□ 2 / 223-224 □
ある とししたせめのいちにち
おれのかれしは おれよりとしうえ
いつもおれのわがままをきいてくれるやさしいひと
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あまえてばっかでごめんな とかなんとかいいつつ
けっきょくきょうも ひざまくらして もらっちゃたりしてる
なさけないおれ
ちょっとかためのまくら かれしのかおをみあげながらまったり
↓
あまえんぼうだな おまえは なんてえがおであたまをなでるから
いつまでたっても おれはあんたにあまえちまうんだ
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なんだか むねのおくがしめつけられるような
せつないきもちになって ぎゅっとかれしの こしにだきつく
おれよりたよりなさそうなからだ かすかに たばこのにおいがする
このにおいもだいすきでいとしいんだ
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あたまのうえで ふっとかれしがわらうけはいがする
おもわずあたまをかれしのはらに ぐりぐりこすりつけた
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ほんとうに あまったれでしょうがないな
いつもとおなじ やさしいこえ
でもおれしってるんだ
あんたが まえのかれしからもらったゆびわ
いつまでもたんすのおくに かくしてるってこと
たまにそれをとりだして せつないかおでじっとながめてるのも
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すててくれって なんどもいおうとしたけど
さすがにそんなこといえない
どんだけわがままをいっても きいてくれたあんただから
にがわらいしながら そうかってあっさりすてちゃうんじゃないかって
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すててほしいけど すててほしくない
あんたのすべてを しばりたいわけじゃない
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でも いちどしってしまったこと もうわすれることなんでできない
ずっとあのゆびわのことを あたまのすみにおしやりながら
いきていくしかない たえなきゃいけないのに たえられそうにない
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どうしようもないきもちになって なみだがでてきた
こんなにすきなのに こんなに
どうしてあんなゆびわ いつまでもとってるんだよ
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なみだのうかんだめもと かれしのシャツにこすりつけた
どうした?なんてこえが あたまのうえから
ふってきたようなきがしたけど そんなことこたえられるわけない
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せつないきもちをかかえながら ひとりたえている
ある とししたせめのいちにち
□ 2 / 229-231 □
ある とししたせめのいちにち ふつかめ
いえにかえってきたら いつものかれしの おかえりのひとことがなかった
ふしぎにおもって しんしつを そっとのぞいてみる
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だれかとむちゅうで でんわではなしこんでいるかれし
だれとはなしてるんだろう それにしてもなんだよ
おれにだってみせたことのない たのしそうなひょうじょうとこえ
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ふいに おれのけはいにきづいたかれしが ふりむいた
なんだかえってたのか そういうかおしておれをみた
あわててでんわのむこうのあいてに あやまってでんわをきるかれし
おかえり おれにむけられるいつものことばとえがお
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どうした? おれがなにもいわなかったせいか かれしがふあんそうにといかけた
じっとおれのかおを うかがうようにみている
きづかないうちにおれは ものすごくふきげんそうなかおをしていたらしい
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べつに そっけなくひとことだけこたえて さっさとりびんぐにもどる
ふたりがけのそふぁ どすんといきおいよくこしをおろす
せっかくはやく かえってきたのに きょうはいろいろ はなしたいことあったのに
ぜんぶ ぶちこわしだ かれしのこと だいすきだけど だけど
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こんなときは すごく にくくてたまらない なんでおれに こんなきもち いだかせるんだって
でも いちばんにくいのは そんなことかんがえちまう おれじしん
そふぁに こしかけたまま ぶっちょうづらしてかんがえこむおれ
↓
どうしたんだよ かれしがあとからゆっくりおいかけてきた
すぐおいかけてこないかれしにも はらがたつ
おれのこと しげきしないようにしてるって わかるんだけど でもいやだ
こどもっぽい どくせんよく もてあましてばっかりなおれ
おれのよこに しずかにこしかかけるかれし
おれのしせんはそっぽをむいたままだけど そふぁがしずみこむかんしょくでわかる
どうした? またいやなことでもあったのか ばいとはたいへんだったろう?
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やさしいことばと ともに のびてくるかれしのて
そとのくうきで つめたくなったおれのほほに あたたかいやさしさがふれる
あんたはいつも おれのちいさなこころを あったかいものでみたしてくれるよな
だめだ またこころが ぎゅってなる まばたきしたら なみだがこぼれそうだ
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いいたいことは やまほどあるのに なみだにおしやられてしまって でてこない
だいすきだよって それだけいえれば らくになれるはずなのに
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どうした? おれのことばを いつもずっとまっててくれるかれし
そのやさしさが ここちよくてつらい
↓
かれしにゆっくりうでをのばす ふしぎそうにみつめているかれし
おれのこのうでが やさしくふれることはない
らんぼうにそふぁに おしたおす おどろいたかおのかれし
きっとまた てひどく だいてしまう
そうしているあいだだけは おれのもので いてくれるきがするから
おれのことだけ みていてくれるから
↓
ことばのないせかいだったらよかったのに
そしたらことばがでなくて くるしむなんてことはない
このからだだけで あんたにすべてがつたわったらいいのに
じぶんかってな ことばかりして またじこけんおするのもわかってる
↓
けっきょくまた ひとりでかかえこんで なやみすぎる
ある とししたせめの いちにち
□ 2 / 235-237 □
ある とししたせめのいちにち みっかめ
かれしを てひどくだいたあさは いつもおれがさきにおきる
こういがはげしくなると いつもそふぁからべっどにばしょをかえた
しわくちゃになってよれたしーつのうえで ぐったりとふかくねむっているかれし
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いつもは かれしがさきにおきていて
ほら あさだぞ おきろ とやさしくからだをゆすっておこしてくれる
↓
まだねむい もうちょっとだけと おれがわがままをいうと
しょうがないなと そっとかみを かきあげてくれる
それがしてほしくて わざとねむいふりをすることもあった
↓
きょうは おれがかれしのかみをかきあげてやる
かれしに おこされるのもすきだけど
こうやって かれしのねがおをみているしゅんかんもすきだ
ながめのまつげ こきゅうにあわせてゆれるのがわかる
↓
ねがおみてると くすぐったいなにかが むねにひろがるかんじ
おれはあんたのことだいすきなんだなって じっかんする
↓
でもかれしのかたにかけられたふとん それをめくると
かれしのせなかに はがたと たくさんのうっけつあと
むねのほうなんて もっとひどいはず たぶんあかくはれてる
↓
おだやかなねがおからは そうぞうもつかない
なかなかおこさないのは ねがおをみていたいからだけじゃない
あわせるかおがなくて おこせないせいもある
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かれしの まつげがおおきくゆれた ゆっくりとひとみがあらわれる
おはよう ながくためらってから こえをかける
きまずいきもちがあるせいか いつもいじょうにそっけなくてつめたいおれのこえ
↓
なんどか またたきしてかれしがからだをおこす
でも ちからがはいらないみたいで すぐにべっどにつっぷした
あわてて からだをささえて おこしてやると ごめんなとつぶやくこえがきこえた
↓
そんなのおれがさきにいうせりふじゃん あとからじゃいいにくくて もういえない
ありがとう いまなんじだ? いつもとかわらないかれしのたいど
どうせなら ののしったり せめたりしてくれたほうがらくなのに
ああ またおれって じぶんかってだ じぶんでひどいことしといて
いま10じだよ とこたえると かれしがおもそうなからだをおこしてべっどからおりた
はらへっただろう めしつくるからまってろ といいながらうかべるえがおが
いたみにすこしひきつってることに きづいた
↓
いいよ ねてれば? とこえをかけても さっさとだいどころにいってしまうかれし
あさめしは ちゃんとくわなきゃ がくちぐせ
せめて おれがあんたにめしくわせられるぐらい りょうりできればいいのに
せわになりっぱなしで いためつけてるばっかりで
↓
おれ あんたになにもしてあげてない
いまさらのように きづいて がくぜん
おれってあんたになにかしてあげた?
↓
べっどにすわりこんだまま うごけないでいる
あるとししたせめの いちにち
【ある○○のいちにち】in 801 since 2004/5/15