□ 24 □
【あるしょたぜめのいちにち】
しんぱいしょうの せんせいの もーにんぐこーるで きしょう
かるく ことばぜめしつつ なっとうごはんを かきこむ
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じかんわりひょうをみて わすれものがないか かくにん
こんなところだけ こどもで いやになる はやく おとなに なりたい
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たそがれていたら ちこくしそうになっていた はしって とうこう
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きょうしつに つくと せんせいが ぼくいがいのせいとを かまっていた
しょうがないけど なんとなく もやもやする
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いちじかんめの じゅぎょうのあいだ ぼくはずっと せんせいを にらんでいた
せんせいは ぼくとめがあうと あおくなって なきそうになった むししてやる
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やすみじかん すりよってきたせんせいを しょくいんようといれで いじめてあげる
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といれからでてきたのを おなじくらすのじょしに みられた 『なにしてたの』 と きかれる
しるか ぶんなぐるぞ じゃまもの したりがおで そんなこときくな きのきかないくずが
と おもいっきり なじってやろうと おもったが
しかし そんなぼうきょにでると ぼくのくらすでのちいに えいきょうするため えがおで やりすごす
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ほうかご せんせいに よびだされた せんせいは だれもいない きょうしつで ないていた
せんせいは ぼくにむかって もうこんなこと やめよう やめてくれ と なきながらいった
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ぼくは はらがたって せんせいを おしたおした せんせいは なきながら かんじてた
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だけどぼくには せんせいの きもちがどんなのだか わかるような きもする
でも ぼくは せんせいがすきだから せんせいの したいように してやれない
おとなって なんてたいへんなんだろう
ぼくは もうすこし こどもでいいや と たそがれる しょたぜめの ゆううつな ゆうぐれ
□ 30-31 □
【ある つよきせめ の こどもの いちにち】
あさいちで おとうさんのおともだち どれいせめが あそびにきた。
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おとうさん「なにしにきたんだ ばーか」と いきなりあくたい。
どれいせめは にこにこ わらっている。
きょうの おみやげは とっぷすの ちょこけーきだ。
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どれいせめが ほっとみるくをいれてくれる。
おとうさんには さとうなし みるくをほんのすこしいれたこーひー。
どれいせめは おとうさんのこーひーのこのみが きちんとわかっている。
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どれいせめが りびんぐを そうじしはじめた。
「おまえぶきよう だめおとこ」
おとうさんが またおこってるけど どれいせめは やっぱりうれしそう。
どれいせめは しんだおかあさんのしゃしんたてのがらすを やさしくふく。
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おひるごはんは どれいせめのとくいな はんばーぐだ。
おいしい というと「あんまりほめると どれいせめがつけあがる」と
おとうさんがまたおこった。
やっぱりどれいせめは わらっている。
おとうさんのはんばーぐには おとうさんのきらいなにんじんがついてない。
かわりに おとうさんのだいすきな いんげんはたくさん。
↓
おさらをあらって ゆうはんのじゅんびまでして どれいせめは
あしたはしゅっちょうだからと おうちにかえった。
「まったく あいつは。いそがしいなら むりしてこなくていいのに」
さいごのさいごまで ぶつぶついってる おとうさん。
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「どれいせめって おとうさんのことが だいすきなんだね」
といったら おとうさんにしかられた。
「おまえなあ。あんな かじしかさいのうのないやつのくせに」
「でも どれいせめは おとうさんのことが だいすきみたい。
おとうさんは どれいせめがすき?」
「あのなあ。あいつは どじで まぬけで とろくてぼーっとしたやつだぞ」
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いろいろいうけれども ひていはしない おとうさん。
□ 341 □
【あるこどもとおとなのいちにち】
このひと おれのことどうおもってるんだろ
このこ おれのことどうおもってるのかな
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というかおれ なんでそんなことかんがえるんだろ
というかおれ なんでそんなことかんがえるのかな
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くびをかしげて たいじする ふたり
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そこからきょりをちぢめることができない こども
そうかといって にげだすこともできない おとな
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よくわかんねえ このおとな
よくわからんな このこども
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じぇねれーしょんぎゃっぷってやつだ きっと
あれだ あれ じぇねれーしょんぎゃっぷだ
↓
……どーだろ
……どうかな
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けっきょくむごんでにらみあい こどもとおとな
↓
こいにきづけないまま どんどんひはくれる
□ 499-500 □
【あるおじいちゃんのいちにち】
ぼくはあのひ「あのほしをあげるよ」とそらをゆびさした。
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ほたるのとびかう、ろくがつのかわら。
↓
となりのしょうねんは、わらっていった
「ようし、あれはぼくときみのほしだ。
まよったときは、あれをめじるしにすればいい」
↓
しょうねんはそれからいちねんご、いきをひきとった。
なおすことのできない、びょうきだったそうだ。
しょうねんはじぶんのさいごのとき、ほしがみえない、と、ないた。
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ぼくもとしをとり、いまではしょうがくせいのまごまでいるんだ。
かれはあのしょうねんとよくにたふんいきをしている。
かおかたちはまったくだけれど、なぜだか、そうおもう。
↓
ゆうがた。まごとふたりでそとをあるいているときに、
かれがふと、ぼくにいった。
「あのほしは、いつみても、はっきりとわかるよ」
みあげるそらには、
あのころのように、たくさんのほしはなかったけれど。
かれのゆびさきには、あのときにみたほしににた、
ちいさなかがやくほし。
↓
そのとき、ぼくは、あのとびかうほたるをみたんだ。
あのころとかわらない、ぼくのすがたで。
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そんな、あるおじいちゃんのいちにち
□ 553-555 □
【あるしょうねんのいちにち】
きょうは ぼくのたんじょうび
ともだちをよんで はじめてたんじょうかいを
するんだ
↓
ぼくのうちには おかあさんがいない
ぼくをうんで すぐにしんでしまったのだと
おとうさんはいった
↓
おとうさんは しごとばかりでいそがしい
だから たんじょうかいなんて
ほんとうにはじめてなんだ
↓
「しょうねんくん おともだちはなんにんくるの」
おとうさんの かいしゃのおにいさんが ぼくにきいた
↓
おにいさんは よくうちにきて
おとうさんとしごとのはなしをしている
ごはんをつくってくれたり
ぼくにべんきょうも おしえてくれる
やさしくて だいすきなおにいさん
どようびなのに ぼくのためにきてくれた
↓
いっしゅうかんまえの まよなか
めがさめてしまったぼくは
おとうさんと おにいさんが なにか
はなしているのにきがついた
↓
「…きみのきもちには こたえられない」
「わかっています」
「もうすぐ…だからここにくるのもやめてほしい」
↓
あのこは とてもたのしみにしているんです」
「そうか あいつのたんじょうびだったな」
↓
そこで はなしはきこえなくなった
ねえ なにを はなしていたの
ぼくの あたまは ぐるぐるまわって
へんになりそう
↓
ぼくと おとうさんには なにもてつだわせず
おにいさんが ひとりでつくったごちそう
きてくれたともだちも そのすばらしさに
おおはしゃぎ
けーきだって ぷりんだって てづくりさ すごいだろ
うちのままより ずっと じょうずだよ
↓
たのしいじかんがおわって おとうさんは
ともだちを いえにおくりにいった
おにいさんは なんだかつかれたかおで
わらっている
↓
ぼくは あのときの はなしをきかなければ
そうおもったのに ことばが でてこない
「しょうねんくん たのしかったかい」
そういって おにいさんは ぼくのあたまをなでた
「すごく たのしかったよ だから らいねんも
たんじょうかい してくれるよね」
↓
ぼくは まっすぐ おにいさんの めをみていったのに
おにいさんは ぼくのめを みなかった
「…らいねんは もっとすごいりょうりを つくってあげるよ」
↓
おにいさんが かえっていくのを
えがおで みおくった
そして たのしかった いちにちを
おもいだしながら べっどにはいった
↓
もうすこしで あたらしい おかあさんがくることも
おとなは うそをつくのだと いうこともしらない
しょうねんが うまれた きねんびのよる
□ 567 □
【なんぱな しんまいきょうしの いちにち】
こうもんの まえで じぶんのくらすの せいとが まっているのをみつける しんまいきょうし
ああ またかぎつけたのか へんにかんのいいこどもだ
まだ しょうがくごねんせいなのに おとなびたかおをしている うけもちのこども
↓
うったえるような め しなくても いいたいことはわかる ためいきつく しんまいきょうし
おれが おまえのははおやと ふたりであうのが そんなにいやか
でも おまえのちちおやは もういないんだから ふりんでもないし
おまえのははおやにだって れんあいするけんりは あるだろ
↓
ははおやによくにた おおきなめだま なみだをいっぱいためて だまるこども
そんなに ははおやを とられるのが いやか
それとも あいてが おれなのが いやか
いかにも あそびなれたものごしの おれに ははおやが もてあそばれるのが いやなのか
↓
なあ なんとか いってみろよ
きょうしは くわえたばこで かがみこむ
↓
いきなり たばこを もぎとってなげすてる こども あっけにとられてかたまる しんまいきょうし
やわらかいてのひらが やけどしたんじゃないのかと こしをうかせかけたとき
↓
やわらかいくちびる つよくふれてきた
がむしゃらな そのきすのあとに はが がちんと ぶつかる
きすのやりかたも わからない こどもの やけにたかい たいおん
↓
めのまえで ないている こどもを ぼうぜんと みやる
↓
まっしろなあたまのどこかで つよくにぎりしめられてふるえている ちいさなてのひらが
やけどしていないかどうかが まだきになっている なんぱな しんまいきょうしの とまどいのごがつ
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□ 577 □
【ある しょうがくせいの いちにち】
せんせいは たばこを すわなくなった
せんせいは どんどん かっこよくなっていく
せんせいは あれから ぼくにとてもやさしい
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ぼくは まいにち ほうかご せんせいのところへいく
ほかに ひとのいない きょうしつで せんせいは ぼくのてにきすする
きたない きずあとの うえに きすする
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てのひらに のこってる それは やけどのあと きたない みみずばれ
ぼくのなかの わるいぼくが でてきてしまったみたいな きずあと
なんで せんせいが それにきすするのか ぼくには わからない
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まえは まいにち おかあさんのところにきて よなかに おかあさんをなかせていた せんせい
かわりに ぼくをいじめれば おかあさんをゆるしてくれるかとおもったんだ
だけどせんせいは あれからぼくに とてもやさしい やくそくどおりうちにもこない
ぼくをいじめたりしない なかせたりしない ただ ごめんな とくりかえす
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ぜんぶけいかくどおりになったはずなのに おかあさんは きょうも ないていて
せんせいは ぼくにとてもやさしくて おかあさんのことは わすれてしまったみたいで
ああ もう ほんとうのことは いえない きっと ぼくは まちがえたんだ
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ぼくは どうすればいいんだろう
↓
ぼくは どうしたかったんだろう?
↓
めいろに まよいこんでしまった ある しょうがくせいのいちにち
■ 316… ■
どくりつしています。
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ある びょうじゃくしょうねん と しゅじい の いちにち
【ある○○のいちにち】in 801 since 2004/5/15