あるおさないひと の いちにち 1

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24 30-31 341 499-500 553-555 567,577  ■  みっかよりながいにっき / 316…

□ 24 □
【あるしょたぜめのいちにち】

しんぱいしょうの せんせいの もーにんぐこーるで きしょう
かるく ことばぜめしつつ なっとうごはんを かきこむ

じかんわりひょうをみて わすれものがないか かくにん
こんなところだけ こどもで いやになる はやく おとなに なりたい

たそがれていたら ちこくしそうになっていた はしって とうこう

きょうしつに つくと せんせいが ぼくいがいのせいとを かまっていた
しょうがないけど なんとなく もやもやする

いちじかんめの じゅぎょうのあいだ ぼくはずっと せんせいを にらんでいた
せんせいは ぼくとめがあうと あおくなって なきそうになった むししてやる

やすみじかん すりよってきたせんせいを しょくいんようといれで いじめてあげる

といれからでてきたのを おなじくらすのじょしに みられた 『なにしてたの』 と きかれる
しるか ぶんなぐるぞ じゃまもの したりがおで そんなこときくな きのきかないくずが
と おもいっきり なじってやろうと おもったが
しかし そんなぼうきょにでると ぼくのくらすでのちいに えいきょうするため えがおで やりすごす

ほうかご せんせいに よびだされた せんせいは だれもいない きょうしつで ないていた
せんせいは ぼくにむかって もうこんなこと やめよう やめてくれ と なきながらいった

ぼくは はらがたって せんせいを おしたおした せんせいは なきながら かんじてた

だけどぼくには せんせいの きもちがどんなのだか わかるような きもする
でも ぼくは せんせいがすきだから せんせいの したいように してやれない
おとなって なんてたいへんなんだろう
ぼくは もうすこし こどもでいいや と たそがれる しょたぜめの ゆううつな ゆうぐれ

□ 30-31 □
【ある つよきせめ の こどもの いちにち】

あさいちで おとうさんのおともだち どれいせめが あそびにきた。

おとうさん「なにしにきたんだ ばーか」と いきなりあくたい。
どれいせめは にこにこ わらっている。
きょうの おみやげは とっぷすの ちょこけーきだ。

どれいせめが ほっとみるくをいれてくれる。
おとうさんには さとうなし みるくをほんのすこしいれたこーひー。
どれいせめは おとうさんのこーひーのこのみが きちんとわかっている。

どれいせめが りびんぐを そうじしはじめた。
「おまえぶきよう だめおとこ」
おとうさんが またおこってるけど どれいせめは やっぱりうれしそう。
どれいせめは しんだおかあさんのしゃしんたてのがらすを やさしくふく。

おひるごはんは どれいせめのとくいな はんばーぐだ。
おいしい というと「あんまりほめると どれいせめがつけあがる」と
おとうさんがまたおこった。
やっぱりどれいせめは わらっている。
おとうさんのはんばーぐには おとうさんのきらいなにんじんがついてない。
かわりに おとうさんのだいすきな いんげんはたくさん。

おさらをあらって ゆうはんのじゅんびまでして どれいせめは
あしたはしゅっちょうだからと おうちにかえった。
「まったく あいつは。いそがしいなら むりしてこなくていいのに」
さいごのさいごまで ぶつぶついってる おとうさん。

「どれいせめって おとうさんのことが だいすきなんだね」
といったら おとうさんにしかられた。
「おまえなあ。あんな かじしかさいのうのないやつのくせに」
「でも どれいせめは おとうさんのことが だいすきみたい。
おとうさんは どれいせめがすき?」
「あのなあ。あいつは どじで まぬけで とろくてぼーっとしたやつだぞ」

いろいろいうけれども ひていはしない おとうさん。

□ 341 □
【あるこどもとおとなのいちにち】

このひと おれのことどうおもってるんだろ
このこ おれのことどうおもってるのかな

というかおれ なんでそんなことかんがえるんだろ
というかおれ なんでそんなことかんがえるのかな

くびをかしげて たいじする ふたり

そこからきょりをちぢめることができない こども
そうかといって にげだすこともできない おとな

よくわかんねえ このおとな
よくわからんな このこども

じぇねれーしょんぎゃっぷってやつだ きっと
あれだ あれ じぇねれーしょんぎゃっぷだ

……どーだろ
……どうかな

けっきょくむごんでにらみあい こどもとおとな

こいにきづけないまま どんどんひはくれる

□ 499-500 □
【あるおじいちゃんのいちにち】

ぼくはあのひ「あのほしをあげるよ」とそらをゆびさした。

ほたるのとびかう、ろくがつのかわら。

となりのしょうねんは、わらっていった
「ようし、あれはぼくときみのほしだ。
まよったときは、あれをめじるしにすればいい」

しょうねんはそれからいちねんご、いきをひきとった。
なおすことのできない、びょうきだったそうだ。
しょうねんはじぶんのさいごのとき、ほしがみえない、と、ないた。

ぼくもとしをとり、いまではしょうがくせいのまごまでいるんだ。
かれはあのしょうねんとよくにたふんいきをしている。
かおかたちはまったくだけれど、なぜだか、そうおもう。

ゆうがた。まごとふたりでそとをあるいているときに、
かれがふと、ぼくにいった。
「あのほしは、いつみても、はっきりとわかるよ」
みあげるそらには、
あのころのように、たくさんのほしはなかったけれど。
かれのゆびさきには、あのときにみたほしににた、
ちいさなかがやくほし。

そのとき、ぼくは、あのとびかうほたるをみたんだ。
あのころとかわらない、ぼくのすがたで。

そんな、あるおじいちゃんのいちにち

□ 553-555 □
【あるしょうねんのいちにち】

きょうは ぼくのたんじょうび
ともだちをよんで はじめてたんじょうかいを
するんだ

ぼくのうちには おかあさんがいない
ぼくをうんで すぐにしんでしまったのだと
おとうさんはいった

おとうさんは しごとばかりでいそがしい
だから たんじょうかいなんて
ほんとうにはじめてなんだ

「しょうねんくん おともだちはなんにんくるの」
おとうさんの かいしゃのおにいさんが ぼくにきいた

おにいさんは よくうちにきて
おとうさんとしごとのはなしをしている
ごはんをつくってくれたり
ぼくにべんきょうも おしえてくれる
やさしくて だいすきなおにいさん
どようびなのに ぼくのためにきてくれた

いっしゅうかんまえの まよなか
めがさめてしまったぼくは
おとうさんと おにいさんが なにか
はなしているのにきがついた

「…きみのきもちには こたえられない」
「わかっています」
「もうすぐ…だからここにくるのもやめてほしい」

あのこは とてもたのしみにしているんです」
「そうか あいつのたんじょうびだったな」

そこで はなしはきこえなくなった
ねえ なにを はなしていたの
ぼくの あたまは ぐるぐるまわって
へんになりそう

ぼくと おとうさんには なにもてつだわせず
おにいさんが ひとりでつくったごちそう
きてくれたともだちも そのすばらしさに
おおはしゃぎ
けーきだって ぷりんだって てづくりさ すごいだろ
うちのままより ずっと じょうずだよ

たのしいじかんがおわって おとうさんは
ともだちを いえにおくりにいった
おにいさんは なんだかつかれたかおで
わらっている

ぼくは あのときの はなしをきかなければ
そうおもったのに ことばが でてこない
「しょうねんくん たのしかったかい」
そういって おにいさんは ぼくのあたまをなでた
「すごく たのしかったよ だから らいねんも
たんじょうかい してくれるよね」

ぼくは まっすぐ おにいさんの めをみていったのに
おにいさんは ぼくのめを みなかった
「…らいねんは もっとすごいりょうりを つくってあげるよ」

おにいさんが かえっていくのを
えがおで みおくった
そして たのしかった いちにちを
おもいだしながら べっどにはいった

もうすこしで あたらしい おかあさんがくることも
おとなは うそをつくのだと いうこともしらない
しょうねんが うまれた きねんびのよる

□ 567 □
【なんぱな しんまいきょうしの いちにち】

こうもんの まえで じぶんのくらすの せいとが まっているのをみつける しんまいきょうし
ああ またかぎつけたのか へんにかんのいいこどもだ
まだ しょうがくごねんせいなのに おとなびたかおをしている うけもちのこども

うったえるような め しなくても いいたいことはわかる ためいきつく しんまいきょうし
おれが おまえのははおやと ふたりであうのが そんなにいやか
でも おまえのちちおやは もういないんだから ふりんでもないし
おまえのははおやにだって れんあいするけんりは あるだろ

ははおやによくにた おおきなめだま なみだをいっぱいためて だまるこども
そんなに ははおやを とられるのが いやか
それとも あいてが おれなのが いやか
いかにも あそびなれたものごしの おれに ははおやが もてあそばれるのが いやなのか

なあ なんとか いってみろよ
きょうしは くわえたばこで かがみこむ

いきなり たばこを もぎとってなげすてる こども あっけにとられてかたまる しんまいきょうし
やわらかいてのひらが やけどしたんじゃないのかと こしをうかせかけたとき

やわらかいくちびる つよくふれてきた
がむしゃらな そのきすのあとに はが がちんと ぶつかる
きすのやりかたも わからない こどもの やけにたかい たいおん

めのまえで ないている こどもを ぼうぜんと みやる

まっしろなあたまのどこかで つよくにぎりしめられてふるえている ちいさなてのひらが
やけどしていないかどうかが まだきになっている なんぱな しんまいきょうしの とまどいのごがつ

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□ 577 □
【ある しょうがくせいの いちにち】

せんせいは たばこを すわなくなった
せんせいは どんどん かっこよくなっていく
せんせいは あれから ぼくにとてもやさしい

ぼくは まいにち ほうかご せんせいのところへいく
ほかに ひとのいない きょうしつで せんせいは ぼくのてにきすする
きたない きずあとの うえに きすする

てのひらに のこってる それは やけどのあと きたない みみずばれ
ぼくのなかの わるいぼくが でてきてしまったみたいな きずあと
なんで せんせいが それにきすするのか ぼくには わからない

まえは まいにち おかあさんのところにきて よなかに おかあさんをなかせていた せんせい
かわりに ぼくをいじめれば おかあさんをゆるしてくれるかとおもったんだ
だけどせんせいは あれからぼくに とてもやさしい やくそくどおりうちにもこない
ぼくをいじめたりしない なかせたりしない ただ ごめんな とくりかえす

ぜんぶけいかくどおりになったはずなのに おかあさんは きょうも ないていて
せんせいは ぼくにとてもやさしくて おかあさんのことは わすれてしまったみたいで
ああ もう ほんとうのことは いえない きっと ぼくは まちがえたんだ

ぼくは どうすればいいんだろう

ぼくは どうしたかったんだろう?

めいろに まよいこんでしまった ある しょうがくせいのいちにち

■ 316… ■ 

どくりつしています。
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