+ ある としょいいん と まっちょないちねん の いちにち +

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□ 1.5 / 202-204 □
【ある としょいいんの いちにち】

こうしゃのすみに ひっそりとたたずむ
ちいさくて ひとけのない としょしつ

おれ としょいいん ほん あんまよまない
けど このしずかな としょしつは すきだ
ほうかごは かならず ここで ゆうひをみてる てか ほとんどねてるけど

「がらり」
たてつけのわるい とびらがうごいて
ばかでかいおとこが のそりとはいってきた
すぽーつがりでおとこらしいかお ひょろいおれとは せいはんたい
こんなばしょとは むえんそうな おとこなのに

やべ ねむくなってきた きょうはとくべつ ゆうひがきれいだ
あ あのばしょにすわりやがって
あそこは おれのおきにいりなんだぞ きもちよくねれるから
でもおれ いちおうとしょいいんだから かうんたーからうごけない
なんか なわばりに しんにゅうされたような いやなきぶん

あいつ ためかな いや あのがたいは さんねんかも
けんかとか つよそうだな
まじまじと かんさつしていたら こっちむいた やべえ

うわ ちかづいてきた こわい こわいっすよ かお
てめえ がんつけやがって とかいって なぐられたりして
どどどうしよう ごめんなさいごめんなさいごめ
「おねがいします」
えっ ああ ははははい かしだしですね 4かまでになります
あーびびった おこってたじゃなかったんだ
こえは やさしいんだな なんか くちょうも ていねいだし

ひとつ えしゃくして そのでかいおとこは でていった
としょしつのなかに いつもの くうきがもどる
でも もう ゆうひがしずんで うすぐらい

なにを かりたんだろうと カードをみてみる
「しゃかいけいやくろん」
「えみーる」
おれには なんのほんだか さっぱりわからない
え てか あいつ いちねんだって
うそだろ ふけすぎだよ あれで15さいかよ

しかめつらして むずかしそうなほんをよむ
まっちょな いちねんせい
ぎゃっぷありすぎで おもしろい どんなやつなんだろ きょうみがわいた
いっしゅうかんご ここにきたときは なんかはなしかけてみようかとかんがえてる
としょしつずきで どくしょぎらいの としょいいんのいちにち

としょいいん いつものせきで きもちよさそうなねがお
いちど いちねんせいに もくげきされてたこと まだしらない
いちねんせいが きょう なにかはなしかけようと おもってたことや
「おねがいします」しか いえなくて こうかいしてること まだしらない

□ 1.5 / 239-241 □
【ある としょいいんのいちにち】

きーんこーん かーん
きょうのじゅぎょう おわり いつものように としょしつへむかう
『がた がた がたん』
さびかけた かぎをあけて とびらをひらくと
ふわっと ほこりっぽい ふるびたにおい

さて きょうも しごとしますか
ほんの へんきゃく さぎょう
きょうしつよりも すこしひろいくらいの ちいさなとしょしつを
ほんをかかえて ぐるぐるとまわる

『がたた がら』
とびらのひらく けはい
ほんだなの あいだから ひとかげをかくにんする
あ このまえの まっちょないちねん
おれ ほんだなにかくれてるから きづかれてないらしい
こっちに せをむけて かうんたーにたちすくんでる

う なんか でていきにくいなーおい
もしかしたら びびってる? おれ
あっちは とししただろ いやでも なんか やっぱこえええ
なんだよ あの うでのきんにくは もりもりじゃんかよ
ほん おいて かえってくんないかな
ん? いま ためいきついた?

とか おもってたら いちねん ふいに こっちむいた
みつかったら きまずいんで おれ とっさにかくれた
あ また おれのおきにいりのせき すわりやがって
・・・てか おれ いつでていこう?

いちねん しばらくぱらぱらと ほんを めくったあと
すこしうしろに もたれかかって ぽつりといった
「・・・たいんだけどなあ」
ききとれないから おもわず からだをかたむけた しゅんかん
『ばさばさ ばさっ』
おれのかかえてたほん くずれおちた

はっと ふりかえった しせんが ぶつかる
やばいやばい すげきまずい うわ こわいって かお まじこわいって
あ あの へんきゃくですよね すんません かうんたーいなくて
おちたほんを あつめながら
おもわず けいご つかってしまう おれ

いちねん ずかずかとちかづいてきて
あしもとに ちらばったほんをいくつか てばやくあつめてから
「・・ねがいします」
しせんあわせず かりていたほんを おしつけるようにして でていった

おれ ぽかんとしたまま つったってた
おれいぐらい いえばよかったかな ほん ひろってくれたし
やっぱ いいやつなのかも かお こええけど
つぎこそ はなしかけてみようか またあいつ くるかな
とおもいながら おきにいりのせきでまどろむ としょいいんのほうかご

そのころ まっちょないちねん
とびらのむこうで まっかなかお かたてでおおって だいこうかい
きかれてた? もしかして いや もしかしなくても いやまさか

「あのひとに はなしかけたいんだけどなあ」

□ 1.5 / 280-282 □
【ある まっちょな15さいのいちにち】

じぶんのいえは 三だいつづく けんぽうのまちどうじょう
おさないころから そふに びしびしきたえられてきた
いまでも まいにちの たんれんは かかせない
そふは すでに たかいしてしまったが
三だいめのちちと はは おさないおとうとふたりに いもうとひとり

じぶんのようしが どういうふうに けいようされるかは わかってる
こわいとか がたいよすぎだとか おっさんとか
まあ きにしないが とおもいながら
きょうも あさの じょぎんぐにはげむ 15さい

ふるめかしい にほんかおくの しょさいには
『たいへいき』『ふうしかでん』『ろんご』『けいじじょうがくじょせつ』
そうそふと そふが しゅみであつめた ぼうだいなかずの ぶんけんがずらりとならぶ
しゅうしゅうのぶんや まったくもって せっそうがないな とおもいながら
きがつけば ぞうしょのほとんどを よみあさっていた

ことし にゅうがくしたこうこうは すぽーつがさかん
このたいかくのせいで じゅうどう・ばすけ・さっかー・らぐびー
あらゆるぶかつから かんゆうされたが どれもことわった
じぶんには けんぽうのたんれんや どうじょうでのしどうがあるし
それに どくしょするじかんが ひつようなんだ

このがっこう としょしつは あるんだろうか
さがしてみると こうしゃのすみに かくりされたようにあった
ぞうしょには きたいできそうにないな とおもいながら
すこしひらいていた とびらから なにげなく なかをのぞいた
そこで みたものは


きたくして けいこぎにきがえてから えんがわにすわる
あのとき そのこうけい めにしたしゅんかんは
なんのかんじょうも おこらなかった はずだった
いま むねのどうき なんだこれは なんだ?
わからないことが もどかしい

むぼうびなねがお だとか なげだされたうでの ほねばかりのほそさ だとか
そんなことは あとからおもいだしたことで
なんのかんじょうも おこらなかったのではなく
なにも かんがえられなかったんだと きづいたのは たったいまで
15さい おおきなからだ まるめて ためいきつく

『がさがさがさ』
けいこぎをきた おさないおとうとたちが にわのしげみから とびだしてきた
「あにー どうじょういかないの みんなまってるよ」
ああ すまん いまいく
「あれ あにー どしたの」「ほんとほんと どしたの」
なにがだ
「かお まっか」
うっ

どうじょうにむかいながら むひょうじょうのしたで かんがえる
じぶんは どうすればいい? なにをすればいい?
かたてで かおをおおって しんこきゅう
やっぱりわからない だけど
もういちど としょしつにいけば なにかわかるんじゃないか そうおもった

そのひの けいこは みがはいらず
まだまだしゅぎょうが たりないと
もくもくと たんれんにはげむ まっちょな15さいの かたおもい いちにちめ

□ 1.5 / 394-398 □
【ある としょいいんのいちにち】

やきゅうぶの かけごえが とおくできこえる
ゆうひが いまにもしずみそうな なつのほうかご
きょうも おれ うとうとしている

あれからいっしゅうかん なつやすみになって
あのまっちょないちねんは きていない
こんどきたときには なんかはなしかけてみようかな とか おもってたのに
かしだしかーどを せいりしながら かんがえる
かおは まじでこわいけど なんつーか なかみは いいやつそうで
ちゃんとはなしたことないから わかんねえけど だから きになるんだけど

としょしつには あいかわらず おれひとり
ゆうひはもうしずんで あけはなしたまどから なつのむしのこえ
そろそろ かえるじゅんび きょうのばんめしなんだろう
まどをしめて うしろのいりぐちの かぎをかけようと てをかけた そのとき
どうじに がたがたっと そのとびらがひらいた

う わっ
おれ めちゃくちゃおどろいて こしぬけて しりもちついた
「・・・あ」
そこにたっていた くろいかげは まっちょないちねん
うわ こいつきずだらけ けんかでもしてたのかな
おたがい みうごきとれず こうちょくすること すうびょうかん

いちねん おれに てをさしだした すまなそうなかお
「だいじょうぶですか」
ああ うん どーも だいじょうぶ だいじょうぶ
うおーなんかすげえはずい てか こいつのて ごつっっ

え えーと ほん かりにきた?
いちねん こくりとうなずいた
やっぱおとこらしいかおだ とおもいながら おれ かうんたーにすわる
ほんだなのまえで ぱらぱらと ほんをめくるいちねん

おれ あいつとそうぐうするときって いっつもきょどってるよな
きょうも びびってしりもちついたし このまえは こそこそかくれたしなあ
ひよわそうなやつとか おもわれてるんだろうなー まあそのとおりなんだけど
でも いちおうおれも おとこだから
ああいう おとこらしいやつには あこがれちゃったりもするわけで
よしきめた あいつに はなしかけてみよう
って うわ やばい きゅうにどきどきしてきたぞ おちつけおれ

ほんをてにとって いちねんが こっちへやってくる
よ よし はなしかけるぞ ・・・ってなにいえばいいんだ?
むきむきだよね とか? いやだめだ それじゃあやしいやつだ
ごしゅみは とか? ちがうちがう おみあいじゃねえんだから
あーもうわかんねえ おれ またきょどってるよ
しんぞうばくばくいってるし てに あせかいてきたし

「おねがいします」
かうんたーにさしだされた 3さつのほん
ぶあつくて むずかしそうなほん2さつと あと1さつは
あっ これ おれがこっそり しいれたほんだ
おれ あんまどくしょしないけど このさっかのしょうせつだけは すきなんだ
なんか むしょうにうれしくなってきた
なあ このさっかの よんだことあんの?
きがついたら おれ いちねんに はなしかけてた

いちねん おどろいたみたいに びくっとして
「はい」とだけ みじかくこたえた
おーまじで おれもこのさっか すきなんだよ あんまよんでるやつ いなくてさ
や おれも あんまし ほんとかよまないんだけどさ これだけは すきでさ
おれ えがおぜんかいで まくしたてたあと はっとわれにかえった
うわああ いきなりなにいってんだおれ ぜってーへんなやつだとおもわれるって

おそるおそる いちねんをみあげると めをみひらいたまま かたまってた
うわ おれへんなこといったかな あ じゅうぶんいったっけ
いちねん まゆねにしわがよってく えええええ おこっちゃったんですか?
きまずいちんもくがながれる まじどうしよう
とりあえず おれ いそいでかしだしのてつづき

やっぱ はなしかけないほうがよかったんかな ちょっとこうかい
ずっとうつむいてるいちねん かたてで かおをおおってる
あ あのー かしだしきげんは
「・・・です」
え?
「おれも このさっか すきです」
いちねん がしっとほんをつかんで すごいいきおいで でていった

あまりのいきおいに おれ おもわずぼうぜん
いっしゅんしか みえなかったけど なんか かおまっかだったんですけど
しかも ほかの2さつのほん わすれていってるんですけど
おれ おもわず わらってしまった
やっぱ ぎゃっぷありすぎ おもしろいやつ!
まっちょないちねんを すっかりきにいってしまった ある としょいいんのいちにち

そのよる まっちょないちねんは
いつもの2ばい ごはんをたべて いつもの3ばい とれーにんぐをしたらしい

□ 2 / 59-62 □
【ある としょいいんの いちにち】

まいしゅう かようときんようのほうかごは
きまって あのいちねん むずかしいかおして やってくる
きょうも がらら と とびらがあいて
のそりと くぐるように おおきなかげが はいってきた

「よう」
おれ せんぱいづらして こえをかけると
すこしめをみひらいて ひょいと かるくえしゃくをする
そんで いちねん すうじっぷん ほんをぎんみして
かならず3さつ かりていく
これ おきまりのぱたーん

けど あいかわらず まともなかいわは できてない
きょうこそなにかはなそうと かおをあげたとたん
おもわず めをみはった
いちねん いつものせきで ほおづえついて ねむっていた

しばらくまっても みうごきひとつしない
しずかにちかづいて むかいのせきにすわってみる
おーい おきゃくさん もうかんばんですよー
すこしうつむいたかおを のぞきこむと ねいきがきこえた
あらら ほんかくてきに ばくすいしてるね このひと

おれ なんだか わらえた
いつも ぶあいそむくちでまっちょで こええかおしてて
はなしかけるのも すげえきんちょうするやつなのに
こうやって ねむってたら ちょっとかわいいじゃねえか なんて

いちねんのよんでいたほん ぱらぱらと めくってみる
なんかのれきしのほん それにぶあついぶんがくぜんしゅう
あと このほんは

おれが そのほんに くぎづけになったしゅんかん
いちねん はっと めをさました
かおをあげたおれ すごいちかくで めがあった
「うわあっ」
どうじにこえをあげて うしろにのけぞった

「ごっ ごめんなかってに ねむってたから その、」
おれ あわてて いいわけまるだし
おい いちねん そこでまっかになるな つられるだろ!
「それで あの このほんなんだけどさ」
それは ゆいいつ おれがすきなさっかの さいしんかんで
おれが まだよんでないやつで

また おれ えがおぜんかい
「これ さいきんでたばっかの やつだろ このしりーず いいよな」
いっきにまくしたてると いちねん ふっと えがおになった
あ わらった かるくおどろいてしまった

「よかったら これ かします」
「え まじで いいの? うそ やった」
ほんきでうれしい おれ かなり はしゃいじゃってる
めだけでわらっていた いちねん また むずかしいかおになった
あれ? おれ なんか まずいこといったかな

「せんぱい」
「な なな なんですか」
また けいごに もどちゃってる おれ
「じ、」
「ぢ?」
こいつ ぢ になやんでるのか? とかおもっていると
いちねん おもいきったように かおをあげた
「じぶん いちねんの ほんごう といいます!」

あまりにも でかいこえ おれ ぼうぜんとしながら こたえた
「うん しってる けど」
「え な なんで、」
「や だってさ かしだしかーどにさ なまえ」
「あ」
そのとたん いちねん すごいいきおいで まっかになった
おれ わらいをこらえるのに ひっしになりながら いった
「おれは にねんの たかもと よろしくな」

かたてで かおをおおって うなだれてた いちねんのへんじは
「・・・しってます」
だった

やっと かいわらしい かいわをした あるとしょいいんのいちにち
まっちょな いちねんにとっては きねんすべきだいいっぽ

□ 2 / 99-101 □
【ある としょいいんのいちにち】

まともなかいわをしてから すうしゅうかん
おれの こころのなかでの あいつのよびな
いままでは いちねん とか まっちょ だったのが
しぜんと ほんごう にかわった

ほんごうは あいかわらず かようと きんように やってくる
むくちで ぶあいそなのは いつものことで
だけど ひとつ かわったのは
おれが ひまになると あいつのまえの せきにすわって
たわいないはなしを するようになったこと

こいつは なんでも かおにでやすいんだな とか
ぶあいそだけど たまに ふっとわらったりする とか
いろいろ わかってきた きょうこのごろ

「ほんごう きょうは めがねかけてんのな」
「はい たまに」
はなしかけると すこし おどろいたかおをするのが くせみたいだ
もろ たいいくかいけいっす! ってかんじのやつなのに
めがねかけると なんか いんてり っぽい

「ま にあってて いんじゃねえの」
なにげなくいったら ほんに めをおとしたまま まっかになった
ぷ てれてんの おもしろいやつ
「でも ますます ふけてみえるぞ」
そういってみると まっかなまま すごいしかめっつらになって おれ おおわらい
こうやって ほんごうに いろんなひょうじょうを させるのが
さいきんの おれの おきにいりだ

こいつは たいてい けがをしている
きょうも かおに ばんそうこうが ふたつと てのこうに ひとつ
けんかとか してんのかな こわくて なんかきけない
じっと てのこうの ばんそうこうを ぎょうしして そんなことをかんがえてると
まゆねにしわよせたまま ほんごうが ぽつりといった
「・・・じぶん やっぱり ふけてますか」
「うん」
そくとうしたら なんか なさけないかおになった

「で でもさ うらやましいよ おれ かなりひょろいからさ おまえ つよそうじゃん」
ひっしのふぉろー でも これは ちょっと ほんきでおもってたりすることで
すると いちねん めがねのむこうから ひた と おれのめをみた
おいおい なに まじなかおに なってんだよ
「それに おとこらしいしさ まじ あこがれるよ うん」
もう じぶんが なにいってるかわかんないくらい あせってる おれ

いつもなら まっかになるはずなのに ほんごう めをそらさない
なんだ なんなんだよ こっちがてれる

「え えーと おれ へんなこと いった?」
ちんもくのあと おれ まぬけなかおして きいた

すると ほんごう おもいつめたようなひょうじょうから ふっとえがおにもどった
「いえ そんなことないです」

むいしきのほんねを いってしまって いごごちわるいような どきどきするような
よくわからないきもちにきづいた としょいいんのいちにち

おもいもよらない ことをいわれ いっしゅん われをわすれて
としょいいんを だきしめたいしょうどうに かられた まっちょないちねんのいちにち
なんとかしょうどうを おさえたけれど
ほんとうは だきしめたかったと ちょっとこうかい

□ 127-131 □
【ある としょいいんのいちにち】

このいっしゅうかん ほんごうは としょしつに あらわれなかった
おれが てんぱってへんなこと くちばしった あのひからだ
おれ あいつに なんていったんだっけ
たしか おとこらしいとか あこがれる とか
うわああ かなりはずかしいじゃん おれ ばかまるだし
ほんごう ひいてたって ぜったい ぜったい
そうかんがえて こうかいするのは もう なんどめかわからない

いぜん あいつが しばらくこなかったときは きにもしてなかったのにな
くっそー それよりも あのときのことだよ なんでおれあんなこと
ぐるぐるぐるぐる こうかいのすぱいらる
むいしきに ちからをこめて がくせいふくのぼたんをにぎる

おんなじことばっか かんがえすぎで あたまいたい
なんだこれ じぶんのことも わかんねえんだ おれ
ほんごうから かりている おれのすきな さっかの さいしんかん
ぱらぱらと ぺーじをめくるけど あたまに はいらない

『ぶざまだな』
ぐうぜん めにはいった せりふまでこんなだ ああもう なんかへこんだ
『おまえには まわりが みえていないのだ』
だーもう どうせおれは すぐてんぱっちゃって へんなこという ばかだよ
なにいったかなんて いっつも ほとんど おぼえてなかったよ
こんなに きぶんわるくなるくらい おもいだすことなんて はじめてで
はじめて で

あれ?

そもそも おれ なんでこんなに こうかいしてんだ
そうだよ いままで てんぱって くちばしったことなんて おぼえてなくて
・・・あれ?
おれ あいつに どうおもわれたかってこと きにしてんのか?
もう あいつが ここにこなくなるのが いやなのか?
そうなのか?

ほんに めをおとしたまま かんがえてかんがえてかんがえたけど
ますます あたまがいたくなっただけで
かうんたーをたって おれのおきにいりのせきに たおれこんだ
くっそー あたま がんがんする ほんごうの ばか まっちょ きんにくめがねー
ひととおり ののしったあと いしきが まっくらになった

ふと ほおに ゆびがふれるけはいをかんじて めがさめた
がたん と おとをたてて みじろぎしたのは ほんごうで
また けが ふえてんじゃねえのか
つくえをはさんで どこかきまずそうな めがねごしの しせんとぶつかった

そのしゅんかん おれのなかに ものすごいえねるぎーがうずまいてきて さけんだ

「ふざけんなー!なんだよもう!!おれも おまえも まじで ふざけんな!」

あっけにとられたような ほんごうのかお
おれ もうおかまいなしに たちあがって さけぶ

「おれは ばかなことばっかいってるよ、ぶざまだよ、かんがえすぎで
あたまいてーんだよ!おまえは こねえし、なんかいつもきずだらけだし!
なんも わかんねえんだよ!ってか、おれ なにがいいたいんだよ!!」

あー これじゃ ぎゃくぎれじゃねえかって こころのどっかでは わかってるけど
くちがとまんねえのが おれの わるいくせだ
それに しんぞうが ばくばくして あたま がんがんする
おれ なんで ないてんだよ

やりきれなさと はずかしさで おもわずうつむいた たぶん おれのかお まっかだ
あーもうだめだ おれだめだ なにやってんだ かっこわりい
「すみません」
むこうから ぽつりと こえが きこえた
すみませんじゃねえよ ばかやろー おれは

ぐい と みぎうでを つよくひかれた
ないてぐちゃぐちゃな おれのかおに がくせいふくのぼたんが ぶつかるかんかく
せなかに まわされた ほんごうの りょううでが ぐっと ちからをこめたとき
つくえごしに だきすくめられているということが やっとわかった

おれ ぜんぜん からだがうごかない
「すみません」
もういちど ほんごうのこえ こんどは むねから ちょくせつひびいてきた
ひくいこえだ もしかしたら いままでみたことないくらい
やさしいかおして いってんじゃねえかと おもうくらい ひくいこえだ

おれは なんとか ほんごうの うでをつかんだ
ちがう すみませんとか いわれたくない ちがう!

「じぶんが ここにくるのは あなたが いるからです」
はっきりと ちからづよい ほんごうのこえ

「すきです」

うでをつかんでいた おれのてから ちからが ぬけた

おれ ふくにかおをうずめて じぶんにいいきかせるように いった
「・・・おれ、おまえに あやまられたい とかじゃなくて」
「なんどもおまえのこと かんがえて あたまいたくなって」
「みっともなくて、すげえ はずかしくて なんか」
「おまえが こなくなるのは いやだ すごくいやだ」
だまってきいていた ほんごう おれのかたをつかんだ
しせんが あった

ほんごうの めは やさしくわらっているようにみえて
かおは やっぱり いつもみたいに まっかになっていて
けど それも すぐにみえなくなった

どちらからともなく はじめてのきすをした としょいいんと ほんごうの いちにち

すべては これから

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