに これ むねじゃないんすか こころ? うわー いーたーいー
「さと」
おだやかなこえだなあ ききごこちがいいなー このこえ すっげすきなんすよ まじで なのに あれ あー
「あんたね がきじゃないんだから しがみつくの やめな にげないから べつに」
にげ にげないよー べつに おれだって にげねえよ
「いいから ちょっとききな ききなさい きけ みみふさぐな がき」
ぎゃー ききたくねえー いーやーだー

じたばたしても そりゃむだだ たいかくちがうよ いつのまにか しっかりうでんなかに かかえこまれてる
「なきそうな」
なきたいんすよ いやなんすよ なあー さとうくんー なんとか なんとかー
「なんともならねえよ つうか … うん あんたじゃ むりなんだよな むかしっからそうだよな
もうかえろうーって いつんなってもいえなかったもんな おれか さとうちゃんがいうまで
いまもそう あんたかわってないよ よくもわるくも つなげたもんは はなしたくないんだな」

あきれたこえはひくく いつもよりやさしい いつもやさしいけれど きょうは めちゃくちゃあまやかすこえ
おおきいてが しっかりしがみつくおれのせなか なでてくる のに あんしんできない むしろ こわい
「さと」
きくな きくな たのむから それ きいてくれないで すきにしてくれていーから おれには おれには
「あんた どうしたい」
おれには せんたくけんを あたえんな

「さとうちゃんは あんたが あるいみとくべつなんだよ むかしっからちょっと こせいが つよすぎるだろ
ほっとくとひとりになるだろ それを あんたがうまく とけこませてたんだよ
だから さとうちゃんにとっては あんたが とくべつなんだよ だいじなともだちなんだよ
おれなんかは まあ ともだちだし だいじにはされてんだけど いわゆる どうぞくっぽいからなあ」

たんたんとはなすさとうくんに おもいきり てがしろくなるほど しがみつく ふしぎと あつくない
「あんたは おれと さとうちゃんと いっしょにいたいんだよ」
そうだよ
「でも おれをこうやってえらぶと さとうちゃんが えらべないよ」
しんねえよ そんなの さとうちゃんだって
「このまんまだと すくなくとも あのひとは おれのことを きるよ」
なんでよ じゃあおれ どうしたらいんだよ わかるかー そんなの わっかんねえよー
「こんらんすんな いいからおちついてかんがえろ そうすりゃわかるよ もとにもどればいいんだよ
おれと こういうのやめて まえみたく さんにんで」
だから そういうのだと あとにねんで おわるんだろうが

ぜっきょうにちかかった と おもう じぶんのせりふに じぶんでおどろいた
なにいまの とみあげて 「おれにきくな」と くしょうされる はいはいと ためいきまじりに だきしめられる
「ありえねえ あんた ほんと なんでそんなんかな」
さとうくんは いささかとほうにくれたこえでつぶやいて とつとつと こんなことをはなした

「おれさ じつのところ あんたのことものすごくすきとか あいしてるとか そういうのおもったこと ないよ
でもやっぱり かなりだいじだとおもうし こないだみたいな …なんつうか ああいうときのかおとか こえとか
いまみたいなさ こういうのとか されると あれ もしかしてものすごく すきかなあとか かわいいとか おもうよ
できればおれは このまんまでも いいし いたいと おもうよ ばかみたいに おもうよ」
でもなあ と つづく ひていのことばが じわじわとひふをとおして ひびいてくる
「あんたのは そういうすきじゃないよ」
さとうくんはやさしく めちゃくちゃやさしく おれとじぶんを ひていしました

「あいす とけるな」
さとうくんのてが がさがさとびにーるぶくろをあさる つめたいかんしょくが ほおにふれた
「くっとけ」
いわれて のろのろとてをのばす がりがりくん かじる がりがりかじる
きかいみたいに あいすかじってるおれのあたまを ぽんぽんと てがなでた
「ぼーっとしてっと ふとんにあいす おちるよ」
うん ぼやぼやこたえて がりがりあいすくう くいまくる
しばらくふたりで ぼんやりむごんで あいすくいまくった

さとうくん と こえをかけると あいすぼうくわえて よこがおがふりかえる
「なんだよ しんけんなかおして」
でーと すっか
「うん?」
でーと しましょう こんどのにちようび
「にちようね」
うん だってそういうの いっかいもしてないし やってみたい ちゃんとまちあわせてー べんととかつくってー
「あんた あじおんちだから べんとうはいらねえよ でも そうだな いいかもな」
けっていけってい おやくそく んじゃ えきまえじゅうじに しゅうごーう ほいゆびきり
「はいはい やくそくな」

かるくゆびからめて そのままひっぱられて さとうくんのくちびるが こゆびの つけねあたりにふれた かんだ
ああ これ こいつの しょゆうよくの くせなんだ
ぼやっとかんがえて おかえしに さとうくんの てくびあたりに かみつく 「いてえよ」と わらわれた

「はれるといいな」
そだねえ と うなずきながら てぃっしゅまるめて ふたりで てるてるぼうず つくりまくる
たぶんこれ さいしょでさいごの こいびとのでーとかなあ なんてことをかんがえながら
いっしんふらんに てるてるつくって まどぎわにつるしました そんなふたりの さとうの いちにち

□ 1.5 / 489-493 □
【さとうのいちにち】

でーとのやくそくをとりつけて なんだかいきなり つかれてしまったかおのあいてを ふとんにもどす
「はれっかなあ はれっといいなあ」
まどのそとのくもりぞらをながめて さとが ねむそうなめで ぼやいた
はれるだろ と むせきにんながらにこたえると もうはんぶんくらいねてるめが へにゃりとわらった
「そーね さとうくんがいうなら はれるでしょ」
なにそれ とかえすまえに くうくうとねいきがひびく こののびたはまた ねるのがはやい

ずらりとならんだてるてるぼうずを いちど ながめた
はれるといい ほんとうに
べっどにしせんをもどすと なにか つきものがおちたかのようなかおで さとが ねている
あんた そんなに くるしかったの
てをのばしてかみをなでる ねこっけで やわらかい
むかしちょっと やさぐれたなごりで うすちゃいろのかみは さらりと ゆびのあいだを すりぬける

ちいさくひらきっぱなしのくちに ゆびをあてた
こどもじゃないんだから くち とじなさいよ あほづらだよ あんた
ないしんでつぶやきながら かるく くちびるをあわせた

このかんしょくも もう なくなる
だきしめたときの からだのあつさも いつもとまどいがちだった はんのうも
あたまがおかしくなりそうだった こえとか かおとかも
すべて あしたには

こうかいしそうになった そのじぶんをしったして かおをあげる
さとの きらくそうなねがおに わずかいじょうにすくわれた
おばさんのきたくをまってから さとのいえをでる
あるきながらすこしなやんで けっきょくいえにはもどらず はんたいのみちをまがった
すこしあるくと おおどおりにでる そのちゅうおうをわずかにはずれた かんせいなばしょ
「さとう」とかんばんのかかった にほんりょうりのみせがある
このじかんなら へやで きんとれでも してるだろうな
みせのうらぐちからはいって おもやにこえをかけると わふくをきた おばさんがでてきた

「なんだかきょう きげんわるいのよ やさぐれてるの またはんこうきかしら ねえ まーくん」
しんぱいそうなかおに わらって だいじょうぶですよといって ろうかのおくのへやまであるく
かぎもなにもついていない しょうじでしきられたへやをあけると ちゅうおうで ねころがっているせなか
さとうちゃん と こえをかけた
ちょくご こがらなからだが はねおきた

はんしゃてきに したはらにちからをいれた
そのすぐあと まるでようしゃないちからで おもいきりけりとばされる
なんとかそれはたえて はきそうになりながらも しょうめんから かおをみた
すげえ おこっているかおだ こいつとはかなりよく けんかをするけれど
こんなにほんきで しかも いっぽうてきなのは はじめてかもしれない
もうにさんぱつはくるだろうと かくごしてまっていると そのしょうげきが なかなかこない
なんだ と かおをあげると きれいなかおをむちゃくちゃにゆがめて
さとうちゃんが むなぐらをつかんできた

「ばかやろう」
みみもとで どなられる ああ ほんとに そうなんだろうね
「らくなほうに らくなほうに にげやがって ちったあどりょくしろよ
いつもいつもてめえは らくなほうにばっかにげやがって」
こいつは いつも そっちょくにことばをぶつけてくる うそがつけない つくきも ない
だから ともだちすくねえんだよ さとがうまくふぉろーいれねえと あんた うきまくりじゃねえか
「うるせえ ういてもいいんだよ かまわねえよ てめえみたいのより ずっとましだ」
ばかやろう ばかやろう と なんどもなんども くりかえす
しばらく じっときいてから くびすじをつかむてを やんわりつかみかえした

「はなせ てめえとはもう にどとくちもききたくねえ」
きいて ちょっと ききなさいよ
「うるせえ なんだよ ききたくもねえよ」
ごめんな
「おれにいうことばじゃ ねえだろう」
ごめんな あんたのだいじなものを こわしてごめん
「ばかやろう」

もういちど はらを こんどはゆるく なぐられた
そして がっしりと ちからづよく くびすじから だきつかれた
「おれにとっちゃ おまえも だいじなんだよ ばかやろう」
りょうほう こわしやがって
うめくような かすれたような なきごえのような そんなこえで さとうちゃんは おれをばとうする
ばとうにすぎないことばだけれど それはかぎりなく やさしいこえにも きこえた
かおににあわず なにより ゆうじょうだいいちな さとうちゃん
おれのこともだいじだと いまにしてなお いってくれる

「まあ おちついて これでものめい」
あんたがおちついたのかよ と つっこみながら まんねんどこのうえに ふたりしてすわる
さしだされた びーるは ていちょうに おことわりした ひるからのむな みせいねん
「うっせ みせいねんだからこそ いまのうちにやぶっておくほうが あるもんだろ」
あんたのりくつはしらねえけど おれはいらねえ つうか のめねえ
さいどことわると びけいなかおがからりとわらって ひとりで のみはじめた

「さとう どうだった」
ああ わりとげんきそうだった がりがりくん あたえてきた ばりばりくってた
「ふうん あいつ そっちのほうがすきだっけ あんにゃろう くちが びんぼうじただ」
じゃんくなもんがすきなんだよ むかしっから れいがいは あんたんちのめしくらいでしょ
くだらないことをいいあって かたをくっつけながら いみもなくこうしえんの よせんをみまもる

あした でーとすんだわ そういうと 「ほほう」と きょうみもなさげにかえってきた
「なにすんだよ いまさらでーとって」
えいがでもみるかな げーせんとかいって あと かいものとか めしくったりとか
「ふだんとかわらねえぞお それ おれもいっていい」
あんたはだめ
「あんでだよ」
これからいくらでもさんにんでいける でも ふたりきりはたぶん あしたがさいしょでさいご

しばらくさとうちゃんは だまりこんだ がりがりとあたまをかいて いっきにびーるをのむ
「そういう けつろん か」
ぽつりとつぶやいて ばたんとうしろにたおれこんだ

「なくなよおー かっこわりいから」
なくよ たぶん
「なくなっつうの あと なかせんなよなあ あのばか よくなくじゃねえか」
それはむかしのはなし いまはなかないよ わりにつよいんだ なにをしても なかない
ふくみをもたせると ふきげんなかおで また けとばされてしまった

「さとう そんな すきか」
すきだね なんかもう やばいくらい
「じかくしょうじょうありか それ へいきなんかよ」
さあ ただ あんたもいってたろ どりょくするよ がんばるよ
「どりょくでなにを」
にんたい かな

かこん と からのびーるがせなかにあたった
「なんかいっこ してやる」
りょうてでかおをかくして さとうちゃんがいう せいいっぱいのやさしさと きづかいだ
「かねはやんねえ」
てれかくしもわすれない このひとはほんとに だいじな ともだちだ

んじゃ あしたはれるように いのっておいてよ
からのかんをごみばこにすてる どうじに んあ と ねぼけたこえが かえった
どいつもこいつも おれのこと せいしんあんていざいかなんかと おもってねえか
ぐかぐかねむりこむおさななじみに でこぴんをかましつつ ここでもひとつ てるてるぼうずをつくる
まどぎわにつるして てをあわせた しゅうきょうちがいか まあいいか
あした はれるといいな
だいじものと いとしいものと うではにほんあるのになと てをにぎりしめた さとうくんの いちにち

□ 1.5 / 680-684 □
【さとうのいちにち】

あさおきてまどをあけると めにいたいくらいのあおぞらが とびこんだきた
すげえあおい ぜっこうのでーとびよりって やつかな
やくそくのじかんまで あとにじかんはん
つるしておいたてるてるぼうずをとって すてようとおもって まよって つくえにおいた

けいたいをみると ろくじくらいに めーるあり さとうちゃんだ
『あおぞらぜっこうちょう けんとういのる』
てんぷふぁいるに やつのへやからみえるけしき たしかにみごとな あおぞらだ
あほみたいに てるてるぼうずをつくったかいが あったな
くもひとつない まっさおなそらを もういちどみあげる

くいの のこらないように しよう いっさいのこうかいも ないよう

まぶたのうらにしみるような  こんぺきのあお
このひのそらは きっといっしょう わすれられないんじゃないかな
かくしんも こんきょもなく ただ しぜんにそんなことを おもった

えきまえに じゅうじはん じゅっぷんまえにつくと とけいだいのしたに もう いた
うえこみのところに ひざをかかえて すわっている
はやあしでちかよって ぼうしかぶってるあたまに かるくちょっぷかます
うお と おどろいたかおが みあげて おれをみつけて へろっとわらう
「さーとーうーくーん」
すたん と うえこみからたちあがって ひょこっと おれのそばに ぺったりよる

ん なんか あまい かんじだ

うへへ と なんだかじょうきげんに さとが きもちわるくわらう
にっとのぼうしのしたから みあげてくるのが やけに こう なんというか かわ
…むごんで ぼうしをひっぱって めをかくすと 「なにすんすか」と ていこうされた

「さとうくんさとうくん あれ いって 『ごめんまったー』って」
なにいってんの あんた おれ ちゃんとじゅっぷんまえに きたでしょ
「じゃなくって そこでおれが『ううん いまきたとこー』ってかえすのが せおりーでしょ」
なにそれ なんなのその さっむいかいわ
「でーとの きほんでしょ うりゃ いいやがれ」
ごめんまったー
「ううんいまきたとこー … なんすかその ぼうよみは」

がくりとかたおとすのに わらって とんと せなかをたたく
どこ いくか いつもみたいきくと 「えいがとげーせんと あと かいものしたい」と いつものごとくかえる
いこうか と ふたりであるきだしたら ちょうど じゅうじはんのかねが ひとつ なった

さととふたりであるくと どうしてか てんぽがあわない
おれがふつうにあるくと さとが はやいともんくをいうし
やつがふつうにあるくと おれは どんどんおいぬいてしまうし
「すとらいどの さ というやつだ」
しんけんなかおのやつに ああ あしのながさね とまぜっかえすと けとばされた

えいがみて めしくって げーせんいって かいものして めしくって またげーせんよって
いつもとおんなじような るーと ちがうのは さとうちゃんがいないくらいで
あ でも ちがうな やっぱり ちがうな

「さとうくんさとうくん あれ あれとってあれ すらいむすらいむ」
こういう なんでもないこえとか さりげないときに そでひっぱってくるしぐさとか
みあげてくるめの やわらかさだとか ふいにぱっとわらう その ひょうじょうなんかが
ぜんぶぜんぶ やけに たいせつで だいじで もったいない

えがお おおやすうり と ぼうしをまた めもとまでかぶせると
「げんていいちめいさまかぎり」 なんて また わらう
おれが とけいをみようとすると わざとらしく ほかにちゅういをむけようとする
じかんをまた とめようと してんだな おわらせたく ないんだな
むなしさと ほんのすこしの いらだちと かぎりない いとしさが こみあげる

なんで おれが おわらせないと いけないんだろう
そんなことばが ういて きえて ういて きえないから けした

さとが といれにいってるすきに やっと とけいをみる
はちじ じゃすと
もどってきたやつに かえるよというと む と うなって だまりこんだ
このはんのう むかしっから かわんね
おもいだしてわらうと 「なんなの」 と むっかりしたかお が くちびるをかんでいた

えきからのみちを ふたりして むごんであるく
さっきから さとが なにかいいたそうにいきをのんでは ふっとはきだす
それを くりかえしている
なに と きくのは なんとなく めんどうで いささかこわいのもあり だまっていた

もし ひとことでも さとが わかれたくないと いったら
おれのことを ほんとうに すきだと いったら くちさきだけでも いってくれたら
おれはもう これいじょう どりょくができない
にんたいのいとが たやすくきれてしまう

さとが たちどまった
ふりかえると すこし はにかむようなかおで てをさしだしてきた
「て つなぎますか」
いつかもきいてきた そんなことを またくりかえす
いちどうなずいてから じぶんのよりちいさいてを にぎりしめた
きんちょうしてんだか あついんだか わずかに あせばんでいる
きっと じぶんのもそうなんだろうとおもうと おかしくて わらえた

このてのあつさは うそじゃない

わすれないよ いっしょう わすれない
ほんのわずか このうでのなかに あったもの
はなれてなお いまだやさしく あたたかいもの
あつさはきえても おだやかなぬくもりはのこる
それならそれで いいとおもえた
わずかではないむねのいたみすら いまはどこか ここちよく

てをつないだまま さいごのわかれみちに たどりつく

みぎにまがると さとのいえ ひだりがおれ
ちゅうおうでふたりして かおをみあわせた
「え と」
くちごもるさとのあたまを ぽこんとたたく

そんじゃ また あしたな
「あ うん あしたまた しちじはんにここらで」
うん そんじゃ またね

てをふってせをむけようとすると ぐんと そでぐちひっぱられた
めをつむって いっしゅんいきをすいこんで へいきなかおつくって ふりかえる
どしたの と いうと ひっしなかおが ぎゅうと うでのあたりを つかんできた

「あのね おれ はつこいは さとうくんっすよ ぜったい さとうくんすよ
ちゅーしたでしょ え えろいこともしたし て つないだし すげ すきだし
こんな こんなんいっぱいして こいじゃなかったら さみしいでしょ
ほんものじゃないなんて そんなん ないでしょ だから さとうくん はつこいです」

おれにとっては いまだ こいだよ

あしたからもどるよ あしたはもう ともだちだから だからせめてきょうだけは こいびとでいたかったよ
あんた けっこう いたいなあ いってえなあ ここで こんなとこで おわらせやがって

むねのなかでさけぶけれど このひとの せいいっぱいのうったえには そうね と こたえるしかなく
くちもとは わらうのをつくるのが せいいっぱいで つづくこえは すこし ふるえた

ありがとな

あんしんしたように ほっといきをつく おさななじみに くちびるでふれたかったけれど
さいごのきすを おぼえていたくなかったから できなかった
こいびとのてをはなして ともだちのてをとった さとうくんの たったいちどの ふたりきりのいちにち

□ 1.5 / 787-791 □
【さとうのいちにち】

ほうかご ろうかをぶらぶらあるいてたら ぐいっとうでをつかまれた
ふりむくと ぜんかいでめっちゃくちゃわらってる さとういっぴき と そのうしろに さとうくんいっぴき

あん なんだよ ふたりそろって なにやってん
「きょうさ ひまっすか ひま? ね ひまっすかー?」
あー ひま なに どっかいくんかよお あそびいっくー
「いやいや おべんきょう そろそろしけんちかいっしょ だから」
いくかあそんなもん おれぁだれのてもかりねえぜ
「それ さとうくんがいったらかっけえけど おれととんとんのせいせきのさとうちゃんじゃ かっこわりいよ」
やっかましい おれとおまえは かおがちがう けっていてきに おれは いろおとこだ ばーっか
「おれは じゅうにんなみでっす だいたい さとうちゃんだって まにあうけだろうよ ばーかばーかばーか」

ぎゃんぎゃんいいあってると あきれたふうなためいきが あたまのうえからふってきた
「あんたら そのけんか しょうがくせい」
ぐしゃっとでかいてが みぎておれ ひだりてさとうの あたまをかきまぜる
いてえよ とひなんすると すこしわらって てがどく んで
さとうのあたまには まだ でかいてが のったまま

おめえら ふたりでやってりゃいいじゃねえかよ
そういうと さとうが「えー」とかもんくいう えーじゃねえよ
さとうくんは さっさとくびをよこにふった なんだよ

「むり」
くちだけ すばやくうごいた

…………いってあげてもいーけどお へんなことしないでよねえ
ふざけてしなつくって ごつんとさとうをどつく ぎゃははっとさとうがわらう
そのさとうをうえからみてるさとうくんが いまさら おもいだしたように てをはずした
こいつは なつに こいびとをともだちに もどした
そしてまだ ともだちを すきだ
さんにんさとうべんきょうかい かいさいばしょ さとうんち
うんうんとうなっているおれと さとうに めずらしくめがねかけてるさとうくんが はーっとためいきついた

「さと と さとうちゃん あんたらさっきからうなってるだけ もんだいときなさいよ」
さとうとしせんがあう ふたりして へらりとわらってしまった
「えへっ わかんねっ」
おれもわかんねえー おしえてえー さとうくんせんせえー
「……ひとりずつね」

さとうくんのおしえかたは ひじょうにわかりやすい こいつ しょうらいきょうしとかになりゃいいんだ
さとうがおしえてもらってるあいだ ひまでひまでしかたねえから ふたりをながめる

「こことーこことーこことーあっことーそこがわからんのです」
「それはぜんぶというのです」
くだらねえこといいあいながら さとうののーとが きれいなじでうまっていく
「ここもわからん」いって さとうが さとうくんにぴたっとくっつく
わずかに ぺんをもつてが ゆれて でも それいじょうのどうようはなく さとうくんは かるくめをとじる
「いっこずつ せつめいするから ちゃんとききなさいよ」
めをあけたときには もうふつうのかおにもどってる あー こいつ すっげえな

さとうは もう なつのことはわすれてるんだろう
こいつのこういうところ ときどきむかつくけれど いまは いい
じつのところ ふたりがわかれて いちばんほっとしてるのは まちがいなく じぶん だと
そういうじかくは もっている はらだたしくも
きついんじゃねえの
「そうだね」

かえりみち となりをあるくさとうくんにひとこといったら ひとことかえった
ひとことのみ のくせして なんだ くそ おもい おもいじゃねえか
「……あんたがそんな なきそうなかおすること ないでしょ」
うっせ おれは おれはなあ おまえのこと いちおう しんぱいして
「ああ しんぱいしてください たのむよ ほんと なに ……つーか さあ」

さとうくんのこわねがかわる がらりとへんかする
たちどまったあいてをめがねのおくからみあげて くるしくてたまらねえっつーかおを みた

「あいつ あんな すきんしっぷ おおかったっけ」
むかしっからだよ
「いっちいちくっついてくんの うぜえよ つうか まじ やめてほしい」
って いえばいいだろ おれにいうなよ
「いえるかよ」
んでだよ ばか
「いえるか んな ……やばいからちかよるなって いえっか いえねえ いわないよ」

あれからもう にかげつたったくせに じぶんから わかれるっていったくせに
こいつは ほんとにこいつは だめだ
さとうくんは さとうが ほんとに すきで すきで すきすぎて だめだ

……かえるぞー おーい
てをひっぱると ゆっくりとかおをあげて あるきだす
「ごめんな」
おれにあやまるのは すじちがいと いいたかったが なまじ すじちがいでもねえから
だまって ぐいぐいとてをひっぱった
けっきょく そのままふたりして おれんちにあがりこむ
おれんちくると さとうくんはわりに たいどがでかく ついでに わるい
「きったねえへや」
だいいっせいめがこれだ そりゃなぐりたくもなる つーか なぐった
「いてえよ あんたは」
さとうくんが くしょうする そして しばらくだまってから かってにべっどにあがって よこになった
ぐっとむねをつかんで いきをはく

「い て」

つぶやいたあとに めをとじる
おれがずっとだまってると どした と じょうはんしんをおこしてきた
そのよこに こしかける 「どうした」と のぞきこんでくるかおの かたをぐっとつかんだ

なんかいでも なんかいでも あやまってやっから どげざでもなんでも そんくらいしてやっから
だから ぜってぇに もう

いいつのろうとしたところを とちゅうでくちを ふさがれた
「だいじょうぶ おれがこうでも さとが もう どうにも おもってねえし もう おれも ……なにも しないから」
くちをふさいでるてが かすかにふるえていた
「あんたは だからもう さ ……なんかこわがったりとか しなくて いいから」
だいじょうぶだいじょうぶとくりかえす なんどもくりかえす

むかしっから こいつはこうだった
ふだんはきびしいくせに どっかがめちゃくちゃこわれていて おもにそれはおれとさとうに たががはずれていて
ひどくあまく そのくせだれよりもじぶんにきびしい

さとう まさと
まさとは ただしいひと と かく
「こいごころ なんてのはさ かなわなかったら きえちまえばいいんだよな」
べっどのうえで ごろごろしながら まさとが ぼんやりつぶやく
「しつれんしたらそこで さっぱりきっぱり くだけてなくなっちまえばいいのにな つうか きえるもんだと おもってたよ
……きえないんだな のこって あいかわらずいたいわ つうか そだってるきも するよ」
となりにごろごろしながら おれも あいまいにあいづちをうつ

「さんにんが いいの」
ふいにきかれた
「あんたはさんにんが いいの」
どうこたえていいかわかんねえけど あたまよくねえからわかんねえけど そうだから うなずいた
だけどやけにさみしくなったから つい きいてみたくなった

まーくん
「だれがまーくんだ きもちわりいな」
まさと
「あん」
おまえ さんにんじゃなくっても いいんかよ
「あんたがいなかったらおれ たえられねえよ」

むじゅんしたようなことをいって まさとがわらう
どこかおとなびて すこしむかつく このかおが すきだ
さとうの めちゃくちゃこどもっぽい ぜんかいのえがおとおなじくらいに

なあ おれらって あれじゃん し

いえなくて はずかしいとかでなく ただ となりの こいにくるしんでいるやつに わるくて
それでも このさんにんだけの ちいさいせかいが おれは すごくすきで
ひざをかかえたら 「あんたら おれの いっしょうの しんゆうだよ」と いいたいことばがふってきた

やばい なく さとうじゃねえのに さらにからだちぢこめて なかったことにする
せたけのびても せかいがぜんぜんひろがらない すきなひとが なかなかできない
さんにんのなかではいちばんきっと こどもでいたい ずっとこどもでいたい さとうちゃんの いちにち

□ 2 / 145-149 □
【さとうの いちにち】

「さとうちゃー あけましー おめでございまー」
いみなくごびをしょうりゃくしながら さとうがぶんぶんてをふってる
おうよ と てをあげたら そのてを ばちーんとたたかれた

「さーみー! なにこのさむさ えっここ つんどら!?」
どこだよそりゃー しばれらだろばーか
「それこそどこっすか え なに しばれると しべりあを かけてんの?」

くだらないこと いいあいながら どつきあいながら ぐだぐだあるく
しょうがつすぎて らいしゅうからがっこうはじまる
さとうくんのおかげで おれもさとうもしゅくだいぜんぶおわってるから あそぶだけ
さとうはいつもよりうかれてる おれもたぶん うかれてる
たぶん さんにんであつまるの ひさしぶりだからだ
さんにんであそぶのは すげえ たのしい

「しょうがつだってのに ずーっととうきこうしゅうだったもんね ありえねー」
なー ばかじゃねえのー あいつやんなくてもできるじゃねえかよおー
「っておれもいったのね そしたらね やったらもっとできるだろ なんだってさ」
まあまあそうなの せいとかいちょうは もくひょうがたかいのね

ここにはいない もうひとりのおさななじみは じたくたいき
つか きょうのしゅうごうばしょは さとうくんち
けっこうめずらしい あいつ あんまりよびたがらねえのに
なんのかぜのふきまわしだか と さとうとわらいながら さとうくんたく とうちゃく

「おじゃまー」
さとうくんちにつくとどうじ さとうがとっととなかにあがりこむ
くつをそろえろばかもの おじゃましますはどああけるまえにいえ
ぶつぶついいながら にそくぶんのくつをそろえる
かげがさしたからかおをあげると 「よ」とかたてをあげる さとうくん

よっす あけましたおめでとうございました
「なにそれ かこけいかよ」
てめえがおべんきょしてるうちに しょうがつもおわったんだよばーか
「そりゃしつれい ま あとみっかはひまだよ あそんでよ」

かるくわらって てまねかれる
そのてをおもいきりひっぱたくと いたそうなかおでわらった

「ふたりともなにしてんすかー びでおーびでおみようぜいー」
さとうくんのへやからくびだけだして さとうがぶんぶんてをふる
はいはい と さとうくんがてをふると ぱっととびだしてきて そのうでをつかんだ
さとうくんが くちもとだけでわらう めが いたそうにほそまる
さとうはばかだからきづいてねえんだけど たしかに いたそうになる

まえに さとうくんが …まさとが さとうのすきんしっぷがふえた といっていたのは
ありゃあ じつのところ まじなはなし
どうしてもそれとなくさけちまうのを むいしきながらにさとうがかんづいて
からだぜんしんで まさとになついている ひっしで つないでいる
はなれるなはなれるな と ぜんりょくで しがみついている

おれはただ どこかふしぜんなこいつらをみて ふしぜんに だまっている
びでおっつっても さとうがかりてきた ひっさつしごとにんかよ
てめえらむちゅうでみてんじゃねえー このじだいげきずきのじじいどもがあ
おれぁつまんねえんだよ おれがかりてきたこのひぞうのびでおをみせろひぞうの
もんどだろうがくみひものりゅうちゃんだろうがどうでもいいんだこのやろおおおおお

にたいいちではいかんのです
ちくしょう さんにんってのはこういうときふべんだ
ぜったいに ひとりとふたりになる
あーそうだ なにか ふたりでくみをつくるときも ぜったいに ひとりは ひとりだ

そういうとき いつもはなれるのは まさとだった
「あんたら ふたりでいちにんまえでしょ」
とかわらって いやなふんいきになるまえに ひとりでよく ぬけていた
おもえばむかしからこいつはおっさんつうか できたにんげんつうか …がまんのこ で
すえっこあまえたのさとうと ひとりっこわがままんのおれを
よくまあじゅうねんいじょうも がまんできたもんだと おもう

…きがつくと あのとくちょうてきなおんがくがてろりーとながれていた
いつのまにか ねてたらしい つうか ふてねしたんだけども
もそっとおきあがると こっちにせなかむけて しんけんにがめんみてるふたり

さとうのめはまっすぐ まさとのめはときどき よこにながれる
ばかやろうか そんなめで みてんなよ
さとうが きづいちまうぞ ばかやろう きづいたら おわりなんだろうが
ばかやろうばかやろうばかやろう そんなすきか そんなすきなんかよ
そのくせおれも すてられねえんか このやろう このばか
なさけなくて なみだがでる

「さとうちゃん おきねえのー」
びでおがおわって さとうがこっちをふりむく
あわてて ねたふりをきめこんだ
「おきないね まあこのひと ねたろうだからね」
「うははーたしかに いっぺんねたら おきないっすよねー」

ちら とうすくめをあけたら もうこっちのことはきにしていない
ふたりしてびでおのかんそうをいいながら のんだりくったり
あー このふうけいは いいよなあ じつにいいんだよ
ぼんやりおもってると さとうが いきなりまさとにもたれかかった
しゅんかん
まさとが おもいきり からだをひいた

「え あ ごめ」
さとうが びっくりしてめぇまるくして つぶやく
「わり なんか びびらせまし た? てかおれちょっと ねむくて ですね」
もごもごくちのなかでいいながら さとうは まっすぐにまさとをみている
まさとは くちもとをおさえて めをそらしている
てをのばそうとしたさとうを かたてでおさえて くちもとだけが わらった

「ねんなら かえってちゃんとねなよ かぜひくよ」
「や もうねむくないから てかあの さとうくん ちょっと」
「さと」
「はい いや はいじゃなくて さとうくん あの あのさあ」

さとうが きづく こいつはばかだけれど どんかんじゃないから
さとうがきづく きづいて きずつく
それにきづいて まさとが いちばん きずつく
がたんとおおきなおとをたてて まさとがへやをでていった
それをためらいなくおいかけようとして さとうがおきあがる
どあにいこうとするうでを すれちがいざまにつかまえた

「うわ な なにおきてたんすか さとうちゃん」
おまえ いまいくんなら かくごきまってんのか
「へ え いやあのさ おれとにかく おいかけなきゃ さとうくん おっかけねえと」
だから ここでおまえがおっかけたらあいつ どうすりゃいいんだよ
「さとうちゃん あとで きくから いまはとにかく はなせって」
おまえ もういっかいあいつ ふるきか

しんご おまえ まさと もういっかい ふるきなんかよ

さとうのかおがこおりつく あしがとまった かおがうつむく
おおきなまよいと いろいろなかんじょうとかまざって あわさって
それでも
さとうは かおをあげた

「いく」
てめえ
「かくごくらい いま きめる」

てめえ おれとまさと どっちかえらべんのか えらぶんかよ
そうどなろうとして のどにからんで いえねえから せなかをおもいきりけっとばした
いちどてをあげて さとうがはしっていく
ああもう いけ いっちまえ とっとといっちまえ
さんにんだから こうなるひは いずれあったんだろう
それがはやいか おそいかのちがいだけだ
えらべないおれが りょうほうにえらばれたかったおれが がきなだけだ

ひとり ひぞうびでおをでっきにいれたところで しんじられないくらい なみだがあふれた
なにひとついまは ききたくない みたくない さとうちゃんの けつべつのいちにち

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