+ ある こうこうやきゅうなひとたち の いちにち +

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□ 1.5 / 299-302 □
【ある こうこうやきゅう とうしゅの いちにち】

やべーよ
まけるかもしんねえ
あいつ うつきまんまんだよ
あちーよ つかれた げんかいだ
もうたまがはしらねえ

あと いっきゅうなのに
あといっきゅうで かてるのに
ぜんぜん かてるきがしねえ

あせがたきみたいにながれてくる
もう かちまけ どうでもいいや
みずのみてえ かきごおりくいてえ

おれが ぼーる にぎりなおすと
たいむかけて きゃっちゃーのあいつが
まうんどにあるいてきた

「なに かんがえてる」

ぎくっとして めをそらす
もう まけてもいいやとか
すかっとうたれたほうが えんちょうよりいいとか
いろいろ かんがえてました いえません

「どうせ あたまわりいんだから
おれの いうとおりに なげろ」

でも もう そろそろげんかいだ
うたれそうだ あのばったー にがてなんだ
きゅうそくも おちてる つかれてる

「ぜったい うたせない
おまえは ただ いちばんいいたま
おれにむかって なげりゃいい

おまえさ いったじゃないか
けっしょうでかって まうんどでだきあおうって
きょう そのゆめ かなえようぜ」

わらってやんの こんなときに
すげえよな おまえは
いつもわらって りーどして
こんな だめなぴっちゃー ここまでつれてきた
いつも たよってばっかで ごめんな

「かお こわばってんじゃねーか
もっとたのしんで なげろ」

にやりと わらっていう
ぜんぶ おみとおしかよ
かくしごと できねえな

「なげりゃ いいんだろ なげりゃ
おまえの いうとおりにさ」

おれは ぽんと あいぼうの きゃっちゃーみっとをたたく

「そうだ おれのいうとおり なげろ」

わかったよ
おまえ しんじるよ
おれにできるの なげることだけだもんな

「もうだいじょうぶだな」

「うん」

「かつぞ」

「おう」

あいつのうしろすがた みながらおもう
まけられねえ
ないてもわらっても これでさいごだ

いちばん いいたま なげる
あいつと おれの ゆめのために
あと いっきゅうで おわらせる

そんでさ おれたちが だきあってるとこ
しんぶんに のせようぜ


えんてんか ちくたいかい けっしょうせん
きゅうかいうら にしまんるい

ある こうこうやきゅう ぴっちゃーの
ながいながい いちにち

□ 1.5 / 303-305 □
【ある こうこうやきゅう よばんだしゃの いちにち】

ばったーぼっくすに はいるまえに
べんちのなか はをくいしばってる あいつがみえた
あいつのかた もうげんかいだ
えんちょうまでは なげられない
おれがここで うたないと まける

あいつのめが うってくれって いってる
おれは おやゆびをたてて あいつにわらってみせる
かんとくが あきれておれをみる
ほかのやつらは にがわらいだ

あいつだけが しんけんなかおで おれをみた
そんな しんぱいそうな かおするな
だいじょうぶだ うってやる
おまえを さいこうのぴっちゃーに してやるよ
そんなに ぼろぼろになるまで がんばってくれたんだ

べんちのまえに かげろうがたってる
あつくて  なにもかも もうろうとしてくる
これがおわったら あいすくいにいこう
おまえのすきなの なんでもおごってやるから
だから わらってくれ
わらって おれをしんじてくれ


うっても うっても ふぁーるのれんぞく
あっというまに つーすとらいく すりーぼーる
あと いっきゅうだ
これで ぜんぶ おわる
おぜんだては ととのった
ここでうたなきゃ おとこじゃない よばんじゃない

くそ あしが ふるえてやがる
むしゃぶるいだ
あいての ぴっちゃーも もうよれよれだ
あせぬぐって あしでまうんどならす

おれがきあいをいれて ばっとをかまえると
きゃっちゃーがたいむをかけて まうんどにいった

きゃっちゃーが もどってくる
あ くそ
ぴっちゃー じしんまんまんのかおにもどってやがる
さっきまで しにそうだったくせに

うてるもんなら うってみろ
そんなかおして ふりかぶる

ああ うってやる
こんなとこで おわってたまるか
おれ あいつにちかったんだ
いっしょに ゆうしょうするって
おれのばっとで どんなしあいも かたせてやるって

だてに よばん はってきたわけじゃない
それを しょうめいしてやる


えんてんか ちくたいかい けっしょうせん
きゅうかいうら にしまんるい

ある こうこうやきゅう よばんだしゃの
じんせいでいちばんながい いちにち

□ 1.5 / 310-312 □
【ある こうこうやきゅう ほしゅの いちにち】

あーあ
しょうがねーな また わるいくせだ
なんども あせぬぐって あしでまうんどならす ぴんちのときのくせ
おれは おもわず たいむかけて まうんどにいく

いつものじしんは どこいった
あとひとりじゃねーか なさけねえ
おれのさいんどおりに なげろよ あたまでかんがえるな たんさいぼう

「あのばったー にがてなんだ」

そりゃ あいては けんでいちばんの すらっがーだけど
おまえなら ぜったいに かてるんだ
さっきだって うちとっただろ

「でも もう きゅうそくもおちてるし おれ つかれたよ」

いつもなら ぜったいにみせない きよわなかお
ちょうしよくて こどもみたいで わがままで たんさいぼう
はじめてあったときから こいつはすごいぴっちゃーになるって おもった

おれが こいつの にょうぼうやくでいられるのは このなつが さいご

「すげえよな おまえ」
ひとがはっぱかけてんのに いきなりそんなこという わけわかんね
「こんなときに わらえるなんて すげえ」

「いつも おまえのりーどにまかせっきりで たよってばっかで ごめんな」
ばか ばかじゃねーの
いまさら なにいってんだ

あたりまえじゃん おれたち ばってりーだぜ
おまえののうみそ たりないぶん ずのうはのおれが かばーしてんだ
なんだよ そんな なきそうなかおしやがって
まけるきでいやがる じょうだんじゃねえ

「もっとたのしんで なげろ」
おれがわらっていうと つられてちょっとわらった
たのしそうに なげてるおまえが すきなんだ

「なげりゃ いいんだろ なげりゃ
おまえの いうとおりにさ」

そうだ おれのいうとおりになげろ おれをしんじて なげてくれ
まだ おわらせたくないんだ なつを

「かつぞ」
おれがいうと はじめて ぜんかいでわらって うなずいた
てのかかるやつ

いつか  なつはおわってしまう
だから それまで ゆめをみせてくれ
ふたりで ゆめがみられるのは このなつが さいごだから
おれたちが いっしょにいられる さいごの なつだから



えんてんか ちくたいかい けっしょうせん
さいしゅうかい つーあうとまんるい

ある こうこうやきゅう きゃっちゃーの
ながくて みじかい なつのいちにち

□ 1.5 / 319-321 □
【ある こうこうやきゅう もうひとりの とうしゅの いちにち】

おまえを かたせてやる どんなしあいも
おれが おまえをしょうりとうしゅに してやる
あいつは こどものときから
いつも そういって わらってた

ずっと こどものころから よばんだしゃ
いっぱいきた すかうと ぜんぶことわって
おまえがえらんだのは おれとおなじ がっこう
「だって おまえがいなきゃ いみないじゃん
おれは おまえを かたせるために うつんだから」

ばかだよ
おれなんて すたみなも すぴーどもない
ほんのすこし きようなだけの とうしゅなのに
おれより いいぴっちゃー ほしのかずほど いるのに
もっとつよいちーむ いくらでも あったのに

むめいのがっこう おまえのだてんだけがたより
けっしょうまでのこれたのは
みんな おまえのおかげ

だせきにはいるまえに べんちのおれに
おやゆびたてて わらいかける
「しんぱいすんな ぜったい うってやる
おまえを しょうりとうしゅに してやる」
そういってるみたいな いつものかお

どうして そんなに わらっていられるんだ
おまえ つよすぎるよ
おれが てん とられなけりゃ
あのとき うたれなけりゃ
こんなぴんちに ならなかったのに

あっというまに つーすりーになって
あいての きゃっちゃーが まうんどに かけよる
おれも あいつのとこに かけよりたい
なんにも いえないけど そばにいきたい

ごめん おれ ここで いのってるだけで
なんにも してやれなくて ごめん

おまえが うっても うたなくても
かっても まけても もう どうでもいい
おれは しってるから
おまえが にほんでいちばん
たよりになる つよい よばんだって しってるから

あいての ぴっちゃーが じしんありげにわらう
あいつも だせきで にやっと わらいかえす
こわいのに めがそらせない
この いっきゅうで ぜんぶ おわる


えんてんか ちくたいかい けっしょうせん
さいしゅうかい つーあうとまんるい

ある こうこうやきゅう ぴっちゃーの
えいえんのような いっしゅん

□ 1.5 / 372-373 □

あさ おきたら てれびから ききおぼえのあるうた
がめんには まっさおなそらと ぐらうんど
ああ そうか また このきせつがきたんだな

もうなんねんもまえ おれも あそこにいた
おんなのこに ぜんぜん もてない ぼうずあたまも
ぶったおれるまでやる えんてんかの れんしゅうも
むしのすかない まじめなきゃぷてんも だいきらいだった

なのに、どうしてかな おわらせたくなくてひっしにやった
がんばった ちょうがんばった

…ちょうがんばったけど だめだった
ほかのちょうがんばって ちょううまいがっこうに まけたちゃった

あいての こうかをききながら めちゃくちゃないた
いったい なにが かなしいのかも わからなかった
なつのおわりと いっしょに せかいもおわるようなきも してた

あたりまえだけど せかいがおわるわけなんてなくて
いまや おれも おやじに かたあしつっこむ せだい
でも おれもたしかに そこにいたんだよ

きゅうかいうら にしまんるい
こうごにうつる ぴっちゃーとばったーの ひょうじょう
がんばれ、おまえら
だいじょうぶだ まけても なつがおわっても せかいはおわらない
おまえたちが すすむかぎり ちゃんと つづいていくんだよ

ちょっと かんしょうてきなじぶんに にがわらいして せなかをむけたら
てれびから おおきな かんせい
うったか おさえたか…
きになるけど とりあえず べっどをせんりょうしている もときゃぷてんを おこして
いっしょにみようと おもってる かつてこうこうきゅうじだったあるおとこのあさ

□ 1.5 / 782-784 □
【あるびょうしつでのいちにち】

おれが どんなおもいでここをたずねたのか
せめはわかっていないんだろうか
べっどからじょうはんしんおきあがり
にやにやと いやらしいえみをうかべていた

「なにわらってんだ」
「べつにー」
どげざしてあやまるけっしんをかためるまで いっしゅうかんかかった
それなのにせめのかおをみたとたん
いつものようににくまれぐちをたたいてしまう
ぱいぷいすにこしかけると ぎぶすをはめられたせめのみぎかたがめのまえにみえた

どくん どくん

まざまざとおもいだせるあのこうけい
きゅうかいうらにしまんるい おれたちさんねんのさいごのなつ

「おめーよー ないたんだって?」

うつむいてこぶしをふるわせている
おれのかたをかるくたたいてせめはいった まだにやにやわらってる

「おりゃーよ いたくておぼえてねーけど あとでかんとくにきいた」
「…………」
「たんかではこばれるおれにむかって わんわんないたんだってな」
あっけにとられているおれをみながら
「ふだんすかしてるだけ わらえるよなー」

とこえをあげてわらいやがった
やっとにやにやわらってるいみがわかった

ないたよ そうだよないたよ
おれのらいばるはおまえだけなんだよ
きづいたら おまえのちーむのだれよりもさきにかけよってたよ
しんじられなかったんだ おれのなげたぼーるがおまえにあたるだなんて

「… うるせぇよ」
おもわずそうぶあいそうにつぶやくと
せめはさきほどまでのにやにやがおをひっこめ やさしいかおでほほえんだ
「…… おまえ かた…」
そのかおにあんしんして おれはいちばんきになっていたことをくちにだした
すると せめはあっけらかんと

「んー もうむりっぽい」

そういってでかいくちをあけてわらった
「まーしかたねーや おれあったまいいし?うんどうしんけーばつぐんじゃん?
 いまからだってなんにでもなれるぜ」
しょうがくせいのときから ばっどをかかえてねてたやきゅうばか
おまえに ほかに なにがあるってんだよ

しろいしーつが ゆうやけのおれんじでそまっていく

「…まーた ないてるよこいつ」

おれをだきしめたせめのかたがだんだんぬれてきて
それで じぶんがないていることにきづいた
せめのひだりうでは おれをだきしめながらふるえていた
ひとりの たったひとりのらいばるをうしなった あるこうこうきゅうじのなつ

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