ある おさななじみ・ともだちの いちにち 2

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□ 17-20 □
【ある すぽーつばか ふたりの いちにち】

すごいおとがにかいからしている がっしゃん がしゃん ばき
にがわらいしているせめのおかあさんに あいさつして にかいにあがると
せめのへやが あらしがとおりすぎた みたいに ぐちゃぐちゃ

きょう れんしゅうじあいでまけたのが よっぽどあたまにきたんだなあ
だまって とぐちから せめのあらいいきで ゆれるかたとせなか ながめる

ずっとむかうところてきなしで まけしらずだったもんな
はじめて まけて くやしいんだよな わかるけど
ものにあたるのよくないです やれやれ とてぢかなものから かたづける

「ぜんこくたいかいのけっしょうでまけたなら まだしも
れんしゅうじあいで あんなくつじょく ゆるせねえ」?
あーあ やっぱり ぷらいど ずたずたにされちゃってるみたい

あんたのそういうとこ かわいいし かっこいいけどね こころのなかでおもいながら なだめる
れんしゅうじあいで よかったじゃないの
「なにがいいってんだ」とさけぶ せめに ほほえむ

ぜんこくたいかいのけっしょうで あいつ たおせるだろ?
これから りべんじ はじめるんだろ?
おこってるひま ないんじゃないの。

いきおい そがれたみたいにこっちをみてるせめ そのめのまえで
つくってきた れんしゅうめにゅーと あいてのでーた けいこうとたいさく
そのしょるいのたば きれいにかたづけたてーぶるに どん とおいて
ほら とうながす

さ やろうや みーてぃんぐ
めにもの みせてやろうぜ

「なんだ おまえ このたんじかんで よくそんなしりょう つくれたな」
あきれたような おかしいのがまじったような せめのかおに わらいかえす

おれだって あたまにきてんすよ これでも
だって あんたがいちばんじゃなきゃ いやだし いつでも どんなときでも

そか とてれたようなあいづち ちょっと ねえ こっちもてれるから やめて
てれかくしに ばさばさ しょるいいじって まとめる

「おれも いちばんでなきゃ なっとくできねえし」
うん とこたえると ぶっきらぼうなこえ

「…いちばん つよくないと おまえ もっとつよいほうに いっちまいそうだし」

…は?
なんかいった? きゅうに ええと
なんなのそれ おこるよいくらおれでも

「だってつよいやつ みてるのすきだろ」って?
そりゃあすきですけどね だからあんた さぽーとしてるんだけど
なんでそれが そうなるの

おれ そんなふうに みえるの?
なんか え? あんた そんなふうにおれのことみてたの
「よそのこうこうとも こうはいとも なかがいい」?
いやそれはあんたがめんどくさがってやらないことを かわりにね やってるんですよ?
ふつう じぶんで やるんだよ きほんですよ
ていうか なんなの そのいいがかり

はらを たてて しりょうたたきつけてやろうかと おもったけど
ぐっと がまんして むっつりだまる おこってます おれは おこってます はなしかけないで
「なあ」じゃありません おれは おこってるの!
そういうとき なんていうんでしたっけいっぱんてきには。…「おい」かよ おれはけんたいきのにょうぼうか
なんかぴったりすぎていやだ このたとえ

「ごめん」
そうだよ ごめんなさいはだいじだね じゃないとそろそろおれ なくよ まじで
せなかむけて かおみせてないの いじはってるからだけじゃないんだ

あんたがいいんだ あんたがつよくて まけないのがいいんだから
そこまちがえないでね てすとにでるからね
わかった?

「つよくてまけない 『おれ』が すきってことか」
そ そうだよ わかったんならいいけど
そうか って あのね なにみょうになっとくしてんの
ちらっとふりむいたら あーもー やたら まんぞくそうなかおしやがって このやろ
てれかくしに むにーっとほっぺた ひっぱったら みみたぶ ひっぱりかえされて
どっすんばったん じゃれあってみたりして つかれはてたころに
みーてぃんぐじゃなかったのか おい とふたりでじぶんつっこみ

ごろ ところがって わけもなくわらう
なー ぜんこく いこうな
「おう いくぞ」
ふたりでねー
「ふたりでな」

…ええと。あー。
そこはくりかえさなくていいから なんかてれるから
そういったら ぐりぐりあたまかいぐられる だーかーらー

そんなこんなで すぎていく すぽーつばかふたりの ほんのり あまずっぱい あきのいちにち
こいがおとずれるのは まだ もうすこし さきのきせつ

□ 53 □
【ある さみしいうけの いちにち】

さむいゆきのひに とびらをたたいて てあたりしだいに きいてみた
なあ しらない? おれだけの たったひとりのこいびと
どこかにいるはずなんだけど みつからないんだ

みんな もうだれかといっしょにいて しあわせそうなえがおで しらないと いった
あたたかいへやは どこも こいびとたちの えがおでいっぱいだった
おれは とほうにくれたまま さむい ゆきのなかに たちつくしている

さむいな そういうと そうだな とだれかがよこでいった
いつのまにきたのか おれのそばで かさをもって しんゆうが たっていた
どうりで さっきから ゆきがおれにはつもっていない

つきあわなくても いいんだぜ まだまだ みつかりそうにないから
そういっても しんゆうは だまってそばにいる

おまえの たったひとりのひとは みつかったんだろ?そういうと しんゆうは だまってうなずく
そっちに いってあげなよ ここはさむいし こいびとがまってるへやはきっとあたたかい
おまえまで おれにつきあってくれなくていいんだから

いいんだ しんゆうは それだけいって かさをさす
じぶんの まふらーまで おれにまく よせよ だいじょうぶだよ おまえがかぜひいちゃう
いいんだ しんゆうは それしかいわないから なんだかおれは なきたくなる

たったひとりの しんゆうには もう あたたかいへやと こいびとがまってるはず
おれは そこには はいれないんだから
…だから これいじょう やさしくしないで

そのひとことがいえなくて ゆきのなか まっちのあかりみたいなちいさなあたたかさにすがって
しんゆうのやさしくてせつないまなざしには きがついていない あるすれちがいうけのいちにち

あおいとりは すぐそこ

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□ 65 □
【ある せつない せめの いちにち】

めのまえで さみしそうに だれかを さがしている うけを みつめる
ゆきのなか さむそうにほおをあかくして たったひとりのひとを さがして

たぶん おれじゃむりなのだろうから おれは だまってよこにいる
おれにとって たったひとりのひとは おまえだけど
きっと おまえにとっては そうではないのだろうから

であったしゅんかん はながさいて らっぱがひびいて
ばらいろのせかいが ひろがるような こいでなければ おまえは なっとくしないのだろうから
あまいことばのひとつも いえない くちべたの おれでは むりだろう
たまに よのなかは そういうふうに うまくいかない
おれのかたのあたりで ためいきをついている よこがおをみながら そうおもう

どこにいるのだろう うけにとっての たったひとりのひとは
いつ うけをさらっていってしまうのだろう
そのとき こぼれるような えがおで うけは そいつと きすをするんだろうか

そう おもったら たまらなくなって てをのばした
むりやりにでも あたたかいへやへ つれさってしまいたい
こちらをみてくれなくてもいいから こんなさむいところで こごえさせるくらいなら
ないても いやがっても あたたかい おれのへやへ

だけどけっきょく かなしいかおなんか みたくないので
おれにできるのは こーとでつつみこむことくらいで
すっぽりとおれのうでにおさまったうけが びっくりしたようにまたたいた

こうしたほうが さむくないだろ
どうなってもいいようなきもちで それでもりせいだけはたもって
ただ あたためるだけ とじぶんにいいきかせて うけのかおはみないで だきしめる ある せめのいちにち

とまどう うでが おずおずと せなかにまわるまで あといちびょう

□ 87 □
【ある どうきょにんせめの いちにち】

だんしりょうで どうしつの せめと うけ
うけは まんげつになると おおかみおとこにへんしんします
じょうだんぬきで いや まじで

でも たいてい つきが でるまえに さっさと ねてしまうので
へんしんするのは そのあと

もさ もさ もさもさもさもさ

ふかふかの けに つつまれて ねている おおかみおとこ
あさまで おきないので なにもせずに ただ もさもさになってるだけ

ふかふか
ふかふか

なんて むだな のうりょくなんだろうと おもいながら なでる せめ
ああ かわいい とにやけているかおは だれにもないしょ

うっかり うけが めをさまして いろいろと めんどうな ことになるのは
なんと どうきょして いちねんたってから という
のんびりした かっぷるの まだ じかくまえの まんげつの よる

ふかふか
ふかふか

□ 136 □
【ある かたおもいせめの いちにち】

どんな ことでも おまえに いちばんに ほうこくするから
しんゆうの うけに そういわれつづけて もうじゅうねんいじょう
ほうこくのたび いつでも せめののどは つまったように くるしくなる

うけの むこうで あでやかに わらう はなのような うけのこいびと
がくせいじだいから よく しっている ひのうちどころのない びじんのかのじょ
けっこんすると きいたのは ことしの はじめごろだった
もう あっというまに としあけには けっこんしきだ

ころしてやりたいなあ
おにあいの かっぷるをまえに えがおで あいづちを うちながら
ひそかに うけを みつめて そんなことを ぼんやりとおもう

さいごの さいごまで むちゅうで だいて おもいしらせて やりたい
どれだけ くるしんだか どれだけ あいしていたかを からだに おしえてやりたい
そうして いきたえるときは いっしょに しぬんだ
てを つないで さいごの きすをして その くちびるに おなじ どくをぬって ね
そんな もうそうが おかしくて ひとりで わらった

むねのなかで どんどん けものがそだつ
きばをむき うなりごえを あげ うけを ほっして つめを とぐ
しっと というなの けものの いきづかいが あらくなる

でも だいじょうぶ ぜったいに おりからは にがさないから
こころは なんどでも ころすから ねえ どうか しあわせに なって

そして ねがわくば けっして このきもちには きづかないで

ひょうじょうには なにもださずに ひとり わらっている
ある かたおもいせめの むなしい ひるさがり

□ 164-165 □
【どくしん さいごの おとこの いちにち】

けっこんしますと ほうこくしたら
そいつは りょうめを まるくした
   ↓
「あらら まじで?」
「おう まじで」
「どこの ぼらんてぃあよ あいては」
「こうべの って ぼらんてぃあじゃねえよ ぼけ」
   ↓
とりあえず のめ と だされた さけは
いろけの かけらも ない はっぽうしゅ
とりあえず な? と うながされるまま
かんぱい さけんで ぐいと のみほす
   ↓
そして そいつは いった
「くっそー」
   ↓
「おれ おまえに ほれてたのによ」
   ↓
みぎての かんが ぺこっと へこんで
それから ぺこっと なって もどった
   ↓
「ちょっと おそすぎましたから! ざんねん!」
「へたれぎり!」
「じぶんで いってりゃ せわねえ」
   ↓
ふたり どうじに ふきだして
げらげら わらって まるで ばかみたいに
ばかみたいな
ばかだ ああ でも
   ↓
おれらは おとこで がきでもないから
これでいい きっと これだけでいい
   ↓
「しあわせになれよ」
「なりますよ」
「おう」
「おまえも はやく だれかを さがせよ と」
「かーらーかわーなーいでー えーらそうにー」
   ↓
あしたから また ともだちづきあい
どくしん さいごの おとこの いちにち

□ 269-270 □
【ある かたおもいおとこの よる】

れんあいなんて しょうじき めんどくさいよな
しんゆうのことばに おとこはすこしだけ ほっとした

まだ だいじょうぶ
じぶんに いいきかせる
こいびとに なりたいわけじゃない
こいつのいちばんで いたいだけ

いまは おまえといるのが いちばんたのしいよ
しんゆうが のみほした びーるのあきかんを ごみばこにすてる

そうだね おれも おまえといるのが いちばんたのしい
おとこは あたらしいびーるを しんゆうにわたす

つぶやくおとこに しんゆうは うれしそうに わらって びーるをうけとった

おお しんゆうよ
おれは うれしいぞ

えんぎがかった くちょうで しんゆうが いう

おれは うれしくないよ
おとこは ことばをのみこんだ

いつまで おれは こいつのいちばんで いられるんだろう
そろそろ ふたりとも いいとしだ
けっこんしろって おやも うるさい
みあいの はなしも ちらほら きこえる

こいつは れんあいなんて というけれど
いつかきっと かわいいおくさんを もらって かわいい こどもを もって
そして しあわせになる
そのしあわせの なかに おれは いない

おとこは びーるを のみほして ためいきをついた

どうか しんゆうのいちばんで なくなるひが きませんように なんて
そんなことは かんがえない

だから

どうか どうか
しんゆうの しあわせを よろこべる ように

かんがえこむ おとこを しんぱいそうに みる しんゆうには きづかない
ある かたおもいおとこの よる

□ 325-326 □
【あるだいがくせいぜめのいちにちおわり】

きょうもいちにちよくはたらいた おつかれーおれ ばいとだけど

こんびにでてきとうにべんとうこうにゅう お、つつみやき? なんじゃそりゃうまそう

あとはびーるかってたばこかってあさのむようにおちゃかって おべんとうあっためてもらって
あ、ついでににくまんください はーいかしこまりましたー かしゃかしゃちーん ありがとうございました またどうぞー

で、かえってきたらおさななじみうけがいえのまえでたいいくずわりしてた
あーあーもうすわりこむなよ やんきーかおまえは

ちょうどいいからにくまんあたえると じわりとなみだめになってうけとった

なんだよまたふられたのかよ ためいきついて いえのなかにいれてやった

だいえーとなんかいだっけ、いいやもうかぞえきれねえ だいじゅっかいこえくらいおさななじみうけしつれんえんかい はじまり
だいたいあんたね たいしてすきでもないのにほいほいつきあうからそうやってふられるの
もうなんかい いったかわからないせりふ
だってすきっていわれると なんかうれしくなってさ きがつくとうなずいてんだよね
もうなんかい いわれたかわからないせりふ
さいあく! すおうと おもっていたたばこをはこごとなげつけた これもいつものこと

こくはくされてうなずいて うわきされて はきょく こいつのれんあいぱたーんはこうこうのときからいっこもかわってない

だからおれはこいつに こくはくできない

こいつはあほのこだから すきっていったら なにもかんがえずにうなずく
きっとじゃなくてぜったいになにもかんがえずに うん じゃあつきあおうかーとかいう まちがいなくいう
おれはそういうのがほしいわけじゃないのでこくはくできない

こいつからのこくはくじゃないと おれのほしいものはてにはいらないから ずっとまってる

さりげないあぷろーちだってかかしてない おかげでむにのしんゆうのちいはふどうのものだ あとちょっとだ きっと

けど もうそろそろげんかいかもしんない

ああもう はやくおれのことすきになれよ うわきしないぜ はたらきものだぜ ちょうゆうりょうぶっけんだぜ  おまえがほしいというなら きっと ほしすらてにいれるおとこだぜおれは

なげつけたたばこをのんきにすってるおさななじみうけをみつめながら はやくもよいのまわりはじめたあたまでじりじりかんがえるおさななじみぜめのはるのよる

いや ほしはむりだな ていせい とおもうあたりまだちょっとしらふ

□ 342-343 □
【あるだいがくせいぜめのいちにち】

きょうはおやすみ ばいともない あさなんだか ひるなんだかにおきて てれびみながらめしをくう そーですねー そーですねー れんこしててあきないのか こいつら

てれびに つっこみいれるのってさみしいからかねとひとりごといってるじぶんにぎょっとする やばい おれほんとにさみしいのかもしんねえ

てれびをけして さてそうじでも たちあがったときになったけいたい

ぱかりとあけて つうわぼたんをおせば とたんにあふれてくる おさななじみうけのやかましいこえ

おれおれ! なー いまから びでおもってくからいっしょにみようぜー

おれおれさぎし と びでおみるしゅみは ありません

えー いーじゃん あたらしいじぶんにであえるかもしんないじゃん! おさななじみうけのこえは じゅわきからと そとから

あれ?

ぴ−んぽーん

こんにちは おれおれさぎしです

おまえね せめて えきででんわしろよ いなかったらどうすんだ ぶつぶつもんくいいながらも うれしいきもちはかくしきれない

ま いいか さみしかったしね
にやけるくちもとをかくすと さっさとてれびのまえにじんどっていた おさななじみうけのとなりにすわる

なにみんのよ

がしゃこんとびでおをいれるせなかを みながらきいてみる

さだこー

かえってきたへんじに せすじがあわだつ

それはあれですか おれがほらーみると ひとりでふろにはいれないのを しってのろうぜきですか

いーじゃん だいじょぶだいじょぶ いっしょにはいってやるから

おさななじみうけが さらりとかえしてきたことばに こんどはべつのいみで せなかがあわだった
↓ 
ときどき こいつは ぜんぶしってるんじゃないかとおもう しってて それでおれをためしてるんじゃないかとおもう

おもわず のばしたうでは ふときがついたきょうふでかたまった

しらない のかも しれない

こいつはなんにも しらなくて ただおれが ひとりで ぐるぐるしてるだけかもしれない

さだこもこわい けど こいつにきらわれるのも こわい なんのきもちも もたないまま いいよ つきあおうかとうなずかれるのは もっとこわい

はじまったびでおに はやくもなみだめになりながら おれはこんなにこわいものばっかでじんせいうまくやっていけんのかと きょうふでこんらんしはじめた おさななじみぜめの ひるさがり

ふろはひとりではいります

□ 419-423 □
【せめの とある いちにち】

てのなかの けいたいを もてあそぶ

はあぁぁぁ

きょう なんどめかのためいきが でる

ずっと にぎりっぱなし だったから
たいおんが うつってて
けいたいが びみょうに ぬくい

いをけっし ぴこぴこ と ぼたんそうさ

がめんにだしたのは
うけの でんわばんごう

それをながめて また ためいき

なぁ おれ ひまなんだけどよー
てんきいいしさー どっか あそびにいかねえ?
めしくらい おごってやるからさぁ

あさから かんがえてた せりふを
もういちど あたまのなかで れんしゅう

でも やっぱり ぼたんがおせなくて
ぱこん と けいたいを とじる

これで なんどめだろ
あさから この いちれんのどうさの くりかえし

ああ ちくしょう おれのいくじなし

べつに ともだちなんだから
でんわしたって いいじゃん
あそびに さそったって おかしくねぇじゃん

そう じぶんに いいきかせてみる

でも なにげに おれのからだってば すなお
ぼたん おそうとすると ゆび ふるえやんの

もう ひるだ
もたもたしてたら あっというまに よるだ
このままじゃ このままで いちにちが おわる
やばい

しんこきゅう

を しようとしたら
いきなり てのなかのけいたいが なりだした
うおー びびったー

ちゃくしんのなまえを かくにん

あ  あいつから

じゃなくて
べつの ともだち からだ

これが どらま とかだったら
あいつから の でんわだったり すんのにな
やっぱり げんじつは
そんな つごうよくは ないんだよな

ひそかに がっかりしつつ ぼたんをおす

はい こちら こどもでんわそうだんしつー

なんて つかいふるされた でかたをしたら
きこえてきたのは さっきから おれがききたかった
あいつの こえ

え? えええ?

なんで あいつからのでんわ じゃないのに
あいつの こえ がして
しかも おれのなまえ よんでんだ?
え これって げんちょうってやつ?

だけど きこえてくるのは やっぱり あいつのこえ
しかも すげえ たのしそう
なんだよ なんの どっきりだよー

しんぞう ばくばくさせてたら
この でんわばんごうの とうにんに
ばとんたっち

おいおい なんだよ どういうことだ このやろう

へー
ほんやって あの えきまえの?
そこで ぐうぜんあったのか
ふーん

そりゃまぁ おまえらも ともだちどうし なんだから
あえば こえもかけるわな
はなしもするよな

あー やべえ
おれ たったそんだけのことが すげぇ おもしろくねえ
こいつのこと にくたらしい っつか うらやましい
ちくしょう


なんのようだよ?

いや まぁ ひまだけど
ひるめしも まだだけど

どうやら
せっかくだから さんにんで めしくおうぜ
の おさそいらしい

どうせなら あいつと ふたりで
いや なんでもねぇ こっちのはなし

あー はいはい わかったわかった
たぶん にじゅっぷんくらいで
そっち つくとおもう
へいへい んじゃ あとでな

きるまえに うけの
はやくこいよー ってこえが きこえた

あいつに あえるのは うれしい
でも ふたりきりじゃないのが ざんねん
うーん ちょっとふくざつな きぶん

じぶんが かんがえてたのとは だいぶ ちがうけど
でもまぁ あのまま ひとりで
いちにちをおわらせる よりは ましか

かるく ためいきはいて たちあがる

あさから ずっと てにしてた けいたいを
さいふといっしょに ぽけっとに いれて
へやをでた

げんじつは そうそう あまくない
だけど そんなに からくもないかも と おもいながら
うけ と おじゃまむし のもとへいそぐ
あんがい らくてんか な せめの とあるきゅうじつの いちにち

□ 434-437 □
【あるだいがくせいのいちにち】

あいたせきをみつけて すわりこむとどうじに どあはしまった
でんしゃのいすにあずけたからだが やたらにおもい

きょうも たぶん だめでしたな
いやはや なにがわるいのか
こころのなかでつぶやいて ふざけたくちょう でもけっこうしんこく

だいたいはいちじめんせつでふごうかく もはやじんくすなみ
おれにきょうみがないのなら むりしてどうきなんてきかなくてもいいのに
そんなふうにさえおもうめんせつかんのたいど
きっとそれは おれがむこうにきょうみがないから なんだろう

ひとはひとのかがみ むかしばあちゃんがよくいってたな
ちいさかったおれにはよくわからなかったけど いまならわかる
べつに おとなになった ってわけでもないのに
いちにちひとはこ たばこをすって なかまといっしょに さけものむ
だけどおれは ぜんぜんこどもだ からだばかりがおおきいこども

いつのまにかろくがつになって ないていもらってるともだちもけっこうおおい
あせればあせるほど うまくいかないようなきがしてよけいにあせる
おたがいがんばろうなって まだないていとれないともだちはいう
けど おれよりさきにとってやるとかおもってんだろって
ひねくれたかんがえかたしてしまう そんなじぶんにもうんざり

だいいちしぼうのきぎょうに はやばやとおちてから
ずるずるとだせいでつづけてるしゅうしょくかつどう
そりゃうからないよな むこうもばかじゃない こんなやつをとるわけがない

さんじゅっぷんほどまえの めんせつかんのかおをおもいだす
うんざりしたきぶんで かるくあたまをふっておいはらう
めをとじてみても ねむれなくて とじてみたり あけてみたり
ななめまえにすわった こうこうせいかっぷるのこえにいらいらする
おれ よゆうないな しんそこそうおもった

そのときまどのそと とおりすぎたけしきに めがさめた
どんどんとおざかっていったのは ちいさなこうえん
じゅうたくがいのなかの ぶらんことすべりだいととけいしかないこうえん

こうえんがみえなくなっても ばかみたいに おれはそっちをみてた

そのこうえんは しょうがくせいのとき いちばんよくあそんだばしょ
なにがそんなにおもしろかったのか もはやいまではおもいだせない
でも まいにち まいにち あきもせずにあそんでた
おおきなとけいがとけいだとはしっていたけど じかんなんてみなかった

ちゅうがくいちねんでひっこすまで ほうかごはそこであそんだ
いちばんのしんゆうに ひっこすといったのも あのこうえん
「おれ ひっこすんだ」といったら やっぱりびっくりしておれをじっとみてた
にしびがまぶしくて ことばにつまって あふれそうななみだをこらえて
ついでにずっといいたかったことばも いうまいとしてのみこんだ
なきそうなあいつのうしろを でんしゃがとおりすぎた

そういえば はじめてこうえんのとけいをみたのはあのときだった
「かあさんが ろくじまでにかえれって」と うそをついた
ほいくえんからずっといっしょで それがはじめてのうそだった

おれがなきそうなの たぶんあいつにもばれてたんだろうな
おれがなかないようにがまんしてたから あいつもひっしでがまんしてた
ひとをだきしめたことなんて あのときはまだなかったのに
そのとき おれはほんきで あいつをだきしめたいとおもった

りくるーとようのかばんからてちょうをだして ろくがつのぺーじをめくる
あしたもまたせつめいかいとひっきしけん そろそろまえのめんせつのけっかがくる
いろいろめんどくさいけど でもしかたないよな

すぴーどがゆるくなる でんしゃがとまる
しゅうてんのおおきなえき わらわらとおりるひとにまぎれてでんしゃをおりる
ろせんをのりかえて むっつめのえきが せまいわがやのもよりえき
もうこのろせんにはのるよていは とうぶんない

あのちいさなえきのちかくにすんでいたころ でんしゃにのるきかいはあまりなくて
おもわずきっぷうりばにむかって でんしゃだいをたしかめた

あいつのなかではおれはむかしのしんゆうで それいじょうでもいかでもない
おれひとりが あいつにとくべつなきもちをもって
うしろめたさといとしいきもちとで いっぱいだったなんてしらない
しらなくて いい

まいとしおくられてきたねんがじょう おれはへんじしなくなってしまったのに
きちょうめんなあいつは それでもまいとしおれにおくってきた
こっちのだいがくにはいったことはしらせなかったから
ねんがじょうはじっかにとどいて おやからおれへとおくられてきた
なんでじゅうしょおしえないの といわれるのをまいとしのらりくらりかわした

なんにんかとつきあって いろんなきすもいろんなせっくすもしたけれど
つたえることも おわらせることもしなかった はつこいが
ずっとむねのなかでくすぶったままで じぶんのしつこさにはあきれるばかり

「おおきくなったら いっしょにろぼっとつくろうぜ」って
ほいくえんのすなばで なんにもしらなかったがきとがきとがやくそくをした

やくそくはもうかなわないけど おれがいまこんなふうにやくそくをやぶったように
あいつがどんなふうにやくそくをやぶったか それがきになる

なにもかもがちゅうとはんぱで それでもねんがじょうをすてられない
そんなだいがくせいのいちにち

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□ 471-474 □
【あるかいしゃいんのいちにち】

めにゅーをひろげ のみものをえらぶ
いつもののみやでまんせきですとことわられ はじめてきたいざかや
きんようのよる どこもきゃくでいっぱいだ

おれ なまちゅうでいいわ とせんぱいそのいちがいう
おれもなまちゅう ほとんどめにゅーをみずにけってい
いつものにほんしゅがないとなげくせんぱいそのにと
おんなのこたちがなやんでいるあいだに おしぼりをてにとる
つゆのはんぱなあつさで いやなぐあいにあせばんだはだに きもちいい
せんぱいそのいちはおもいきりかおをふきまくっている
おまえ あいかわらずおっさんだな とせんぱいそのに
うるさい さっさときめやがれ とせんぱいそのいち
おれはそのようすみて いつものやりとりにわらう

やがておんなのこがのみものをはこんできて みんなにいきわたったところで
はい じゃあ みんな おつかれさまでしたー
かんぱーい おつかれー ぐらすをかるくあわせてびーるをあおる
かわいたのどに なけるほどうまい

ちいさなこんぴゅーたーかんれんがいしゃの ちいさなちーむ
ひめいがでるくらい いそがしいこともあるし
そんなときは こんどこそやめてやろうかともおもうけど
おわってみれば やっぱりここでよかったとおもう

めにゅーをとって てーぶるにひろげる
くしもりあわせ なんこつからあげ だしまきたまご ひやしとまと
みんなくちぐちにかってにいうので おぼえるのがたいへん でももうなれた
なんでだかわからないが いつもおれがちゅうもんするやくめ

すきかってにりょうりをつついて ちょっとかたりあったりもして
いいぐあいにできあがってきたころ せんぱいそのいちがぽつりといった

おまえ ほんとせいちょうしたよな

とつぜんのせりふ じぶんがいわれたことにもきづかなかった
あいたさらをかさねていたてがとまった ぽかんとしたおれに
おまえのことだよ ばーか
とわらっていって びーるをごくごくのみ
ごめん これも
とてわたしてきたからのじょっき じょうけんはんしゃてきにうけとる

どうへんじしたらいいのかわからなくて とりあえずおれい
あっありがとうございます ちょっとかんでしまった

かんでるし とつっこんだあとに
ほんとになあ どうなることかとおもったけどな
とせんぱいそのにがしみじみいった

だいがくにはいってみたものの じぶんにあっていないことがわかって
なやんでなやんで いちねんとすこしでたいがくして おやをなかせて
けっきょく すきだったこんぴゅーたーのしかくをとった
すきこそもののなんとやらとは よくいったものだとおもった

まじめできちょうめん それだけがとりえのにんげんだったおれ
かいしゃにはいっていちねんはん たぶんそれだけではなくなったけれど
じぶんのみじゅくさにはなさけなくなるばかりで
あしをひっぱっているだけではないかと ふあんになっていた

すこしなみだぐんだおれに おーいないてんのか とせんぱいたちがいう
ないてませんよ つぎはなにのむんですか とめにゅーをひろげる
ひろげためにゅーに ほかのみんなもはんのうして
おれなまちゅう あたしかしすおれんじ またくちぐちにいいだす

てもとにある よびだしぼたんをおした
とおくで ぴんぽーんとおとがする ちゃんとよべたみたいだ
しばらくしててんいんがくる さっきのおんなのことちがっておとこ

ごちゅうもんうかがいます

なまちゅうと うめしゅろっくと かしすおれんじと つぎつぎいって
ついでにたべものも めにゅーみながらおもいだしつつちゅうもん
いじょうで というと てんいんはちゅうもんをふくしょうした

いじょうでよろしいでしょうか とてんいんがきく
はい とてきとうなへんじ そのときはじめてかおをあげて

びっくりしすぎて いきがとまった

え うそ なんで まじで?
いいたいことはたくさんあるのにそれさえこえにならない
ひとちがい なんかじゃないよな?

なにもいえないままみつめていたら
おなじくびっくりしていたてんいんがちいさなこえでおれのあだなつぶやいた
それはちゅうがくのときまでつかわれていた おれのあだな
もういまは だれもつかわない おれのむかしのあだな

あたまがぐるぐるしたままぼうぜんとしていると
しごとをおもいだしたように かしこまりましたおまちください といったので
おれもわれにかえって あ すいません これさげてください とさらをわたす
ちがう いいたいのはそんなことじゃない

さらをうけとって あいつがさっていく
いっきにちからがぬける すとんといすにこしかけた

なんで どうして こっちにすんでるのか ここではたらいてるのか
ちょっとやせたんじゃないか せはのびてたよな
なんだよ こっちにいるならなんで おれずっとあっちにねんがじょうおくって

あたまがばぐをおこしたようになって だまってしまったおれに
どうしたないてんのか とせんぱいたちがいう さっきとちがってしんぱいそうに

いえ なんでもないです ひさしぶりにあったやつなんで びっくりしちゃって
わざとらしいとじぶんでもおもうけど あかるいこえをだしてみる
そうか とうなずくせんぱいたち すこしずつもとにもどるくうき
のんでたべてしゃべってわらいながら
てんいんがとおるたび そちらにはんのうしてしまうしせん

あいつはいちどもとおらなかった

らいしゅうきんようび かうんたーせきに ひとりでこようと
こころにきめた あるかいしゃいんのいちにちのおわり

□ 457-461 □
【ある よびだされたおとこの いちにち】

とうにみみざわりとなっていたてれびをけし おれはそふぁにふかくこしかけた
ゆうはんをつくりすぎたといきなりよびだされ やつのへやをおとずれたのが いまからさんじかんくらいまえ

ごちそうついでにふろまでかりて ひさびさのみゃくありにないしんうきあしだっていたのに よびだしたとうのほんにんは さっきからほんをよみふけっている
こっちがはなしかけても てれびをつけても りあくしょんはまったくない

すぷりんぐをかんじさせない ぬのばりのふたりがけにならんですわっている おれたち
 かべにやんわりとうかんだ あんばらんすなかげのきょりをすこしだけちぢめ おれはやつがよんでいるほんをのぞきこむ

とたん しかいいちめんにあるふぁべっとのられつがとびこんできて めまいをおぼえた
あいかわらず むずかしいほんをよんでるなぁ…

うんざりとのぞきみをやめて おれはおもむろに ゆびさきのていれをはじめる
ふれただれかをきずつけないよう まるく ていねいにやすりをかけけながら そうして ひだりどなりでぺーじをめくる いかついゆびさきになんとなく しせんをおとしてみた
↓ こがらでおんわそうにみえるけど やつはそのてににて きむずかしく よういにたにんをきょようしない
それは おれにたいしてもあまりかわらず こんやみたいなよびだしは ほんとうにまれだ

みがきおえたつめの なめらかなかんしょくをたしかめて おれはうでどけいをみる
いつもなら むこうのすきをついて いろいろしかけるじかんたいだけど こんやにかぎってまるきり とりつくしまがない

もしかして くったらさっさとかえってほしかったのかな?
でも おいださないということは…でもさ でも…

せもたれにおもいきりよりかかって うすぐらいてんじょうをぼんやりみあげながら でもけっきょく おれはなにもいいだせない

せっかくそばにいられるのだ ちんもくすらここちよいじかんをぶすいないやみでこわすなんて もったいない
かわりに せめてものいしひょうじと やつのひだりかたへうでをまわし みじかいくろかみをかるくなでた

すいめんをたゆたうかんかくが ふかみへはまりそうになって やばいときゅうふじょうする どうやらいっしゅんだけ うたたねてしまったようだ

むりやりまぶたをこじあけ ひだりのかたにいわをおぼえたつぎのしゅんかん せもたれとちがうひふかんかくのしょうたいをさっし おれはあわててほほをひきはがした

うでどけいがしょうじきなら いちじかんちかくも やつによりかかってねこけたことになる
みぎがわでおきたへんかなどいにかいさず どくしょするよこがおに めをあわせぬまま おれはわびた
「ごめん おもかったよな じゃあ…」

こんやはごちそうさま またな…できるかぎり やつをしげきしないことばをあたまのなかでえらぶ
たちあがろうとそふぁにてをついたせつな なにかにいきなり ひだりてのこうをつよくにぎりとられた

おもわずふりむきかけた みぎのしかいが ふしぜんにかげる

「まて」

おれのくちびるてまえをかすめたひくいつぶやきは かすかにふれたびねつをつたえきらぬまま はなれた

「いきなりなんだよ」
「そのかおが みたかったから」
は? とききかえしたおれをしてやったりのえみが みあげる
「たまには こちらからしかけてやろうとおもってな なかなかたのしかった」

もしかして このためだけによびつけて いままでずっと たいみんぐをはかってたのかよ? おまえ

よみかけのほんをそふぁにほうりだし たちあがるとやつは ひとのわるい でもどこかやさしげなめでおれをかえりみる
「こないのか?」

しめされたのは げんかんとはんたいがわの どあ
しっぽをふってついていきたいのをいじでこらえ こちらもふてきにわらいかえしてやった
「だかれたいのは そっちだろ?」

おとくいの ぽーかーふぇいすで さしだされたやつのてのひらが けっこうやわらかかったことをいましった あるおとこの おわりそうでおわらない いちにち

□ 522-523 □
【ある きつえんしゃ のいちにち】

おれ きつえんしゃ
いちにちひとはこはあたるまえの ちょー へびーすもーかー

『たばこ やめなよ』
こいつ きんえんしゃ たばこすわない
がくせいからのだち
『やめれたら くろうはしません』

そんなあるひ べつのだちから きんえんしゃのことをきいた
『あいつ ぜんそくもちなんだって』

すうじかんご

『あれ? たばこ すわないの?』
『すわない てか はやくいえ ばか』
『・・・ ぜんそくのこと?』
『ああ』
『・・・だって・・・いったらやめちゃうだろ? たばこ』

やつはとおくをみつめた

『あたりまえだ』
おれはおこりながらかえした

『だからいわなかった』
『はぁ?』

あきれるおれにやつはえがおをむけた

『おれ たばこすってるときのおまえ かっこいいとおもうから』

おれははずかしくなってやつのあたまをはたいた

これはそんなきつえんしゃがこいにめばえたいちにち

□ 532-533 □
あるしょうじきもののいちにち

だいがくでおなじさーくるだったしんゆう
はたらくようになってもけっこうあってる
きょうはあいつとさけをのんでる
さけがはいるとうそばっかりつくあいつ

「えいてんだぜー しょちょうになるんだー」
はいはい

「とおいんだぜー しんかんせんで6じかんだー」
そりゃたいへんだ

「おれおまえがすきなんだけどさー これじゃえんきょりれんあいだよー」
どりょくすればなんとかなるんじゃん

「まじでー さすがおれとおまえ」
おーいえーあいしてるぜー

おかねをはらってみせをでる
しゅうでんちかいえきのほーむ あいつはあっちでぼくはこっち

「きょうさー おれさー おまえにうそつかないってきめてたんだ」
え なんで
「すきなやつに うそつきたくないから」
え うそじゃないて え
「あと おまえはむかしから じょうだんでも うそつかないのしってる」
うん おばあちゃんがずっと て えーと
でんしゃがやってきた

「おれ すぐにもどってくるからな
これもうそじゃないからな わかったか」
ひらいたどあのなかからさけぶ
うるさいよ よっぱらいめ はずかしいやつめ

「じゃあまたな」
どあがしまる でんしゃがちいさくなる

はんたいほうめんのでんしゃにのりこんで
なんのはなしをしてたんだっけ とあたまをひねる
さけがはいるとわすれっぽくなる しょうじきもののいちにちは あともうちょっと

□ 540-541 □
【あるわすれんぼうのいちにち】

あさおきる おなかがすいた
とーすとでもやいてたべようかな

そのまえにてれびをつけよう
にゅーすしかやってないや つまんない

あれ なにしようとおもってたんだっけ
おなかすいたなあ とーすとでもたべようかな

でんわがなった

はいもしもし
うん わかった きょうのゆうがたね
だいすきなともだちとやくそくをした

あれ なにしようとしてたんだっけ
そうだ かれのためにへやをそうじしよう
かれはきれいずきだから うんときれいにしよう

そうじきをとりにいくとちゅう つくえのうえのまんがをみつけた
そういえばまだよんでなかったなあ

よみふけるうちに きづけばもうおひる

ええと なにをしようとしてたんだっけ
そうだ かれがくるんだ
かれのためにおいしいごはんをつくってあげよう

だいどころにいくとちゅう げーむきをはっけん
ちょっとだけならいいよね

やりこんでいるうちに きづけばゆうがた

ちゃいむがなった
いそいでげんかんへとかけつける

しんゆうがきた
まってたよ というと うれしそうにわらった
へやもきたないし ごはんもよういしてなくてごめんね

かれはぼくのあたまをなでた
ぼくがくることをおぼえてくれていただけでじゅうぶんだ

ほかのともだちがくることはわすれるのに
かれがくることはぜったいにわすれない
そのことにきづいていない あるわすれんぼうのいちにち

□ 573-576 □
【あるぼうかんしゃのいちにち】

けいたいがなってる
ひょうじされるのは みなれたせめのばんごう
つうわぼたんをおすと ききなれたこえ

「うけが でんわにでねえ」
はいはい またですか
なんか ばいとさきのやつと つきあうとかいってたよ
で きょうでーと だと

ちんもく
もしもし きこえてますか

ためいきと へこんだこえ
「またかよ」
ええ またです

「このあいだまで べつのやつとつきあってたのに」
そうですね まえにわかれてから まだ1しゅうかんも たってません

「おれというものがありながら どういうことよ」
どうもこうもきみ こくはくしてないでしょ
「それは そうだけど」
にえきらないね やめとけば あのひと うわきしょうだし

「でも すきなんだよ それに うわきしょうじゃなくて
あれは ほれっぽいだけだ」
のろけ おつ
てかね それつたえなさいよ おれじゃなくて あのひとに

「それは はずかしい」
むしょうに きれたくなったよ いま
だいたいね いつもみたいに うわきならいいけど ほんきになったら どうするの

ふたたび だまる でんわぐち
とられたくないんだったら ちゃんといっておけよ
かのうせいは ぜろじゃないだろ

「わかった なんとかする」
はい がんばって じゃあね

これで 100かいをこえる せめからのそうだん
たぶん つぎもこくはくできないに ごせんてん
けいたいがまたなった
ひょうじは かちゅうのひと うけから

もしもs
「だー あいつさいあく」

なんですか とうとつに
「わかれてきた」
はやいね なに きろくにでも ちょうせんしてるの

「あんなやつだとは おもわなかった」
ぶぜんとしたくちょう いつも それいうね
じゃあ どんなやつが いいのよ

「かおだけで はんだんしないやつ」
ほうほう
「んで むかしのこいびとだの ぐだぐだ いわないやつ」
つごうが いいやつと いうきもするね それは
「で おれを あいしてくれれば いうことなし」
ぱーふぇくと
いねえよ そんなやつ

でも そんなやつ ひとりしっている
みぢかすぎて きづかないことって あるよね
まったく せわがやける

「あ そういや せめ いまなにやってる?」
みごとな たちなおり はなから おちこんでないな これは
しかし きみらは どうして おれにきくのかね
でんわ すればいいでしょ

「るすでんで あいつでない」
めずらしい うけからなら 1こーるで でるのに
これは ひょっとすると ひょっとするのか

でるまで かけつづけては いかが あいつ いえにいるし
「うん もうすこししたら また かけてみる」
はいはい じゃあね
あれ おれひまつぶし?まあ いいや

せめに めーるで うけがわかれたと おくる
あとはじぶんで どうにかしろ

はやく くっつけよ おまえら とおもう しんゆうふたりがだいすきな
あるぼうかんしゃのいちにち

------------------------------------------------------------------

□ 637-639 □
【あるぼうかんしゃのきゅうじつ】

ききあきたちゃくめろで めがさめた
うんざりしながら つうわぼたんをおす

「あ、おれおれ」
さぎ?
「いまさー うけと でーとちゅう」
むしかよ

まえの でんわから すうじかんご
かかってきたでんわの なみだごえに やっぱり だめかと
なぐさめかけたら まさかの おーけー
うけ ものずき

こんかいも ながつづきしないかと きをもんでいたら
よそうをうらぎって あつあつ ばかっぷるか
おれ ごさん
さらうんどで のろけられるのが ここまでつらいとは
おれ がんばれ

で きょうは なに
「すいぞくかんに きてるんだけどさ みやげ なにがいい」
おれは おまえらの こどもか
そして そのちょいすは なんだ
いろいろと いいたいことを ぐっとのみこむ
でも もれそう

ぬいぐるみ
「え」
でかいやつな いるかとか
「まじで」

すこし ばつげーむちっくだと おもったが
さわやかな きゅうじつを じゃまされたおかえし

「これで いいんじゃねーの」
ざつおんにまぎれて うけのこえ
どんだけ ちかくにいたの きみら
「うわ」

ちんもくする でんわぐち
ぜったいに こちらから はなしかけまいと かたいけつい
あんてな3ほん たってるけど すごくきりたい

ぬいぐるみ ふたつ こうにゅうけっていだな せめ
よそうするじぶんが ちょっと せつない
お ふっきした

「じゃ かえりよるから」
はいはい たのしんでこいよ

すうじかんご じしつで くりひろげられるだろう
いちゃつきを そうぞうして やや むねやけ
ま しあわせなら いいや もう

おれにも はるがこないかなと ゆうじんたちにすこし えいきょうされる
あるぼうかんしゃのきゅうじつ

□ 703-704 □
【ある せめの いちにち】

いつもの かえりみちで たどりついた
いつもの わかれみち
おれはみぎ あいつはひだり
  ↓
「じゃあ また あした」
  ↓
そういって てをふって さゆうにわかれる
  ↓
つきに てらされたみちを ひとりであるく
あしもとから ながくのびた じぶんのかげ
  ↓
そのよこに さっきまではあった あいつのかげ
ひとりになったかげは なんだか やけにさびしそうにみえた
  ↓
ためいきを ひとつ はいて
ずじょうのつきを みあげた
こんやのつきは まんげつで すこしまぶしい
  ↓
おおかみに なっちまえたら いいのにな
  ↓
おおかみになって あいつを おそってしまいたい
ほんのうのままに だきしめてみたい
あのしろいくびに かみついてみたい
  ↓
だけど おれは
どんなにつきのひかりを あびたって
おおかみになんて なれやしない しょうしんもの
  ↓
いつになったら このてで あいつを だきしめられるのかな
つきをみながら また ためいき
  ↓
おおかみになりたいとねがう こひつじのように おくびょうなせめ
まんげつのしたの かえりみち

------------------------------------------------------------------

□ 705-706 □
【ある うけの いちにち】

いつもの かえりみちで たどりついた
いつもの わかれみち
おれはひだり あいつはみぎ
  ↓
「じゃあ また あした」
  ↓
あいつのこえに てをふって さゆうにわかれる
  ↓
つきに てらされたみちを ひとりであるく
あしもとから ながくのびた じぶんのかげ
  ↓
そのよこに さっきまではあった あいつのかげ
ひとりになったかげは なんだか やけにさびしそうにみえた
  ↓
ためいきを ひとつ はいて
ずじょうのつきを みあげる
こんやのつきは まんげつで すこしまぶしい
  ↓
あいつが おおかみになったら いいのにな
  ↓
あいつが おおかみに なってくれるなら
おれは こひつじに なってやるのに
あいつがのぞむまま すきなように くわれてやるのに
  ↓
だけど あいつは
どんなにつきのひかりを あびたって
おおかみになんて なれやしない しょうしんもの
  ↓
でも あいつのそんなとこも すきなんだから しょうがない
つきをみながら また ためいき
  ↓
いっそのこと あいつがおおかみに ならざるをえなくしてやろうか と
ぼんやりかんがえる さそいうけ こうほせい
まんげつのしたの かえりみち

□ 736 □
【ある ふつかよいうけの いちにち】

あせやらなにやら いろんなにおいのするからだをおこす
ふらふら くらくら しかいがまわる
ああ ふつかよいだ あたまもいたい

れいぞうこにちょっこう
かみぱっくの やさいじゅーすをのむ

すとろーのはじを がしがしとかみながら へやにもどる
だいのじになってねむる がくせいじだいからのしんゆうをよこめに
かーてんとまどを ひといきにあけた

なにやってんのかな おれ
しごとでせいだいにみすをして おおざけのんで
はんべそをかきながら しんゆうをよびだして
あげくに あいつをおしたおしたりして
そんで うえにのっかっちゃったりなんかして

ぜんぶ さけのせいにして
わすれるよていだったのに しっかりおぼえてる

たかいびきで ゆめのなかにいるしんゆうが
めをさましたなら どんなかおをしたらいいのかと
いたむあたまで しんけんにかんがえる あるふつかよいうけのあさ

------------------------------------------------------------------

□ 745 □
【ある >>736のしんゆうの いちにち】

ぜんかいにしたまどから つめたいかぜがふきこんでくる
おれのたぬきねいりにはきづかずに
まどのそとをぼんやりとみている ふつかよいうけは ためいきをついた

このちょうしじゃ あいつ かんじんなところをわすれてるな

ぽろぽろと なみだをこぼしながら おしたおされたときは
そりゃあ おどろいたけれど
ほんとうのところは うれしさのほうが まさっていた

はじめてあったときから
そばにいないと だめなようにしむけたのは おれのほうだ
おれだけがいればいいように あまやかしたのも おれだ
こうなるのは じかんのもんだいだった と おもう

だから あいつをだきながら なんどもいってやったのに
「おれのほうが さきに おまえに ほれたんだ」
どうやらそれは おぼえていないらしい

また ふつかよいうけが おおきなためいきをついた
ためいきなんか つくことないのに
おれがおまえをすきで おまえがおれをすきなら
ぜんぜん もんだいないだろう
まあ はじまりは とっぴだけれど

いつまでもまどからはなれない ふつかよいうけがふりむいたなら
えがおで だきしめてやろうとおもう
ある しんゆうせめの いちにちのはじまり

□ 751-752 □
【ある びっぱーのいちにち】

くらいへやに でぃすぷれいのひかりがうかぶ
きょうも くそすれに ねんちゃくする おれ

また つられたぜ くそー
⊂二二二( ^ω^)二⊃ブーンして あらしてやる
うはwwwwwwwwwwwww
このながれ てらわろすwwwwwwwww

するととつぜん けいたいがなった
いつも めったに ならない けいたい
ちゃくしんをみると おなじくらすの なかむらだ

『よお ねてたか?』
ねてねえよwびっぱーのよるはながいんだぜwwwwぅえwww
とは いえるはずもなく
「・・・や、べつに」
と くちごもった

なかむらはいけめんなので はっきりいって にがてだ
きのう けいたいばんごうを きかれたときは
ばつげーむキタコレwwwwwwと ほんきでおもった

『あのさ ききたいんだけど』
「・・・何?」
めのまえでは すれが まつりになっている
りろーどりろーど どんどんれすが のびていく
800 900 もうすぐ1000

『おまえ あした ひま?』
「・・・」
ん? あした?
『おい きいてる?』
「あ、えと、まあ ひまといえば ひま・・・」
『ちょっと はなしたいことが あるんだけど』
じかんと ばしょをつげて でんわはきれた

まてwwwwwwwwwww
なんなんだ はなしたいことって もしかして かつあげとか
だんだんふあんに なってきた おれのてが
むいしきに くりっくしたのは ぶらくらだった

なかむらが かおをまっかにして はなしていたとか
あした おくじょうで こくはくされるとか
ゆめにも おもっていない ちゅうぼうなびっぱーのよふけ

□ 765-767 □
【あるしつれんおとこのいちにち】

ずっとずっとすきだったこにこくはくしてみごとふられた

ちくしょうとおもいながらあるいてたらめのまえにしんゆうとうじょう
だいがくのせいもんまえ あしもとはすいがらのやま

よう、とたばこすいながらあげるみぎてにかみついてやりたい しないけどさ

すいがらそのへんにすててんなよ まなーさいあく
はきすてながらとおりすぎたらとなりにきた

なんだよ きょうばっかりはおまえのかお みたくねえんだよ
いらいらしてるとやつ、いいやがった

ほら、どうなったのかなとおもって きょうさ、いうっていってただろ?

ここでこいつをなぐらなかったおれは いつかれきしになをのこせるとおもう

あのこおまえがすきなんだって おれによくはなしかけてきたのもおまえとはなすためなんだって
おれがさそうとのってきたのもおまえのはなしがききたいからだったんだって

あのこのめにうつってたのはおれじゃなくて、すいがらそのへんにすてるような、
ようもないのにおれんちにいりびたるような、ひまだからっつっていきなりひとをよびだすような、
おまえ、なんだってさ!

おもったらじわりとなみだがうかんで あわててみけんにちからをこめた

なくなよ あせったようなこえがみぎからふってきて ないてねえよばか いいかえしたらほんとにすこしおちついた

つぎいこうぜ、つぎ つぎあるってだいじょうぶ! あたまなでながらいわれたせりふにしんそこはらがたつ

そうだな、おまえにはつぎがあるんだろうな

おれをしんぱいして だいがくのせいもんなんつうめだつとこで ばかばかたばこすいながらずっとおれをまつような
すこしでもぐあいがわるいといっぱつでみやぶるような おれあいてなのにいえまでおくるとかいいだしちゃうような
おまえにはいくらでもつぎがあるんだろうよ

そうだ、さけのみいこうぜさけ! おればいとだいでたしおごってやる!

おごり、のひとことにはんのうしてちらりとみぎをみるとこまったようなまゆをさげてるやつとめがあった

それにちょっとほだされて つぶやいたのはものすごくいやなひとこと はんのうがわかってていうようなひとことだ

つぎって、ほんとにあるとおもうか?

あんのじょう しんゆうはかなしそうにまゆをよせておれのあたまをらんぼうになでた

なきゃこまるだろ

うん そういうとおもった

そうだよな よし、つぎはきっとだいじょうぶだよな

しんゆうっていいな! ありがとな! いうとけむりがめにしみたのがまぶたをこすりながらやつはそうだなとわらった

つぎのあいてがめのまえにたつおとこだとしるのはまだまださきの、あるしつれんおとこのゆうぐれどき

■ 145-149… ■ 

どくりつしています。
こちらへどうぞ。

さとう の いちにち

・1.5スレめからのけいぞくにっきです。

■ 690-693… ■ 

どくりつしています。
こちらへどうぞ。

+ ある だいがくせい の いちにち +

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