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【ある ゆうれいのいちにち】
あさ おきる
けさは ねてるあいだに すみついてるおやしきの
だんなさまのうえに のっかっていた
かなしばりくらわせて すみません
↓
おやしきの ことしでろくさいになるおぼっちゃんは ぼくのともだち
いつも「とーめいの おにいちゃん」といって いっしょにあそぶ
きょうは ぼーるをうかせてみせてあげた
ねんりきぼうそうして がらすをわった
おぼっちゃん おかあさんにおこられた おかあさんは ぼくがみえない
ごめんね といってぼくはいたたまれなくなり そとへいく
↓
きょうも ひとがいっぱい えきまえ
なぜか このじかんになると ここにこなきゃと きょうはくかんねんにおそわれる
ぼくはゆうれいなので すいかもつかわずに はいったりでたりする
↓
がやがやとやかましい ざっとうのなかに
とってもみおぼえのある こーとのおとこが きょうもいる
とつじょ たかなる むね
とまったはずの しんぞう なぜかどっきどき
おもわず ぽるたーがいすとげんしょうで ちかくにいた おじさんのかつら ふっとぶ
↓
まんいんでんしゃへと きえるおとこ
がたんごとんと あっちへはしってく でんしゃ
↓
なんどみても あのひとをみると じょうぶつしそうなほど むねがどきどきする
たぶん いきてたときの ともだちだったんじゃないかと ぼくはおもう
そのままぼくは おひるすぎまで はとのむれと いっしょにねむる
↓
かえると おぼっちゃんが いっしょにおひるねしようと いった
もう たっぷりねたから ねむれないよう というと
「じゃあ とーめいのおにいちゃん おうたうたって」といった
じゅうはちばんの よしいくぞう・ゆきぐにを ねっしょうしはじめる ぼく
こもりうたじゃないと きづきつつも うたいつづける あるゆうれいのいちにち
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【ありふれたさらりーまんの いちにち】
あさ けいたいのあらーむでおきる
いいかげんまともなめざまし ほしいなぁ
↓
むかしは あいつがでんわでおこしてくれたのに と
すこしさみしくなってはみがき あさごはんは たべない
↓
いつもののりかええき
むかしは ここに あいつがいた
わらって おはようって いって いっしょに がっこうに いった
いまはいない だから たまに つらい
↓
ひとごみのなかに あいつがいたようなきがして ふりかえる
おれ ばかだ
いるはずないのに もうしんじまったんだぜ じゅうねんもまえに
↓
でんしゃのなかでなきそうになるおれ
ちょうかっこわるい ひとにはみせらんない
でもおとなだから なけないと すぽーつしんぶんかおにかけて
ねてるふりをする
むかしこいびとをなくした ありふれたさらりーまんのいちにち
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【ある ゆうれいのいちにち つづき】
おぼっちゃんがねむったので もういちど えきまえまでいく
なんだかむしょうに むなさわぎ
↓
ゆうぐれどき かいさつぐちのよこ あのおとこがいる
ふたたび たかなるぼくのむね
こんどは おんなのひとの つけづめがとんで
かべにささった すみません
↓
あのひと きょろきょろしながら うでどけいみてる
そのすがた なんだかむしょうに のすたるじー
おもわず ぼく こえかけてた
「あの こんばんは はじめまして」
↓
ぼくのこえ このひとにとどかない
やがて あきらめたみたいにさってゆくかれを ただみおくるぼく
いちどだけふりかえったけど それだけ
↓
うちにかえると ちょうどごはんどきだった
おぼっちゃん 「おーいかけてー」と うたってた のみこみがはやい
かおをみせる きりょくもなく いつもみたいに やねうらへいく
↓
そういえば
ふとおもいたち かれんだーをのぞく
ぼくは じゅうねんまえの きのうに しんだ
いちねんまえのきょうは たしか うまれたひだ
↓
よるのまちへと とびだす
あのひとが どこにいるのか だいたいわかる
やくそくしてた いちねんまえのきょう かいさつぐちのよこで
おとこのもとへと いそぐ あるゆうれいのいちにち
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【ありふれたさらりーまんの いちにち りたーん】
おおきな おおきな いつものえき
また おれはそこにたっていた
「えきで まちあわせだからな」
そんなやくそく いつもしてたっけ
こりずにいつもちこくしていた おれなのに
にっこりわらってゆるしてくれたおまえはもういない
↓
いつもすぐにけんかして
るすでんに 「ごめん」 それだけいれてなかなおり
だいすきだから なんでもゆるせるし ゆるせないんだ
ろうそくのあかりのように あたたかくてやさしいおまえ
うすれてゆく きおくのなかのおまえ おればかりとしをとる
↓
はしってきた おんなのこのすかーと とつぜんめくれる
「やーん」とかいいながら はしりさってゆくすがた これからでーと?
くれてゆく にちようびのごご
おれは いったいなんじかんおまえをまっているのだろう
まってもまっても おまえはくるはず ないのに
「えきで まちあわせだからな」
にどときけない おまえのこえ
↓
あめがふっていないのに なぜか おれのて ぬれた
いちどもみたことのない あいつのなきがお とつぜんうかぶ
ただ ただ なきたいのに なけない
いいかげん たちなおらないといけないとおもっている かなしいおとこのいちにち
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【ある ゆうれいのいちにち りたーん】
たのしいときは もうもどってこないのか
とまった とけいは もううごかないのか
えいえんに なった ぼくはもう
このうでで あのおとこをだきしめられないのか
のうてんきな ぼくでも かなしくなる
みじかい じんせいだったと いまさっき おもいだした
がいとうに うつしだされたおとこ おれのこいびとだったひと
↓
ながい じかん おまえを わすれていてごめん
くやしい きもちのまま えきにかけつけた
なきそうなかおをした おとこ がいとうにてらされて そこにたってる
つい むねを たかならせてしまう
てまえに いた おんなのこの すかーと めくれる ひめいのあと
「もう きょう ついてない さいあくー」だって すみません
↓
きのうも おとといも このばしょに おまえ いた
みっかまえも このばしょに おまえ いた
おまえは
ずっと ぼくを おぼえていたのに ぼくは おまえを わすれてた
つい かなしくなって なみだが こぼれた
とけい おねがい もういちど うごいて たんじょうびなのに ぼくはもう としをとれない
↓
あめが ふっていないのに おとこのて ぬれる
いちども おまえのまえで ないたことなんて なかったのに
しめる おとこのて それは きっと ぼくのなみだ
また いつか おまえと いっしょにすごしたい うまれかわったら いっしょにいよう
すぎさった ひびはもう もどらない ある ゆうれいのいちにち
【ある○○のいちにち】in 801 since 2004/5/15